医療・介護業界では、慢性的な人手不足もあり、長く勤務し続けてくれるかどうかが病院・施設運営にも直結します。
医療・介護職の人材不足が加速しているのは、一人一人に加わる業務内容が多様化しているからです。
病院・施設内でも人材の入れ替わりが少なく、スタッフの質が高いと、医療・介護業界のサービス向上にも繋がります。
人手不足がさらに強まる医療・介護業界では、離職を防止し、長くスタッフに働いてもらうことも重要です。
この記事では、長く働き続けてくれる優秀な人材の育て方を詳しく解説します。
医療・介護業界の傾向として、優秀な人材ほど辞めていく
医療・介護業界の傾向として、優秀な人材ほど辞めていく…という状況があります。
ここで言う、優秀な人材とは、
「業務自体の理解も早く、周囲への気配りや目配りも十分にでき、仲間から頼られやすく信頼されている方のこと」
をイメージしています。
このようなタイプの人は、性格が良い方も多いので、ずっと一緒に働きたいと周囲からは思われますが、頼られ過ぎてしまったり、周囲からのサポートしてくれる環境がないと、本人の心身の疲弊が大きくなり、辞めていくことがあります。
突発的なトラブルが多い現場では、頼られやすい方や責任を押し付けられやすい方は、同じ現場に長く定着せず、早期に辞めていく傾向があります。
なぜ優秀な人材ほど辞める?
なぜ、優秀な人材ほど辞める傾向があるのでしょうか。
人材が辞めていく理由をみていきましょう。
頼られやすく抱える仕事が多い。責任のある仕事が多くなり楽しくなくなる
周囲から頼られやすくなってくると、責任のある業務を任されるようにもなってきます。
責任のある業務を任されるようにもなってくると、決定権を委ねられることも多くなるため、その時々に重要な判断をしなければいけません。
時には周りのスタッフと意見がぶつかることもあるでしょう。
そのため、業務負担が大きくストレスも溜まりやすくなります。
特に医療・介護業界では、慢性的な人手不足により、一人のスタッフに業務負担の負担が偏ってしまうことが多いです。
人よりも仕事ができるゆえに、他の方なら気づかないことにも気づき、仕事量が増えていくこともあるでしょう。
責任感が強い方ほど、周囲に相談できずに抱え込むものが大きくて、やがて心身共に潰れていきます。
人間関係の疲れ
医療・介護業界は、チームで動く仕事ですから、たくさんの人と関わります。
そのため、人間関係もそつなくこなせる方は周りからの信頼関係も築きやすいです。
人格面でも優れている方は周囲に気配りがあり優しい分、心無い言葉に傷つくことや、人間関係に疲れてしまいやすい傾向があります。
労働環境が良くない
医療・介護業界はどこに行っても慢性的な人手不足です。
そのため休憩時間が規定通りにとれないことが日常化している職場もあります。
また急なシフト変更があり、休日を変更して出勤しなければいけない場合もあるでしょう。
自分の希望通りに休みがとれないこともあり、ストレスが溜まる原因にも繋がります。
更にサービス残業がある場合もあり、心身共に疲れが抜けない…と悩んでいる職員も多いかもしれません。
成長を感じなくなる(飽きる)、優秀な人材は常にスキルアップを求めている
仕事ができる方ほど向上心を高く持つ方が多いです。
常にスキルアップしたいという気持ちがあります。
そのため、現在の職場よりもスキルアップできそうな良い職場が見つかると、すぐに転職をする可能性もあります。
安定よりも自らのスキルアップを望む方が多いので、転職先を決めてから退職を伝えられるというケースも多く、引き止めも難しいことが多いです。
やりがいのある職場を求めて転職をしていくケースとなります。
指導してくれるような人がいない
業務の効率化を重視するあまり、適切な教育が行えない場合もあります。
人手不足のためにしっかりと指導・教育する時間を確保できない、ということです。
また、上長がいつも忙しかったりするなどで、スタッフの訴えに耳を傾けない、といったことも不満につながりやすいです。
働く前のイメージとのギャップを感じて辞める方もいるでしょう。
将来のビジョンが立てられない
スキルアップや昇進を目指したくても、適切な環境が整ってない場合や、事業所が小さいと、異動や管理職に就く可能性が減少します。
給料アップのためには昇進する必要がある、と考えている介護職の方も多いでしょう。
そのため、将来のビジョンが立てられなくて辞める、自分の成長に繋がらないから辞める、といったケースもあるでしょう。
待遇・会社の方針に満足できない、仕事量の割に給料が低い
医療・介護の仕事は、心身共に負担が大きいです。
忙しい労働環境や不規則な生活環境がスタッフの身体に影響を与えています。
仕事量が多いのに給料が低い、というのも特徴です。
例えば、令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要についてによると、
介護労働者全体※1の令和2年 1 年間の年収※2(月給の者、勤続 2 年以上)は、3,659,292 円
(前年度 3,644,880 円)であった。
職種別(月給の者、勤続 2 年以上)では、看護職員が 4,277,122 円で最も高く、介護職員は3,457,919 円、訪問介護員は 3,243,882 円であった。(※1)無期雇用、有期雇用ともに含み、管理職を除く。
(※2)源泉徴収票の金額 残業代、賞与、社会保険、税金を含む
とあります。
(全体労働者全体の年収ですので、地域差などはあります)
上記では介護職員は3,457,919円となっています。
日本の会社員の平均年収は、国税庁の民間給与実態統計調査(令和2年)によると、433万1000円です。
約87万円の差があり、年収には大きく差があると言えます。
医療業界よりも介護業界の方がその傾向が強く、離職率を高める大きな原因の一つになっています。
経営方針が合わない
会社の経営方針と自分の考えが合わない場合も辞める原因になります。
優秀な方ほど経営者と上司の間に挟まれることも多いからです。
引き止める際の注意事項
職員から退職を切り出された場合、引き止める際に注意事項があります。
辞める兆候を発見して声かけをした結果、退職相談をされることもあるでしょう。
その際、引き止めをするケースも多いと思います。
対応の仕方によって話し合いの結果が変わるケースも考えられます。
引き止める際の注意事項をみていきましょう。
無理に引き止めないで何が問題かを聞く
面談を行う際には次の内容を確認しながら、相手が何を感じているのか把握することが重要です。
・次の職が決まっているのか
・何に悩んでいるのか、メンタルフォローをする
相手が辞めようと決意する時は、それなりの大きな理由があるはずです。
辞めようと思った理由を具体的に聞くことが大切です。
ただし、相手のマインドの状態によっては質問しても正直に答えてくれないことも多いです。
質問の仕方を変えてみたり、日時を変えて改めて話し合いをする、など対応を考えなくてはならないかもしれません。
柔軟に対応していくことも大切なポイントです。
もし、辞めたい理由が解決できそうな内容なら、できるだけ親身になって気持ちに寄り添うことが重要です。
次の職が決まっているのか
次の仕事が決まっているかも引き止める重要なポイントです。
次の仕事が決まっていない場合は、辞めようか迷っている状態であることも多いです。
あなたがこの職場には必要な存在だと伝えることが大切です。
それによって退職を思いとどまってくれる可能性があります。
何に悩んでいるのか、メンタルフォローをする
何に対して悩んでいるかなど、しっかりと話を聞いてあげましょう。
そのことが改善されれば引き止められる可能性があります。
スタッフの抱えている悩みを聞いてあげることで、その人のメンタルフォローに繋がり、心身ともにストレスが軽減されるでしょう。
また、引き止める際には本人がどのようなことをしたいか、といった内容をヒアリングすることで、本質的な問題点を理解してあげることが大切です。
長く働き続けてもらう職場つくりのために必要なこととは?
スタッフに長く職場に定着してもらうことは、人手不足の医療・介護業界ではとても大切なことです。
長く働き続けてもらうための職場つくりに必要なことをご紹介します。
定期的な研修で会社の理念を統一する
会社の理念を統一し、経営者側とスタッフの意見交換ができる場を定期的に設けることも大切です。
毎月全体会議を行い、理念の統一を徹底させましょう。
また、経営者が研修に参加することにより、スタッフとのコミュニケーションを活性化させるメリットも生まれます。
働く意欲を高める組織作り
スタッフが長く勤めたいと思う会社は、現場のニーズを汲み取ってくれる組織体制になっています。
そのためスタッフの満足度が高まり、人材確保にも繋がります。
経営者側は組織力の高いチームを構築するためにも現場のニーズがなんであるかを理解し、スタッフの課題を解決する環境作りを徹底的に意識し、環境改善の取り組みを実践することが重要です。
業務負担の軽減
医療・介護業界では、人材不足による業務負担が離職リスクを高めています。
業務負担を軽減することで、スタッフへの負担も取り除けるでしょう。
そのためには、スタッフの意見を取り入れて、業務効率化できる部分を探し出し、働きやすい職場作りに取り組むことがポイントです。
更にICTソリューションを導入して、介護以外の業務を移行するなども検討してみてください。
そうすると、スタッフは介護だけに集中して取り組めるので、業務負担の軽減にも繋がります。
まとめ
優秀な人材を確保するためには、スタッフが働きやすい職場作りを意識しなければなりません。
離職率を下げることも必要です。
離職率が高く人材の流動性が高い職場は、残っている人材も不安になってしまいやすいからです。
そのためには、経営者側が現場の声に耳を傾けることが重要です。
加えて、辞めたいというサインを見逃さないようにしましょう。
日頃からコミュニケーションを多くとるように心がけてください。
スタッフの満足度が高ければ高いほど、質の良いサービスが提供できます。
長く続けてくれる優秀な人材を育てるためにも、経営者側が良りよい環境作りに努めていくことが大切です。