特別養護老人ホームなどの入居施設で介護職が勤務していると「夜勤」があります。
介護を必要とする方が安心して暮らせるように、入居施設では夜勤シフトが欠かせません。
しかし、思うような夜勤明けの過ごし方ができずに疲れを溜めていませんでしょうか?
介護職にとって夜勤は定期的にシフトに組み込まれるため、できるだけ疲れを溜めずにこなしていきたいですよね。
そこで本記事では、介護現場ではたらく介護職の方に向けて、疲れを溜めずにできる夜勤明けの過ごし方や夜勤明けの負担を減らすコツを解説します。
体への負担を減らす方法を探している方や、自分に合った夜勤明けの過ごし方を見つけたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
介護職の夜勤明けは過ごし方が大切
利用者さんの安全を守る仕事である介護職は、夜勤明けの過ごし方にも気を配らなくてはいけません。
なぜなら夜勤明けの過ごし方を間違えて十分な休養をとれなかった場合、自分の体調に悪影響が出るだけでなく、介護事故のリスクが高まるおそれもあるからです。
日本看護協会の公式サイトに掲載されている「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」では、不十分な休養が事故リスクを高めることに言及しています。
最近の労働科学の知見では、十分な休養をとらないまま夜勤帯に勤務すると真夜中から明け方にかけて作業能力が極端に落ち、酒気帯び状態で同じ作業をさせた場合よりも作業能力が劣り危険な状態になることが実証されています。※患者の安全を守るという観点からも、看護職が確実に休養できるように十分な勤務間隔をとることが必要です。
※Dawson D, Reid K: Fatigue, alcohol and performance impairment, Nature, 388(6639):235, 1997.
看護職に限らず介護職も、利用者さんの安全を守る大切な仕事です。
仕事終わりは自由に過ごしたいところですが、節度を守った過ごし方を選択して、現場業務に悪影響が出ないよう過ごす必要があるでしょう。
また、夜勤明けの過ごし方を間違えて体調を崩してしまうと、早退や欠勤につながってしまうかもしれません。
急な体調不良は仕方のないことですが、どの介護現場でも介護スタッフの数は限られています。
はたらくスタッフ同士協力関係を築いていくためにも、夜勤明けは羽目を外し過ぎないよう気をつけましょう。
とはいえ、夜勤明けくらい解放感にひたって好きなように過ごしたいですよね。
次章では疲れを溜めない夜勤明けの過ごし方を具体的にご紹介します。
介護職の疲れを溜めない夜勤明けの過ごし方をご紹介します
疲れを溜めない夜勤明けの過ごし方は以下の5つです。
・日帰り温泉・サウナ・岩盤浴でゆっくりする
・マッサージ・整体・エステでリラックスする
・自宅で音楽・映画・ゲームをして好きなように過ごす
・夜勤明けにできる用事を済ませてスッキリする
・友人や家族と食事やショッピングに出かける
その日の体調や気分によって、自分に合った過ごし方は変わるでしょう。
活動量を抑えてゆっくり心身を休める日や、用事を済ませてから休む日を上手におり交ぜて、自分に合った休み方を見つけてくださいね。
日帰り温泉・サウナ・岩盤浴でゆっくりする
夜勤中の介護職は、ナースコールへ対応したり利用者さんの体調の変化に気を配ったりと、いつも神経を張り詰めているところがあります。
日帰り温泉・サウナ、岩盤浴を利用してゆっくりと体を休めれば、張り詰めた緊張がほぐれて気持ちもリフレッシュするでしょう。
こちらの方法の共通点は、自然に汗をかけることです。
体を内側から温めることで自然発生するサラッとした汗は「よい汗」とも呼ばれており、体内の老廃物を体の外に出したり免疫力を向上したりする効果があると考えられています。
汗を出せば気分もスッキリしますよね。
運動で汗を流すのも効果的ですが、夜勤明けの疲れた体を休めるためにも温泉・サウナ・岩盤浴でゆっくりするのがおすすめです。
マッサージ・整体・エステでリラックスする
夜勤中は、おむつ交換、排泄介助、着脱介助といった身体介助で介護職の体には一定の負担がかかっています。
また仮眠で横になっても、自宅のベッドと違う環境では思うように疲れがとれていないかもしれません。
そこでマッサージや整体を利用して、体の疲労や炎症が起きている部分を専門家に治療してもらう方法がおすすめです。
マッサージや整体には体の調子を整える効果を期待できます。
ちなみに、整体は硬くなった筋肉や関節へアプローチをして体の不調や姿勢を改善するための施術。
一方のマッサージは、肩や首などの凝っている部分やつらい部分にやさしくアプロ―チしてほぐしていくのが特徴です。
体をしっかり整えたいときは整体を利用して、凝りや緊張をほぐしたい場合はマッサージを利用するのが効果的でしょう。
どちらも施術後に体の不調改善を期待できますので、夜勤明け後の疲れた体を施術のプロにいやしてもらってください。
自宅で音楽・映画・ゲームをして好きなように過ごす
夜勤中は勤務時間のため、当たり前ですが自分の好きなことをして過ごすわけにはいきません。
聞きたい音楽、観たいと思っている映画、やりかけのゲームなどは、夜勤明けの時間にゆっくり楽しみましょう。
体を休めることも大切ですが、自分のしたいことをする時間も精神衛生上よい効果が期待できます。
ただし、繰り返しになりますが夜勤明けの過ごし方では疲れを溜めないとが重要です。
帰宅後に食事や仮眠をとったり、「疲れてきたら横になって目をとじる」「楽しむのは1時間までにする」といったルールを設けたりして、程よいところで終わりにしてくださいね。
夜勤明けにできる用事を済ませてスッキリする
夜勤のメリットの1つに、夜勤明けに銀行や役所などに行き、手続きできることが挙げられます。
「平日の昼間に時間がとれない」「手続きの期限が迫って落ち着かない」と、気になることがあると精神的に休まらず疲れがうまく取れないかもしれません。
自宅に帰ってきたらシャワーを浴びたり食事をとったりして、軽めの休息を設けてから、用事を済ませてしまうのがよいでしょう。
用事が済むと気持ちは軽くなるため、その後リラックスして過ごせますよ。
ただし、夜勤が忙しくて体が疲労困憊のときは注意が必要です。
仕事が忙しくて仮眠がとれなかったり少し休んでも倦怠感が残っていたりすれば、疲れを溜めないために体を休めることを優先してください。
友人や家族と食事やショッピングに出かける
仲のよい友人や家族と一緒に過ごす時間を設けると、精神的な疲れがやわらぎます。
「仕事であった嫌なことを聞いてもらう」「相手の話を聞いて感想を言う」と、無理のない過ごし方ができれば心のモヤモヤもはれていくでしょう。
愚痴や不満は、無理に抑え込まず吐き出す方が楽になることがあります。
そもそも介護職は、勤務中に感情のコントロールを求められることの多い「感情労働」と呼ばれる仕事です。
笑顔で利用者さんと接したり不快な感情を表に出さないよう注意したりすれば、忍耐や緊張によって心にはストレスが発生しています。
まして夜勤帯はスタッフの数も少なくなるため、負担があなたに集中してしまうことも。
だからこそ、気の置けない相手と過ごす時間を大切にして精神的な疲れを溜めないようにすることが介護職には大切なのです。
介護職が夜勤明けの負担を減らすコツ5選
自分に合った夜勤明けの過ごし方と同時に、夜勤明けの負担を減らすコツも身につけましょう。
夜勤明けの負担を減らすために身につけたいコツがこちらです。
・仮眠する時間を設ける
・仮眠のとり過ぎには注意する
・消化によいものを食べる
・ゆっくり落ち着ける環境をつくる
・夜更かしせずに早めに横になるようにする
それぞれ解説します。
①仮眠する時間を設ける
夜勤明けの日の空いた時間を、有効活用したい方もいると思います。
それでも仮眠する時間は必ず設けるようにしましょう。
夜勤明けの日は、寝不足や疲労によって眠気が発生し集中力が低下しています。
もしも仮眠せずに車を運転したり大切な用事を片付けようとしたりすると、大きな事故やミスにつながってしまうかもしれません。
夜勤明けに仮眠をとるタイミングとして、以下のパターンがおすすめです。
・帰宅してすぐ仮眠をとる。昼過ぎに起床し食事をとってから活動する
・帰宅してまず食事をとる。昼頃に仮眠をとって夕方から活動する
守るべきポイントは、夜勤明けの1日に仮眠する時間を必ず設けることです。
もしも日中に片付けたい用事があり、仮眠をとらずに活動する際は、できるだけ集中力がいらない作業を行うようにして就寝時間を早めに設定しましょう。
②仮眠は「1時間から2時間」にする
仮眠は体の疲れをとるのに非常に有効です。
夜勤明けの疲れているときは、ついつい眠り過ぎてしまうかもしれませんね。
ですが仮眠時間は、1時間から2時間ほどにとどめておきましょう。
もしも1時間の仮眠では足りないと感じたら、アラームを設定して起床時間を調節したりして、2時間以上眠らないよう気をつけてください。
これには昼夜逆転の生活につながるのを防ぐ目的があります。
仮眠を長くとり過ぎると体内時計が変化して、夜の寝つきが悪くなったり夜更かししてしまったりと、昼夜逆転の生活につながるかもしれません。
昼夜逆転の生活が続くと、仕事がある朝に起きるのがつらくなるほか、体がボーッとして、かえって心身に負担をかけてしまうおそれがあります。
長い睡眠時間は夜にまとめてとるようにして、仮眠は1時間から2時間ほどにとどめておくのがよいでしょう。
③夜勤明けの日こそ早めに横になる
仮眠時間の話に通じるところがありますが、夜勤明けの日こそ早めに横になって、体内時計を整えてください。
具体的には、いつもの就寝時間より1時間程早めに横になるとよいでしょう。
また、体力に余裕があれば、軽いウォーキングやストレッチ、水泳といった軽い有酸素運動に取り組むのも効果的です。
適度な疲労は夜の寝つきをよくしてくれますよ。
有酸素運動には、血液の循環を改善したり体の新陳代謝を促したりする効果もありますので、体の内側から調子を整えたいときにおすすめです。
④消化によいものを食べる
夜勤時はずっと覚醒しているため、内臓にも一定の疲労が溜まっています。
夜勤明けの食事は、みそ汁やポタージュのようなスープ、バナナやリンゴといった果物、繊維質の少ない野菜のサラダなどの軽食を選んで、内臓への負担を軽減してあげましょう。
コーヒーや緑茶にはカフェインが入っているため、できるだけ避ける方が安心です。
カフェインの入った飲み物をとりたいときは、1杯までにしておけば大きな影響はないでしょう。
胃腸に負担をかけないために食べ過ぎに注意するほか、就寝の2時間前には夕食を済ませておくと負担を軽減できます。
⑤眠りやすい環境をつくる
夜勤明けで仮眠する際に眠りやすい環境づくりも大切です。
寝室の温度をエアコンなどで暑過ぎず寒過ぎないように調整するほか、肌触りのよい枕やシーツを用意するのもよいでしょう。
さらにリラックスできるように、アロマオイルを使ったりお香を焚いたりするのも効果的です。
ちなみに眠る直前のお風呂は寝つきを悪くしてしまう可能性があります。
そのためお風呂は就寝時間の2時間前ほどに済ませておきましょう。
お湯の温度を38度ほどのぬるめに設定して20分前後つかると、疲労を残さず心身を休められますよ。
介護職は夜勤明けの過ごし方を工夫して充実した1日を過ごそう!
夜勤明けの過ごし方を工夫すれば、夜勤明けの1日を「充実した1日」に変えられます。
介護職の夜勤明けの翌日は法定休日となりますので、夜勤明けを心身の休息にあてて、翌々日はプライベートを楽しむ日にしてもよいでしょう。
もしも有給が利用できるなら、現場リーダーや管理者といったシフト作成者と相談のうえで、2日以上の連休をとるのもおすすめです。
平日に連休をつくれたり、まとまった連休をとりやすかったりする点は、介護職ならではの醍醐味だと思います。
介護職の夜勤は決して楽な業務ではありませんが、夜勤のメリットを生かして自分らしく働くことは可能です。
ぜひ本記事を参考に、介護職の夜勤明けの過ごし方について、あなたらしい過ごし方を考えてみてください。
そしてこれからも介護職を無理なく続けていただければ幸いです。
この記事の執筆者 | 千葉拓未 所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級) 専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。 以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。 生活相談員として5年間の勤務実績あり。 利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。 現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、 Webライターとして活躍している。 |