「将来、ショートステイの生活相談員になりたいから、仕事内容を知っておきたい」
「相談員になるための資格や、心得ておくべきことを知りたい」
介護職員にとって、生活相談員は具体的に何をしているのか分からない未知の職種であるケースがほとんどです。
「やりがいを持って働いているのは分かるけど、何だか毎日電話対応やパソコンと向き合って忙しそう」と思っている方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事ではショートステイの生活相談員の仕事内容として具体的に何をしているのか、どのような人がなれるのか、生活相談員のメリット・デメリットなどを解説します。
本記事を読めば、自分が生活相談員に向いているのかが分かるでしょう。将来の目標としている人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ショートステイの生活相談員の仕事内容
生活相談員とは、介護サービスの調整や利用者または家族の相談に応じる職種です。具体的な仕事内容は以下のとおり。
・ケアマネージャーや医療機関との連携
・サービス利用の日程調整
・サービス利用前の事前調査・契約
・ケアプランの作成
・現場スタッフとの連携
ショートステイの場合は、利用者の送迎が相談員の業務となっているところもあります。
ショートステイの生活相談員の人員配置基準
ショートステイでは、利用者100人につき1人以上の生活相談員が常勤で必要と定められています。ただし、利用定員が20人未満の事業所はその限りではありません。
また、その他サービス形態における配置基準は以下の通りです。
特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・老人健康保健施設:利用者100人に対して1人以上の相談員
デイサービス:専従で1人以上
このように、相談員の配置基準はサービス形態によって若干異なります。
参考:
厚生労働省「短期入所生活介護の報酬・基準について」
厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について」
厚生労働省「特定施設入居者生活介護」
厚生労働省「介護老人保健施設」
厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」
ショートステイで働く生活相談員の1日の仕事の流れ
ショートステイの相談員は日勤で働きます。夜勤に入ることはほとんどありません。一般的な相談員の仕事の流れは以下の通りです。
ショートステイで働く相談員の1日
8:30 | 出勤 申し送り |
明け者から申し送りを受けます。申し送りの内容をケアマネージャーや家族に報告する場合もあるため、気になる点は細かく確認します。 |
9:00 | 送迎 相談員業務 利用者の介助 |
利用者の送迎や相談員業務を行います。相談員業務とは、サービスの利用日程を調整したり、利用者の様子をケアマネージャーに報告したりなど、さまざまです。また、必要に応じて利用者の介助に入る場合もあります。 |
12:00 | 休憩 | お昼休憩を取ります。 |
13:00 | 相談員業務 利用者の介助 |
午前中と同じく、相談員業務を行います。日によっては利用を予定している方の自宅へ訪問し、事前調査や契約を行います。そのため、契約書類の準備や契約後の書類整理、利用にあたってのケアプラン作成なども相談員の仕事です。 |
15:30 | 送迎 相談員業務 |
利用者の送迎にはいりつつ、時間を見て相談員業務を行います。翌日利用する方の情報を現場スタッフと共有したり、介護の方向性などを話し合うのも重要です。 |
17:00 | 申し送り | 夜勤者に日中帯の様子を申し送ります。新規の利用者がいる場合は、夜勤帯で注意してほしいこと、よく観察しておいてほしい内容などを伝えます。 |
17:30 | 退勤 | 翌日のスケジュールなどを確認したのち、退勤します。 |
施設によって仕事内容に多少の違いはあるものの、大枠は上記の通りです。
また、相談員は基本的に夜勤をしないと伝えましたが、施設の配置状況によっては夜勤に入る場合もあります。現場介護職員と兼業しているところも少なくありません。
そのため、相談員は事務処理能力だけでなく、現場でも働ける介護技術や知識が必要です。
生活相談員の仕事のやりがい
生活相談員としてやりがいを感じる部分は、人によってさまざまです。とはいえ、介護が好きで、スキルアップを目指して相談員になったのであれば以下の点にやりがいを感じる方が多いのではないでしょうか。
・現場職員の時には分からなかった、経営としての目線でショートステイが見える
・利用者家族やケアマネージャーと密に接することで、より在宅生活を支えるサービスであると実感できる
ショートステイの相談員になると、否応なしに稼働率と向き合わなければなりません。稼働率とは、定員のうち何床予約が入っているかを示す数字です。
稼働率がよくなければ施設の売り上げが下がってしまうため、稼働率を上げるために日々奮闘します。頑張りが稼働率という数字で可視化されるため、目標を達成できた際のやりがいは、現場職員では味わうことのできないものになります。
また、相談員は、利用日程の調整や事前面談・契約に際して、利用者・家族・ケアマネージャーと密に接します。利用者や家族が何に困っているのか、ショートステイを利用するにあたってどのような点が不安なのか、などを直接耳にできます。
そのため、現場職員の時には実感しにくかった「在宅生活を支えている」という実感があります。
生活相談員として働くメリット・デメリット
生活相談員として働くメリットは大きいですが、デメリットも少なくありません。本章では、生活相談員になると受けられるメリット、生活相談員ならではのデメリットを解説します。
メリット
生活相談員のメリットは以下の3つです。
・給料が上がる可能性がある
・キャリアアップにつながる可能性がある
・夜勤が無いので生活リズムが整う
「給料が上がる可能性がある」については、厚生労働省の統計調査にて明確な結果が出ています。
令和4年度・生活相談員と介護職員の平均月給 | |
介護職員 | 186,410円 |
生活相談員 | 213,980円 |
上記は手当込みの金額です。相談員の場合、夜勤に入らなくても2万円ほど給料が上がる結果となっています。施設の給料形態によって差はありますが、基本的には介護職以上の月給がもらえます。
また、相談員を5年以上務めると、介護支援専門員(ケアマネージャー)の受験資格を得られます。相談員後のステップアップとしてケアマネージャーを目指している方にとっては、経験を積みつつ受験資格が得られるなど利点が多い職種です。
身体的な部分でいうと、夜勤が無いのは大きなメリットです。ほとんどが日勤勤務なため、生活リズムが整いやすく、身体的な負担が軽減できます。
参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
デメリット
生活相談員には、以下のデメリットもあります。「ショートステイの生活相談員に向いている人」にも通ずる部分があるため、生活相談員を目指している人は留意しておきましょう。
・介護職の時とは違う人間関係の難しさがある
・売り上げや稼働率など、数字と向き合わなければならない
生活相談員は、ショートステイの売り上げに直結する仕事です。時には売り上げのために稼働率を上げなければなりません。しかし、稼働率を上げることで、現場職員と意見の食い違いが生じる場合もあります。
そこで「稼働率を下げる(受け入れを制限する)・受け入れる利用者の介護度を下げる」などの対策をとってしまうと、ケアマネージャーとの関係性が悪くなる可能性もあります。
介護職員の時は現場スタッフとの関係性のみに配慮すればよかった部分が、外部の人間関係まで気をかけなければなりません。
そこにデメリットを感じる場合もあるでしょう。
生活相談員になるために必要な資格
生活相談員になるためには、以下いずれかの資格が必要です。
・社会福祉士
・精神保健福祉士
・社会福祉主事任用資格
ただし、都道府県によっては、介護福祉士やケアマネジャーも要件として含まれている場合があります。
生活相談員は資格なしでもなれる?
ほとんどの都道府県では、有資格者でなければ生活相談員になれないと定められています。しかし、一部都府県では、資格がなくとも相応の実務経験や能力があれば相談員として登録できるというところも少なくありません。
とはいえ、要件として定められている資格は、スキルアップを考えている場合、必然的に取得しなければならないものばかりです。要件にかかわらず、取得しておいて損はないでしょう。
ショートステイの生活相談員に向いている人
以下の特徴に当てはまる人は、ショートステイの生活相談員に向いているかもしれません。
・営業が嫌いではない
・数字や事務処理能力に強い
・介護現場・家族・ケアマネージャーいずれにも肩入れせずに働けるメンタルを持っている
ショートステイの相談員は、売り上げや稼働率を上げるために居宅支援事業所へ営業に行く必要があります。そのため、接客や営業が嫌いではない方は、相談員に向いている可能性があります。
また、事務処理能力は相談員にとって大切なスキルです。必須ではありませんが、数字と日々向き合う職種ですので、事務処理能力はあるに越したことはありません。
最後に、生活相談員は、家族からのクレーム・ケアマネージャーからの難しい要望・介護職員との意見の食い違いなど、さまざまな方面からの板挟みを経験する職種です。
どちらの肩を持ってもいけないため、適切なポイントで折り合いをつけて働けるメンタルを持っていることが大切です。
まとめ
ショートステイの生活相談員とは、利用者のサービス調整・送迎・契約手続きなど、施設の運営を担う大切な職種です。生活相談員になる要件を満たすのは簡単ですが、加えて現場と連携するコミュニケーション能力や事務処理能力が求められます。生活相談員になる際のデメリットを受け入れておくことも大切です。
しかし、やりがいは大きくキャリアアップにもつながるため、介護士として成長したい方には、生活相談員はおすすめの職種です。
この記事の執筆者 | 石田楓 保有資格: 介護福祉士 社会福祉主事任用 20歳のときにグループホームへ転職。 23歳でショートステイへ転職し、現場職員・相談員として7年勤務。 現在は介護・福祉系ライターとして活動、複数のメディアに記事執筆中。 |
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