デイサービスやデイケアで毎日のように実施されている送迎業務。安全な送迎を実現するために、デイサービスの管理者や役職者、介護スタッフの方々は日々奮闘されているかと思います。
その中で「安全を保ちながら送迎業務を効率化したい」「送迎業務に役立つツールはある?」「職員の負担を減らしながら利用者満足度を高めたい」といった希望を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回は、利用者の安全を確保しながら送迎業務を効率化する「デイサービス向け送迎システム」を紹介します。送迎システムとは、送迎業務を包括的にサポートしてくれるソフトウェアのこと。本記事では以下の項目を解説します。
・デイサービスの送迎が大変な理由
・送迎システムの概要と特徴
・デイサービスに送迎システムを導入するメリット
・おすすめの送迎システム6選
・デイサービスの送迎システム以外に効果的な改善策
ぜひ最後までご覧ください。
目次
デイサービスの送迎が大変な3つの理由
なぜデイサービスの送迎は大変なのでしょうか。3つの理由を確認しましょう。
1.その日の利用者にあわせて送迎計画を立てる
円滑な送迎を実現するためには、その日の利用者にあわせて送迎計画を立てなくてはいけません。送迎計画の中でも「配車」が大変な作業です。
配車では、利用者の人数と体制を照らし合わせながら、効率的なルートを考える必要があるため、作成者に一定の負担がかかります。配車を決める際の一般的な工程がこちらです。
1.利用者の人数、車いすの有無、住所などを確認する
2.稼働できる送迎車両を確保する
3.運転するドライバーと同乗できる介護スタッフを確認する
4.送迎車両にドライバーと介護スタッフを割り振る
5.送迎車両ごとに送迎ルートを決める
6.1から5を曜日ごとに行う
利用者の人数が多ければ、送迎ルートを複数考える必要があります。送迎時間は限られているため、効率的な送迎ルートを組まなくてはいけません。
しかし、利用者の急な休みや臨時利用があれば、送迎ルートを組み直す必要が出てきます。天候や路面状況などによっては、迂回ルートを設定する必要もあるでしょう。
このように、送迎計画を立てる際は、さまざまな状況を考慮しながら、ドライバーが安全に走行できるような送迎計画を考えなくてはいけません。
2.介護スタッフがドライバーを兼務している
デイサービスの送迎では、介護スタッフがドライバーを兼務するケースが多く存在します。いわゆる「1人送迎」です。
1人送迎では利用者を介助する職員が1人になるため、介助技術を持ったスタッフが行う必要があります。そのため、介護スタッフがドライバーを兼務するケースが一般的です。
介護スタッフがドライバーを兼務するとき、「事故や違反のない安全な運転」と「利用者の見守りや介助」という2つの業務が発生します。送迎を担当する介護スタッフには一定の負担がかかっているのです。
3.サービス提供時間とお迎え時間を守る必要がある
デイサービスの送迎では、サービス提供時間とお迎え時間の両方を守る必要があります。
サービス提供時間とは、介護施設が介護サービスなどを提供する時間帯を指します。具体的には、入浴、機能訓練、食事、レクリエーションなどのサービスを提供します。
営業時間 | サービス提供時間 |
介護施設を開所している時間帯 | 実際に利用者に介護サービスなどを提供する時間帯 |
デイサービスの送迎業務は、介護施設の中で提供するサービスではないため、サービス提供時間に含まれません。
一方で、利用者やご家族には「朝の〇時〇分頃にお迎えに伺います」とお迎えの時間を伝えていることでしょう。
つまり、介護施設側は、サービス提供時間とお迎え時間の両方を厳守した送迎計画を組み、滞りなく実施しなくてはいけないのです。
デイサービスの大変な送迎業務の効率化に役立つ「送迎システム」とは?
送迎システムは、デイサービスの送迎業務を包括的にサポートしてくれるソフトウェアを意味します。
主な機能
送迎システムの主な機能がこちらです。
主な機能 | 概要 |
送迎計画の自動作成機能 | パソコンやタブレット端末などで、送迎ルートを自動作成してくれる |
施設とドライバーの連携機能 | 本部とドライバーの相互連絡が可能になる (利用者のキャンセル連絡などの通知、現在地の共有など) |
ドライバーの運転サポート機能 | 利用者の自宅をマップ上で表示する 利用者宅までの送迎ルートを表示するなど ※スマートフォンまたはタブレット端末が必要 |
最低限必要な環境
送迎システムは、クラウドサービスを利用しています。クラウドサービスとは、インターネット経由でソフトの機能を使用する仕組みのことです。
送迎システム導入後は、インターネットを経由して各機能を使用することになるため、パソコン、スマートフォン、タブレットといったIT機器とインターネット環境が欠かせません。
また、本部と送迎中のドライバーが連絡を取り合うためには、スマートフォンあるいはタブレット端末の準備が必要です。これらの機器は、有料オプションに申し込むか、自分たちで用意する必要があります。
送迎システムの相場
送迎システムの導入・運用にかかる相場は、月額8,000円から1万5,000円ほどです。ただし、提供会社によって料金プランが異なるため、導入前に細かい料金設定を確認しましょう。
デイサービスで送迎システムを導入するメリット
送迎システムを導入すると、介護施設側にどのようなメリットが発生するのでしょうか。次に、デイサービスで送迎システムを導入する4つのメリットを解説します。
送迎計画を効率的に作成できる
送迎システムには、送迎計画を自動作成する機能が備わっています。お迎え先の住所(利用者の自宅)やお迎え時間を入力後に、ソフトに作成を指示することで、条件にあったルートを自動作成してくれるのです。計画作成にかかる時間を短縮できるでしょう。
また、送迎計画を立てたことのない職員でも、簡単に送迎ルートの原案を作成できるのも魅力です。特定の車両を指定することで、車いすの利用者にも対応できます。
送迎中の事故防止に役立つ
送迎システムを使用すると、利用者宅の位置や送迎ルートなどをマップ上で確認できるようになります。
自分が走行するルートを事前に確認することで、ドライバーはより運転に集中できるようになるでしょう。また、送迎中の不安を軽減できれば、利用者や家族への丁寧な対応も可能になるはずです。
送迎表や住宅地図を携帯する必要がなくなるため、送迎の準備にかかる時間を短縮できる点もメリットです。利用者の名前や住所が記された書類を持ち出す必要はないため、個人情報保護の観点からも有益といえます。
現場の状況をリアルタイムで把握できる
送迎システムには、GPS機能を活用して、送迎車の現在地を確認する機能が備わっています。GPS機能とは、人工衛星から発せられた電波を受信することで、現在地を特定する仕組みです。
送迎車の現在地を確認することで、利用者や家族からの問い合わせにスムーズに対応できるでしょう。仮に利用者や家族から「送迎車がまだ来ないけど、いつ来るの?」と本部に問い合わせがあった場合でも「現在、〇〇付近を走行していますので、あと〇〇分くらいで到着できると思います」といった返答が可能になります。
要介護認定を受けている利用者の場合、外出準備に労力や時間がかかります。現場の状況を把握して、適切な対応をとることで、送迎におけるクレーム防止につながるのです。
空いた時間をコアな業務に投下できる
送迎業務を効率化できた場合、空いた時間をコアな業務に投下できます。
・記録業務にあてて残業時間の削減
・レクリエーションの準備
・職員ミーティングの実施
・職員同士のコミュニケーションなど
送迎業務はデイサービスの全体業務の3割ほどを占めるという経済産業省の報告書もあります。送迎業務を効率化することで、働きやすい介護現場を実現できるでしょう。
参考:経済産業省 将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会 報告書
おすすめの送迎システム6選
おすすめの送迎システムを6つ紹介します。それぞれの概要や特徴、機能、価格などをまとめましたので、それぞれご覧ください。なお、掲載している情報は2024年1月時点のものとなっており、料金表記は税抜です。
DRIVEBOSS(ドライブボス
DRIVEBOSS(ドライブボス)は、パナソニック カーエレクトロニクス株式会社が提供している送迎システムです。
デイサービスの送迎だけでなく、ルートセールスや配食サービスの走行管理などにも活用されており、これまでに2,000件の導入実績があります。
IT端末の操作が苦手な方でも感覚的に操作できる点が大きな特徴です。サポート体制にも力を入れており、導入前には無料トライアルを活用して、操作の感覚をお試し利用できるほか、導入後に使い方のアドバイスも受けられます。
初期費用 | 要問い合わせ |
利用料金 | 月額7,500円/1拠点 ※施設規模により変動あり スマホ連携機能を利用した場合 780円/1台 |
トライアルの有無 | 30日間の無料トライアルあり |
DAYMAP(デイマップ)
DAYMAP(デイマップ)は、株式会社アイシーソフトが提供している送迎システムです。ソフトウェアに自動作成してもらった走行ルートを、ドラッグ&ドロップで簡単に入れ替えられるなど、送迎計画を効率的に作成する機能が備わっています。
相性のよくない利用者同士が相席になったら注意アラームが出るなど、デイサービスの送迎に特化した機能も特徴です。
スマートフォンとの連携機能を活用すると、当日の利用キャンセルに対して、電話をかけずに本部にワンタッチで連絡できます。一方で、本部がルート変更を行うと、ドライバーのスマートフォンに通知が届く機能を完備しています。
初期費用 | 0円 |
利用料金 | 月額9,000円 ※送迎車6台以上になる場合は、1台あたり1,000円 |
トライアルの有無 | 30日間の無料トライアルあり |
らくぴた送迎
らくぴた送迎は、ダイハツ工業株式会社が提供している送迎システムです。送迎計画作成の際に、画面上に地図と時間を表示してくれるため、利用者人数の多い介護施設の送迎計画立案にも役立ちます。
一度作成した送迎計画を別の曜日にコピーする機能が備わっているため、1ヶ月分の送迎計画を立てる際に便利です。
有料オプションを利用すると、専用スマートフォンを利用できるようになります。事務所とドライバーでの相互連絡、施設到着を音声で自動通知してもらえるため、送迎業務を効率的に進められるようになるでしょう。
初期費用 | 0円 |
利用料金 | 月額15,000円 |
トライアルの有無 | 要問い合わせ |
うぇるなび
「うぇるなび」は、株式会社トレックが提供している送迎システムです。送迎ルートを地図上で確認できるうえに、迎えの順番をドラッグ&ドロップで入れ替えられる機能が備わっています。
料金プラン「プレミアム」で契約することで利用できる「タブレット連携」では、送迎実績を施設側がリアルタイムで確認できるようになります。送迎を待っている利用者や家族からの問い合わせに対して、スムーズな対応ができるようになるため、利用人数が多いデイサービスで効果を発揮するでしょう。
初期費用 | 要問い合わせ |
利用料金 | スタンダードプラン 月額8,000円 |
トライアルの有無 | 1ヶ月間の無料トライアルあり |
運転手はキミだ!!クラウド
「運転手はキミだ!!クラウド」は、株式会社エスコムが提供している送迎システムです。送迎表の作成機能に特化した導入のしやすさが大きな特徴です。ドライバーとの連携機能は備わっていませんが、インターネット、メール、Excelを使用できる環境であれば、すぐに利用を開始できます。
2ヶ月間の無料トライアルが用意されており、トライアル中は各種機能を制限なしで利用できます。トライアル期間に登録した情報を本契約後に引き継ぎできるため、スムーズに移行できるでしょう。
初期費用 | 0円 |
利用料金 | 月額1万円から 1日の利用人数により変動あり |
トライアルの有無 | 約2ヶ月間の無料トライアルあり |
はやまる
「はやまる」は、ベストリハ株式会社が提供している送迎システムです。ベストリハ株式会社は、デイサービスを30店舗以上運営している企業。送迎ルートの自動作成、送迎状況の共有のほか、送迎車と事務所間でメッセージ形式のやり取りなども可能です。
介護施設のさまざまな業務を支援する介護ソフト「はやまる」の中に、送迎支援機能が備わっています。送迎支援システムを利用する場合は、「はやまるライトプラスプラン」または「はやまるスタンダードプラン」の契約が必要です。
初期費用 | 0円 |
利用料金 | はやまるライトプラスプラン 利用者人数×200円 はやまるスタンダードプラン 利用者人数×400円 ※利用人数が30名に満たない場合は、一律3,000円となる |
トライアルの有無 | 1ヶ月間の無料トライアルあり |
※各サービスの情報は2024年3月13日時点のものです。最新情報は公式ページにてご確認ください
デイサービスの送迎システム以外に効果的な改善策
送迎システムとあわせてデイサービスに導入したい、改善策を3つ紹介します。
送迎計画を当番制にする
送迎計画を当番制で送迎計画を作成することにより、計画作成の負担が1人に集中することを防げます。生活相談員、介護主任、ベテランの介護スタッフなどで持ち回りにするのがよいでしょう。
送迎計画は毎日作成するものですから、当番制にすることで、一人ひとりの負担を軽減しながら、空いた時間をコアな業務に投下できるようになります。また、当番制にすることで、1人では思いつかなかった注意点や改善案が生まれるかもしれません。
送迎計画を見直す
これまでの送迎計画を見直すことで、よりよい送迎計画の立案が可能になります。全体ミーティングなどの全員が集まる機会を設けて、送迎計画の作成者と介護スタッフ間で情報共有する方法が効果的です。
準備に時間が必要な利用者、利用者同士の相性、各送迎ルートを走行する際の注意点などを確認することで、よりよい送迎計画を立案できるでしょう。
送迎車両のメンテナンスを実施する
送迎車両が故障して修理に出すとなると、送迎計画の立案が困難になります。送迎車両は毎日使用するため、故障が発生するのも仕方のないことですが、こまめにメンテナンスを実施して、トラブルを防止しましょう。
まとめ
デイサービスの送迎業務は、一筋縄ではいかない複雑な業務です。送迎計画を立てる職員、ドライバー、介護スタッフには一定の負担がかかっています。
今回紹介したデイサービス向け送迎システムを導入することで、送迎業務を効率化して、現場で働く介護スタッフや送迎計画作成者の負担を軽減できるはずです。
なお、送迎システムをスムーズに運用するために、研修や全体ミーティングなどを開催して、スタッフ間に周知することが大切です。導入後のマネジメントも視野に入れて介護システムの導入を検討してみてください。
この記事の執筆者 | 千葉拓未 所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級) 専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。 以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。 生活相談員として5年間の勤務実績あり。 利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。 現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、 Webライターとして活躍している。 |
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