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【今さら聞けない!】「介護の申し送り」の目的、重要性を理解してスムーズに行うコツとは?

「介護の申し送り」の目的、コツ

・また申し送りでつまずいた…
・毎回、何をどう伝えたらいいのか悩む…
・スムーズに申し送りする方法は?

 
あなたは、介護の申し送りが苦手だと思い込んでいませんか?申し送りが苦手と感じるのは決してあなただけではありません。
多くの介護職員が同じ課題を抱えています。
 
本記事では、現役の介護福祉士として有料老人ホームに10年以上勤める筆者が、介護の申し送りをどこよりも分かりやすく解説。
 
記事の中では、介護の申し送りの目的と重要性、そしてスムーズに行うコツについて詳しく紹介しています。最後まで読むと、申し送りをする上での不安が解消され、効果的な情報伝達ができるようになるでしょう。
結果として、ご利用者により良いケアが提供できるようになります。申し送りは、コツと経験により、誰でも素早く正確に伝えられるようになります。
介護歴が浅く、申し送りに苦手意識の強い介護職員は、ぜひ最後まで読んでください。
また、新人介護スタッフに申し送りのコツを伝えたい介護リーダーも参考になるはずです。

介護の申し送りとは

申し送りをする介護職員

介護の申し送りとは、ご利用者の状態変化やその日の出来事を、介護職が別の介護職へ伝達することを言います。ご利用者の安全と快適な生活を支えるためには、介護職員間で正確な情報の共有が不可欠です。

もし仮に申し送りがなければ、ご利用者の心身の変化に気づくのが遅れてしまいます。トラブルが生まれ、最悪の場合、ご利用者の命に直結することもあるのです。

申し送りは、ケアを円滑に進めるために必要不可欠なプロセスです。重要性を理解して実践することが求められます。

申し送りと引き継ぎの違い

申し送りと引き継ぎは、似ているようで実は異なります。申し送りは情報の伝達を目的としています。

一方、引き継ぎは情報を更に深ぼることで「どんなことに気を配りながらケアするのか」相手が理解できるよう落とし込むことです。例えば、食事量が減少しているご利用者がいた場合、減少しているという事実を申し送ります。

そして「かむことが難しそうなので、次の食事では、あらかじめ刻んで提供してみてください」と伝えることが引き継ぎです。

申し送りと引き継ぎは、似ているようで意味合いが少し違うことに気をつけましょう。

介護現場で申し送りをする目的、理由

介護施設の高齢者と介護職員

申し送りは、できごとを伝えるだけではありません。意義をしっかり理解して、効果的な申し送りにしていきましょう。

申し送りをする目的と理由を解説します。

ご利用者に適切な介護サービスを提供するため

申し送りはご利用者に適切な介護サービスを提供するために必要です。ご利用者の状態やニーズは日々変化するため、正確な情報共有が大切だからです。

例えば、ご利用者が発熱したとします。

・看護師と情報共有しているか?
・ご利用者の水分摂取量はどれくらいか?
・ご家族への報告はしているか?

など、申し送りで伝えるべきことはたくさんあります。

ご利用者に適切な介護サービスを提供し、満足度と安心度を向上させるために、申し送りは必要です。

事故・トラブルの発生を防止するため

申し送りは事故やトラブルを防止するためにも重要です。情報不足や誤った情報が、事故やトラブルの原因となる可能性があります。
そのため、正確かつ適切な情報を共有することが重要なのです。

例えば、あるご利用者が転倒しやすい状態にあると判明したのであれば、

・靴の見直し
・居室の動線確認
・福祉用具の利用

など、すぐに取り組むべきことが見えてきます。申し送りは、事故やトラブルを防止するために重要です。

ケアプランや業務内容を見直し・改善するため

申し送りは、ケアプランや業務内容を見直し、改善するためにも有効です。申し送りを通じて得られるフィードバックは、サービスの質を向上させるための貴重な機会となるからです。

例えば、ご利用者が新しく取り組んでいるリハビリに、良い反応を示していたとします。しかし、それを1人のスタッフが知っているだけではいけません。

介護職員・看護師・リハビリスタッフ・ケアマネなども、同じ情報を常に共有することで、最適なケアプランに素早く変更できるのです。

また、申し送りは業務内容の

・効率化
・最適化
・単純化

などをしていくための、貴重な意見交換の場となります。申し送りは、ケアプランや業務内容を見直し、改善するために必須と言えます。

介護現場の申し送りで伝える7つの内容

利用者の情報を入力する介護職

申し送りは、必要な情報の取捨選択が大切です。ここでは、申し送りで伝えるべき内容について解説します。

以下のような情報を、申し送りで共有しましょう。

・ご利用者の体調や精神状態の変化
・ご利用者の要望やご家族からの連絡
・施設内で起こった事故やトラブルの報告
・医師や看護師からの指示や伝達事項の共有
・その日のスケジュールや連絡事項
・自分が行った業務の報告や引き継ぎ
・自分の気付きや意見、相談事項

それぞれ解説します。

ご利用者の体調や精神状態の変化

ご利用者の心身に変化があれば必ず伝えましょう。ご利用者の健康や気持ちに関わることは、生活していく上で最も大切なことです。

例えば、

・今日は風邪をひいて熱がある
・最近元気がなくて食欲がない
・昨日は怒りっぽくて暴言を吐いた

などがあれば伝えます。上記を伝えることで、ご利用者の病気や不安に早く気づいて、適切な対応がとれます。

ご利用者の体調や精神状態の変化は必ず伝えましょう。

ご利用者の要望やご家族からの連絡

ご利用者の要望やご家族からの連絡は確実に伝えてください。きちんと伝達しなければ、クレームになることがあるからです。

例えば、

・明日は友達に会うと言っている
・今日は息子さんから電話があった
・明後日は病院に行くから食事はいらない

などです。

要望がきちんと伝わっていれば、ご利用者とご家族から信頼を勝ち取れます。確実に伝えましょう。

介護施設内で起こった事故やトラブルの報告

介護施設内で起こった事故やトラブルも確実に伝えましょう。ご利用者の安全・安心に関わるため、必須です。

例えば、

・今日は転倒して怪我をした
・昼食のときに食べ物を詰まらせてせき込んだ
・他のご利用者と口論になった

などです。

トラブルは必ず起こるものですが、大切なのは「失敗から学ぶこと」。

事故やトラブルは必ず情報共有してください。

医師や看護師からの指示や伝達事項の共有

医師や看護師からの指示や伝達事項に関して、伝え忘れは許されません。医療情報は、高齢者にとって命に直結する可能性があるからです。

例えば、

・薬の種類や量を変えた
・血圧や体温を測るように言われた
・明日は検査を受けることになった

など、重要なことばかりです。医師や看護師からの指示や伝達事項は、必ず正しく伝えましょう。

その日のスケジュールや連絡事項

ご利用者・職員全体に関する連絡事項なども、介護職員間で申し送りをしましょう。

例えば、

・今日は午後からレクリエーションがある
・明日は施設全体の避難訓練がある
・来週は職員研修があるのでシフトが変わる

などです。

介護現場は生活の場であるため、こまごまとしたことや、介護に直接関係のない用事などもあります。広い視点を持ち、伝達内容を考えることが大切になります。

自分が行った業務の報告や引き継ぎ

ある仕事に対して、自分がどこまで関わったかを明確にして、申し送りしましょう。進捗を明らかにしておかなければ、どこから引き継いでよいのか分かりません。

例えば「シーツ交換を◯◯号室まで終わらせました。〇〇号室から〇〇号室までを、明日お願いします」と書いてあれば引き継ぎも分かりやすいです。

スムーズでムダのない仕事をするためにも、自分がどこまで関わったかを明確にして、申し送りしましょう。

自分の気付きや意見、相談事項

事実に対して、自分が感じたことや必ず伝えておきたいことがあれば、申し送りをしましょう。実際に現場にいた者にしか分からない「肌感」が存在するからです。

例えば、ある認知症のご利用者が「物を盗られた」と不穏になっていたとします。事実だけを述べるのであれば「物を盗られたと勘違いして立腹した」と伝えるだけです。

ただし、今にも暴力を振るう素振りがあったため、近づくのは危険だと思ったとします。そこで「職員一人では非常に危険をともないます。必ず、2人以上の職員で対応するようにしてください」などと添えることで、リアルな温度感が相手にも伝わるのです。

事実と一緒に、現場で感じたことも伝えるようにすると良いでしょう。

介護現場での申し送りの方法

ICTツールを活用し情報共有をする介護職

申し送りの方法は、口頭と介護記録の2通りあります。情報の正確さや伝達の速さ、記録の残り方が異なるため、状況に応じて最適な方法を選んでください。

それぞれの特徴を解説します。

口頭

口頭での申し送りは、直接の対話を通じて情報共有します。口頭での申し送りは情報を迅速に伝え、即時のフィードバックを得られるため、効率的なコミュニケーションを実現できるのです。

例えば、シフトの交代時に次の担当者に対して、ご利用者の状態や特記事項を直接話します。口頭なら、すぐに情報共有と疑問点の解消が行えるのです。

ただし、口頭での申し送りは、迅速かつ効率的な情報共有を可能にする一方で、あとで確認することが難しいという欠点があります。記録が残らないリスクを念頭に置きながら、急いで伝えるべきことは口頭で行いましょう。

介護記録

介護記録を用いた申し送りとは、書面で情報共有することです。記録に残すことで、あとから事実確認が簡単になります。

口頭だと、トラブルが起きた際に、言った言わないの水掛け論になることがあります。ただし、介護記録を用いた申し送りは、記録が残るメリットがある一方、情報の共有に時間がかかるデメリットもあります。

すぐ伝えなくても良いことは、介護記録に残すものと認識しておきましょう。

申し送りをスムーズに行うコツ

申し送りで伝えるべきことが分かったとしても、実際に人に伝えるのはむずかしく感じるものです。ここでは、スムーズな申し送りのコツをお伝えします。

正確な情報を伝える

申し送りにおいて正確な情報を伝えることは基本中の基本です。誤った情報は、ご利用者へのケアに悪影響を及ぼすと心にとどめておきましょう。
事実を、ありのまま伝えることが大切です。

まずは「多分や恐らく」を捨てて、正しい情報を伝えることに注力しましょう。

簡潔に伝える

申し送りは情報を簡潔に伝えることが重要です。余計な情報が多いと、重要なことが埋もれてしまいます。申し送りをしている本人からすれば、すべてが重要で、きちんと伝えているだけかもしれません。

しかし、だらだらした長い話は、聞く側の集中力が続かず混乱してしまいます。要点を明確にして、簡潔に伝えるようにしてください。

方法としては、のちほど解説する「5W1H」や「PREP法」を使うと簡単です。

事実と意見を分けて伝える

申し送りでは、事実と意見を明確に分けて伝えることが重要です。事実と意見が混ざってしまうと、情報の解釈が難しくなります。

例えば、ご利用者の食事摂取量が少なかった場合。

申し送り例

事実:Aさんは食事の摂取量が少なかったです。
意見:おそらく、食事の前に居室でお菓子をたくさん食べていたのが原因ではないかと思います。

というように、事実と意見を分けて伝えることで、情報の伝達が明確かつ効率的に行えます。

話の順序を組み立てる

申し送りでは、話の順序を適切に組み立てることが重要です。話の順序が整っていないと、情報の伝達が難しくなります。

何から話せばよいか分からない人は「PREP法」を使うと良いでしょう。

PREP法で伝える

PREP法とは、主張→理由→詳細→主張の順番に話すことです。例をあげます。

PREP法の伝え方例

主張:ご利用者Aさんが居室内で、仰向けに転倒しているのを発見しました。
理由:ご本人に確認すると、トイレに行こうとして、ベッドから立ち上がったときにフラついてバランスを崩したとのこと。
詳細:外傷はないが、大腿部に痛みの訴えがあるため、ストレッチャーに臥床していただきバイタル測定。看護師に報告する。
主張:すぐに近くの整形外科へ搬送となりました。

という感じで伝えるようにしてください。要点が伝わりやすい申し送りができるようになります。

5W1Hで伝える

また、「5W1H」を活用するのもおすすめです。おなじみですが、

When(いつ)
Where(どこで)
Who(だれが)
What(なにを)
Why(なぜ)
How(どのように)

の順番に話します。例に当てはめると、

When(いつ):8:45
Where(どこで):共用のリビングで
Who(だれが):◯◯号室の◯◯さんが
What(なにを):ソファからずり落ちていた
Why(なぜ):座りがあさかったから
How(どのように):時間の経過とともに少しずつずれて落ちてしまった

という具合になります。5W1Hを使うことで、物事の状況や内容を客観的に整理し、分かりやすく伝えることができます。
また、問題の本質や解決策も見つけやすいためおすすめです。

申し送りのテンプレートを作っておく

テンプレートを作成しておくことも、効率的な申し送りを実現するために有効です。テンプレートを使用することで、どのような情報を伝えるべきか明確になり、時間の節約にもつながります。

・転倒したとき
・不穏になったとき
・食欲がないとき

など、シーン別の伝えることのテンプレートを用意しておきましょう。一定の基準を満たした申し送りが誰でもできるようになります。

「誰でもできる」というのがポイントです。

介護の申し送りが苦手、という介護職員は多い

申し送りが苦手という介護職員は多いです。なぜなら、申し送りは正確で効率的なコミュニケーションを求められるため、スキルが未熟な介護職員には難しく感じるのです。

情報の伝達が不十分だと、ご利用者へのケアに悪影響を及ぼしたり、申し送る相手に迷惑をかける可能性もあります。ただ、回数を積めば申し送りは誰でもできるようになります。

むずかしそうに思うかもしれませんが、申し送りは「ユーモアを交えて、周りの人間を笑わせましょう」といったハードルの高いものではありません。

簡単に言えば、実際に起こったことを簡潔に伝えるだけです。よって、いずれは誰でもできるようになります。

むずかしく感じていたとしても、あきらめずにやってみるという精神で取り組めば、必ず身につくスキルと言えるでしょう。

コツを押さえることで申し送りをスムーズに

笑顔の介護士

いくら「慣れたらできる」と言われても、緊張してうまくできない人もいるのではないでしょうか?どうしても緊張して申し送りがうまくできない人は、コツを押さえましょう。

本記事で紹介したコツや、筆者が実践していることを改めて整理します。

介護の申し送りのコツ まとめ

・PREP法や5W1Hを意識して正確で簡潔に伝える
・事実と意見を分けて伝える
・メモを取り、事前に情報を整理しておく
・業務に支障をきたさないため長くても15分で終わらす
・長い申し送りは集中力が切れてしまう
・自信を持ってハキハキとテンポよく話す
・詳細は申し送りノートなどに記入する
・口頭では要点を簡潔に伝えて伝達漏れや伝達ミスを防ぐ
・シーン別のテンプレートを用意する
・申し送りは継続することで上達するため安心してよい

まとめ

申し送りとは、ご利用者の状態変化やできごとを次の職員へ引き継ぐことです。正しい申し送りは、事故やトラブルの少ない適切なサービスを提供するには必須です。

申し送りで伝えるべきことは大きく分けて7つあり、口頭または介護記録によって行います。申し送りは、正確な情報を簡潔に伝えることが求められ、事実と意見を分けることも大切です。

PREP法・5W1Hなどを利用すれば、ムダのない申し送りが可能となります。また、申し送りをむずかしく感じる介護職員がいるかもしれませんが、経験を積めば誰でもできるようになります。

まずは、先輩職員をマネることから始め、少しずつ慣れていくと良いでしょう。

この記事の執筆者
あっきー

保有資格: 介護福祉士・レクリエーション介護士2級・認知症ケア指導管理士

介護付き有料老人ホームに10年以上勤務。介護リーダーを5年半経験しています。
現在は長い現場経験と介護リーダー経験を生かして介護特化ライターとしても活動中。

 

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