脳機能の維持・向上やコミュニケーションの促進など、さまざまな効果が期待されている脳トレ。デイサービスやデイケアに勤める介護職員なら、利用者に喜ばれるような脳トレやレクリエーションを実施したいですよね。
しかし、毎日のようにレクリエーションを行っていると、どうしてもネタが枯渇してしまったりマンネリ化してしまったりして、思うように実施できない場面も出てくるでしょう。
そこで今回は、はじめにデイサービスで脳トレやレクリエーションを実施する理由を解説したうえで、おすすめの脳トレやレクリエーションを6つ紹介します。脳トレを行うにあたり準備するものやレクの流れ、利用者に喜ばれるコツもお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
デイサービスで脳トレやレクリエーションを実施する理由
デイサービスで脳トレやレクリエーションを実施する理由として、利用者の日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)の維持・向上が挙げられます。
ADLとは、歩く、着替える、お風呂に入るといった基本的な生活動作のこと。IADLとは、買い物、食事の支度、洗濯といったADLより複雑な生活動作のことです。
両者は、その方が住み慣れた地域や居宅で安心して暮らしていくために必要な動作です。
これらの生活動作を維持・向上させるためには、考えたり想像したりして脳の機能を使うことが重要です。脳トレやレクリエーションには、脳機能の維持・向上やコミュニケーションの促進効果などが期待されています。
そこで、デイサービスやデイケアは脳トレ・レクリエーションを実施して、利用者にADLやIADLの維持・向上する機会を提供しているのです。
デイサービスの脳トレやレクリエーションに期待できる効果
デイサービスで行う脳トレやレクリエーションについて、具体的な効果を3つみていきましょう。
脳機能の維持・向上
脳トレやレクリエーションにとり組むと、クイズの意味や正解について考えることになります。その際に、集中力、発想力、記憶力、判断力といった脳のさまざまな機能が活用されるため、脳機能の維持・向上を期待できるのです。
例えば、クイズの説明を聞く際には集中力や思考力が必要になりますし、正解を導き出す際には発想力が求められます。仮に問題に正解できなかったとしても、脳トレに参加するだけで十分な効果を期待できるのです。
コミュニケーションの促進
脳トレやレクリエーションには、利用者同士のコミュニケーションを促進する効果もあります。ほかの利用者と同じ場所で同じ問題に取り組むため、自然にコミュニケーションが進むのです。
脳トレやレクリエーションを通じて顔見知りの知り合いができれば、孤立感の解消にもつながります。
日常生活における意欲の向上
脳に新たな刺激を受けたり顔なじみの知り合いができたりすると、自宅に帰ってからの行動にプラスの変化が起きるかもしれません。
食欲がわいたり「ちょっと外出してみよう」という気になったりして、これまでより行動的になるでしょう。日常生活における意欲の向上は、QOL(Quality of life)の向上にもつながります。
デイサービスにおすすめの脳トレやレクリエーション6選
おすすめの脳トレやレクリエーションを6つ解説します。比較的準備が容易なもの、レクが苦手な介護職員でも実施しやすいものをまとめました。
準備するもの、レクの流れ、喜ばれるコツ、注意点についても解説しますので参考にしてみてください。
準備体操にもおすすめ!拮抗体操
拮抗(きっこう)体操とは、右手と左手に別の動きをさせる体操のことです。拮抗運動とも呼ばれています。
一定のルールを設けて腕や指などを動かすことで、脳の活性化を促します。
【準備するもの】
椅子
【レクの流れ】
職員のお手本が見えるように、職員と利用者が向かい合うように椅子を配置しましょう。参加人数が少ない場合は、丸い円にして座ってもらっても構いません。
職員と利用者が座席についたら、以下のようにお題を出して拮抗体操をはじめます。
お題「右手と左手で図形を描いてみましょう」
①難易度 低
「まずは右手で丸を描いてください。続いて、右手で丸を描いたまま同時に左手で丸を描いてみましょう」
②難易度 中
「まずは右手で丸を描いてください。続いて、右手で丸を描いたまま同時に左手で数字の1を描いてみましょう」
③難易度 高
「まずは右手で丸を描いてください。続いて、右手で丸を描いたまま同時に左手で三角を描いてみましょう」
実施の際は、難易度を徐々に高くしていきましょう。参考までに他のお題も紹介します。
お題「自分の太ももを叩いたりさすったりしてあげましょう」
難易度 低
「右手で自分の太ももを叩いてください。続いて、太ももを叩いたままで同時に左で自分の太ももをさすってあげましょう。」
お題②「グーとパーを交互に出していきましょう」
難易度 高
まずは、パターンAとパターンBを利用者に覚えていただきます。
パターンA「まずは右手をグーにして自分の右胸にあててください。そのままで、今度は左手をパーにして前に突き出します。」
パターンB「今度はさっきと反対です。左手をグーにして自分の左胸にあててください。そのままで、今度は右手をパーにして前に突き出します。」
パターンAとパターンBを繰り返す「私が掛け声を出したら、右手と左手を入れ替えてくださいね。自分の胸にあてるのがグー、前に突き出すのがパーですよ。ではいってみましょう」
職員は利用者から見える位置に立ちましょう。お手本がよく見えるように、立って行う方法がおすすめです。利用者が「失敗しないようにしなきゃ」と緊張してしまうと楽しめなくなってしまいます。職員がわざと間違えると、利用者はリラックスして取り組めるようになりますよ。
利用者同士が接触しないように、席と席の間隔にご注意ください。また、座位のバランスがとりにくい方の近くには職員が必ずついて、転落やずり落ちを防止しましょう。
体も一緒に動かして脳を活性化!条件付きクイズ
条件付きクイズは、体を動かしながら脳の活性化を促せるレクリエーションです。職員の掛け声にあわせて、利用者に体でポーズをとってもらいます。
【準備するもの】
椅子
【レクの流れ】
職員のお手本が見えるように、職員と利用者が向かい合うように椅子を配置しましょう。はじめに職員の掛け声にあわせて、3つのポーズを利用者に覚えてもらいます。
職員の掛け声 | 利用者のポーズ |
いち! | 拍手 |
にい! | バンザイ |
さん! | 両足を広げる |
上記のポーズを覚えてもらったら、実際に「いち!」から順番に掛け声をかけていきます。利用者が慣れてきたら、今度は掛け声をランダムにしてみましょう。
リズムよく行うと動作に集中しやすくなります。アップテンポな音楽をBGMにしてもよいでしょう。
動作中に利用者が椅子からずり落ちないように、全体の様子を見守る職員を配置しましょう。
昔なつかしい音楽を活用する音楽体操
音楽体操は、民謡、童謡、昭和の歌謡曲といった高齢者にとってなつかしい音楽を活用する体操です。音楽にあわせて手を叩いたり足を鳴らしたりすることで、脳の活性化を促します。
【準備するもの】
・音楽プレイヤー
・CDなどの音源
・ホワイトボードまたは歌詞カード※
・楽器があればなお可
※ 曲の歌詞に、〇「手を叩く」△「太ももを叩く」□「足を鳴らす」といったマークをつけた歌詞カードを用意しましょう。歌詞カードを用意するのが大変な場合は、ホワイトボードに直接歌詞を記入しても問題ありません。
例えば「われは海の子」をお題にした場合、歌詞カードは以下のように作成します。
我は海の子 白波の 〇(手を叩く)
さわぐいそべの 松原に △(太ももを叩く)
煙たなびく とまやこそ □(足を鳴らす)
わがなつかしき 住家なれ
レクの流れ
1.音楽プレイヤーから音楽を流す
2.音楽と歌詞カードのマークにあわせて、体を動かす
音楽を流して「白波の」まできたら、手を叩きます。「松原に」まできたら太ももを叩きましょう。「とまやこそ」まできたら、地面を足で踏んで音を鳴らします。
曲の一部分だけ流して練習するのもよいでしょう。最後に1曲通して行うことで、利用者に達成感を覚えてもらえます。
利用者に一緒に歌ってもらうことで発声の訓練にもなります。昔を思い出してなつかしむ効果も期待できるでしょう。選曲の際は、参加者の年齢層にあわせて選んでみてください。
歌詞カードの歌詞やホワイトボードに記載する文字は、利用者が読みやすいように、できるだけ大きな文字で記載しましょう。
手作りカードで誰でも参加!神経衰弱
高齢者でも参加しやすいようにアレンジしたレクリエーションです。四角、丸、三角などの簡単な図形が記載されたカードを手作りします。
記憶力や集中力を鍛えるのに役立つレクリエーションです。
【準備するもの】
椅子
テーブル
手作りカード※
※ 手作りカードは、高齢者がつかんだり裏返したりできるように、縦15cm横15cmの厚手の画用紙を用意しましょう。その他の注意点がこちらです。
・色で区別がつくように色付きの図形を画用紙に書き込む
・同じ図形が記載されたカードを2枚1組で用意する
・2枚1組のカードを5種類以上用意する
【レクの流れ】
1.2枚1組の手作りカードをテーブルに裏返しで並べる
2.利用者にテーブルの周りに移動してもらう
■1対1で行う場合
1.利用者同士でじゃんけんをしてもらい、先攻後攻を決める
2.先攻の利用者がカードを2枚めくる
3.図形があったら獲得。もう一度カードをめくる
4.違う図形が出たら、後攻がカードをめくる
5.カードがなくなるまで続ける
■2人チームで行う場合
神経衰弱ゲームは、2人1組のチーム戦も可能です。AチームとBチームで神経衰弱ゲームを行った場合をみてみましょう。
1.利用者2人1組のAチームとBチームを作る
2.AチームとBチームでじゃんけんをしてもらい、先攻後攻を決める
3.(Aチームが勝った場合)Aチームの利用者が1枚目のカードをめくる
4.Aチームにいるもう1人の利用者がもう1枚のカードをめくる
5.図形があったら獲得。もう一度カードをめくる
6.違う図形が出たら、後攻のBチームがカードをめくる
7.カードがなくなるまで続ける
手作りカードを増やすことで、神経衰弱の難易度が上がります。「これじゃ簡単だよ」「もっとむずかしくしてもいいよ」といった声が聞かれたら、カードの種類を増やしてみましょう。
椅子からの転落を防止するために、座位が不安定な利用者のそばに職員を配置しましょう。手作りカードがテーブルから落ちた場合、利用者が拾おうとして転落するおそれがあります。また、カードをうまくめくれない利用者がいる場合は、職員が代わりにめくってあげましょう。
意外とむずかしい!後出しじゃんけん
後出しじゃんけんは、その場ですぐにとり組めるレクリエーションです。「後出しで、私にわざと負けてください」「私が出してから、あいこにしてください」と一定のルールを設けることで、意外と歯ごたえのあるレクになります。
思わずレクの時間が空いてしまったときや本格的なレク導入前の準備体操として活用するのもおすすめです。
【準備するもの】
椅子
【レクの流れ】
はじめに「じゃんけんぽん!で、私が出したものに後出しで勝ってください」と伝えます。5回くらい後出しじゃんけんを行いましょう。
続いて「今度は私が出したものに、後出しで負けてください」と伝えます。例えば、職員がグーを出せば、利用者はグーを確認して、グーに負けるチョキを出さなくてはいけません。
これも5回くらい行いましょう。
最後に「私が出したものと、あいこにしてください」と伝えます。
以上の3つのパターンをランダムに組みあわせて行うと、難易度を高められます。
利用者が慣れてきたら、じゃんけんのスピードを早めて難易度を高くしてみましょう。判断の時間が短くなるため、よい刺激になります。
後出しじゃんけんの本番をはじめる前は、ゆっくりとしたスピードで練習を行いましょう。
とり組みやすさがウリ!ことわざクイズ
ことわざクイズは「郷に入っては郷に従え」「猿も木から落ちる」といったことわざをクイズ形式にしたレクリエーションです。有名なことわざを上の句と下の句に分けてクイズ形式にすることで、気軽にとり組めるようになります。
【準備するもの】
椅子
ホワイトボード
【レクの流れ】
■全体で行う場合
1.利用者をホワイトボードの前に誘導する
2.ホワイトボードにことわざの上の句を記入して読み上げる
3.「では、この言葉のあとに続くのはなんですか?」と質問する
4.下の句を利用者にあててもらう
5.正解したら次の問題へうつる
■利用者同士で行う場合
1.利用者同士で横並びに座ってもらう
2.職員が上の句を読み上げる
3.利用者に下の句をあててもらう
4.早く下の句を答えた方の勝ち
■利用者同士で協力して行う場合
1.利用者同士で横並びに座ってもらう
2.A利用者にことわざの上の句を答えてもらう
3.B利用者にことわざの下の句をあててもらう
4.正解したら、今度はB利用者に上の句を答えてもらう
上の句が記載されたカードと下の句のカードの2枚を用意しておくと、スムーズな進行につながるでしょう。利用者がことわざに詰まったときは、職員から「あ、からはじまる言葉ですよ!」「動物が登場します」といったヒントを出してみてください。
「皆さんもヒントを出してあげてください!」と他の利用者にヒントを伝えてもらうのも盛り上げるポイントです。
ことわざがなかなか出てこない利用者もいるかと思います。その際は、見学している利用者に「ゆっくり考えてもらいましょう」と一声かけてみてください。
デイサービスの利用者に喜んでもらう3つのポイント
ここまで脳トレやレクごとに喜んでもらうポイントを解説していきましたが、レクリエーション全般について、利用者に喜んでもらうポイントを3つ紹介します。
参加する利用者の特徴にあわせる
レクリエーションの種類や難易度は、その日に参加する利用者の特徴にあわせましょう。利用者の特徴は、年齢層、男女の比率、要介護度などが参考になります。
例えば、比較的年齢の若い方や要介護度の軽い方が多い日は問題の難易度を高めてもよいでしょう。反対に、要介護度の高い方や高齢の方が多いときは、ルールのわかりやすいレクリエーションが喜ばれるでしょう。
レクリエーションの目的や効果を説明する
はじめにレクリエーションの目的や効果を説明することで、参加者の気持ちをグッとこちらに引き寄せられます。
レクリエーションの説明をする際に、「このレクリエーションに参加すると、考える力が鍛えられますよ」と伝えてみてください。目的や効果を説明しない場合よりも、利用者の興味をひきつけられるはずです。
また、利用者が参加する際に、「○○さんならきっと答えられる!」「期待していますよ」などと声掛けする方法も、本人のやる気を引き出すのに有効です。
評価・改善を繰り返していく
脳トレやレクリエーション実施後、実施中の様子を振り返って評価・改善を行いましょう。振り返りをする際は、以下の項目に注目してみてください。
・利用者の反応
・利用者の参加率
・問題の正解率
・レク開始から終了までにかかった時間
既存のレクを評価・改善することで、より利用者にあった内容に改善できますよ。
デイサービスの職員の負担を減らすためのコツは3つ
脳トレやレクリエーションは、デイサービスで毎日のように実施されています。実施する職員の負担を減らすコツを3つみていきましょう。
2人以上の職員で担当する
脳トレやレクリエーションは、2人以上の職員で担当しましょう。1人の職員に司会進行から利用者対応まで任せると負担が大きくなります。
例えば、A職員が司会進行を担当するとしたら、もう1人のB職員には利用者対応を任せましょう。職員が3人以上いるときは、盛り上げ役の職員を設けると、利用者に喜ばれるような雰囲気を作りながら現場の安全確保が可能になりますよ。
また、同じ職員にレクを任せ続けるとマンネリ化の原因になるおそれも。レクの担当者をローテーションさせることで、職員の個性を生かすような脳トレやレクリエーションが実施できます。
既存のネタを上手に使う
毎回、レクリエーションに違うネタを用意するのは大変な作業です。人気のあるネタを残したり既存のネタを工夫したりして上手に活用しましょう。
レクリエーションの実施方法や評価記録を紙やデータで残しておくと、新入職員が入職した際の引継ぎに役立ちます。引継ぎに役立つ項目がこちらです。
・レクリエーション名
・準備するもの
・レクの流れ
・参加できる利用者の人数
・実施に必要な職員の人数
・事故を防ぐための注意点
・盛り上げるコツ喜ばれるポイントなど
ホワイトボードを活用する
ホワイトボードを活用することで、ホワイトボードに問題やヒントを記載できるようになるため、職員の負担軽減につながります。
新たにホワイトボードを導入する際は、一定の購入費用が発生してしまいますが、即効性を期待できる点は大きなメリットです。そのほかのメリットがこちらです。
・利用者の注目を集められる
・イラストや表を活用できる
・用意や後片付けが簡単
ホワイトボードを活用したレクリエーションの実施方法やポイントについては、こちらの記事もご覧ください。
まとめ
デイサービスにおすすめの脳トレやレクリエーションを解説してきましたが、気になるものは見つかったでしょうか。
脳トレやレクリエーションで利用者に喜んでもらうために、職員も利用者と一緒に楽しんでみましょう。職員が笑ったり悔しがったりすることで、利用者もつられて感情を出してくれますよ。本記事が、デイサービスやデイケアではたらく皆さんのお役に立てば幸いです。
この記事の執筆者 | 千葉拓未 所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級) 専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。 以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。 生活相談員として5年間の勤務実績あり。 利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。 現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、 Webライターとして活躍している。 |
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