知識・技術

最終更新日

【2024年改訂対応】認知症ケア加算とは?算定要件と必要な研修、注意点について

認知症ケア加算とは?算定要件など解説

65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24年(2012)年は、認知症高齢者数が462万人と65歳以上の高齢者の約7人に1人であったが、令和7年(2025)年には、約5人に1人が認知症になるという推計もあり、もう誰もが他人事ではなくなっています。
 
こうした背景から、認知症高齢者への介護支援体制を整える必要があり、対象となるサービスでは、認知症の知識が豊富で、適切な対応が出来る職員を配置している事業所では、認知症専門ケア加算」を算定することが出来ます。
 
今回は、「認知症専門ケア加算」の算定用件や加算が取得できる種別、必要な研修などを詳しく解説していきます。

認知症の人の将来推計

参考:図表3-2-11 認知症の人の将来推計

認知症専門ケア加算とは

認知症専門ケア加算とは、認知症に関する専門的な研修を受けた介護職員を配置した事業所が、認知症の利用者を受け入れ、認知症ケアに関する会議や研修などを実施していることを評価する加算です。

前回の2021年の改定でも、加算が取得できる種別などの見直しが実施されましたが、訪問介護での加算(Ⅰ)の算定率がおよそ0.01%、定期巡回、随時対応型訪問看護では0.7%と算定率は低迷しています。

低迷している背景には、算定要件の一つである認知症自立度の割合が、必ずしも各サービスの利用者実数と合致していないケースがあると考えられます。

サービス事業所は、制度をよく理解し、適切に活用しながら、サービスの質の向上を図って行くことが求められています。

2024年度改定以前の算定要件

2024年度改定以前の算定要件は以下のようになります。

認知症専門ケア加算(Ⅰ)

・認知症の利用者(日常生活自立度(Ⅲ)以上)が利用者全体の半数以上である

・認知症介護実践リーダー研修及び認知症看護にかかる適切な研修を受講済みの職員が、認知症の利用者(日常生活自立度(Ⅲ)以上)が20名未満の場合は1人以上、20名以上の場合は1人に加え、対象者が19人を超えて10又はその端数を増すごとに1を加えた数以上を配置し、チームとして専門的な認知症ケアを実施している。

・当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に関わる会議を定期的に開催している。

認知症高齢者の日常生活自立度の確認は、要介護認定の実施において医師が作成した主治医意見書を用いて、サービス担当者会議などを通じて、介護支援専門員より情報を共有してもらいます。

認知症専門ケア加算(Ⅱ)

・認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件を満たし、かつ、認知症介護指導者養成研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導などを実施している。

・介護、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施又は実施を予定している。

2024年度の改定後も変更のあった下記4種別以外の種別は、上記加算要件のまま見直しは行われておりません。

2024年度改定による変更点

2024年度の改定で、訪問介護、訪問入浴介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護について、認知症高齢者の重症化緩和や日常生活自立度IIの者への専門的ケアを行うことを評価する観点から加算要件が見直されています。

「認知症専門ケア加算(Ⅰ)」

・認知症高齢者の日常生活自立度(Ⅱ)以上の者が利用者の50%以上。
(改定前は自立度(Ⅲ)以上の者が50%以上)

・認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度II以上の者が20人未満の場合は1人以上、20人以上の場合は1人+当該対象者の数が19を超えて10、または端数を増すごとに1人以上配置する。
(現在は計算のベースが自立度(Ⅲ)以上の者)

・認知症高齢者の日常生活自立度(Ⅱ)以上の者に対し専門的な認知症ケアを実施する
(現在は自立度(Ⅲ)以上の者が対象)

・当該事業所の従業者に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達、技術的指導に係る会議を定期的に開催する

「認知症専門ケア加算(Ⅱ)」

下記の認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定要件を満たす。

・認知症介護実践リーダー研修等修了者を認知症高齢者の日常生活自立度(Ⅱ)以上の者が20人未満の場合は1人以上、20人以上の場合は1人+当該対象者の数が19を超えて10、または端数を増すごとに1人以上配置することと、当該事業所の従業者に対し認知症ケアに関する留意事項の伝達、技術的指導に係る会議を定期的に開催する。

・(新設)認知症高齢者の日常生活自立度(Ⅲ)上の者が利用者の20%以上。

・認知症高齢者の日常生活自立度(Ⅲ)以上の者に対し専門的な認知症ケアを実施する。

・認知症介護指導者研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施する。

・介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施または実施する予定である。

となります。

要件見直しで算定の裾野が広がると期待され、より多くの事業所で加算取得→認知症利用者への適切なケア実施が行われることに期待が集まります。

認知症専門ケア加算を取得できる介護サービス種別

認知症専門ケア加算を算定できる介護サービスは以下の通りになります。

介護サービス一覧

 
・訪問介護
 
・(介護予防)訪問入浴介護
 
・夜間対応型訪問介護
 
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
 
・(介護予防)短期入所生活介護
 
・(介護予防)短期入所療養介護
 
・(介護予防・地域密着型)特定施設入居者生活介護
 
・(地域密着型)介護老人福祉施設
 
・介護老人保健施設
 
・介護療養型医療施設
 
・介護医療院
 
・(介護予防)認知症対応型共同生活介護
 
・地域密着型特定施設入居者生活介護
 
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

以上のサービス事業所が、認知症専門ケア加算にかかる算定要件を満たせば、算定が可能になります。

認知症専門ケア加算の介護サービス別単位数

介護サービス種別 認知症専門ケア加算(Ⅰ) 認知症専門ケア加算(Ⅱ)
訪問介護 3単位/日 4単位/日
訪問入浴介護 3単位/日 4単位/日
夜間対応型訪問介護 「夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)」基本夜間訪問サービス費を除く
3単位/日

「夜間対応型訪問介護費(Ⅱ)」
90単位/月

「夜間対応型訪問介護費(Ⅰ)」基本夜間訪問サービス費を除く
4単位/日

「夜間対応型訪問介護費(Ⅱ)」
120単位/月

定期巡回随時対応型訪問介護看護 (Ⅰ)一体型(Ⅱ)連携型
90単位/月

(Ⅲ)夜間訪問型
基本夜間訪問サービス費を除く
3単位/日

(Ⅰ)一体型(Ⅱ)連携型
120単位/月

(Ⅲ)夜間訪問型
基本夜間訪問サービス費を除く
4単位/日

(介護予防)短期入所生活介護 3単位/日 4単位/日
(介護予防)短期入所療養介護 3単位/日 4単位/日
(介護予防・地域密着型)特定施設入居者生活介護 3単位/日 4単位/日
(地域密着型)介護老人福祉施設 3単位/日 4単位/日
介護老人保健施設 3単位/日 4単位/日
介護療養型医療施設 3単位/日 4単位/日
介護医療院 3単位/日 4単位/日
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 3単位/日 4単位/日
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 3単位/日 4単位/日

 

認知症専門ケア加算の算定に必要な研修

認知症専門ケア加算は、算定要件の一つに「認知症ケアに関する専門的研修等」の受講の修了があります。

令和3年度の改定で、「認知症看護に係る適切な研修」が加わり、現在は以下3つとなっています。

認知症専門ケア加算の算定に必要な研修

 
・認知症介護実践リーダー研修
 
・認知症介護指導者養成研修
 
・認知症看護に関する適切な研修

次に具体的にどんな研修なのか解説します。

認知症介護実践リーダー研修

受講要件

・介護保険施設、居宅サービス事業者において、介護業務に概ね5年以上従事しているもの

・認知症介護実践者研修(旧基礎課程を含む)を修了して、1年以上経過している者

講義、演習

事業所における認知症支援のリーダーとして、他の職員を先導し支援の質を向上させるための講義、演習を行います。

職場実習

現在は原則として、受講者自身が所属する職場で実施することが多く、研修で設定した課題の達成を目指して実習を行います。

認知症介護指導者養成研修

受講要件

・認知症介護実践者研修や認知症介護実践リーダー研修の受講が修了している者。

・以下のいずれかの資格を有するもの
(ア)医師、保健師、助産師、看護師、准看護師
(イ)理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
(ウ)社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士
(エ)上記(ア)~(ウ)に準ずる者

・以下のいずれかに該当する者であって、相当の介護実務経験を有する者
(ア)介護保険施設・事業所等に従事している者(過去において介護保険施設・事業所等に従事していた者も含む。)
(イ)福祉系大学や養成学校等で指導的立場にある者
(ウ)民間企業で認知症介護の教育に携わる者

・認知症介護基礎研修又は認知症介護実践者研修の企画・立案に参画し、又は講師として従事することが予定されている者

・地域ケアを推進する役割を担うことが見込まれている者

前期・後期研修

前期と後期に分け、認知症ケア、教育方法、人材育成など指導者として活動するための研修を行います。

職場研修

前期と後期の研修の間に、自身が所属する職場で実習に取り組み、認知症介護に関する専門的な知識や技術、研修プログラム作成方法及び教育技術を習得します。

認知症看護に係る適切な研修

認知症看護に係る適切な研修とは、以下のいずれかの研修となります。

・日本看護協会認定看護師教育課程「認知症看護」の研修

・日本看護協会が認定している看護系大学院の「老人看護」及び「精神看護」の専門看護師教育課程

・日本精神科看護協会が認定している「精神科認定看護師」で認定証が発行されている者

認知症ケア加算を算定する際の注意点は?

認知症専門ケア加算を算定する場合、職員のスキルアップ、研修に行かなかった職員のスキルの向上やご利用いただく方を受け入れる幅が広がったりと、加算を取得することでのメリットが期待できます。

しかし一方でデメリットや注意すべき点もあります。例えば、算定には要件が定められていますので、その要件をよく理解し、必要な研修などを修了した職員が不在の場合は誰かが研修を受講しなければならないなどのデメリットもあります。

また、算定によって、利用者の自己負担も増えることになりますので、事前に認知症専門ケア加算を算定することやその意義についての説明は丁寧に行っておくことが大切です。

認知症専門ケア加算は、主治医が作成する主治医意見書に記載される、認知症高齢者の日常生活自立度の変化によって加算要件から外れてしまう可能性もあるので、要介護認定の更新などの際にも注意が必要です。

まとめ

この記事では、認知症専門ケア加算の算定についての要件や必要な研修などについて解説しました。

冒頭でも書きましたが、認知症の高齢者は年々増加しているので、これからますます質の高い支援が求められます。

この加算の取得率実態はまだまだ低いとされていますが、認知症専門ケア加算を取得することで、事業所全体の認知症の方への支援のスキル向上が見込め、認知症を抱えた利用者を受け入れやすくなります。

認知症を正しく理解している職員を配置するなど、積極的に加算を取得することで、事業所全体で質の高いケアを行えるようにしていきましょう。

この記事の執筆者ペコ

保有資格:介護福祉士 介護支援専門員

これまで通所リハビリに2年、小規模多機能型居宅介護に17年勤務。その中でも小規模多機能では介護職4年、介護福祉士兼介護支援専門員を3年、管理者兼介護支援専門員を9年務め、現在は代表も兼任しています。

介護の話題を中心にライタ―活動を行っており、他には介護用の研修資料の作成なども行っています。

 

この記事をシェアするSHARE

記事一覧に戻る

シンクロシフト

人気記事RANKING

カテゴリーCATEGORY

キーワードKEYWORD