「家族が認知症と診断された」「現在、認知症の家族を介護している」などで、今後の暮らしを考えて介護施設の利用を検討されている方も多いと思います。
そうした場合、認知症の方の住まいとして検討していただきたいのが、認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)です。なじみの空間で、お一人お一人にあった生活を送っていただけることが大きな特徴です。
この記事をお読みいただくことで、グループホームでの生活がどういったものか、より具体的にイメージを持っていただくことができると思います。
また、これからグループホームをお探しになる、という方向けに以下の内容も解説しています。
・グループホームでの一日の流れ
・他の介護施設と比べての特徴
・メリット・デメリット
・受けられるサービス内容
・グループホームの選び方のポイント
・入居までの流れ
グループホームの利用をお考えになっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは
認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)について、以下のように定義されています。
認知症(急性を除く)の高齢者に対して、共同生活住居で、家庭的な環境と地域住民との交流の下、入浴・排せつ・食事等の介護などの日常生活上の世話と機能訓練を行い、能力に応じ自立した日常生活を営めるようにするもの。
グループホームの生活について
グループホームでは、入居された方それぞれに寄り添った支援を行い、家庭的な雰囲気の中で日常生活を送っていただくことを大切にしています。
例えば、居住空間内にあるキッチンで、職員が入居者様にお手伝いを頂きながら一緒に調理を行う毎日の食事準備。ご飯の炊ける美味しそうな匂い、お鍋のぐつぐつ煮える音、台所で季節のお野菜を手に取り、思い出話をしながら下ごしらえをしたり。
一緒に集うリビングでの時間には、時節行事等も大切に、昔から日常にあたりまえにあった家庭の幸せな風景があふれ、それぞれに想い出される、慣れ親しんだ生活様式が守られる家庭的であたたかなぬくもりがあります。
入浴も個浴で入居者様に合わせたペースで、プライバシーを守りながら、リラックスしていただくことができます。
こうした家庭的な雰囲気の中に暮らしながら、できることを役割分担して担いながら、本人の有する能力に応じた「私らしい」自立した生活が送り続けられることを目指します。
そうすることで、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を刺激し、認知症の症状の進行を遅らせることができます。
グループホームの一日の流れ
グループホームの主な1日の流れをご紹介します。
6:00~7:30 | 起床・モーニングケア |
7:30~8:30 | 朝食 |
10:00~ | 体調確認 体操 お風呂 |
11:00~ | 昼食準備 家事活動、日課活動など |
12:00~ | 昼食 |
後片付け 休息 | |
15:00~ | おやつ 体操 レクリエーション |
お風呂 趣味活動等 | |
17:00~ | 夕食準備 |
17:30~18:30 | 夕食 |
後片付け | |
19:00~ | ナイトケア 入床 |
各々好きな時間の過ごし方をします。 | |
21:00~ | 消灯 |
上記はあくまで一例です。グループホームごとに大まかな一日の流れはありますが、ご本人の生活リズムを尊重し、その日の状況に合わせて臨機応変に対応することも多いです。
グループホームの特徴、メリット・デメリット
グループホームは認知症の方向けの介護施設です。そのため他の介護施設では難しい、認知症の方、個別に合わせたケア、生活支援をすることができます。特徴やメリット・デメリットについてご紹介します。
特徴
グループホームは少人数制(1ユニット5人~9人)を採用しており、手厚い職員配置により日常生活の介護や認知症ケアをきめ細やかに行うことができます。プライバシーを保てる個室も用意されています。この充実したサポート体制が、認知症の方の住まいとしてグループホームが選ばれる最大の理由です。
少人数での生活のため職員と入居者様同士が「なじみの関係」を築きやすく、家庭的な環境の中で、一人ひとりの特性や希望、趣向に合わせた介護や生活対応が行われます。こうした手厚いケアはグループホームならではのもので、他の介護施設ではむずかしいです。
グループホームでは、職員が各ユニットの台所で食事を調理し、温かい食事を提供します。とろみをつけたり、小さくカットしたり、食べやすいよう一人ひとりの状況に合わせた食事形態でご提供します。お皿、スプーン、はしなどの食器類も、一人ひとりに合わせたものをご用意。ご自分らしい生活を送っていただけます。
その他、排せつ、入浴等の介護全般、掃除、洗濯等の日常生活上のお世話も提供します。さらに、体操やレクリエーション等の機能訓練、認知症の行動・心理症状への専門的な対応も行います。
このように、権利や尊厳が保障される環境の中で、安心した日常生活を営めるよう介護スタッフとともに共同生活を送れることが他の介護施設との違いでもあり、グループホームの特徴です。
また、地域住民として地域交流活動にも積極的に関わりをもつグループホームも多く、活動地域における認知症ケアの拠点として、その機能を地域に展開しています。
メリット
グループホームは職員と入居者様が少人数で生活する空間です。「なじみの空間」で生活することで入居者様の心身の状態を穏やかに保ち、ご本人が自分らしく、生活者として主体性を持った暮らしを送ることができます。
入居者様同士、そしてご家族、職員も含めてアットホームな空間で「なじみの関係」を構築し、ゆっくりとした時の流れの中、入居者様一人ひとりの好みや要望に添って、それぞれのタイミングに合わせた24時間の介護サービスを受けることが出来ます。
デメリット
少人数での生活のため、いつも同じ方との穏やかな日常生活・共同生活の日々の繰り返しとなり、刺激が少ないと感じられたり、入居者様によっては、気の合う仲間を見つけにくいかもしれません。気が合わない人がいる場合には、ストレスを抱えてしまいやすいといったこともデメリットです。
また、グループホームは本来、医療的ケアを目的とした施設ではないため、看護師など医療職を配置していない場合も多く、対応できる医療ケアに限界があります。
入居時には医療ケアが必要なかった方であっても、年を経るごとに医療ケアが必要になるケースも考えられます。その場合、退去を求められるケースもありますので、事前にどういった状況になると退去を求められる可能性があるのか、といったことを確認しておくことが重要です。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の入居条件
グループホームに入居するための条件は以下の通りです。
・介護保険の認定を受けている、要支援2又は要介護1~5までの方
・医師から認知症の診断を受けた方
・共同生活を営むことに支障のない方
・65歳以上の方(65歳未満であっても若年性認知症と診断された方はグループホームにより入居できるケースも)
・グループホームと同一地域内(市町村)に住民票がある方
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は「地域密着型サービス」に分類されることから、グループホームが所在する市区町村に住民票を有していることが求められます。
グループホームで受けられるサービス
グループホームで受けられるサービスについて紹介します。施設によってサービス内容(ケアの方針)などには違いがありますので、一例としてご参考にしてみてください。
介護(認知症ケア)
グループホームではご本人の視点に立ち、ご本人を中心としたケア(パーソンセンタードケア)を中心として実践していきます。
まず、ご本人の健康状態や体調、心身の状態を把握します。光、音、色、物、臭いといった物的環境や、人的・社会的環境も含めて、多角的な視点でご本人が持つ独自の要因にも着目します。
このようにして、ご本人の症状や言動に向き合い、内面に気づき、必要なケアを調整しながら、日常生活の中で細やかな対応を行います。
さらに、過去の生活歴や職歴、家族構成、出身地、性格、地域性、人間関係などの情報を元に、大事にしていた日課や習慣、趣味、得意な活動や家事活動を理解します。
これらを基に、認知症ケアの知識を持つ職員がご本人に寄り添い、自分らしさを尊重した生活をサポートしていきます。
生活支援、医療に関する支援など
グループホームでは生活支援、医療に関しては以下のような支援を行っています。
・日常生活全般の支援(食事、排せつ、入浴介助など)
・家事全般の支援(調理、掃除、洗濯、シーツ交換など)
・日常生活全般の介護
・往診の手配と対応
・服薬管理
・介護保険の更新申請手続き
・ご家族への介護相談対応
職員が入居者様の方々を支援しながら、一人ひとりの能力に合わせた家事や洗濯など、生活上の役割を分担します。認知症の進行を遅らせる目的もありますが、これにより入居者様が活動的な生活を送れるよう配慮しています。
看取り介護(看取りケア)
2009年の介護報酬改定時にグループホームにおける「看取り介護加算」が設定されたことから、看取り介護を行うグループホームも増えてきています。
長期間の入居を予定している場合には、看取り介護(医療的ケア)に対応しているか確認されることをお勧めします。グループホームに看護師が配置されている、もしくは医療機関と提携している場合などには、看取り介護に対応している可能性が高いです。
慣れ親しんだグループホームで看取りケアを受けることができれば、穏やかに過ごせるでしょう。
グループホームの選び方のポイント
グループホームを選ぶ際に、ご家族やご本人にとって重視するポイントをあらかじめ確認しておくことが大切です。
グループホーム選びで重視するのは、費用なのか、建物のしつらえや設備、居室の広さや環境、手厚い介護なのか。すぐに逢える安心できる距離や立地、利便性・・・等々、施設選びで重視したいポイントをあげておきましょう。
その中から施設をピックアップし、複数の施設を見学。どこが希望に合っているかを比較することが大切です。
また、医療行為や通院対応、お看取りが可能かどうかも、ご本人の基礎疾患や意向から施設選びの重要なポイントとなります。
実際にグループホームに足を運んで施設の雰囲気、他の入居者や、働く職員の様子を確認しましょう。焦って決めず、しっかりと検討してから、ご本人やご家族の希望に沿っているグループホームに申し込みをすることが大切です。
費用
介護施設へ入居する場合、やはり重要なのは費用面です。グループホームに入居する場合、次の費用がかかります。
・初期費用(保証金や入居一時金)
・月額利用料(家賃、水光熱費等、食費など)
・介護保険の利用料(要介護度と個々の負担割合額に応じた金額)
費用はグループホームによって異なります。比較する際は費用面もしっかりと確認することをお勧めします。
入居にあたっては長期で住まうことを前提にされていると思います。特に月額利用料は毎月発生しますし、要介護度が変わると介護保険の利用料も変動する可能性があります。
そうしたことも考慮し、無理のない資金計画で長期にわたって入居できるグループホームを選ぶことが大切です。
入居者やスタッフの様子
グループホームを見学する際、入居されている方の年代や様子も確認していただきたいポイントです。既に入居されている方たちが落ち着いた生活をされているかどうか、表情は生き生きとしているか、入居者同士の交流はどうか。普段の生活が反映されるところですので、ぜひ参考にしてください。
働いているスタッフの様子、表情なども確認しておきたいポイントです。スタッフが入居者にどのようにコミュニケーションを取っているかどうかなどは入居後の生活をイメージするためにも重要です。
可能であれば、こうした入居者やスタッフの様子が見やすい、レクリエーションの時間など、比較的人が集まる時間帯に見学されることをお勧めします。
このように、見学中の入居者や職員との関わりの様子についてもチェックできると施設を比較しやすくなります。入居者の方々の表情が良いと感じるグループホームは、入居者とスタッフの関係性も良い可能性が高いです。
施設の設備で選ぶ
グループホームの建物は、戸建ての一般家屋を活用したホームもあれば、もともとあったアパートや寮などの建物を増改築しているホーム、幼稚園や保育所の併設型、又は複合高齢者施設の併設型まで、「しつらえ」も様々です。
ご本人の性格や過去の生活歴等から、ご本人に馴染み深い「しつらえ」を検討し、選ばれるのも一つの方法です。
グループホームを見学する際、施設の設備でチェックしたいポイントは以下などです。
・設備の充実度
・室内の明るさ
・居室の広さ
・居室以外に集う安心できる憩いの空間があるか
・居間・食堂・台所や入居者が調理を行う設備状況
・トイレは共同か個室内か
・浴室は個浴か大浴槽か、特殊浴槽も必要か
・エレベーターの有無
・バリアフリーの対応状況
・車いすや歩行器使用になっても暮らし続けられる環境かどうか
他には、医療行為が必要な場合には、医療ケアの対応範囲の確認も必須でしょう。受診通院・入院時の対応や、入院期間中のお部屋を待っていてもらえる期間等も、グループホームによって違いがあります。
事前にホームページやパンフレットなどの情報をチェックしておき、見学時に質問をされると良いでしょう。
複数のグループホームを見学・比較する
グループホームは入居定員が少ない分、空室数も少ないです。そのため、いざグループホームに入居したいと思った時に、空室のあるホームだけを見学して入居を決めてしてしまうケースもよく耳にします。
一度入居すると、簡単に他のグループホームに移る、といったことは難しいです。急ぎの場合であっても、しっかりとご本人やご家族の希望に合ったグループホームを選ぶことが大切となります。
グループホームを先々の暮らしに検討される可能性がある方は、満室であっても複数見学して比較し、希望に近いホームに申し込みをしておくことをお勧めします。
多数のグループホームを見学される方の場合、条件に叶っていても、最終的には実際に見学した時の第一印象、雰囲気や空気感、暮らしている方と職員から感じた印象を、最終判断の時の決定打にされる方が多くいらっしゃいます。
ご本人がホームの一員として「暮らしている姿のイメージ」がもてるかどうか。そこを大切に、これから先のお住まいを選択してみて下さい。
グループホームに入居するまでの流れ
グループホームに入居するまでの一般的な流れを紹介します。
グループホームへの申し込みは、原則として入所希望の施設に直接行います。
・希望の施設を探す
・施設へ問合せし、見学日時の予約をする
・見学をする
※初回は家族や親族だけでの見学をし、複数見学した中で選定したホームのみを後日、今度はご本人と一緒に見学することも可能です。
・入居申し込み(必要書類の提出)
・面談
※日常生活の様子や生活環境、暮らしに対する希望や想い等お話を伺います
・入居判定会議で入居が決定します
・入居の契約
・お引越し
※生活環境は、馴染みの物や作品、写真を飾ったり、使い慣れた家具や道具などを配置して、その方らしく、安心できる環境として整えます。
・入居日を迎え、グループホームでの暮らしがスタートします。
まとめ
グループホームとはどういった介護施設なのか、特徴や入居後の暮らしぶり、どんなサービスを受けられるのか、メリット・デメリットにはどんなものがあるのか、グループホームの選び方のポイントは何か、といったことをご紹介しました。
グループホームは「共同のおうち」です。ご本人にとっては特に長く住むおうち(場合によっては終の棲家)になりますので、ぜひ、複数のグループホームを見学し、しっかりと比較・検討し、できる限り希望に沿った、ご本人に合いそうなホームにお申込みになることをお勧めします。
高齢者の暮らしの場が様々に多様化する中で、生活の場選びに大変迷われる方が多くいらっしゃいます。とはいえ、認知症の方の施設選びでは、やはり認知症専門の介護施設であるグループホームを検討される方が多いと思います。
施設選びで忘れてはならないのは、グループホームに入って終わりではないということです。グループホームに入居してからのご本人とご家族との関係性、そして施設(ホーム介護者)。3者で各々の役割を担いながら、ご本人がその人らしく年を重ねながら暮らし続けられることが何より大切です。
この先の大切な時間を永くお暮しになるご本人にとって、そして共にサポートするご家族様にとっても、選択されたグループホームが「一番の安住の住まい」になっている、と感じられることが大切です。
本記事が少しでもグループホーム選びのご参考になりましたら幸いです。
この記事の監修者 | 日野浦 由果子 保有資格:介護福祉士、社会福祉主事 病院、老人保健施設での介護職勤務、グループホーム2事業所、デイサービスセンター2事業所の介護管理職を経て、高齢者複合型介護保険施設の施設長、特養2施設、複合型介護保険施設等を運営する法人で介護本部として業務に従事。 担当している仕事:高齢者複合型介護保険施設の運営管理、グループ内の各事業所におけるスーパーバイジング、外国人技能実習生の担当など。 仕事をする上で大切にしていること:尊敬、共感、相互信頼、相互協力、そして思いやりと感謝です。 趣味は:散歩、美味しいお店巡り |
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