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【教えて!】介護の現場で役に立つアンガーマネジメントとは?イライラ、怒りを上手くコントロールするには

アンガーマネジメントとは

介護の仕事をしている方の中には、仕事のストレスやプレッシャー、職場や利用者に対してイライラや怒りを抱くことに自己嫌悪して悩んでいる方は多いのではないでしょうか。アンガーマネジメントへの理解とスキルを学ぶことで、イライラをコントロールして質の高いケアの実践が可能です。
 
そこでこの記事では、介護の現場で役立つアンガーマネジメントについて、取り入れるメリットや方法、ストレスとの向き合い方などを詳しくご紹介します。
 
介護現場でのイライラ、ストレスを軽減しながらより良い仕事をしていきたいと考えている介護職の方は、ぜひ日々の仕事にお役立てください。

介護の現場で役に立つアンガーマネジメントとは?

イライラ、怒っている介護職

介護の現場では、思いやりや利用者の心に寄り添った介護や仕事への取り組みが求められますが、以下のようなイライラを抱くことも少なくありません。

・利用者との関わり
・職場の人間関係
・業務内容
・労働環境

イライラや怒りを持ち続けたまま仕事をすると、ストレスやネガティブな感情を蓄積してしまいます。介護職だけでなく、周囲の方や利用者への影響も大きいため、アンガーマネジメントを習得し、適切なケアを実践することが大切です。

ここではアンガーマネジメントについて詳しくみていきましょう。

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントは、犯罪者やDVの矯正プログラムが発展したとされる心理プログラムのひとつです。現代では企業や教育機関などでのメンタルトレーニングやパワハラ対策として導入されています。

アンガーマネジメントで大切なことは「怒らない」ことではなく、怒りの感情と向き合いコントロールすることです。怒りを自己管理できるようになれば、仕事への取り組み方の変化やモチベーションの向上、職場の人間関係の構築などに役立つでしょう。

介護の仕事でアンガーマネジメントが注目されている理由

介護の仕事は、やりがいがある一方で、イライラやストレスがたまりやすい仕事です。

例えば、介護現場では、以下のような場面でイライラしてしまうことがあります。

・利用者とのコミュニケーション
・利用者家族とのトラブル
・過重労働や人手不足などによる身体的な負担
・リスクや責任の重さによるプレッシャー
・職場の人間関係

イライラやストレスを抱えた仕事は、以下のようなリスクにつながるでしょう。

・不適切なケア
・介護事故
・バーンアウト(燃え尽き症候群)やうつ病
・退職
・職場の人間関係の悪化

「イライラしてはいけない」と思い悩むことで、介護職自身の心身の不安定さやトラブルの原因やモチベーションの低下につながることもあります。

介護職のストレスの原因や対処法について、以下の記事でも詳しく解説しています。

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介護の仕事は、やりがいがある一方で、肉体的・精神的なストレスがたまりやすい職種。介護職が抱えるストレスの原因や対処法を解説。

 

介護現場でのストレスケアのひとつとして注目されているのが、アンガーマネジメントです。怒りの感情を理解し、コントロールすることで仕事でのストレスを軽減させ、業務改善やスムーズな人間関係の構築が期待できます。

ポジティブな感情を持って仕事に取り組めるように、アンガーマネジメントのスキルを身につけることが大切です。

介護職がアンガーマネジメントを取り入れるメリット

アンガーマネジメントでゆとりある介護ケアを

介護の仕事では、イライラやストレスが起こりやすい状況が多く、感情のコントロールが難しいことも少なくありません。しかし、アンガーマネジメントによって、自分自身の感情のコントロールや心身の健康、他者との円滑なコミュニケーションが可能です。

ここでは、介護職がアンガーマネジメントを取り入れるメリットについて詳しくみていきましょう。

イライラや怒りの感情を冷静に整理できる

イライラや怒りの感情を抱いたとき、つい周囲にあたってしまうことはありませんか?「もっと思いやりのあるケアがしたいのに」と悩む方も多いのではないでしょうか。

アンガーマネジメントによって、イライラによる自己嫌悪やネガティブな感情を他者に向けず、自分の中で冷静に整理できるようになります。

ストレスが軽減できる

イライラや怒りの感情の蓄積で怖いことは、ストレスが爆発することで、意図せず適切なケアができなくなってしまうことです。

アンガーマネジメントでストレスを軽減できれば、心にゆとりをもち、本来の介護観に近づいたケアの実践につながるでしょう。

周囲とのコミュニケーションが円滑になる

アンガーマネジメントで客観的に自分自身が抱える怒りを把握すれば、周囲への感情の伝え方のコツを学ぶことができます。

怒りに任せた表現ではなく、怒りの原因や感情を具体的に説明できるため、周囲とのコミュニケーションが円滑になることもメリットのひとつです。

アンガーマネジメントを実践する方法

ストレス要因が多い介護の仕事は、ケアの質が介護職のメンタルヘルスが仕事に影響されやすいことが特徴です。

アンガーマネジメントを職場研修などで取り入れているところでは、負の感情をコントロールし、介護職の心の健康を守り、ポジティブなケアを実践しています。

介護職に必須のスキルであるアンガーマネジメントについて、実践する方法を5つみていきましょう。

心の中で6秒カウントする

介護現場でイライラするシーンは多いものですが、すぐにカッとなり怒りを表面化させるのは利用者や周囲にとって悪影響を及ぼします。怒りが起こった要因から6秒の内は、適切な判断ができないピークとなり感情的な状態です。

怒りを鎮め、理性を取り戻すのに約6秒必要であることから「6秒ルール」ともいわれています。イライラしたら心の中でゆっくり6秒数えてみてください。

6秒で怒りを抑えることで、怒りの感情を落ち着かせ、冷静な判断が可能になるでしょう。カウントで効果がない場合は、「大丈夫、大丈夫」など6秒程度の言葉を心の中で唱えてみるのもひとつの方法です。

固定観念を捨てる(すべきという考え方を捨てる)

介護の現場では、業務の時間配分や利用者ごとにやるべきケアが定められています。ケアをしていると、無意識のうちに自分の考えが正しいと思い込み、相手に対して「~すべき」という固定概念や価値観が生まれてしまいがちです。

突発的なできごとが起こった場合には、以下のような対応が求められます。

・固定概念をはみ出したケアを行う必要がある
・自分自身の価値観を変化させなければいけない

固定概念や価値観に縛られていると、突発的なトラブルや相手が自分と価値観が異なる場合に怒りを表出させてしまうことがあります。「~すべき」という考え方を捨て、他者の考えを受け入れることで、ゆとりある業務や良好な人間関係の構築が可能です。

固定概念や価値観は人によって異なる」ことを認識し、思考のコントロールを実践していきましょう。

イライラ、怒りの内容をメモして分析する

イライラや怒りを感じた際に、以下の内容を書き出し、リスト化するのも効果的です。

・状況
・できごと
・抱いた感情
・対応方法

後で内容を見返すことで怒りを客観的に把握でき、対処法について分析することができます。また、次に同じようなできごとが起こった際に冷静に対応できるようになるでしょう。

自分でコントロールできることに力を入れる

イライラや怒りを抱く内容には、自分でコントロールできることとできないことがあります。自分でどうにもならないことに力を入れていても、ストレスが溜まる一方で、いつまでたっても解決しません。

自分でコントロールできることだけ意識し、コントロールできないことに対しては、

・受け止める
・この人はこんな人なのだ
・こんな考え方もある

という姿勢を持つことで、余計なストレスを溜めず仕事に向き合うことができるでしょう。

相手の立場で考えてみる

イライラや怒りの感情を抱いたとき、相手の立場で考えてみることも大切です。

・相手の話をよく聞く
・どんな人か把握する

相手を理解することで、自分のことも客観視できるため、イライラや怒りをコントロールすることができるでしょう。

アンガーマネジメントを学ぶ方法

先述したようにアンガーマネジメントには、自己認識や感情のコントロール、効果的なコミュニケーションテクニックなど様々なアプローチがあります。

アンガーマネジメントがどんなものか知りたい方、実践的なスキルを身につけたい方は、これからご紹介するアンガーマネジメントを学ぶ方法を参考にしてください。

アンガーマネジメントの本(書籍)で学ぶ

「アンガーマネジメントってなに?」という方におすすめなのは、本(書籍)で学ぶ方法です。特に管理職や介護リーダーにおすすめなのは、怒らない伝え方が書かれた本です。

相手との信頼関係や人間関係を壊さない伝え方で指導できるようになるため、スタッフの育成やパワハラ対策にも役立ちます。

アンガーマネジメント入門からトレーニング、管理職に向けたコントロールスキル習得など様々な本が出版されていますので、自分に合った本を選びましょう。

アンガーマネジメントの講座を受講する

アンガーマネジメントの講座には、入門レベルから資格取得、専門家として活躍できる講座などがあります。

一般社団法人「日本アンガーマネジメント協会」の講座では、以下のようなニーズに合わせたアンガーマネジメントの講座が開講され、受講形式は対面・オンラインと様々です。

「日本アンガーマネジメント協会」講座例

 
・アンガーマネジメントファシリテーター養成講座
・アンガーマネジメントティーンインストラクター養成講座
・アンガーマネジメントキッズインストラクター養成講座
・アンガーマネジメント診断講座
・アンガーマネジメント応用講座
・アンガーマネジメント入門講座
・アンガーマネジメント×怒らない体操講座
・アンガーマネジメント叱り方入門講座
・アンガーマネジメントパワーハラスメント防止入門講座

参照:一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会 講座情報

日本におけるアンガーマネジメントの第一人者である安藤俊介氏が監修したプログラムが特徴です。講座の受講は、アンガーマネジメントに精通した講師による学びや、同じ悩みを抱える受講生同士で交流することができます。

アンガーマネジメントを学び実践することで、感情のメカニズムが明確になり、仕事への向き合い方や周囲とのコミュニケーションの変化を実感できるようになるでしょう。無料オンライン説明会も実施されていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

介護の仕事でイライラ、ストレスと上手に付き合うには

悩む介護職

介護の仕事でアンガーマネジメントを導入すれば、怒りやネガティブな感情と上手く付き合っていくヒントを見つけることができます。具体的な方法について6つみていきましょう。

深呼吸しよう

イライラやストレスを感じたら、一度深呼吸して心身をリラックスさせることが大切です。心の中で6秒カウントする「6秒ルール」にもつながりますね。

仕事の緊張やプレッシャーをほぐし、ゆとりある業務に取り組んでいきましょう。

感情を自己分析しよう

自信の怒りやネガティブな感情を理解し、イライラやストレスを引き起こしている要因について自己分析してみてください。何がイライラやストレスを引き起こしているのか理解することで、適切な対応を見つけることができるでしょう。

ポジティブな視点をもとう

イライラやストレスを感じた時、怒った状況やできごと、相手に対してネガティブな感情をぶつけがちです。

例えば、認知症の利用者に対してイライラしてしまった場合。その方の言動や行動だけを見てイライラするのではなく、言動や行動に隠された背後にある理由に注目してみましょう。

ケアの方法やアプローチの仕方を変えるなど、ポジティブなケアにつなげることで、問題となる言動や行動が軽減される可能性もあります。

「利用者のケアがうまくいった」「問題行動が軽減された」といった成功体験によって、自分自身が成長し、よりよいケアにつながることが大切です。ネガティブな視点ばかりではなく、ポジティブな視点をもつことを意識してみましょう。

休息をとろう

介護職の方の中には、時間や業務に追われる中でイライラやストレスを放置してしまっている方も多いのではないでしょうか?趣味や気分転換、休日にゆっくりリラックスするなど、セルフケアに取り組む時間を取り入れてみるのもおすすめです。

利用者のケアや業務だけに目を向けるのではなく、自分自身の健康も大切にしましょう。

チームケアを大切にしよう

介護の仕事はチームケアが基本ですので、業務や利用者との関わり方で困ったことがあれば一人で抱え込むのではなく、情報を共有することが重要です。

チームで支え合い業務に取り組むことで、イライラやストレスを軽減し、適切な対処法を提案してくれることもあります。

規則正しい生活を心がけよう

シフト勤務による生活習慣の乱れはストレスの原因になるため、規則正しい生活を心がけることが大切です。多くの介護現場ではシフトの早出や夜勤があるので難しいですが、睡眠時間の確保や適度な運動、栄養バランスのとれた食事など、健康的に過ごすことを意識しましょう。

介護職のストレスの原因や対処法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

まとめ

介護の現場で役立つアンガーマネジメントについて、取り入れるメリットや方法、ストレスとの向き合い方などを詳しくご紹介しました。

「やりがいがあって楽しいけれど、イライラすることもある」介護の仕事では、日々のイライラやストレスを適切にコントロールすることが重要です。怒りやネガティブな感情に追い込まれた場合は、今回ご紹介したアンガーマネジメントやイライラ、ストレスと上手に付き合う方法を実践してみてください。

アンガーマネジメントは、怒りを感情のままに表出せず、冷静な自己判断ができるようセルフコントロールします。特に管理者やリーダーの方は、パワハラ対策としても効果的です。

指導する際にアンガーマネジメントを取り入れた伝え方を実践することで、スタッフの仕事へのモチベーションを低下させず、円滑なコミュニケーションが可能になります。チャレンジしたけれどうまく実践できなかった方やもっと詳しく学びたい方は、アンガーマネジメント講座の受講がおすすめです。

効果的なアンガーマネジメントを取り入れ、風通しの良い職場環境や質の高いケアを行っていきましょう。

この記事の執筆者吉田あい

保有資格:社会福祉士・介護福祉士・メンタル心理カウンセラー・介護支援専門員

現場、相談現場など経験は10年超。
介護現場(特別養護老人ホーム・デイサービス・グループホーム・居宅介護支援事業所)、相談現場を経験。

現在はグループホームのケアマネジャーとして勤務。

 

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