知識・技術

最終更新日

 

シンクロシフト無料トライアルはこちら

 

【介護業界向け】シフト作成代行サービス

【教えて!】ノーリフティングケアとは?メリット・デメリット、導入ステップや事例を解説

ノーリフティングケアとは

みなさんの職場にも、体の疲れや腰痛を訴える介護職員はいらっしゃるのではないでしょうか。
 
疲労の蓄積や腰痛の増悪は、職員の健康が保てないだけでなく、離職者の増加や介護士不足など様々な課題を引き起こします。
 
そういった職員の体の疲れや腰痛を防ぐためには、持ち上げない・抱えない介助が重要です。そこで「ノーリフティングケア」の必要性が高まってきています。
 
腰痛を抱える職員が多い介護現場や、労働環境の改善によって職員の離職率低下を目指す事業者などはノーリフティングケアを導入することも効果的でしょう。
 
本記事ではノーリフティングケアについて説明します。ぜひ参考にしてください。

ノーリフティングケアとは

腰痛が辛い介護職

ノーリフティングケアとは、介護をする側・される側の双方において、安全で安心な抱え上げない・持ち上げない・引きずらない、そして負担のかかる不良姿勢を継続させないケアのことを指します。

ノーリフティングケアは、福祉用具を使用することが目的ではありませんが、ご利用者に安心・安全な介護を実践するためには、間違った身体の使い方を減らし、ご利用者の状態に合わせて福祉用具や機器を活用することが必要となります。

ノーリフティングケアの定義

ノーリフティングケアは、単に持ち上げない・抱え上げない介護技術にとどまらず、福祉や医療の現場における介護者の腰痛を予防し、安全なケアを提供するための総合的な取り組みそのものを示す言葉です。

福祉・医療の現場で、体に負担のかかるケアの方法や作業を見直し、安全に働くことができる職場をつくる取り組みがノーリフティングです。

腰痛の予防を実践するためには、リフトなどによって福祉用具を活用することも必要ですが、それだけではなく、組織全体で腰痛をきたす原因に対してリスクマネジメントを行うことが重要です。

ノーリフティングケア誕生の背景と国内の普及状況

日本では、少子化や高齢化が進み人口も減少する時代に入っています。

働く日本人の数はこれからしばらく増えないことが想定され、今働いている人が少しでも長く働き続けるための職場環境作りが必要となっています。

介護の現場では、以前より腰痛が深刻化しています。

厚生労働省「保健衛生業における腰痛の予防」によると、

保健衛生業の腰痛発生率(死傷年千人率)は全業種平均(0.1)を大幅に上回る0.25(全業種の2.5倍)

と示されています。

その割合は年々増加傾向にあり、業界全体の大きな課題となっていると言ってもよいでしょう。

また、腰痛の原因となるのは移乗動作が多く、支援によって介助者が要介護者を持ち上げる動作にて起こっていることが指摘されています。

厚生労働省では、2013年に「職場における腰痛予防対策指針」を改定するなどの対応がなされています。

その中には、ノーリフティングケアやボディメカニクスを活用したケアなどが多く記載されており、介護事業所では職員の腰痛の予防のために対策を講じることが求められています。

また、2021年の介護報酬改定にて、「特定処遇改善加算」の賃上げ以外の要素となる「職場環境等要件」によって求められる区分が増加しています。

その中には、

・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策の実施

・短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施

・介雇用管理改善のための管理者に対する研修等の実施、事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備

とのような、「腰痛を含む心身の健康管理」の区分が含まれるようになりました。

参照:厚生労働省 資料 処遇改善加算の職場環境等要件(令和6年度まで、令和7年度以降)

ノーリフティングケアとボディメカニクスの違い

ボディメカニクスの原則を利用して介護にあたる職員

ボディメカニクスとは、解剖学、生理学、力学などの基礎知識を活用することにより、身体の機能や構造と身体運動がどのように関連しているか、その仕組みについてよりよく理解しようとする応用理論のことです。

ボディメカニクスを介護に活用することで、最小の労力で介護を行うことができます。

一方、ノーリフティングケアは、移乗リフトやスライディングボードなどの福祉用具を用いて、ご利用者を「持ち上げないこと」が基本となっています。

腰などにかかる負担はほとんどなく、介護職員の身体的な負担を大幅に減らすことができます。

そのため、双方ともに介護職員の身体的な負担を減らすための取り組みとなりますが、特徴としての違いは、

≪ボディメカニクス≫

・主に介助者の身体の動かし方や姿勢の工夫により、道具を使わなくても実践が可能

・介護の基礎技術として汎用性が高い

≪ノーリフティングケア≫

・福祉用具、機器を活用し安全性の高い介助が行える

・チームケア・環境整備の視点が重要視される

ということが挙げられます。

ノーリフティングケアのメリットと効果

介護職員と高齢者

ノーリフティングケアを実践することで、介護職員やご利用者それぞれに良い効果を発揮します。

以下にそのメリットや効果を挙げていきます。

介護職員の腰痛予防・身体的負担の軽減

ノーリフティングケアにより、リフトやスライディングボードなどの福祉用具・機器が導入されることにより職場環境が整い、介護の仕方が変わることで、職員の身体的な負担は大きく軽減されることとなります。

ノーリフティングケアの取り組みが進んでいる施設においても、腰痛の発生率が減少し、腰痛のある職員でも悪化せずに働くことができていると報告されています。

ご利用者の安心感と自立支援の促進

ノーリフティングケアの実践は、介護職員の身体への負担だけでなく、ご利用者の安心感や自立支援の促進にも繋がります。

力任せの介護に比べて、スライディングボードなどを活用するなどのノーリフティングケアを実践する方が、ご利用者の筋緊張が和らぎ、関節拘縮の予防に繋がることや、筋肉や関節への負担の減少し姿勢が良くなるといった変化がみられます。

また、身体的な負担が減少することや、力任せの介護を受けないため、ご利用者は安心し精神的にも落ち着かれるなどの効果も期待できます。

介護の質向上と業務効率化

ノーリフティングケアには、リフトやスライディングボードなどの福祉用具を活用する機会が増えます。

福祉用具の使用は、人力で行う介護に比べ、時間がかかると思われがちです。

しかし、重度介助が必要なご利用者に対する場面では、抱え上げ介助では2人介助が必要となるケースが多いですが、福祉用具を適切に活用することで、介助者のスキルや用具の種類によっては1人での介助も可能となる場合があります。

そのため、余裕をもった対応ができることで、ご利用者とコミュニケーションを取る時間などが増えてくることが期待されます。

新しい道具や機械を導入すると、慣れるまでには少し時間もかかりますが、慣れてくるとスムーズに介助が行えるようになり、業務にゆとりを感じることにも繋がるでしょう。

ノーリフティングケアのデメリットと課題

ノーリフティングケアのメリットを挙げてきましたが、一方でデメリットや課題はどんなことがあるのでしょうか。

福祉用具導入のコストとスペースの確保

ノーリフティングケアには、リフトなどの大型の機器が使用されることがあります。機器を導入するためには、購入費用や設置費用、管理費用など様々なコストがかかります。

また、リフトなどの機器は相応の大きさを伴うため、設置する場所や保管場所の課題もあります。

導入に際しては、補助金の活用や、設置・保管場所を検討するなど事前準備が必要となります。

福祉用具の選定や使い方の難しさ

福祉用具には様々な道具・機器やそれぞれの種類があります。リフトでも

・天井走行リフト
・床走行リフト
・ベッド固定式リフト
・据置式線レール型リフト
・据置式面レール型リフト
・浴室用リフト
・スタンディングリフト

などの種類があります。

在宅で用いるのか、施設で用いるのかによってや、家屋や施設(居室や廊下)の大きさによって、どの機器を選定するかが異なります。

また、それぞれの機器の使用方法も異なるため、福祉用具業者から使用方法について、しっかりとレクチャーを受けることも大切です。

職員の教育・研修が必要

ノーリフティングケアで用いるリフトなどの機器は、使用方法を誤るとご利用者・介護職員ともに重大事故に繋がりかねません。

そのためには、職員が道具や機器の使用方法を適切に理解する必要があり、導入前や導入後など教育や研修を行う体制作りが必須となります。

現場の抵抗感

どのような事でも、新しい物を取り入れようとする際には抵抗感が生まれます。特にベテランの介護職員では、これまでの経験からも自身が行ってきた介護方法を変えることには、一層抵抗感を感じることでしょう。

ひとまずは、腰痛を抱えている職員や、介助に苦難している重度のご利用者からなど、少しずつ対象を広げながら、現場の抵抗感を少なくしていきましょう。

ノーリフティングケアに活用される福祉用具・道具

ノーリフティングケアに活用される福祉用具についてご紹介していきます。

主な福祉用具の種類と特徴

ベッド

介助しやすい高さへの調整や背上げ機能などを用いることで、介助者の負担を軽減できます。また、ご利用者の状態に合わせてベッドの機能を活用することで、自立支援に繋がる支援を行うこともできます。

車椅子

決められた枠組みで固定されている普通型車椅子や、各部品の取り外しや調整が可能なモジュール型車椅子、座面や背面の角度を調整することができるティルト・リクライニング車椅子などの種類があります。

モジュール型車椅子では、アームサポートやフットサポートの取り外しができることで、移乗動作の行い易さや、スライディングボード活用にも役立ちます。

ティルト・リクライニング車椅子では、フレックスボードをはじめとする横移乗ボードを活用できます。

手すり

手すりはベッドに取り付けるL字型の手すりや、据置タイプの手すりなど、環境や使用場所・用途に合わせて、様々なサイズや形状があります。起立介助や移乗動作の介助などの際に活用ができます。

スライディングシート

ベッド上で寝ているご利用者の身体の下に敷き込み、上下左右に滑らせることができる福祉用具です。引きずったり、持ち上げたりすることなく、ご利用者のベッド上での移動ができ、介助者・ご利用者ともに負担が少なくなります。

スライディンググローブ

介助者の両腕に装着する形で使用します。ベッド上で引きずったり、持ち上げたりせずに、摩擦を軽減してご利用者を移動することができます。また、長時間同じ姿勢をとっているご利用者の、部分的な除圧(圧抜き)をすることができます。

スライディングボード

ベッド~車椅子間や、車椅子~トイレなどの移乗時に、抱え上げることがなく、ご利用者にボードの上を滑ってもらうことで、介助者・ご利用者ともに負担が少なく移乗できる福祉用具です。

対象としては、立ち上がりに介助が必要なご利用者、立位が不安定で維持できないご利用者に使用します。また、端坐位がとれるご利用者、あるいは少しの支援で座位がとれるご利用者も対象となります。座位保持に重度の介助が必要なご利用者は、転倒・転落の危険性が高いため、使用は避けるようにしましょう。

横移乗ボード

ベッド~ティルト・リクライニング車椅子間などの移乗時に、抱え上げることなく、ご利用者を滑らせて移乗できる福祉用具です。座位保持が困難なご利用者や、立位での移乗が困難なご利用者に使用します。移乗の際は、必ず二人以上で介助を行うようにしましょう。

リフト

簡易的なスタンディングリフト、電動スタンディングリフト、床走行式リフト、据置式リフトなどの種類があります。いずれの機器も使用方法を誤ると、ご利用者・介護職員双方にとって重大事故に繋がりかねないため、導入時の研修に加え、定期的なOJTやスキル確認を通して使用方法をしっかりと確認し、習熟した上で使用していくようにしましょう。

ノーリフティングケア導入のステップ

ノーリフティングケアの導入を推進する介護リーダー

ノーリフティングケアを実践していくためには、以下のようなステップを確認しましょう。

現状把握と課題の抽出

まずは、介助方法など支援に関する現状を把握し、課題を抽出し見える化するなど取り組んでいきます。

目標設定と計画立案

課題が明確化すると、その課題に対して「どうあるべきか」目標を設定し、その目標を達成するために計画を立案していきます。

職員への導入目的の共有と研修

ノーリフティングケアを組織で運用していくためには、職員一人一人が、

「支援の方法を変える」

「介護職員の腰痛を予防し、ご利用者の二次障害を引き起こすケアを減らしていく」

といった意識を持つことが必要となります。

リーダーを決める、対策チームを整えるなど、中心となる職員が研修や教育を通して、ノーリフティングケアを導入する目的を共有していきます。

福祉用具・道具の選定と導入

ノーリフティングケアは必ずしも福祉用具を使用することとはされていませんが、活用できる場面では福祉用具を積極的に活用していくことが望ましいです。

抽出した課題に照らし合わせて、適切な福祉用具の導入を選定します。

導入する際もいきなり本導入するのではなく、福祉用具業者と相談を重ね、デモを利用するなど試していきながら、自施設に合った福祉用具を慎重に選定し、導入を進めていきましょう。

運用・フォローアップ

実際に福祉用具を活用したノーリフティングケアを運用した際、使用しての困りごとなどを組織やチームで共有していきましょう。

そしてその都度、チーム内で確認や福祉用具業者に相談するなど、フォローアップを欠かさないことが重要です。

まとめ

ノーリフティングケアは、記事中で紹介しましたが、職員の身体の健康を守るため、ご利用者に安心で安全な生活を提供するためと、職員・ご利用者双方に良い効果をもたらすことが期待されます。

しかし、これまでと異なる介助方法で、新たな道具や機器を用いることになるため、職員の中で定着を図るためにはしっかりとした準備が必要です。

職員の理解を得られないまま、機器の導入を進めてしまうと、せっかくの機器も使われないことになるでしょう。

急がば回れの精神で、じっくりと目的の共有を図りながら、周囲を巻き込み仲間を増やしながら、導入を進めていくことが一番の近道となります。

今後、介護需要が増す中で人手不足が解消されない、という状況の中で職員の労働環境の改善は重要な課題です。

ノーリフティングケアは労働環境の改善に繋がる一手となります。

導入を検討されている事業者は、現状把握と課題の抽出などから、少しずつ進めてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者こまさん

所有資格:作業療法士

経歴:作業療法士として医療分野では病院でのリハビリテーション業務に従事、介護分野では訪問リハビリテーション事業所を経て、現在は特別養護老人ホームの機能訓練指導員として従事。

入居者へ多職種で行う機能訓練の提供や、介護士への介護技術指導、LIFEや介護報酬改定に関わる業務などを担っている。

 
介護業界向けシフト作成ソフト

【シンクロシフト】無料で試せる介護シフト自動作成ソフト
シフト作成の負担を軽減!スタッフに公平なシフトを自動作成!希望休の申請も、シフトの展開もスマホでOK!「職員の健康」と「経営の健康」を強力にサポートする介護業界向けシフト作成ソフト。まずは無料期間でお試しください。

 

おすすめ記事

介護シフト管理 作成ソフト・アプリ10選!料金やメリットを紹介
介護業界向けシフト作成ソフト・アプリを紹介。シフト作成にかかる負担を減らしたいのなら、介護施設のシフト作成に特化したソフトやアプリの導入がおすすめです。

 

介護施設でのシフト作成(勤務表の作り方)のコツを詳しく解説!
シフト作成に数十時間をかけている介護現場もあります。シフト作成業務を効率的に進めるコツを解説しています。

 

介護・福祉現場のICT化 活用事例・導入事例5選
人手不足が深刻となる中、介護現場のICT化による業務効率化は待ったなしです。介護福祉現場における活用事例や導入事例、メリット・デメリットを解説します。

 

 

この記事をシェアするSHARE

記事一覧に戻る

シンクロシフト

人気記事RANKING

カテゴリーCATEGORY

キーワードKEYWORD