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【教えて!】フィジカルロックとは?具体例や事例、対策などを解説

フィジカルロックとは

身体拘束であるフィジカルロックは、原則として避けるべきですが、事故や怪我を防ぐ目的で実施されるケースがあります。
 
介護の現場では「どのようなケースが当てはまるのだろうか」「自分の行っているケアは大丈夫だろうか」と疑問を感じている方も多いかもしれません。
 
本記事では、フィジカルロックの定義や具体例、対策について詳しく解説します。
 
介護リーダー、管理者など介護施設でリスクマネジメントに関わる人は、ぜひご一読ください。

フィジカルロックとは

介護現場のフィジカルロックについて

フィジカルロックは、身体拘束のひとつです。

安全のためであっても、状況によっては不適切となるケースがあります。

フィジカルロックの定義

厚生労働省の『身体拘束廃止・防止の手引き』では、身体拘束を以下のように定義しています。

(以下引用)
「身体的拘束等」とは、介護保険法に基づいた運営基準上、「身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為」であり、入所者(利用者)の「生命又は身体を保護するため、緊急やむを得ない場合を除き」行ってはならず、原則として禁止されている。

引用:厚生労働省 『身体拘束廃止・防止の手引き』令和7年3月版(2025年3月版)

身体拘束のスリーロックとは

身体拘束は、以下の3つに分類されます。

身体拘束 3つの分類

 
・フィジカルロック
 
・ドラッグロック
 
・スピーチロック

利用者の尊厳を損なう身体拘束で、スリーロックといわれています。

詳しくは、以下の記事でまとめていますのでご参考ください。

フィジカルロック

フィジカルロックは、物理的に身体の自由を奪ったり、部屋を出て歩き回らないように鍵をかけたりすることなどがあげられます。

具体例や事例については、後述の「フィジカルロックの具体例・事例」で詳しく説明します。

ドラッグロック

ドラッグロックは、薬による行動の制限です。

介護施設には頻繁な徘徊や暴言や暴力行為がある方、夜間眠れない方など、さまざまな方がいらっしゃいます。

落ち着いた生活を送っていただくために、医師へ相談し、お薬を服用することがあります。

注意点として、過度または不適切な薬剤の投与は、ドラッグロックに該当する場合があるということです。

スピーチロック

スピーチロックは、言葉で利用者の行動や人格を否定したり、抑制したりすることです。

・「ここから動かないでください」

・「早く食べてください」

・「そんなことしていたら帰れませんよ」

また、「ちょっと待ってください」という介護現場でよく使われるフレーズも、状況によっては注意が必要です。

どんな言葉がスピーチロックに該当するのかという線引きは明確になっていません。

本人の意向を無視した一方的な声かけは、スピーチロックとみなされる可能性があります。丁寧な声かけを心がけましょう。

また、現場での共通認識を持って運用することが大切になりますから、ガイドラインや研修での共有が重要です。

スピーチロックについて詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。

フィジカルロックの具体例・事例

フィジカルロックの具体的な例をみていきましょう。

厚生労働省の手引きでは、身体拘束の具体例として以下の行為が挙げられています。

1. 一人歩きしないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
2.転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
3.自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
4.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
5.点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
6.車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
7.立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
8.脱衣やオムツはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
9.他人への迷惑行為を防ぐために、ベッド等に体幹や四肢をひも等で縛る。
10.行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
11.自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

引用:厚生労働省 『身体拘束廃止・防止の手引き』令和7年3月版(2025年3月版)

ただし、これらはあくまでも例示であり、他にも身体拘束に該当する行為があることに注意が必要です。

フィジカルロックの事例

80代女性で認知症の方。

夜間にベッドから起きて徘徊し、転倒による怪我が何度もありました。

夜間帯は人手が足りず、見守りが困難。

転倒・骨折のリスクが高いため、安全性を考慮し、腹部にベルトを装着し、ベッド柵に固定。

しかしその結果、「助けて」と叫んだり、ベルトの摩擦による皮膚トラブルが発生。

心身に与える影響から、フィジカルロック解除に向けて、以下のような代替策を検討・実施することになりました。

・低床ベッドの導入

・転倒緩衝マットの使用

・センサーマットで動きを検知

・覚醒時の対応強化(お茶の提供など)

・医師と連携して入眠時の薬を調整

その結果、叫び声の減少や安定した睡眠が見られ、他利用者の居室への立ち入りもなくなりました。

フィジカルロックを解除し、その人らしい穏やかな生活を取り戻せるようなケアを実践していくことが大切です。

フィジカルロックの影響・弊害

フィジカルロックの弊害

ここでは、フィジカルロックの影響や弊害について説明します。

身体的弊害

フィジカルロックの身体的弊害は以下のとおりです。

フィジカルロックの身体的弊害

 
・筋力低下
 
・関節拘縮
 
・褥瘡(床ずれ)
 
・転倒や骨折のリスク増加

日常的な動作が制限されることで、身体機能の著しい低下につながる恐れがあります。

拘縮については以下の記事で、介護現場における拘縮予防のポイント、ケア事例などをご紹介しています。

精神的弊害

フィジカルロックの精神的弊害は以下のとおりです。

フィジカルロックの精神的弊害

 
・不安感
 
・恐怖感
 
・うつ症状
 
・認知機能の低下
 
・不眠
 
・孤立感
 
・家族の不安や罪悪感

行動の抑制が、利用者の尊厳を傷つけ、精神的な安定を損なうことが懸念されます。

社会的弊害

身体拘束は、利用者だけでなく、社会全体にも影響を及ぼす可能性があります。

フィジカルロックの社会的弊害

 
・施設や介護職への信頼低下
 
・職員のストレスや離職率増加
 
・医療費・介護費の増加による社会的コスト

介護施設の信頼が失われるだけでなく、介護職自身の仕事へのやりがい喪失や将来への不安につながります。

また、フィジカルロックによって心身機能が低下するような状況が生じた場合、医療費や介護費の増大を通じて社会経済全体に影響が及ぶ可能性も否定できません。

やむを得ない場合にフィジカルロックが認められるケース

フィジカルロックは原則的に避けるべき行為ですが、以下の要件をすべて満たせば例外的に認められることがあります。

フィジカルロックが例外的に認められる場合の要件

 
・切迫性:本人や他利用者にとって安全上のリスクが高い
 
・非代替性:他の安全確保のための手段がない
 
・一時性:一時的に必要な時間のみ実施

上記を満たす場合でも、記録やモニタリングなどの手順が必要です。

フィジカルロックが認められるケースや必要な手続きの詳細については、以下の記事をご参考ください。

 
参考:厚生労働省 『身体拘束廃止・防止の手引き』令和7年3月版(2025年3月版)

フィジカルロックへの対策

ここでは、フィジカルロックへの対策についてみていきましょう。施設全体で以下のような取り組みを行っていくことが非常に重要です。

代替ケアの選択肢を増やす

「フィジカルロックは仕方ない」と判断するのはNGです。

職員間で話し合い、代替ケアの選択肢を増やし、ほかの方法で対策できないか検討しましょう。

フィジカルロックに頼らない方法を探っていくことが大切です。

職員教育と多職種連携

職員研修などを通して、実施の必要性やフィジカルロックの解除の方針などを検討しましょう。

その際に、介護職員が身体拘束を避けた結果、起こり得る事故について不安になることも考えられます。

施設長をはじめとする医療・看護・リハビリ・介護職や生活相談員、ケアマネジャー、栄養士など、利用者に関わるより多くの職種でカンファレンスを行い、安心して業務に取り組めるようサポートしていくことが重要です。

環境整備と見守りの強化

介護施設内の安全な環境の整備や、見守りの強化も対策のひとつです。

環境整備と見守りの強化 例

 
・低床ベッドに変更する
 
・コードを床に這わせない
 
・居室や廊下、テーブルなどを整理整頓する
 
・手すりを設置する
 
・床材を滑りにくいものにする
 
・段差を解消する
 
・センサーマットや見守りカメラを設置する
 
・不安解消につながるケア

利用者一人ひとりに合わせた取り組みで、身体拘束を減らすことにつながるかもしれません。

身体拘束の原因を探り除去する

はじめから「危ない」と判断し、身体拘束を行うことはやめましょう。

定期的に多職種で情報共有や意見交換を行い、行動の背景にある原因を追求し、利用者の状況を把握することが必要です。

まとめ

フィジカルロックの定義や具体例、対策について解説しました。

認知症などによりご自身の気持ちをうまく伝えられない場合や状況を理解できない場合でも、フィジカルロックを減らすケアの方法を考えていきましょう。

日々のケアを振り返り、常に「利用者の尊厳は守られているのか?」という視点を持つことが大切です。

介護職員一人ひとりの意識と行動が、利用者の尊厳を守り、より良いケアへとつながります。

安心してその人らしい生活を送れる環境づくりを目指すために、身体拘束についての知識を深め、情報を常にアップデートしていきましょう。

この記事の執筆者吉田あい

保有資格:社会福祉士・介護福祉士・メンタル心理カウンセラー・介護支援専門員

現場、相談現場など経験は10年超。
介護現場(特別養護老人ホーム・デイサービス・グループホーム・居宅介護支援事業所)、相談現場を経験。

現在はグループホームのケアマネジャーとして勤務。

 
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