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【教えて!】介護記録で使ってはいけない言葉・禁止用語についてわかりやすく解説!

介護記録で使ってはいけない言葉・禁止用語

介護記録は、サービスを提供した証拠やご家族・他職員との情報共有といった観点において重要な業務のひとつです。
 
しかし、使ってはいけない言葉や禁止用語を正しく理解していないと、うまく情報が伝わらなかったり不信感を与えたりする可能性があります。
 
この記事では、介護記録における使ってはいけない言葉・禁止用語について、その理由や言い換え方法について解説します。
 
また、介護記録の目的や書き方のポイントについても紹介しますので、介護記録について知識を深めたい方や知識を見直したい方はぜひ参考にしてください。

介護記録で使う言葉・用語に気を付けなければならない理由

食事をする入居者と記録を取る介護士

介護記録において、使用する言葉・用語に気をつける必要があります。その理由は、主に以下の4点です。

介護記録で使う言葉・用語に気を付けなければならない理由

 
1.介護現場のみならずさまざまな関係者が記録を確認するから
2.介護記録は公的な書類であるから
3.事故が発生した場合の証拠となるから
4.正しい記録や用語の使用は業務を効率化ができるから

介護記録は、現場で働く介護職員だけが見るものではなく、ご家族や医療職・リハビリなどの専門職も確認します。そのため、誰が見てもわかりやすい記録であるとともに、不快感を与えるような表現は避けなければなりません

さらに、行政が介護施設・事業所に対して行う運営指導のときにも介護記録はチェックされます。介護計画に沿ったケアがされているのか、記録から虐待などの不適切なケアが見られないか、を確認されるのです。ご利用者の人格を否定していたり、尊厳が守られていない記載があると指導対象となります。

また、客観的な事実がわかりやすく書かれた記録は、事故発生時の証拠となりえます。実際に事故現場に出くわした職員が適切に記録することで、発生時の状況や発生後の対応が本当によかったのかを確認できるのです。

介護現場において、ご本人の状況や介護職員が対応したケア内容の記録は、とても重要な業務のひとつです。

上記の点から、使用する言葉・用語に気を付けると、記録するときのポイントがわかり、記録業務であれこれ悩まずに効率よく記録できます。

介護記録において使う言葉や用語に気を付けることは、ご利用者の安全や安心を守り、適切な事業所・施設運営の証拠となります。

介護記録で使ってはいけない言葉や禁止用語

介護記録業務のときに使ってはいけない言い回しや禁止用語は、次の5つです。

介護記録に使ってはいけない言葉や禁止用語

 
1.侮辱的な言葉
2.命令・指示的な言葉
3.専門的な言葉・用語
4.診断のない医療用語
5.主観的な言葉

それぞれ具体例を挙げながら解説します。

侮辱的な言葉

介護記録において、最も禁止しなければならない言葉は「侮辱的な言葉」です。直接的にご本人に伝えることはもってのほかであり、他職員との情報共有時にも避けるべき言葉です。

侮辱的な言葉とその言い換え方法については、以下の例を参考にしてください。

侮辱的な言葉 例 言い換え 例
しつこく話をされた 5分おきに、介護スタッフに対して「〇〇」とお話しされていた
ボケている・認知がみられる ・(衣類を着る時)うまく上着を着れない様子が見られた
・お食事の声かけをするも、職員に娘様のお話しをされている
勝手に外に出ようとした ご自身で玄関まで向かい、靴を履こうとされていた

 

とくに、上記のような言い方は、ご利用者の人格を無視している表現だといえます。ご利用者の行動に対し「認知症があるから」などで終わらせるのではなく、具体的に記録することでケアを見直す機会ができ、サービスの質向上にもつながります。

命令・指示的な言葉

介護職員が、ご利用者に生活動作を支援するときに、命令や指示口調での記録は避けましょう

具体的な言葉と言い換え例は、下表のとおりです。

命令・指示的な言葉 例 言い換え 例
ごはんを食べさせた 「〇〇はいかがですか?」とお食事内容を声かけしながら介助を行った
水分補給を促した 「今日はコーヒーを準備しましたよ」とおすすめした

 

命令や指示の言葉は、まるでご利用者と介護スタッフに上下関係があるような印象を与えます。ご家族からすると、「私の親にいつもそんな接し方しているのか?」と不安や不満を感じてしまいかねません。

できるだけ同じ目線で、寄り添っている表現を使用するようにしましょう。

専門的な言葉・用語

介護業界には、日常ではなかなか使われない専門用語があります。誰にとってもわかりやすい記録を心がけるうえで、以下のような専門的な言葉・用語は控えるようにしましょう。

専門的な言葉・用語 例 言い換え 例
徘徊している フロアと居室を30分ほど行き来されている
傾眠し、食事摂取できない 食席で10分ほどうとうとされている。職員が〇〇様に声かけをするも応答していただけない
体交(体位交換)実施 寝返り介助を行う

 

専門的な言葉は意味を知っている人ならばすぐわかりますが、全く知らない人や新人介護職員からすると理解できません。また、ご家族からすると「なんだか難しい言葉で何されているのかわからない」と不安感を与えてしまう可能性もあります。

生活にかかわる介護だからこそ、日常生活で使う言葉で記録するようにしましょう。

診断のない医療用語

診断されていない医療用語を介護記録で使用することは避けましょう。とくに、事故が発生した時やご利用者の状態が急変した時では、医師の診断が出るまで使わないようにすることが重要です。

診断のない医療用語 例 言い換え 例
転倒しているところを発見。左大腿部が骨折している。 左半身を下にして転倒しているところを発見する。ご本人に声かけすると「左足が痛い」と言われており、職員が確認すると赤みが見られ腫れあがっている。「痛くて動かせない」と仰られている。すぐに看護師に報告する。
熱発あり、誤嚥性肺炎の様子 職員がご本人の身体に触れるとかなり熱く感じたため、体温測定すると38.4℃を確認する。ご本人に声かけするも痰のからんだ咳を何度もされている様子が見られる。

 

客観的な様子を記録し、その時の状況や現場責任者や医療職へ適切な情報を伝えることが求められます。特変時であってもありのままの状態を詳しく正確に記録するようにしましょう。また、事故だけでなくヒヤリハットを正しく記録すると、より大きな事故を防ぐこともできます。

ヒヤリハットの書き方やそのポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてください。

主観的な言葉

介護記録は、ご利用者の行動・言動に介護職員が何をどのようにケアしたか、という客観的な事実を記載することが必要です。そのため、介護職員の感想や思ったことなどの主観的な表現は使用しないようにしましょう。

主観的な言葉 例 言い換え 例
レクリエーションを楽しんでいる レクリエーションでクイズ大会を行い、ご自身が正解すると笑顔が見られた
いつもより食欲がある 朝食時、主食10割・副食8割召し上がる

 

介護職員の主観的な表現が入ってしまうと、事実がどうだったのかが伝わりづらくなります。実際に起きた内容について正確に客観的に書くことが大切です。

介護記録の書き方のポイント

介護記録の書き方についてアドバイスを受ける介護職

介護記録を書くときには、まず5つの基本を意識しましょう。

介護記録の書き方 5つの基本

 
1.5W1Hを意識する
2.なるべく客観的に事実を書く
3.「だ・である」調で記録する
4.情報源を明確にする
5.簡潔にまとめる

場所や時間が曖昧になったり、介護職員の主観的な表現が入ったりすると、少しズレたニュアンスで伝わってしまいます。とくに、事故や急変時に客観的な事実がないと、ご家族や関係者からみると「その時の対応がよくなかったのではないか?」と大きなトラブルに発展しかねません。

介護記録業務は、新人職員にとって「何をどうやって書けばいいのかわからない」と難しく感じる業務のひとつです。負担を少なくするためには、以下の効率よく記録できるポイントをチェックしましょう。

介護記録を効率よく書くポイント

 
・記録を重複させない
・丁寧に書くべきポイントをおさえる
・適切な言葉選びを考える

また、忘れないようにメモを準備したり、他職員の書き方を参考にしたりすることも必要です。

介護業務にまだ慣れていない新人職員や「記録が苦手」と感じている職員にとって、記録は負担の大きい業務です。とくに事故発生時やご利用者の急変時に、さまざまな対応に追われた後に記録がまだ残っている状態だと精神的にもつらくなってしまいます。

できるかぎり効率的に、かつわかりやすい記録を書くために、ポイントを把握し取り組みましょう。

介護記録の基本やケア別記録方法の例文についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

介護記録の目的を理解し、適切な言葉遣いで書くことが大切

ご利用者の状況や介護ケアを記録するときには、介護記録の目的を理解し、適切な言葉遣いで書くことが重要です。

介護記録の目的は、主に以下の3つです。

1.ケアの質を向上させるため
2.ご家族や他職員・職種との情報共有を図るため
3.介護サービスを提供した証拠となるため

とくに施設サービスにおいて、ご利用者を24時間介護するため、記録による情報共有は不可欠です。職員間でご利用者の安心につながるケアや、反対に事故につながるご本人の状況を記録によって共有すると、介護施設においてサービス全体の質を向上できます。

サービスの質を向上させると同時に、ご家族や他職員・職種がわかりやすく適切な言葉を使った記録を確認できると、介護ケアや事業所・施設への安心につながります。「私の親が良いサービスを受け、元気になった」と、サービス利用の証拠となるとともに信頼が得られるのです。

介護現場で使ってはいけない言葉や禁止用語を理解し、わかりやすく適切に書かれた介護記録は、サービスの質を向上させるとともにご利用者・ご家族が安心できるツールとなりえるでしょう。

まとめ

介護記録は、他職員との情報共有や事業所運営における重要な業務のひとつです。しかし、禁止用語や不適切な言葉を使用していると、第三者からみるとわかりづらかったり「ご利用者の人格や尊厳を傷つけているのでは?」と不信感を与えたりしてしまいます。

まずは、不適切な言葉・禁止用語を使っていないか自身でチェックし、客観的にわかりやすく書く意識をもつことが大切です。ポイントを把握したうえでご利用者の状況や行動を言語化できるようになると、効率よく記録業務に取り組めることでしょう。

また、ShiftLifeでは介護業務に関する記事を多数掲載しています。介護業界でスキルアップしたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。

 

この記事の執筆者しょーそん

保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了

グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。
現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。

現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。

 

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