人手不足、記録業務の負担、シフト作成の複雑さ——介護現場が抱える課題は、年々深刻さを増しています。
そうした状況を少しでも改善しようと、近年注目されているのがAI(人工知能)の活用です。
見守りシステムや介護記録の自動化、シフト管理の効率化など、AIはすでにさまざまな形で介護の現場に取り入れられています。
この記事では、介護現場のAI活用事例を7つのカテゴリに分けてわかりやすく紹介します。
導入のメリットや注意点、活用できる補助金・支援策もあわせて解説しますので、「AIを導入してみたいけれど、何から始めればいいかわからない」と感じている施設長やリーダー層の方も、ぜひ参考にしてみてください。
目次
介護業界におけるAI活用の現状

「人が足りない」「業務が追いつかない」——そんな声が、あなたの施設でも上がっていませんか。
公益財団法人介護労働安定センターが実施した令和6年度介護労働実態調査によれば、介護事業所全体の従業員の過不足感として、不足とする事業所(「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計)は『65.2%』に上っており、前年度(64.7%)からさらに上昇しています。
(参照:令和6年度事業所における介護労働実態調査結果報告書|公益財団法人介護労働安定センター)
厚生労働省が公表した第9期介護保険事業計画に基づく推計では、2040年度に必要な介護職員数は約272万人とされており、2022年度(約215万人)と比べて約57万人の追加確保が必要とされています。
(参照:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省)
こうした状況を背景に、業務効率化の手段としてAIやICTツールの導入が急速に広まっています。
見守りシステムや記録支援ツール、シフト管理システムなど、活用の幅はここ数年で大きく広がりました。
政府も介護テクノロジーの普及を後押ししており、2025年度は総額約300億円規模の補助金・支援事業が用意されています。
人の手だけでは限界を感じている現場にとって、AIは「あれば便利なもの」から「なくてはならないもの」へと変わりつつあります。
介護現場のAI活用事例【カテゴリ別】
介護現場でのAI活用は、特定の業務だけにとどまらず、事故防止・見守りから記録業務、シフト管理まで幅広い領域に広がっています。
ここでは、実際に導入が進んでいる7つのカテゴリに分けて、それぞれの活用事例をわかりやすく紹介します。
自施設が抱える課題と照らし合わせながら、どのカテゴリから取り組めるかを考えるヒントにしてみてください。
見守り・安全管理
介護現場でもっとも導入が進んでいるAI活用の一つが、見守りシステムです。
夜間の巡視業務は職員の体力的・精神的な負担が大きく、特に夜勤スタッフの疲弊につながりやすい業務です。
AIを搭載した見守りシステムは、センサーやカメラを通じてご利用者の状態をリアルタイムで把握し、異常を検知した際に職員へ即座に通知します。
実際の導入事例では、以下のような効果が報告されています。
・夜間巡視回数の削減
AIによる常時モニタリングにより、巡視回数を40〜50%削減した施設も報告されています。
・転倒・事故の防止
危険な動作や体位変化を事前に検知し、ヒヤリハットの大幅な減少につながっています。
・職員の負担軽減
夜勤スタッフの精神的ストレスが軽減され、定着率の向上にも寄与しています。
注意すべき点として、導入時はご利用者のプライバシーへの配慮が欠かせません。
カメラ型の場合は非識別処理(シルエット化など)の技術を活用するなど、ご家族への説明と同意取得を丁寧に行うことが重要です。
まずは夜間帯の共用スペースなど、限られたエリアから試験的に始めると、現場の受け入れもスムーズに進みやすくなるでしょう。
行動モニタリング
ご利用者の日常的な行動パターンをAIで記録・分析する「行動モニタリング」も、介護現場で活用が進んでいる領域です。
見守りシステムが異常の「検知」を主な目的とするのに対し、行動モニタリングは日々の生活リズムや体調変化を継続的に把握し、ケアの質向上につなげる点が特徴です。
具体的には、以下のような場面で活用されています。
・生活リズムの把握
睡眠・覚醒・離床のパターンをデータ化し、ご利用者ごとの状態変化をいち早く察知できます。
・体調変化の早期発見
平常時のデータと比較することで、発熱や体調不良の予兆を事前に把握し、重篤化を防ぐ対応につなげられます。
・ケアプランへの反映
蓄積されたデータをもとに、より個別性の高いケア計画の立案が可能になります。
センサーやカメラの設置場所・撮影範囲については、ご利用者・ご家族へのわかりやすい説明が前提となります。
データの管理・保管ルールを施設内で整備しておくことも、トラブル防止の観点から欠かせません。
運用を始める前に「どのデータを・誰が・どこまで閲覧できるか」を明文化しておくと、スタッフ間の認識のずれを防げます。
ケアプラン作成支援
ケアプランの作成は、ケアマネジャーにとって専門性と時間の両方を要する業務です。
生成AIを活用することで、ご利用者の状態や生活歴などの情報をもとにケアプランの草案を自動生成し、作成にかかる時間を大幅に短縮できるようになってきています。
実際の活用場面では、以下のような効果が報告されています。
・作成時間の短縮
これまで1件あたり数時間かかっていたケアプラン作成が、AIの活用により大幅に短縮された事例が出てきています。
・プランの質の向上
過去のデータや類似事例をもとにAIが提案を行うため、見落としがちな視点を補いやすくなります。
・要介護度の改善予測
AIによる状態予測機能を持つシステムでは、1年後の要介護度の変化を数値で示すことができ、ご利用者やご家族への説明にも活用できます。
ただし、AIが生成するプランはあくまで「たたき台」です。
最終的な判断と責任はケアマネジャーが担うものであり、AIの提案を鵜呑みにせず、現場の実態に合わせて修正・確認するプロセスが欠かせません。
介護記録の効率化
日々の介護記録は、ケアの質を担保するうえで欠かせない業務である一方、現場スタッフにとって大きな時間的負担となっています。
AIを活用した記録支援ツールを導入することで、この介護記録にかかる負担を大幅に軽減できるようになってきています。
主な活用方法は以下のとおりです。
・音声入力による自動記録
ケア後にその場で音声を吹き込むだけで、AIがテキストに変換して記録を自動生成します。
入力のためにパソコンの前に座る時間を削減でき、その分をご利用者へのケアに充てられます。
・定型文の自動補完
よく使う表現をAIが学習し、入力の手間を省きながら記録の標準化を図ることができます。
・記録内容の分析・活用
蓄積された記録データをAIが分析し、ご利用者の状態変化の把握やケアプランの見直しに役立てることができます。
記録業務の効率化は、残業時間の削減や職員の離職防止にも影響するといえます。
介護職の離職理由として「業務量の多さ」や「事務作業の負担」が上位に挙げられることからも、記録にかかる時間を減らすことは、職員が「この職場で続けたい」と思える環境づくりにつながります。
操作に不安のあるスタッフもいるため、導入時は操作研修や定着支援の仕組みをあわせて整えることが大切です。
送迎ルートの最適化
デイサービスや通所リハビリなどの通所系サービスでは、毎日の送迎業務が職員にとって手間のかかる作業の一つです。
AIを活用した送迎ルート最適化システムを導入することで、複雑な条件を自動で整理し、効率的な配車計画を短時間で作成できるようになります。
具体的には、以下のような場面で効果を発揮します。
・ルート計画の自動作成
ご利用者の自宅住所・乗降時間・車両台数・ドライバーの配置などの条件をもとに、AIが最適なルートを自動で算出します。
これまで担当者の経験と勘に頼っていた作業を、短時間で標準化できます。
・突発的な変更への対応
急なキャンセルや追加が発生した際も、AIが即座にルートを再計算するため、手修正の手間を大きく減らせます。
・担当者が替わっても品質を維持
特定のスタッフしかルートを組めない状態を防ぎ、誰でも一定の品質で送迎計画を作成できる体制が整います。
自施設の車両台数や対応エリアの地理的条件に合ったシステムを選ぶことが重要です。
山間部や複雑な道路環境がある場合は、実際の運行データを反映できる機能があるかどうかも確認しておきましょう。
シフト管理・勤務計画の自動化
介護施設のシフト作成は、職員の勤務条件・希望休・資格・夜勤回数など、考慮すべき要素が多く、担当者にとって負荷の大きい業務です。
AIを活用したシフト管理システムを導入することで、こうした複雑な条件を自動で処理し、公平で効率的なシフトをすばやく作成できるようになります。
実際に、埼玉・千葉・神奈川を中心に30以上の拠点で在宅介護サービスを展開するケアサポート株式会社では、シンクロシフトの導入により、作成から修正まで数時間かかっていたシフト業務が45分程度に短縮された事例が生まれています。
また、AIが公平にシフトを組むことで職員からの不満が減り、リーダーの精神的な負担軽減にもつながっています。
AIによるシフト管理で期待できる主な効果は以下のとおりです。
・シフト作成時間の大幅な短縮
手作業で数時間〜数日かかっていた作業が、AIの自動生成により短時間で完了します。
・公平なシフト配分の実現
AIが条件に基づいて客観的にシフトを組むため、特定の職員への負担集中や不公平感を解消しやすくなります。
・属人化の防止
これまでリーダーだけが担っていたシフト作成を標準化することで、引き継ぎや分担がしやすい体制を構築できます。
介護施設向けシフト管理システムの種類や選び方については、以下の記事もあわせてご覧ください。
また、日本介護センター様の導入事例も参考にしてみてください。
コミュニケーション・レクリエーション支援
ご利用者の生活の質(QOL)向上を目的に、会話や活動をサポートするAIロボットの導入も進んでいます。
人手不足の中でも、ご利用者一人ひとりと向き合う時間を確保したいという現場のニーズに応える形で、活用の幅が広がっています。
主な活用場面は以下のとおりです。
・会話ロボットによるコミュニケーション支援
AIを搭載した会話ロボットがご利用者に話しかけたり、質問に答えたりすることで、孤独感の軽減や認知機能の維持につながります。
職員が対応できない時間帯でも、ご利用者の話し相手になれる点が現場から評価されています。
・レクリエーションの自動進行
体操やゲームの司会をAIロボットが担うことで、職員はご利用者の個別サポートや安全確認に集中できます。
厚生労働省・テクノエイド協会が発行した介護ロボット導入活用事例集でも、PALROの活用によりご利用者の活動参加が促進された事例が紹介されています。
(参照:介護ロボット導入活用事例集2022|厚生労働省・公益財団法人テクノエイド協会)
・メンタルヘルスへの寄与
定期的な会話を通じてご利用者の感情状態をAIが把握し、気分の変化を職員に知らせる機能を持つシステムも登場しています。
ロボットに対する拒否感を持つご利用者もいるため、全員に一律に導入するのではなく、希望や反応を確認しながら段階的に活用範囲を広げていく進め方が現場になじみやすいでしょう。
まずは共用スペースでのレクリエーション場面から取り入れ、反応を見ながら個別対応へ広げていくとスムーズです。
介護現場にAIを導入するメリット

介護現場へのAI導入は、業務効率化はもちろん、現場スタッフの働きやすさやケアの質向上、施設運営の改善まで、多方面にわたる効果が期待できます。
ここでは、代表的な4つのメリットをご紹介します。
現場スタッフの業務負担を軽減できる
AIの導入によって、記録業務やシフト作成、送迎計画など、これまで手作業で行っていた業務を自動化・効率化できます。
日々の業務に追われる中で、こうした間接業務にかかる時間を削減できることは、現場スタッフにとって大きな負担軽減につながります。
限られた人員でも質の高いケアを提供し続けるために、AIは現場の強力なサポーターとなります。
ケアの質・ご利用者満足度が向上する
業務負担が軽減されることで、スタッフがご利用者と向き合う時間を確保しやすくなります。
また、行動モニタリングやケアプラン作成支援などのAI機能を活用することで、一人ひとりの状態変化に合わせた個別ケアが実現しやすくなります。
「こなすケア」から「寄り添うケア」へ転換していくうえで、AIは大きな役割を果たします。
人材定着・離職率改善につながる
業務負担の軽減や公平なシフト配分は、職員の職場満足度に大きく影響します。
「業務が多すぎる」「シフトが不公平」といった不満が離職のきっかけになるケースは少なくありません。
AIを活用して働きやすい環境を整えることは、採用コストの削減や施設の安定運営にもつながる重要な投資といえます。
データ活用で施設運営を最適化できる
AIが蓄積するケア記録や勤務データは、施設運営の改善にも活用できます。
たとえば、人員配置の偏りや業務量の集中を数値で把握し、適切な対策を講じることが可能になります。
勘や経験に頼るだけでなく、データに基づいた意思決定ができる体制を整えることが、これからの施設経営には欠かせません。
AI導入を進める際の注意点・課題
AIの導入は現場に多くのメリットをもたらす一方で、事前に把握しておくべき注意点もあります。
導入後に「思っていたものと違った」「結局、現場で使われなくなった」とならないよう、以下の4つのポイントを事前に確認しておきましょう。
導入コストと費用対効果を事前に見極める
AIシステムの導入には、初期費用・月額利用料・保守費用など、一定のコストがかかります。
重要なのは「いくらかかるか」だけでなく、「導入によってどれだけの業務時間が削減できるか」「スタッフの負担がどう変わるか」を具体的にイメージして費用対効果を検討することです。
自施設に合うかどうかを見極めるためにも、まずは無料トライアルや小規模な試験導入から一歩踏み出してみましょう。
現場スタッフへの丁寧な説明と研修が不可欠
新しいシステムの導入時に壁となりやすいのが、現場スタッフの抵抗感です。
「操作が難しそう」「自分の仕事が奪われるのでは」といった不安を払拭するには、導入の目的やメリットをわかりやすく伝え、実際に使いながら慣れていける研修の場を設けることが大切です。
若手リーダーや意欲的なスタッフを巻き込んで推進役を育てると、現場への定着がスムーズになります。
個人情報・プライバシー保護への対応
見守りシステムや行動モニタリングなど、ご利用者のデータを扱うAIツールを導入する際は、個人情報の取り扱いに細心の注意が必要です。
厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に沿った運用体制を整えるとともに、ご利用者・ご家族への説明と同意取得を徹底しましょう。
(参照:厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等|厚生労働省)
ベンダー選定は実績とサポート体制で判断する
AIシステムは導入して終わりではなく、運用を続ける中で疑問や課題が生じることがほとんどです。
選定の際は、介護業界での導入実績はあるか、自施設と同規模・同業態での成功事例があるかを確認するとよいでしょう。
また、導入後のサポート体制が充実しているかどうかも、長く使い続けるうえで欠かせない判断基準となります。
国の支援策・補助金を活用してAI導入コストを抑える
国は介護テクノロジーの普及を後押しするため、毎年度、補助金・支援事業を設けています。
要件や予算規模は年度ごとに異なるため、最新情報を都度確認することをおすすめします。
・介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)
介護ロボットやICT機器の導入費用を補助する制度です。
2025年度の予算規模は97億円の内数で、補助率は導入費用の1/2〜3/4程度(要件により異なる)となっています。
介護ロボット、介護ソフト、タブレット端末、Wi-Fi環境整備費なども対象となります。
(参照:介護テクノロジー導入支援事業(令和7年度)|厚生労働省)
・2024年度補正予算による上乗せ支援(25年度繰り越し実施)
「介護人材確保・職場環境改善等に向けた総合対策(介護テクノロジー導入・協働化等事業)」として、予算規模200億円の支援が2025年度に繰り越し実施されています。
通常の補助率より事業者負担が少なく(75〜80%助成)、機器の更新時にも活用できる点が特徴です。
厚生労働省はこちらの補助金を優先的に活用するよう求めています。
補助金の申請窓口は都道府県ごとに異なり、公募時期や締切も毎年変動します。
自施設が所在する都道府県の担当窓口や、厚生労働省の最新情報をこまめに確認するようにしましょう。
(参照:介護ロボットの開発・普及の促進|厚生労働省)
まとめ
介護現場におけるAI活用事例は、見守り・安全管理から行動モニタリング、ケアプラン作成支援、介護記録の効率化、送迎ルートの最適化、シフト管理、コミュニケーション支援まで、幅広い領域で実用化が進んでいます。
各事例に共通しているのは、「スタッフの負担を減らし、ご利用者と向き合う時間を増やす」という目的です。
まずは自施設が抱える課題を整理し、解決につながりそうなカテゴリから一つずつ取り組んでみることをおすすめします。
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導入施設では、数時間かかっていたシフト作成が45分程度に短縮されるなど、現場レベルでの効果が出始めています。
まずは無料トライアルからお気軽にお試しください。
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この記事の執筆者![]() | シフトライフ編集部 介護業界で働く方向けに、少しでも日々の業務に役立つ情報を提供したい、と情報発信をしています。 |
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