介護や看護の現場では、シフト制の勤務体制が多く取られています。
しかしシフト作成は簡単なことではありません。
シフト作成を担当している管理職やリーダーの方は、毎月頭を抱えているのではないでしょうか。
特にスタッフの中に時短勤務制度を利用している人がいると、他のスタッフとの業務量の兼ね合いでシフト作成もますます難しくなることでしょう。
この記事では最初に、時短勤務制度の概要及び対象になる人についてご紹介します。
その上で、シフト制現場での時短勤務制度のポイントと注意点、時短勤務制度のメリットとデメリットもあわせてお伝えします。
勤務先でシフト作成を担当されている方は、ぜひご一読ください。
目次
1.時短勤務制度とは?通常の8時間勤務との違いも解説
時短勤務制度とは、その言葉どおり一日の労働時間が通常よりも短い働き方です。
この制度は、育児・介護休業法第23条により義務付けられています。
時短勤務制度の目的は、育児及び介護と仕事を無理なく両立できるようにすることです。
多くの企業は、通常の勤務時間を1日8時間としています。
労働基準法により、勤務時間の上限が1日8時間、1週間で40時間と定められているからです。
これに対して時短勤務制度では、原則として労働時間は6時間となっています。
(厳密には5時間45分~6時間)
6時間勤務と8時間勤務の違いは労働時間だけではありません。
休憩時間も違うのです。
労働基準法では、6時間以上働く人の休憩時間は45分以上、8時間以上働く人の休憩時間は1時間以上と定められています。
2.時短勤務制度はどんな人が対象になるの?
時短勤務制度は、育児や介護を理由にフルタイムでの勤務が難しい人が対象になります。
しかし、育児や介護をしているすべての人が対象になるわけではありません。
それぞれ条件がありますので、解説します。
時短勤務制度の対象になる人
時短勤務制度の対象になるのは、以下のようなケースに当てはまる人です。
育児による短時間勤務の場合
育児による時短勤務の対象者は、下記の条件をすべて満たす人です。
① 3歳に満たない子を養育する労働者であること。
② 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと。
③ 日々雇用される者でないこと。
④ 短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
⑤ 労使協定により適用除外とされた労働者でないこと。
この条件を全て満たせば、男女問わず時短勤務を利用できます。
時短勤務制度が法的に義務付けられているのは、子どもが3歳未満までです。
子どもが3歳以上の場合、短時間勤務制度導入は勤務先の努力義務になります。
つまり企業によっては時短勤務制度がない場合もありますので、注意してください。
時短勤務制度に該当しない人の代替条件
3歳未満の子を養育している人でも
・就業1年以内の人
・1週間の勤務日数が2日以下の人
は時短勤務制度の対象外です。
対象外の人が利用できる、時短勤務制度に代わる制度が以下の3つになります。
・フレックス勤務制度
・時差出勤制度
・事業所内保育施設の設置運営
介護による短時間勤務の場合
介護による短時間勤務制度利用の対象者は、要介護状態にある家族を介護している人です。
介護・育児休業法における要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。
この状態に該当すれば、介護保険の要介護認定を受けてなくても制度は利用可能です。
家族の範囲を以下に示しました。
配偶者(事実婚も含まれる)
父母
子
配偶者の父母
兄弟姉妹
祖父母
孫
介護による短時間勤務制度を利用できる期間は、利用開始から3年の間に2回以上とされています。
令和5年4月1日から制度を開始した人の場合、令和8年3月31日の間に2回以上利用可能です。
こうした制度の細かな条件は企業ごとに異なることがあるため、所属する法人の中で導入有無や条件を確認してみてください。
3.時短勤務制度のメリット・デメリット
ここでは、時短勤務制度のメリットとデメリットをご紹介します。
時短勤務制度のメリット
短時間勤務がなければ、スタッフはフルタイムで働きながら育児及び介護を行わなくてはなりません。
このことは当人にかなりの負担をかけます。
育児や介護に専念するため退職を余儀なくされる人も出てくるでしょう。
短時間勤務を利用することで育児や介護と仕事の両立を進めやすくなり、スタッフの離職率低下につながるのです。
働く側も、時間に余裕が生まれワークライフバランスがとりやすくなります。
医療や介護の現場で経験を積んだスタッフが育児や介護を理由に離職するのは、企業にとっても痛手となります。
スタッフ当人としても仕事は続けたいけれど、フルタイムでの勤務は難しいといった場合もあるでしょう。
そうした場合、時短勤務によって離職せずに仕事を続けることができれば、企業とスタッフの両者にとってメリットが大きい制度となります。
時短勤務制度のデメリット
時短勤務制度を利用するスタッフがいると労働力が不足するため、他のスタッフの負担が増してしまいます。
前項で述べた、いわゆるしわ寄せがくる状態です。
業務量に不公平感が生まれ、社内の人間関係が悪化する危険性があります。
時短勤務利用者側にも、給料が減額される、重要な仕事を任されずにキャリアが一時停止するといったデメリットが生じるのです。
4.シフト制の現場と時短勤務制度の注意点
シフト制とは、働く時間や曜日が固定されない勤務制度です。
医療や介護現場では、3交代勤務や2交代勤務などシフト制の現場が多い状況にあります。
ここではシフト制現場で時短勤務制度を実施する場合のポイントと注意点をご紹介します。
シフト制職場における時短勤務のポイント
シフト制の職場で時短勤務制度を実施する場合の一般的な方法は、始業時間及び終業時間をずらす方法です。
例としては、
通常シフト者の業務時間: 8時30分 ~ 17時30分(8時間+休憩1時間)
時短導入者の勤務時時間: 9時30分 ~ 16時30分(6時間+休憩1時間)
というシフトの例のように日勤帯の中で、開始時間や終了時間を一時間ずつ短くすることで子育て中の方でも職場復帰しやすい環境を作ってあげることです。
なお、勤務時間が6時間であれば、勤務時間帯の定めはありません。
ただし、育児・介護休業法の関係で、短時間勤務対象者は深夜時間帯の勤務が原則的には免除されます。詳しくは以下をご覧ください。
育児・介護休業法では、小学校就学前までの子を養育する労働者及び要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が育児や介護のために請求した場合には、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、その労働者を深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはならないこととされています。
シフト作成時の注意点(時短勤務制度の利用者がいる場合)
時短勤務制度を利用している人がいると、他のスタッフがその人の分も仕事をしたり、夜勤業務が多くなったりします。
いわゆる、他の人にしわ寄せがくる状態です。
このことが原因で、職場内の人間関係が悪化する危険性もあります。
これは時短勤務制度のデメリットの1つといえるでしょう。
時短勤務利用者と毎回同じシフトの人がいると、その人の業務負担が著しく増えてしまいます。
シフト作成時は、特定の人に業務負担が増えないよう注意して下さい。
時短勤務利用者と同じシフトになる人は可能な限り分散させることをおすすめします。
まとめ
この記事では、時短勤務制度とシフト作成についてご紹介しました。
育児や介護をしながら働いている人や企業にとっても、時短勤務制度はメリットが多い制度です。
しかし、他のスタッフの負担が増えるという大きなデメリットもあります。
シフト制現場の場合、夜勤免除の関係もあり、デメリットがさらに大きくなる危険性があるのです。
今後育児休業から復帰する従業員がいる場合、勤務シフト作成には細心の注意を払う必要があります。
時短勤務制度利用者だけではなく、他のスタッフも働きやすいようなシフト作りを考えていきましょう。
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この記事の執筆者 | 古賀優美子 保有資格: 看護師 保健師 福祉住環境コーディネーター2級 薬機法管理者 保健師として約15年勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護保険などの業務を経験。 地域包括支援センター業務やケアマネージャー業務の経験もあり。 高齢者デイサービス介護員としても6年の勤務経験あり。 現在は知識と経験を生かして専業ライターとして活動中。 |
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