デイサービスにおいて、心身機能の維持・向上、脳の活性化、孤立感の解消などを目的に毎日のように開催されている「レクリエーション」。
住み慣れた自宅や地域で暮らしていきたいという利用者のニーズに応えるためにも、レクリエーションは、デイサービスにおいて重要な業務です。
しかし、「新しいレクを考えるのが大変…」「レクを開催しても盛り上がらない…」といったお悩みを抱えている担当職員も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、デイサービスで面白くて盛り上がるレクリエーションを5つ紹介します。
レクリエーションの目的やレクを盛り上げるコツについても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
デイサービスのレクリエーションの概要と目的
レクリエーションとは、仕事・勉学などの疲れをいやし、心身の活力を養うための休養・娯楽を意味します。
私たちが仕事を終えてから、趣味を楽しんだり休養をとったりすることも、広義の意味ではレクリエーションになるわけです。
そして介護施設のレクリエーションとは、利用者の心身機能の維持・向上などを目的として、楽しみながら取り組めるように工夫されたものといえます。
介護職員が中心となって、企画をたてたり小道具を準備したり、さらに司会進行まで行うことで、利用者が参加しやすい活動を提供しているのです。
レクリエーションの目的
レクリエーションの主な目的は、
「心身機能の維持向上」
「脳の活性化」
「孤立感の解消」
です。
体を動かすレクリエーションは、心身機能の維持・向上につながりますし、頭を使うレクリエーションは脳の活性化に役立ちます。
グループで取り組むレクリエーションであれば、利用者同士がコミュニケーションの機会を持てるため、孤立感の解消につながるでしょう。
介護を必要とする高齢者が、これからも自宅や住み慣れた地域で安心して暮らしていくために、私たち介護職はレクリエーションを通じてこれらの目標達成をサポートしているといえます。
厚生労働省の通所介護の資料には、以下のように掲載されています。
<通所介護の基本方針>
”通所介護の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。”
デイサービスでレクリエーションを行うメリット
続いてデイサービスのでレクリエーションを行う具体的なメリットをみていきましょう。
メリットを詳しく知ることで介護職員としてレクに積極的に関わる意識を持つことができれば、さらにレクリエーションの効果を高められるようになりますよ。
コミュニケーション促進に役立つ
利用者同士の交流を促す方法として、レクリエーションが効果的です。
利用者がレクリエーションに参加して、会話を交わしたり一緒にゲームに取り組むことで、自然とコミュニケーションの機会を持てるようになるでしょう。
レクリエーションによって、職員と利用者の距離感が縮まることもあります。
利用者に対して、レクの手順やコツを説明していくうちに、自然と利用者と交流できるのです。
そのため「利用者と打ち解けたい」というデイサービスの新入職員は、レクの補助役からはじめてもよいかもしれません。
気分転換になる
レクリエーションに参加することで、気分転換を図れる利用者も数多く存在します。
職員の説明に耳を傾けて、レクのルールや手順を確認しているうちに、悩みや不安から少し距離をおけるようになるからです。
この記事を読んでいるあなたも、
「何か1つのことに夢中になっているうちに、いつの間にか悩みや不安を忘れていた」
という経験を持ったことはありませんか?
人間の脳は同時にいくつものことを考えられないようにできています。
そのため介護施設のレクリエーションが、デイ利用者の気分の安定にあたえる影響も大きいのです。
体を使う活動に参加して筋肉や神経を動かす方法も、気持ちを切り替えるために効果を発揮します。
楽しみながら心身機能の維持・向上に取り組める
レクリエーションの難易度は、職員の工夫によって自在に調節できます。
やり方やルールを簡潔にすれば、疾病や障がいのある利用者も含めて、大勢で楽しみながら心身機能の維持・向上に取り組めるでしょう。
例えば、風船を活用した風船バレーは、風船を利用者同士で打ち合う簡単なルールのゲームですが、上手に打てる人とそうではない人がいます。
そこで、握力がない方や背の低い方にバドミントンラケットを持ってもらったりして、ゲームを盛り上げるわけです。
職員の気配りや工夫があれば、利用者を夢中にさせることは十分に可能です。
もちろん、転倒や椅子からの転落を防ぐために、周りの職員はしっかり安全を確保してくださいね。
達成感を得られる
体を使ったレクリエーションを例に挙げてきましたが、手先を使って作品を作り上げることも効果的なレクリエーションです。
時間をかけて自分たちだけの作品を完成できたら、その場にいる人達は大きな達成感を得られるでしょう。
複数の利用者で1つの作品に取り組む場合、個々の利用者に役割を任せてみましょう。
例えば、季節の壁紙を作るとしたら、色を塗る(貼る)人、折り紙をちぎる人、絵を描く人に分けたりして、利用者が参加しやすいように配慮してみてください。
高齢者レクリエーションの種類
高齢者レクリエーションを大きく3つに分けて、それぞれの目的や具体例を紹介します。
自社の介護施設に効果的な手法がないか探してみましょう。
体を動かすレクリエーション
体を動かすレクリエーションは、心身機能の維持向上、気分転換、コミュニケーションの促進などさまざまな効果を期待できるレクリエーションです。
対戦型のゲームの場合「あの人に負けたくない」「勝って満足したい」という自然な意欲を引き出すこともあります。
・風船バレー
・紙コップ積み上げ
・ピンポン玉入れ
・釣り
・ラジオ体操
・棒体操など
頭を使うレクリエーション
頭を使うレクリエーションは、脳の活性化に役立つレクリエーションです。
ホワイトボードを使って参加者全員で楽しめるものや1人で集中して取り組める方法などがあります。
計算力、記憶力、集中力、考える力が必要になるため、認知症の予防効果も期待されている活動です。
・クイズ
・計算問題
・言葉の穴埋め問題
・間違い探しなど
創作するレクリエーション
創作するレクリエーションは、体と頭の両方を使うレクリエーションです。
手先を動かすのが好きな方や落ち着いて過ごしたい方に勧めてもよいでしょう。
完成した作品を自宅に持ち帰ったり介護施設の壁に貼るような規模の大きいものを作成したりと、その成果を家族が確認しやすいレクリエーションでもあります。
・塗り絵
・貼り絵
・壁紙
・カレンダー制作など
デイサービスにおすすめ!盛り上がるレクネタ5選
実際にデイサービスで導入されているレクリエーションの中から、おすすめのレクネタを5つご紹介します。
ぜひ利用者の人数、配置できる職員の数、その日に来る利用者の特徴などと照らし合わせて、自社に合ったレクネタがないか探してみてください。
体を使うレクリエーションのネタ
風船バレー
・大きめの風船
・ネット
・肘置きがついた椅子
利用者同士で風船をバレーボールのように打ち合います。
現実のバレーボールは片方のコートに6人の選手が立ちますが、風船バレーでは3人から4人くらいがよいでしょう。
補助役の職員は両方のコートに最低1人ずつ立ち、見守りや補助を行ってください。
自陣のコートに風船が落ちてしまったり相手に返したボールがコートの外に出てしまったりしたら、相手チームに1点が入ります。
風船バレーでは、利用者が立って行うと転倒のリスクが高まります。
足腰がしっかりしている方でも必ず座って行ってもらうようにしましょう。
関節の可動域が狭い方や身長が低い方には、バドミントンラケットを使ってもらうのがおすすめです。
紙コップ積み上げ
・紙コップ30個
・テーブル
・肘置きがついた椅子
・ストップウォッチ
紙コップを制限時間内に何段高く積み上げられるかを競うレクリエーションです。
利用者2人にテーブルの前についてもらい、30秒から1分くらいの制限時間を設けて何段積み上げられるかを競い合います。
職員がストップウォッチを見ながら「あと〇秒です!急いでください」「まだ〇秒あります!落ち着いて!」などと声をかけると、その場が盛り上がるでしょう。
釣り
・磁石のついた釣り竿
・磁石のついた魚
・肘置きがついた椅子
・ストップウォッチ
・ブルーシート
釣りは体を激しく動かすことのないレクリエーションです。
釣り竿と魚の両方に磁石をつけることで、魚を釣りあげられるようになります。
制限時間を30秒から1分程度に設定して制限時間内に何匹釣れたかを競います。
魚に点数をつけて、合計点数で競ってもらうと盛り上がるでしょう。
点数は利用者から見えないように隠したり、あえてマイナス点を設けたりするのもおすすめです。
頭を使うレクリエーションのネタ
食材探しゲーム
・ホワイトボード
・ペン
・料理のイラスト
料理に使われている材料をあてるゲームです。
利用者を2チーム以上に分けて、職員が「カレーライスに使われる材料は?」といったお題を出します。
利用者が回答した内容をホワイトボードに書き出すことで、参加者の注目を集められます。
利用者に馴染みのある料理をお題に出すのがおすすめです。
「ウチではこんな食材を使っている」「へ~、そんな作り方もあるんだ」と利用者同士で盛り上がりやすくなります。
料理に使われている材料の数を最初に伝えてもよいでしょう。
漢字あてゲーム
・ホワイトボード
・ペン
「鮪」「鯖」といった魚へんの漢字を読んでもらったり、「大蒜」「糸瓜」といった読むのが難解な野菜を出したりして、早い者勝ちで正解を当ててもらうレクリエーションです。
難しい漢字を答えられた方には「こんな難しい漢字を読めるなんてすごいですね!」「さすが〇〇さんよくご存じですね」などと積極的に褒めてみましょう。
回答者が偏る可能性もあるので、利用者を指名したり具体的なヒントを出したりすると、司会進行がスムーズになります。
漢字ではなく、四字熟語やことわざに変えてもよいでしょう。
ちなみに先ほどの大蒜は「ニンニク」糸瓜は「ヘチマ」です。
創作するレクリエーションのネタ
塗り絵や貼り絵はデイサービスに導入しやすいおすすめのレクリエーションです。
「月刊デイ」のような専門誌から、必要な分をコピーして利用者に配ります。
インターネットでもデイサービスのレクリエーションのネタを掲載しているサイトが複数あります。
サイトによっては無料サンプルを掲載していますので、探して利用するとコスト削減につながるでしょう。
大勢で取り組むなら、やはり壁紙制作がおすすめです。
完成までに工数が膨大になることを逆手にとって、季節ごとに作成しましょう。
利用者が季節の移り変わりを感じられる点や完成した作品を飾っておけるといったメリットもあります。
壁紙作成は利用者と職員の両者が達成感を得られるレクリエーションです。
また、生け花の専門業者と契約して、毎月生け花セットを持ってきてもらう方法もあります。
お菓子作りを創作レクリエーションに取り入れてもよいかもしれません。
これらの手法には一定の予算が発生するものの、デイサービスの目玉やウリとなる可能性も含んでいます。
デイサービスのレクリエーションを盛り上げるコツ
デイサービスで実施するレクリエーションを盛り上げるためには、やはり介護職員の働きが欠かせません。
司会進行役の介護職員のほか、補助役の介護職員も盛り上げには重要な役割を果たします。
デイ利用者にはできるだけ楽しんでいただきたいですよね!
レクリエーションを盛り上げるコツを3つ紹介しますので、ぜひ普段のレクリエーションに取り入れてみてください。
大げさなリアクションをとってみる
介護職員がわざと大げさなリアクションをとる方法は非常に効果的です。
「おしい!」「すごい!」「残念!」
といった感想とともに、頭を抱えてみたり両手を空に向けてみたりすると、体で表現すると利用者も思わず盛り上がるでしょう。
体で表現するのが恥ずかしい場合は、声を大きく出すだけでも効果があります。
大きなリアクションや声につられて、他の利用者のやる気がアップするでしょう。
レクに小道具を活用する
突然ですが、小学校の運動会を思い返してみてください。
アップテンポなBGMが流れていたり、司会進行役の生徒の声がスピーカーから聞こえてきたりして、ワクワクした経験はないでしょうか。
レクリエーションにも規模こそ違うものの、盛り上げるという共通点があります。
レクの最中にBGMを流したり、鳴子を使ったりして盛り上げてみましょう。
利用者さんにタンバリンなどの楽器を鳴らしてもらって、出番を待っているときに応援役をやってもらう方法もおすすめです。
職員もレクを楽しむ姿勢をみせる
司会進行役の介護職員と補助役の介護職員が利用者に楽しむ姿勢をみせることも、レクリエーションを盛り上げるコツです。
職員が白けた様子でレクを進めていたら、利用者も白けてしまいますよね。
楽しんでいる人を見ると、利用者もつられて楽しんでしまうものです。
職員同士でかけ合いをしてみたり、わざと失敗してみたりして、利用者にアプローチしてみてください。
デイサービスでレクリエーションを行う際の注意点
レクリエーションの大きな目的は、利用者が楽しみながら活動に参加してもらうことです。
しかし、楽しんでもらうことだけに意識を集中すると、思わぬ介護事故が起きてしまうかもしれません。
介護職員として、気をつけるべきポイントを紹介します。
安全に配慮する
レクリエーションを考案する際には、安全対策も一緒に考えておきましょう。
危険なポイントを企画書などに落とし込んでおき、職員同士で周知できる体制を整えておくと事故を未然に防げます。
レクリエーションの実行中は、利用者の見守りやサポートだけでなく、注意点や危険なポイントを司会進行役の職員が利用者に伝えるようにしましょう。
万が一体調不良の利用者や事故が発生した場合の対応方法も職員同士で共有するのがよいでしょう。
参加を強制しない
レクリエーションに参加するかどうするかを最終的に決定するのは、利用者自身です。
職員が説得して無理に参加してもらっても楽しんでもらえないおそれがあります。
また、レクリエーションの種類によって参加・不参加を決める方もいるため、それぞれの意思を尊重しましょう。
ただし、理由もなく長期間参加しない場合は、本人の理由や希望を聞いて、原因を探ることも大切です。
高齢者の尊厳をまもる
利用者が楽しめるように盛り上げることは大切ですが、高齢者に失礼な言葉遣いや態度をとってはいけません。
具体的には、利用者をあだ名で呼んだり敬称を省略したりせずに、節度のある発言を心がけましょう。
高齢者施設でのレクリエーションに関しては、他にも以下の記事を掲載しています。
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まとめ
デイサービスのレクリエーションには「心身機能の維持・向上」「脳の活性化」「孤立感の解消」といった目的があり、目的によって選ぶべき活動内容も異なります。
レクリエーションを実施する際は、利用者の安全確保に務めながら、楽しんで取り組める活動を実行していきましょう。
そして利用者や家族、関係者が喜び感謝してくれるようなデイサービス実現につなげていってください。
この記事の執筆者 | 千葉拓未 所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級) 専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。 以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。 生活相談員として5年間の勤務実績あり。 利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。 現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、 Webライターとして活躍している。 |