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【教えて!】老人福祉法と介護保険法の違い、制定の背景など分かりやすく解説!

老人福祉法と介護保険法の違いとは

「老人ホームで働くことになった」
「デイサービスセンターへの就職が決まった」
 
介護職として働くことが決まった方は、ご自分の勤務先や勤務内容について色々調べていることでしょう。
 
その中で、老人福祉法や介護保険法といった法律についても触れる可能性もあります。「この2つの違いは何だろう?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。
 
この記事では、老人福祉法と介護保険制度の違いや、なぜ異なる2つの法律が生まれたか、などを解説いたします。介護の仕事を始めるにあたって、この記事を読んで学びを深めてみましょう。

老人福祉法と介護保険法の違い

高齢者施設

老人福祉法と介護保険法は、ともに日本の高齢者福祉を支える法律です。しかし、法律が誕生した背景や目的に違いがあります。

両者の違いを表にまとめましたので、ご覧ください。

  老人福祉法 介護保険法
制定・施行年 昭和38年(1963年)7月制定
昭和38年(1963年)8月施行
平成9年(1997年)12月制定
平成12年(2000年)4月施行
背景 高度経済成長期、若年層が大都市に集中して、地方の過疎化が進んだ。
核家族化や女性の社会進出に加えて、平均寿命が伸びたことにより介護問題が社会化した。
そのため、生活困窮者に限らず、高齢者全体を対象とする制度が必要となった。
高齢化が進み、要介護者や認知症高齢者が増加した。
核家族化の進行や老々介護問題など、要介護者をめぐる家族の状況が変化した。
バブル崩壊による日本経済の停滞に加え、社会保障費が国の財政を圧迫するようになった。
そのため、従来の老人福祉制度による対応が限界になってきた。
目的 老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに、老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ、もつて老人の福祉を図ることを目的とする。

引用:e-Gov法令検索「老人福祉法」

加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

引用:e-Gov法令検索「介護保険法」

ポイント 居宅サービス及び施設サービスがあるが、これらはすべて公費による措置制度である。 40歳以上の方が支払う介護保険料と税金で成り立っており、要介護者を社会全体で支える制度である。

 

老人福祉法とは

老人福祉法は、昭和38年(1964年)7月に制定されて、同年8月に施行されました。

高齢者福祉を担う機関や施設、事業などのルールを定めた法律で、都道府県および市区町村に「老人福祉計画」の策定を義務付けています。

老人福祉法に定められているサービスは大きく分けると、

・居宅サービス
・施設サービス

の2種類です。

老人福祉法制定の背景・目的

老人福祉法が制定・施行された1963年は、高度経済成長期の頃でした。若い方が進学や就職のために地方から都会へ移ることも多く、地方の人口減少が進みました。

またこの頃は、核家族化や女性の社会進出などにより、高齢者の介護を家族だけで行うことが難しくなってきた時代でもあります。

これらの背景のもと、高齢者全体の福祉をはかることを目的として制定された法律が、老人福祉法です。

介護保険法とは

介護保険法は、平成9年(1997年)に制定された法律です。この法律による介護保険制度が、平成12年(2000年)にスタートしました。

介護が必要な方、いわゆる要介護者と家族を社会全体で支えるためのものです。介護保険サービスを利用するときは、1割から3割の自己負担が発生します。

介護保険法制定の背景・目的

介護保険制度が生まれた背景の1つは、バブル経済の崩壊です。1990年以降にバブル経済が崩壊して以降、日本の経済は後退していきました。

また、高齢化が進んだことも背景として挙げられます。

1990年、日本の高齢化率は12.0%でした。その後も高齢化は進み、福祉サービス費などの社会保障費が増加して、日本の財政を圧迫していきました。

高齢化に伴い、要介護者や認知症高齢者の人数も増えたことに加えて、核家族化も進みました。このことから、高齢者が高齢者を介護する「老老介護問題」も出てきたのです。

これらの背景により生まれたのが介護保険法で、目的は高齢者の介護を社会全体で支え合うことにあります。

老人福祉法で定められた施設の種類と内容

老人福祉法上では、6種類の居宅サービスと4種類の施設サービスが定められています。基本的には、やむを得ない理由で介護保険サービスを受けられない、65歳以上の高齢者が対象です。

「やむを得ない理由で介護保険サービスを利用できない」の例を、以下に示しました。

・医師の受診を強く拒んでいる
・家族から虐待を受けているなどの理由で、介護保険サービスの利用契約ができない
・認知症などの理由で意思能力が乏しく、かつ代理となる家族等がいない

1.老人福祉法に基づく居宅サービス

老人福祉法で定められている、6種類の居宅サービスについて解説いたします。

居宅サービスとは基本的に、自宅にいながら受けられるサービスです。

①.老人居宅介護等事業

身体または精神上の障害のために、日常生活に支障がある65歳以上の方が利用できます。

主なサービス内容は、以下のとおりです。

・身体介護(入浴や食事、排泄、更衣、洗面といった身体面の介助など)
・生活援助(掃除や洗濯、買い物など)
・通院等乗降介助(病院等通院時における車両乗降の介助など)

②.老人短期入所事業

老人福祉法第20条第3項で定められている事業で、65歳以上の方が対象になります。

介護をする方が、病気などの理由で一時的に介護が困難になった場合に、特別養護老人ホームなどで短期間養護することが目的です。

事業でのサービス内容としては、以下のようなものが挙げられます。

・入浴や食事、排泄などの身体介護
・機能訓練
・その他

③.認知症対応型老人共同生活援助事業

認知症のために日常生活を営むことが困難な状況にある、65歳以上の方が対象です。少人数で家庭的な雰囲気の中で、共同生活を行います。

主なサービス内容は以下のとおりです。

・入浴や食事、排泄などの身体介護
・機能訓練
・その他

④.老人デイサービス事業

老人福祉法第20条第2項第2号により定められた事業です。

身体面もしくは精神面の障害により、日常生活に支障をきたしている65歳以上の方および介護者が、日帰りで老人デイサービスセンターに通います。

主なサービス内容は以下のとおりです。

・入浴や食事、排泄などの身体介護
・機能訓練
・レクリエーション
・介護方法の指導

なお、介護保険制度でのデイサービスの場合、介護者は利用できませんので、ご注意ください。

⑤.小規模多機能型居宅介護事業

身体または精神上の障害のために、日常生活に支障がある65歳以上の方が対象です。サービス事業所による訪問介護を受けたり、事業所に通ったりします。

サービス事業所に短期間宿泊することもサービスの一環です。

⑥.複合型サービス福祉事業

65歳以上で、身体または精神上の障害により、日常生活に支障がある方が対象です。

⑤で紹介した「小規模多機能型居宅介護」に、訪問看護を組み合わせた福祉サービスになります。

2.老人福祉法に基づく施設サービス

老人福祉法上で定められている福祉サービスは、4種類です。1つ1つ解説いたします。

①.養護老人ホーム

老人福祉法第20条第4項に基づいており、市区町村の「措置」により入所する施設です。もともとは生活保護法の流れで設立された施設であることから、65歳以上で低所得の方が入所対象になります。

介護が必要な状況とまではいかないものの、身体面または精神面の機能低下がみられて、かつ家族による支援が難しい方に対して食事や日常生活の支援を行う施設です。

厚⽣労働省平成30年度福祉⾏政報告例によると、養護老人ホームは全国に952施設あり、入所者は56,638⼈となっています。

②.軽費老人ホーム

老人福祉法第20条第4項に基づいた施設で、原則的には60歳以上の方が入居対象になります。ただし夫婦での入居を希望する場合は、どちらかが60歳以上であれば入居可能です。

軽費老人ホームは、A型、B型、ケアハウスの3種類に分けられます。下記の表をご覧の上、違いを比べてみてください。

  A型 B型 ケアハウス
対象者 自立した生活に不安があり、家族からの支援が難しい方 A型の要件に加えて、「自炊が可能な方」 身体機能の低下などの理由で、自立した日常生活に不安があり、家族からの支援が難しい方
サービス内容 入浴の準備、緊急時対応、日常生活の相談、給食など 入浴の準備、緊急時対応、日常生活の相談など(食事は原則自炊) A型のサービスに加えて、介護が必要になった場合は訪問介護などによるサービスを受けられる

 

厚⽣労働省平成30年度福祉⾏政報告例によると、軽費老人ホームは、全国に2,309施設あり、入所者は82,308⼈となっています。

③.特別養護老人ホーム

老人福祉法第20条第5項に基づいた施設で、寝たきりや認知症などにより自宅での生活が難しい方が入所対象です。

特別養護老人ホームで受けられるサービスとしては、以下のようなものがあります。

・入浴や食事、排泄などの介護
・機能訓練
・健康管理
・療養上の世話など

なお特別養護老人ホームは、介護保険法上「介護老人福祉施設」と呼ばれております。介護保険制度を利用する場合、要支援1及び要支援2の方は対象外ですので、ご注意ください。

④.有料老人ホーム

老人福祉法第29条第1項に基づく施設で、設置の際は、都道府県知事等への届け出が必要です。

有料老人ホームでは入所者に対して、以下のサービスを提供します。

・食事の提供
・介護の提供(入浴、食事、排泄など)
・家事援助
・健康管理

入所者の状況によっては、複数のサービスを提供することも可能です。

有料老人ホームは、以下の3タイプに分かれます。介護が必要になった場合の対応がタイプごとに異なるため、表に示しました。

介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム
介護が必要になった場合、ホームが提供する介護サービスを利用することで、ホームでの生活を続けられる 介護が必要になった場合、訪問介護などの介護サービスを利用することでホームでの生活を続けられる 介護が必要になった場合は退去しなければならない

 

まとめ

この記事では、老人福祉法と介護保険法の違いについて詳しく解説いたしました。

サービス内容など、両者が共通している部分もありますが、2つとも高齢者のためにはなくてはならない法律です。

それぞれの違いを知ることは、これから始まる介護の仕事において、大きなプラスになることでしょう。

この記事の執筆者
古賀優美子

保有資格: 看護師 保健師 福祉住環境コーディネーター2級 薬機法管理者

保健師として約15年勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護保険などの業務を経験。
地域包括支援センター業務やケアマネージャー業務の経験もあり。
高齢者デイサービス介護員としても6年の勤務経験あり。

現在は知識と経験を生かして専業ライターとして活動中。

 

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