医療従事者や介護従事者は、患者さんやサービス利用者さんを支援する中でさまざまな職種と連携をはかります。
連携する職種の1つが医療事務従事者です。
病院やクリニックの受付や会計での業務がメインだと思われがちですが、業務内容は多岐にわたります。
この記事では、医療事務の仕事内容・主な勤務先・医療事務のやりがいや大変さなどについて詳しく解説します。
この記事を読むことで、今後の連携の助けになれば幸いです。
医療事務の仕事内容
ひとことで「医療事務」といっても、その仕事内容はさまざまです。
ここでは医療事務の仕事として、主な業務を4つご紹介します。
1.受付業務
病院を受診した患者さんから保険証や診察券を受け取り、病状を確認します。
患者さんが初診であれば問診表への記入を依頼し、診察券やカルテも発行します。
診察の順番が来たら患者さんを診察室や待合室に案内します。
外部からの問い合わせ電話にも対応しなくてはなりません。
受付は患者さんが病院内で最初に出会う人でもあり、「病院の顔」とも言える重要な役割を担うのです。
2.会計業務
患者さんの診察が終了した後に行われるのが、医療費の支払いです。
カルテをもとに、患者さんが受けた診察や検査、治療内容を確認の上、診療報酬点数表や患者さんの医療保険情報により請求金額を出します。
会計時には、領収書・処方箋・次回の予約表を渡したり、保険証・診察券・おくすり手帳などを返却したりすることも必要です。
お金を扱うので正確な業務が求められますが、「お大事になさってください」など、丁寧な言葉かけや心遣いも必要になってきます。
3.レセプト業務
レセプトとは、「診療報酬明細書」のことです。
外来で患者さんが支払う医療費は1~3割の自己負担額であり、残りの医療費は健康保険組合に請求しなくてはいけません。
健康保険組合に請求するために必要な書類がレセプトです。
レセプト業務とは、診療報酬明細書を作成・確認を行い各種健康保険組合に提出するまでの一連の業務をいいます。
当月分のレセプトは翌月10日までに請求しなければなりません。
そのため月初めは、医療事務にとって多忙な時期です。
4.クラーク業務
クラーク業務は外来クラークと病棟クラークに分かれます。
外来クラークの仕事は「1.受付業務」「2.会計業務」と重複することが多いため、ここでは主に病棟クラークについて解説します。
病棟クラークは、入院患者さんと病棟の橋渡し的存在です。
基本的に、病棟や病院事務室に在籍して業務を行います。
主な業務としては、
・入退院時の手続き
・カルテや食事伝票などの書類管理
・医療費に関する説明
・ナースステーションでの電話対応
・面会者対応
などがあげられます。
未経験でも働けるか
医療事務は、特別な経験や資格がなくても働けます。
しかし、特に働き始めのころは覚えることが多く大変です。
未経験の人はそのことを知っておきましょう。
医療事務は覚えることが多いため、独学または通信講座で資格を取ってから働く人も多い状況です。
また資格とは別に、基本的なパソコンスキル・コミュニケーションスキルなどが求められます。
医療事務に関する主な資格としては、以下のようなものがあります。
・医療事務技能審査試験
・医療事務管理士
・診療報酬請求事務能力認定試験
・医療事務認定実務者(R)
医療事務の主な勤務先
病院やクリニックでの勤務というイメージが強い医療事務ですが、それ以外の勤務先もあります。
ここでは、主な勤務先を4つご紹介します。
1.病院
病院とは、入院できるベッド数が20床以上ある医療施設です。
複数の診療科があり、患者さんの数も多いのが特徴になります。
大きな病院では、外来の医療事務でも、受付・保険証確認・カルテ確認・会計など担当が分かれていることが多い状況です。
2.診療所(クリニック)
診療所は、入院できるベッド数が19床以下の医療施設です。
「〇〇医院」と呼ばれる医療機関も診療所に含まれます。
小規模な医療施設なので、外来の受付業務全般を担当することが多いのが特徴です。
3.健診センター
健診センターは、生活習慣病やがんなどの病気を早期に発見するための検査を行う機関です。
医療機関と同じく、受付・保険証や問診表の確認・来所者への案内・会計などの業務を行います。
大規模な健診センターでは、病院同様に担当が分かれていることが多い状況です。
4.訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、在宅療養中の患者さんの自宅を看護師が訪問し、看護や医療的ケアを行うための拠点です。
医療事務が直接患者さんと接することはあまり多くありません。
主な業務としては、
・レセプト業務
・看護師の訪問スケジュール作成
・書類や物品の管理
・電話対応
などがあげられます。
医療事務のやりがい及びメリット
さまざまな場所で働く医療事務は、やりがいが多い仕事といえます。
また、医療事務という職業ならではのメリットもあるのです。
1.感謝の言葉をかけられることが多い
医療事務は患者さんと身近に接することが多い仕事です。
外来患者さんが帰宅されるときや入院患者さんが退院されるとき、「ありがとう」と感謝の言葉をかけられる場面も多くあります。
このような場面で人の役に立てたというやりがいを感じられるでしょう。
2.医療費及び医療に関係する知識を得られる
診療報酬や各種健康保険制度の仕組み・カルテの見方など医療費に関係する知識などを得ることができます。
また、医療機関で医師や看護師とともに働くうちに、治療や検査・薬に関する知識も自然と身につくのもメリットです。
3.全国どこででも働ける
医療機関は全国にあるので、必要な知識があればどこでも働くことが可能です。
結婚や転居などで環境が変わっても、その環境の中で就職先を見つけやすいといえるでしょう。
一度医療事務として経験を積めば、より再就職しやすいといえます。
医療事務の大変なところ
やりがいも多い医療事務だが、働く中では大変なことも多くあります。
ここではそのうち3点をご紹介します。
1.さまざまな業務があり、覚えるのが大変
受付・会計・レセプト・クラークなどさまざまな業務があり、特に未経験者は、業務を覚えるまでが大変です。
1つ1つの業務において、専門用語や数字(主に診療報酬)などが多いのも仕事が大変な要因といえます。
また診療報酬は2年に1度改定されるので、改定ごとに覚える必要があるのです。
2.患者さんからクレームを受けることもある
特に外来では、患者さんが受付や会計で長い時間待つことも多くなります。
その場合、クレームを受けやすいのが、患者さんの近くにいる医療事務従事者です。
3.感染症リスクがある
主な勤務先が医療機関であるため、インフルエンザ・新型コロナウイルス・感染性胃腸炎など、感染症の患者さんとも多く接することになります。
そのため、知らず知らずのうちに自分が感染症にかかるというリスクがあるのです。
医療事務に向いている人
医療事務の仕事はやりがいもあるが、業務量も多く大変な仕事でもあります。
では、どのような人が医療事務に向いているのでしょうか。医療事務に向いている人の特徴を5つ解説します。
1.コミュニケーション能力が高い人
医療事務は、患者さんと数多く接する以外にも、医師や看護師、他の医療従事者との関わりも必要です。
そのため、明るく思いやりをもって他者とコミュニケーションをとれる人が医療事務向きといえるでしょう。
2.臨機応変な対応ができる人
患者さんとひとくちに言っても、子どもからお年寄りまでさまざまな年齢層や病気の人がいます。
そのため病院では、その人の状態に合わせた臨機応変な対応が求められます。
患者さんからクレームを受けた場合でも、その人の訴えを丁寧に聞き、的確に対応をする必要があるのです。
3.数字を扱うのが得意な人
医療事務は会計業務でのお金の計算やレセプト作成など、数字を扱うことが多い仕事です。
そのため、数字を扱うのが得意・もしくは苦にならない人が向いています。
残念ながら、極端に数字が苦手な人には向いていない仕事でしょう。
4.学習意欲や向上心がある人
医療事務は専門用語や診療報酬の数字など覚えることが多くあります。
働き始めのころはなおさらです。
早く業務を覚えるためにも、自主的に学習できる意欲や向上心がある人が医療事務向きであるといえます。
5.几帳面で正確な仕事ができる人
医療事務では患者さんの個人情報も数多く扱います。
書類を常に整理整頓し、重要書類を紛失しないことが必須です。
もし紛失してしまうと、最悪の場合個人情報漏洩につながるので常に注意していなくてはなりません。
また、レセプト業務では毎月10日までにレセプトを作成・点検して健康保険組合に請求する必要があります。
そのため、正確かつ早く仕事を行える人が医療事務向きといえるでしょう。
まとめ
この記事では医療事務の仕事内容や主な勤務先、やりがいと大変さについてご紹介しました。
職種こそ違いますが、医療機関や介護施設で働く人との共通点も多いのが医療事務です。
医療事務の仕事内容などを詳しく知っておくことで、今後の業務にも役立つ可能性が高いといえます。
この記事をきっかけに、医療事務をはじめとした他職種のことも知識として入れてみてはいかがでしょうか。
この記事の執筆者 | 古賀優美子 保有資格: 看護師 保健師 福祉住環境コーディネーター2級 薬機法管理者 保健師として約15年勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護保険などの業務を経験。 地域包括支援センター業務やケアマネージャー業務の経験もあり。 高齢者デイサービス介護員としても6年の勤務経験あり。 現在は知識と経験を生かして専業ライターとして活動中。 |
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