サービス提供体制強化加算は、人材を確保し、質の高いサービス提供を行う介護施設・事業所を評価する加算です。所属する介護職員の数や資格、勤続年数などの要件により、算定可能な単位数にちがいがありますが、利益に直結するため、算定しておきたい加算です。
しかし、「今の人員体制で算定できるのか?」「算定する際の計算方法やポイントを知りたい」と考える介護施設・事業所も多いのではないでしょうか?
この記事では、サービス提供体制強化加算の加算要件・計算方法を中心に、加算を算定する際に必要な知識を解説しました。これからサービス提供体制強化加算の算定を検討されている介護施設・事業所の担当者は、ぜひ参考にしてください。
※令和6年度の介護保険報酬改定では、サービス提供体制強化加算に関する変更点はありませんでした。
目次
サービス提供体制強化加算とは
サービス提供体制強化加算とは、介護福祉士を含めた介護職員の配置を強化し、質の高いサービス提供を行う介護施設・事業所を評価する加算です。
令和3年度の介護保険報酬改定で、更なる「質の高いサービスの提供」と「職員のキャリアアップの促進」を目的に、加算の内容が変更となりました。
特に加算の区分が、以下の3つに大きく分類されたことが特徴です。
・サービス提供体制強化加算Ⅰ
・サービス提供体制強化加算Ⅱ
・サービス提供体制強化加算Ⅲ
それぞれの区分によって算定要件や単位数にちがいがあり、介護施設・事業所の実情と算定要件に合った加算区分を確認し、各市町村に届け出ることで算定できます。
そのため、サービス提供体制強化加算の算定を目指す場合、まずは算定要件と職場の実情を照らし合わせて、算定可能な加算区分を確認しましょう。
2024年(令和6年度)介護報酬改定でのサービス提供体制強化加算に関する変更点
記事の冒頭でも記載しましたが、令和6年度の介護保険報酬改定では、サービス提供体制強化加算に関する変更点はありませんでした。
サービス提供体制強化加算の対象サービス種別
介護保険に関するサービスの種類は数多くあり、どれがサービス提供体制強化加算の対象サービスなのか分かりにくいですよね。
サービス提供体制強化加算の対象サービス種別は以下のとおりです。
在宅サービス | 施設サービス | 地域密着型サービス |
・(介護予防)訪問入浴介護 ・(介護予防)訪問看護 ・(介護予防)訪問リハビリテーション ・通所介護(介護予防・日常生活支援総合事業) ・(介護予防)通所リハビリテーション ・(介護予防)短期入所生活介護 ・(介護予防)短期入所療養介護 |
・介護老人福祉施設 ・介護老人保健施設 ・介護療養型医療施設 ・介護医療院 ・特定施設入居者生活介護 |
・地域密着型通所介護 ・(介護予防)認知症対応型通所介護 ・療養型通所介護 ・(介護予防)小規模多機能型居宅介護 ・看護小規模多機能型居宅介護 ・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 ・夜間対応型訪問介護 ・地域密着型介護老人福祉施設 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 ・(介護予防)認知症対応型共同生活介護 |
サービス提供体制強化加算の算定要件
サービス提供体制強化加算を算定する際、必ず算定要件を確認しなければなりません。しかし、どのような算定要件があるのか分かりにくいですよね。
本章では、以下の介護サービスの算定要件をもとに、具体的なサービス提供体制強化加算の算定要件について解説します。
・通所介護
・通所リハビリテーション
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
通所介護・認知症対応型通所介護・通所リハビリテーション
通所介護のサービス提供体制強化加算の単位数・算定要件は以下のとおりです。
単位数
サービス提供体制強化加算Ⅰ | サービス提供体制強化加算Ⅱ | サービス提供体制強化加算Ⅲ | |
要介護1~5 | 22単位/回 | 18単位/回 | 6単位/回 |
要支援1 | 88単位/月 | 72単位/月 | 24単位/月 |
要支援2 | 176単位/月 | 144単位/月 | 48単位/月 |
算定要件
基本要件 | ・人員配置基準を満たしている ・利用者数の定員が超過していないこと 大規模型(Ⅱ):延べ利用者数月900人以上 大規模型(Ⅰ):延べ利用者数月750人から900人以内 通常規模型:延べ利用者数月750人 |
サービス提供体制強化加算Ⅰ | ・介護職員の総数のうち、介護福祉士の割合が70%以上であること ・介護職員の総数のうち、勤続年数が10年以上の介護福祉士が25%以上であること |
サービス提供体制強化加算Ⅱ | ・介護職員の総数のうち、介護福祉士の割合が50%以上であること |
サービス提供体制強化加算Ⅲ | ・介護職員の総数のうち、介護福祉士の割合が40%以上であること ・介護職員の総数のうち、勤続年数が7年以上の者が30%以上であること |
地域密着型通所介護
地域密着型通所介護のサービス提供体制強化加算の単位数・算定要件は以下のとおりです。
単位数
サービス提供体制強化加算Ⅰ | サービス提供体制強化加算Ⅱ | サービス提供体制強化加算Ⅲ | |
要介護1~5 | 22単位/回 | 18単位/回 | 6単位/回
療養型通所介護の場合 サービス提供体制強化加算Ⅲ(ロ) |
算定要件
基本要件 | ・人員配置基準を満たしている ・利用者数の定員が超過していないこと 大規模型(Ⅱ):延べ利用者数月900人以上 大規模型(Ⅰ):延べ利用者数月750人から900人以内 通常規模型:延べ利用者数月750人 |
サービス提供体制強化加算Ⅰ | ・介護職員の総数のうち、介護福祉士の割合が70%以上であること ・介護職員の総数のうち、勤続年数が10年以上の介護福祉士が25%以上であること |
サービス提供体制強化加算Ⅱ | ・介護職員の総数のうち、介護福祉士の割合が50%以上であること |
サービス提供体制強化加算Ⅲ | ・介護職員の総数のうち、介護福祉士の割合が40%以上であること ・介護職員の総数のうち、勤続年数が7年以上の者が30%以上であること |
サービス提供体制強化加算Ⅲ (イ) |
・介護職員の総数のうち、勤続年数が7年以上の者が30%以上であること |
サービス提供体制強化加算Ⅲ (ロ) |
・介護職員の総数のうち、勤続年数が3年以上の者が30%以上であること |
サービス提供体制強化加算の単位数
各サービス提供体制強化加算の単位数を表にまとめました。
介護サービス | サービス提供体制強化加算Ⅰ | サービス提供体制強化加算Ⅱ | サービス提供体制強化加算Ⅲ |
(介護予防)訪問入浴介護 | 44単位/1回 | 36単位/1回 | 12単位/1回 |
(介護予防)訪問看護 | 6単位/1回
定期巡回・随時対応と連携 |
3単位/1回
定期巡回・随時対応と連携 |
なし |
(介護予防)訪問リハビリテーション | 6単位/1回 | 3単位/1回 | なし |
(介護予防)通所介護
(介護予防)認知症対応型通所介護 |
22単位/1回
要支援1(通所介護のみ) 要支援2(通所介護のみ) |
18単位/1回
要支援1(通所介護のみ) 要支援2(通所介護のみ) |
6単位/1回
要支援1(通所介護のみ) 要支援2(通所介護のみ) |
(介護予防)通所リハビリテーション | 22単位/1回
要支援1 要支援2 |
18単位/1回
要支援1 要支援2 |
6単位/1回
要支援1 要支援2 |
(介護予防)短期入所生活介護
(介護予防)短期入所療養介護 |
22単位/1回 | 18単位/1回 | 6単位/1回 |
特定施設入居者生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護 介護老人福祉施設 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 介護老人保健施設 介護療養型医療施設 介護医療院 |
22単位/1回 | 18単位/1回 | 6単位/1回 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 750単位/1月
サービス提供体制強化加算Ⅰ2 |
640単位/1月
サービス提供体制強化加算Ⅱ2 |
350単位/1月
サービス提供体制強化加算Ⅲ2 |
地域密着型通所介護 | 22単位/1回 | 18単位/1回 | 6単位/1回
療養型通所介護の場合 サービス提供体制強化加算Ⅲ(イ) サービス提供体制強化加算Ⅲ(ロ) |
小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護 |
750単位/1月
短期利用の場合 |
640単位/1月
短期利用の場合 |
350単位/1月
短期利用の場合 |
認知症対応型共同生活介護 | 22単位/1日 | 18単位/1日 | 6単位/1日 |
参考:WAMNET 介護保険事務処理システム変更に係る参考資料(確定版)(令和6年3月28日事務連絡)
サービス提供体制強化加算の計算方法のポイント
サービス提供体制強化加算を算定したいけれど、算定要件を満たしているのか気になる事業所も多いかもしれません。
算定要件を満たしているのか確認するためには、以下の3つを計算する必要があります。
・介護職員の総数
・介護福祉士の割合
・勤続年数
本章では、上記の計算方法とポイントについて解説します。
介護職員の総数
サービス提供体制強化加算を算定する際、介護職員の総数が必要になります。介護職員の総数を計算する際、常勤換算で計算しましょう。
常勤換算による介護職員の総数を求める計算式は、以下のとおりです。
「1ヶ月(4週間)分の勤務時間総数÷常勤職員が勤務すべき時間数」
そして、計算する際には、注意すべき2つのポイントがあります。
・非常勤職員が有給休暇や出張した場合、その時間は勤務時間総数に含めることができない。
・常勤職員は、休暇や出張の日数が暦月でひと月分を超えない限り、勤務時間総数に含めることができる。
このように、介護職員の総数を計算する際、上記のポイントに注意しながら常勤換算で計算しましょう。
介護福祉士の割合
介護福祉士の割合は算定要件に関わる重要なポイントのひとつです。
介護福祉士の割合も、以下の常勤換算で求めることができます。
「介護福祉士の資格を取得している職員の勤務時間総数÷常勤職員が勤務すべき時間数」
注意すべきポイントとして、介護福祉士の資格は、各月の末日の時点で資格を取得していないとカウントされません。
そのため、介護福祉士の割合を用いる場合、資格取得のタイミングに注意しながら計算するようにしましょう。
勤続年数
勤続年数も算定要件に算定要件に関わる重要なポイントのひとつです。勤続年数は「同じ法人でどのくらいの期間働いているのか」を示すものです。
そのため、別の法人で働いていた期間はカウントされません。
しかし、以下の3つのケースに該当する場合、勤続年数として通算することができます。
・同じ法人で、異なる介護施設・事業所で働いた場合
・同じ法人で、異なる雇用形態で働いた場合
・合併や事業継承による職員の変更がなく、運営していると認められた場合
勤続年数を計算する際、法人単位での勤続年数をカウントするようにしましょう。
サービス提供体制強化加算におけるQ&A
サービス提供体制強化加算の算定に関して、さらに詳しく知りたい場合のために厚生労働省より具体的なQ&Aが発表されています。
本章では実際に発表されているQ&Aを3つご紹介します。
問 124
Q
共生型介護保険サービス事業所についても、サービス提供体制強化加算や介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算の算定要件を満たすことができれば、同加算を算定してよいか。
A
貴見のとおり。
問 125
Q
共生型介護保険サービスを提供する障害福祉サービス事業所においては、人員配置基準上、介護職員の配置は求められていない。
このため、共生型介護保険サービス事業所がサービス提供体制強化加算や介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算を算定するにあたっては、当該障害福祉サービス事業所のホームヘルパーや生活支援員等の「福祉・介護職員」を介護職員とみなすこととして差し支えないか。
A
差し支えない。
問 126
Q
「10 年以上介護福祉士が 30%」という最上位区分の要件について、勤続年数はどのように計算するのか。
A
サービス提供体制強化加算における、勤続 10 年以上の介護福祉士の割合に係る要件については、
・介護福祉士の資格を有する者であって、同一法人等での勤続年数が 10 年以上の者の割合を要件としたものであり、
・介護福祉士の資格を取得してから 10 年以上経過していることを求めるものではないこと。
「同一法人等での勤続年数」の考え方について、
・同一法人等(※)における異なるサービスの事業所での勤続年数や異なる雇用形態、職種(直接処遇を行う職種に限る。)における勤続年数
・事業所の合併又は別法人による事業の承継の場合であって、当該施設・事業所の職員に変更がないなど、事業所が実質的に継続して運営していると認められる場合
の勤続年数は通算することができる。
※同一法人のほか、法人の代表者等が同一で、採用や人事異動、研修が一体として行われる等、職員の労務管理を複数法人で一体的に行っている場合も含まれる。
なお、介護職員等特定処遇改善加算において、当該事業所における経験・技能のある介護職員の「勤続年数 10 年の考え方」とは異なることに留意すること。
引用:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.952 令和3年3月26日」
上記のQ&A以外にも、サービス提供体制強化加算や介護保険制度の詳細を確認が必要となる場合があると思われます。
その際は、保険者である各自治体の介護保険担当窓口へお問い合わせください。
まとめ
今回はサービス提供体制強化加算の算定要件や計算方法を中心に解説しました。サービス提供体制加算は介護職員を確保し、質の高いサービスを提供している介護施設・事業所を評価する加算です。
現在は3つの算定区分ごとに、介護福祉士を含めた介護職員の割合や勤続年数などの算定要件が設定されています。
算定要件を満たしているか確認するためには、以下の3つを計算することが必要です。
・介護職員の総数
・介護福祉士の割合
・勤続年数
職場の実状と算定要件を照らし合わせて、確実に算定できるように対応しましょう。
さらに、サービス提供体制強化加算について詳しく確認したい場合、厚生労働省のQ&Aの確認や各自治体の窓口へ問い合わせましょう。
この記事の執筆者 | Kawashow 所有資格:介護福祉士 介護支援専門員 福祉用具専門相談員 福祉住環境コーディネーター2級 介護職として介護付き有料老人ホーム・病院の現場で7年間勤務。 ケアマネ資格取得後、地域密着型特養のケアマネとして2年間勤務し、現在は居宅介護支援事業所のケアマネとして8年目を迎えます。 本業と並行し、介護・福祉系ライターとしても活動しています。 |
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