2024年度の介護報酬改定によって創設された加算の1つに「協力医療機関連携加算」があります。同加算は、介護施設と協力医療機関との連携体制の構築を主な目的として創設されました。
新しい加算の取得は介護施設の収入に直結するため、「協力医療機関連携加算はどのような介護施設が算定できるの?」「詳しい算定要件や単位数を知りたい」とお考えの事務職員や管理者の方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、協力医療機関連携加算の算定で重要なポイントを解説します。
・協力医療機関連携加算の概要
・対象サービス別の加算要件と具体的な単位数
・算定する際の注意点
協力医療機関連携加算についてお調べになっている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
協力医療機関連携加算とは
協力医療機関連携加算とは、2024年度の介護報酬改定によって創設された加算です。
介護施設と協力医療機関との間の連携体制の構築を主な目的としており、入所者の現病歴等の情報共有を目的とした会議を定期的に開催することを評価する内容となります。
ここでいう協力医療機関とは、
・在宅療養支援病院
・在宅療養支援診療所
・地域包括ケア病棟(200床未満)を持つ医療機関
・在宅療養後方支援病院など
が挙げられており、施設から近距離であることが望ましいとされています。
なお、令和6年度診療報酬改定で創設される「地域包括医療病棟」は、2024年4月時点で協力医療機関に想定されていない点にご注意ください。
(参照:5.指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について (mhlw.go.jp))
協力医療機関連携加算の対象サービス種別
協力医療機関連携加算の対象となる介護施設は、以下の通りです。
・地域密着型を含む介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・介護老人保健施設
・地域密着型を含む特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど)
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・介護医療院
特定施設入居者生活介護では、これまで医療機関連携加算(80単位/月)が設けられていましたが、2024年度の報酬改定後は協力医療機関連携加算に変更となります。
(参照:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について1. (3)⑳ 協力医療機関との定期的な会議の実施)
協力医療機関連携加算の算定要件
協力医療機関連携加算の算定要件は、以下の通りです。
協力医療機関との間で、入所者等の同意を得て、当該入所者等の病歴等の情報を共有する会議を定期的に開催していること。
「定期的に開催」とは、概ね月に1回以上の開催と考えられています。ただし、電子的システムにより、協力医療機関と事業所との間で入居者の情報を随時確認できる体制が確保されている場合は、「定期的に年3回以上の開催」も認める扱いとなります。
(参照:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月19日)問3)
なお、「協力医療機関へ診療の求めを行う可能性の高い入居者」がいる場合は、より高い頻度での情報共有等を行う会議を実施することが望ましい、とされています。
入所者の病歴等の情報を共有する会議に出席する職種について、具体的な職種の指定はありません。
「入所者の病歴その他健康に関する情報を協力医療機関の担当者に説明でき、急変時等における当該協力医療機関との対応を確認できる者」が出席することとなります。
協力医療機関連携加算の単位数
協力医療機関連携加算の単位数は、介護施設の種類と協力医療機関の要件を満たした数によって異なります。
以下の介護施設に分けて、それぞれの単位数と要件を確認しましょう。
1.介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院
2.特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護
1.介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院の場合
介護老人福祉施設(地域密着型を含む)介護老人保健施設、介護医療院が協力医療機関連携加算を取得する場合の単位数は下表の通りです。
協力医療機関が①と②の要件を満たす場合 | 100単位/月(2024年度)※ |
それ以外の場合 | 5単位/月 |
※2025年度以降は、50単位/月
協力医療機関の要件は、以下の通りです。
① 入所者の病状が急変した場合等において、医師又は看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること。
② 診療の求めがあった場合において、診療を行う体制を常時確保していること。
③ 入所者の病状の急変が生じた場合等において、当該施設の医師又は協力医療機関その他の医療機関の医師が診療を行
い、入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。
介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院が協力医療機関連携加算を算定する場合、上記①から③の協力医療機関の要件を満たすと、100単位/月となります。それ以外の場合は、5単位/月となります。
2.特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護の場合
特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護が協力医療機関連携加算を取得する場合の単位数は下表の通りです。
協力医療機関が①と②の要件を満たす場合 | 100単位/月 |
それ以外の場合 | 40単位/月 |
特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護の場合、「入院できる体制の確保」は協力医療機関の要件に含まれません。
協力医療機関連携加算の注意点
協力医療機関連携加算を算定する際の注意点は下記の通りです。
・グループホームのショートステイ利用者は対象外
・要支援2の方の算定は不可
グループホームのショートステイなど、居宅サービスを利用している方の情報共有は居宅サービスのケアマネージャー等が行うものとされています。したがって、グループホームのショートステイ利用者は、協力医療機関連携加算の対象外となります。
要支援2の認定を受けた方は、介護予防認知症対応型共同生活介護の対象となります。しかし、協力医療機関連携加算は設けられていないため、グループホームに入所されている要支援2の方の算定は不可となります。
(参考:令和6年度介護報酬改定に関する Q&A (Vol.1)(令和6年3月15 日)問151、問152)
また、協力医療機関を複数定めている場合、協力医療機関連携加算の算定にあたる定期的な会議は、当該医療機関のうち 1 つの医療機関と行うことで差し支えありません。
(参考:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月19日)問13)
協力医療機関連携加算 Q&A
協力医療機関連携加算についてのQ&Aをピックアップしています。
問1 協力医療機関連携加算について、「入所者の同意を得て、当該入所者の病歴等の
情報を共有する会議を定期的に開催している場合」とあるが、病歴等の情報を協力
医療機関と共有することに同意が得られない者に対して算定できるか。(答)
協力医療機関連携加算は、高齢者施設等と協力医療機関との実効性のある連携体制を
構築することを目的とした体制加算であり、入所者全員について算定されるもの。なお、
協力医療機関に対して病歴等の情報を共有することについて同意が得られない入所者で
あっても、当該入所者の急変時等において協力医療機関による診療等が受けられるよう
取り組むことが必要。
まとめ
協力医療機関連携加算は、介護施設と協力医療機関との連携体制の構築を主な目的として創設されました。地域密着型を含む介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などが対象施設となります。
算定にあたっては、入居者の病歴等の情報を、定期的な会議の開催で共有することなどが必須要件です。
本記事で解説した注意事項などに注意していただき、正しく協力医療機関連携加算を算定しましょう。
この記事の執筆者 | 千葉拓未 所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級) 専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。 以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。 生活相談員として5年間の勤務実績あり。 利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。 現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、 Webライターとして活躍している。 |
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