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【2024年介護報酬改定】通所介護(デイサービス)の入浴介助加算とは?算定要件、単位数などまとめ

通所介護(デイサービス)の入浴介助加算とは

この記事では、デイサービスの入浴介助加算について紹介します。
 
入浴介助加算はひと言で言うと、「利用者の入浴時に見守りや介助を行ったときに算定できる加算」です。
 
2021年には、入浴介助加算(Ⅰ)と入浴介助加算(Ⅱ)の2種類に分かれました。この2種類は同じ入浴介助加算でありながら、算定要件や単位数が異なります。
 
入浴介助加算(Ⅰ)と入浴介助加算(Ⅱ)の違いについても解説しますので、参考になさってください。

通所介護(デイサービス)の入浴介助加算とは

通所介護(デイサービス)における入浴介助加算とは、利用者が安全に入浴するために、見守りや介助を行った場合に算定できる加算です。

加算の対象となる事業所を以下に示しました。

・通所介護
・通所リハビリ
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護

加算を算定できるのは、1日1回です。ケアマネジャーが作成したケアプランに入浴の記載があり、かつ、通所介護事業所が作成した通所介護計画書にも入浴の記載がある場合に算定できます。

入浴介助加算の単位数・算定要件

入浴介助加算には、入浴介助加算(Ⅰ)と入浴介助加算(Ⅱ)の2種類があります。2種類に分かれたのは、2021年の介護報酬改定時です。

2021年以前から存在した加算が「入浴介助加算」で、2021年に新設されたのが入浴介助加算(Ⅱ)です。1人の利用者に対して、2つの加算を同時に算定することはできません。

ただし、同一事業所内に入浴介助加算(Ⅰ)の該当者と入浴介助加算(Ⅱ)の該当者が混在することは問題ないとされています。

入浴介助加算(Ⅰ)の単位数・算定要件

ここでは、入浴介助加算(Ⅰ)の単位数・算定要件について解説します。以下の表をご覧ください。

入浴介助加算(Ⅰ)
単位数 1日40単位
対象者 要介護1~要介護5の利用者
算定要件 ・入浴中の利用者に対し、観察を含む介助を行っていること
・入浴介助を適切に行える人員及び設備を満たしていること
・入浴介助に関わる職員に対して、入浴介助に関する研修等を行うこと

 

「入浴介助を適切に行える人員及び設備」や「入浴介助に関する研修」については、厚生労働省による基準があります。

入浴介助加算(Ⅱ)の単位数・算定要件

ここでは、入浴介助加算(Ⅱ)の単位数・算定要件について解説します。以下の表をご覧ください。

入浴介助加算(Ⅱ)
単位数 通所介護:1日55単位
通所リハビリテーション:1日60単位
地域密着型通所介護:1日55単位
認知症対応型通所介護:1日55単位
対象者 要介護1~要介護5の利用者
算定要件 ・入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件を満たしていること
・医師、理学療法士、作業業療法士、介護福祉士、介護支援専門員などの専門職が利用者の居宅を訪問し、浴室環境と利用者の動作を評価していること
・居宅訪問の評価に基づいて、機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員などの専門職が協力して個別の入浴計画を作成すること
・個別の入浴計画に基づいて、個浴または、利用者の居宅環境に近い環境で入浴介助を行うこと

 

入浴介助加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い

入浴介助加算(Ⅰ)と(Ⅱ)では、入浴介助加算(Ⅰ)は40単位、(Ⅱ)はそれよりも多い55単位と単位数がまず異なりますが、その他にもいくつか違いがあります。

ここでは、「目的」と「主な加算要件」を表にまとめました。

  入浴介助加算(Ⅰ) 入浴介助加算(Ⅱ)
目的 利用者が、通所介護事業所内で安全に入浴すること 利用者が、居宅(自宅)にて自立して入浴できるようになること
主な加算要件 通所介護事業所内で入浴中の利用者に対して、職員が見守りおよび介助を行うこと
(身体に直接触れる介助を行わない場合も加算対象になる)
・医師や理学療法士などの専門職が利用者宅を訪問して、利用者の身体状況や、浴室環境などを評価すること
・利用者に対して、個別の入浴計画を作成すること

 

入浴介助加算(Ⅱ)を算定する場合、入浴介助加算(Ⅰ)の要件を満たしていることが前提になります。また、(Ⅰ)と(Ⅱ)の両方は同時に算定できず、入浴介助加算を算定するときはどちらか一方となります。

入浴介助加算が算定できない場合

入浴介助加算が算定できない場合としては、以下のようなケースが考えられます。

入浴介助加算ができないと考えられる3つのケース
ケース1 ケアマネジャーが作成したケアプランに入浴の記載がなく、通所介護事業所が作成した「通所介護計画書」にも入浴の記載がない場合
ケース2 通所介護計画上に入浴の提供に関する記載があった場合でも、利用者側の事情で入浴が実施されなかった場合
ケース3 清拭のみ、もしくは足浴のみ実施した場合

 

正しい加算を行うためにも、「入浴介助加算が適用されるのは、全身浴とシャワー浴のみ」と覚えておきましょう。

デイサービスの入浴介助加算(Ⅱ)加算率が低調な理由

2021年から導入されたデイサービスの入浴介助加算(Ⅱ)ですが、算定率は低調です。

ここで、入浴介助加算に関する2つのデータを紹介します。

【データ1:一般社団法人日本デイサービス協会】
2021年5月に一般社団法人日本デイサービス協会が行った、「入浴介助加算Ⅱの算定状況調査結果」では、入浴介助加算(Ⅱ)の 算定率は65%でした。

なおこの調査は、日本デイサービス協会に加入している事業所(約3,000)が対象であるため、非加入の事業所を含めると、実際の算定率は65%より低いことが想定されます。

(全国の通所介護事業所数は令和4年の時点で24,569なので、日本デイサービス協会に加入している事業所は、全体の約12%になります。)

【データ2:公益社団法人全国老人福祉施設協議会】
2022年5月に公益社団法人全国老人福祉施設協議会が行った調査結果によると、入浴介助加算Ⅱの算定率は、以下のとおりです。

・2022年(令和4年)4月:10.0%
・2021年(令和3年)7月:10.1%

データ1とデータ2では調査母体が異なるため、結果に差はありますが、全体的に入浴介助加算(Ⅱ)の加算率は低調であると分かります。

その理由は、入浴介助加算(Ⅱ)の目的です。

入浴介助加算(Ⅱ)の目的は、「自宅での利用者が、自分自身または家族などによる介助で、入浴することができるようになること」とされています。言い換えると、「自立支援」です。

利用者の要介護度や身体状況によっては、自立支援自体が難しいこともあり、家族やケアマネジャーから反対意見が多い状況です。

入浴介助加算Ⅱの算定状況調査結果では、以下のような意見が出されました。

・自宅に風呂がないので、自立に取組む必要がない
・ご自宅に入るなんて不可能、入ってほしくない(家族・ケアマネ)
・認知症なので無理
・自宅にお風呂がそもそもないので必要ない

これらの意見からも、入浴介助加算(Ⅱ)の加算率が低い理由がうかがえます。

入浴介助加算のQ&A

ここでは、2024年介護報酬改定に関するQ&Aから、入浴介助加算に関するものを4点紹介します。

Q:入浴介助に関する研修とは具体的にはどのような内容が想定されるのか。

A:具体的には、脱衣、洗髪、洗体、移乗、着衣など入浴に係る一連の動作において介助対象者に必要な入浴介助技術や転倒防止、入浴事故防止のためのリスク管理や安全管理等が挙げられるが、これらに限るものではない。

なお、これらの研修においては、内部研修・外部研修を問わず、入浴介助技術の向上を図るため、継続的に研修の機会を確保されたい。

Q:情報通信機器等を活用した訪問する者(介護職員)と評価をする者(医師等)が画面を通して同時進行で評価及び助言を行わないといけないのか。

A:情報通信機器等を活用した訪問や評価方法としては、必ずしも画面を通して同時進行で対応する必要はなく、医師等の指示の下、当該利用者の動作については動画、浴室の環境については写真にするなど、状況に応じて動画・写真等を活用し、医師等に評価してもらう事で要件を満たすこととしている。

Q:入浴介助加算(Ⅱ)は、利用者が居宅において利用者自身で又は家族等の介助により入浴を行うことができるようになることを目的とするものであるが、この場合の「居宅」とはどのような場所が想定されるのか。

A: 利用者の自宅(高齢者住宅(居室内の浴室を使用する場合のほか、共同の浴室を使用する場合も含む。)を含む。)のほか、利用者の親族の自宅が想定される。

なお、自宅に浴室がない等、具体的な入浴場面を想定していない利用者や、本人が希望する場所で入浴するには心身機能の大幅な改善が必要となる利用者にあっては、以下①~⑤をすべて満たすことにより、当面の目標として通所介護等での入浴の自立を図ることを目的として、同加算を算定することとしても差し支えない。

① 通所介護等事業所の浴室において、医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士若しくは介護支援専門員又は利用者の動作及び浴室の環境の評価を行うことができる福祉用具専門相談員、機能訓練指導員、地域包括支援センターの職員その他住宅改修に関する専門的知識及び経験を有する者が利用者の動作を評価する。

② 通所介護等事業所において、自立して入浴することができるよう必要な設備(入浴に関する福祉用具等)を備える。

③ 通所介護等事業所の機能訓練指導員等が共同して、利用者の動作を評価した者等との連携の下で、当該利用者の身体の状況や通所介護等事業所の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成する。なお、個別の入浴計画に相当する内容を通所介護計画の中に記載する場合は、その記載をもって個別の入浴計画の作成に代えることができるものとする。

④ 個別の入浴計画に基づき、通所介護等事業所において、入浴介助を行う。

⑤ 入浴設備の導入や心身機能の回復等により、通所介護等以外の場面での入浴が想定できるようになっているかどうか、個別の利用者の状況に照らし確認する。なお、通所リハビリテーションについても同様に取り扱う。

Q:入浴介助加算(Ⅱ)について、医師、理学療法士、作業療法士、介護福祉士若しくは介護支援専門員又は利用者の動作及び浴室の環境の評価を行うことができる福祉用具専門相談員、機能訓練指導員、地域包括支援センターの職員その他住宅改修に関する専門的知識及び経験を有する者が利用者の居宅を訪問し、浴室における当該利用者の動作及び浴室の環境を評価することとなっているが、この「住宅改修に関する専門的知識及び経験を有する者」とはどのような者が想定されるか。

A:福祉・住環境コーディネーター2級以上の者等が想定される。なお、通所リハビリテーションについても同様に取扱う。

引用元:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」

まとめ

デイサービスにおける入浴介助加算には、入浴介助加算(Ⅰ)と入浴介助加算(Ⅱ)の2種類があります。

記事中でご紹介しましたが、2021年に新設された入浴介助加算(Ⅱ)の算定率は、決して高いとは言えません。算定率が低い理由として、入浴介助加算(Ⅱ)の目的が「自立支援」である点も影響していると考えられます。

入浴介助加算を行う場合には、各利用者の状況を見極めたり、家族やケアマネジャーなどと連携をとったりすることで、その人にとって適切な加算を算定することが必要です。

この記事の執筆者
古賀優美子

保有資格: 看護師 保健師 福祉住環境コーディネーター2級 薬機法管理者

保健師として約15年勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護保険などの業務を経験。
地域包括支援センター業務やケアマネージャー業務の経験もあり。
高齢者デイサービス介護員としても6年の勤務経験あり。

現在は知識と経験を生かして専業ライターとして活動中。

 

 

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