知識・技術

最終更新日

 

【展示会情報】「実践! 札幌DXトレンド2024 Autumn」(大塚商会主催)に参加決定!展示会場にて実際にシンクロシフトを操作いただくことも可能です!!
<日時:2024年10月22日 場所:札幌グランドホテル> → 詳細はこちら

【見逃し配信中!】好評だった共催セミナー、「ICT導入による業務工数削減とその先のDXに向けて」が見逃し配信中です! → 詳細はこちら

【教えて!】介護施設がICT導入に失敗しないためのポイント!ICT導入メリット・デメリットについても解説

介護施設がICT導入に失敗しないためのポイント

介護業界におけるICTとは、請求業務や記録ソフト、勤怠管理ソフトなど、介護施設・事業所の業務負担を軽減するのに役立つ機器のことを指します。しかし、ICT導入時のポイントをおさえておかないと、うまく活用できず失敗に終わってしまう可能性があるのです。
 
この記事では、介護施設でのICT化について、その背景や活用例、メリット・デメリットについて解説します。さらに、導入前に準備しておきたいポイントについても紹介します。
 
ICT導入に悩んでいる方、どう進めていけばよいかわからない方はぜひご覧ください。

介護業界でICT化が加速する背景

ICTツールを利用して業務を行う介護職員

近年、介護業界ではICT化が加速しています。主な背景としては、以下の2つが挙げられます。

・介護職員の人手不足
・国によるICT導入の推進

それぞれの背景について解説します。

介護職員の人手不足

厚生労働省が2023年(令和5年)に発表した資料によると、今後必要な介護職員数は下表のように推測されています。

年度 介護職員の必要数 2019年度との比較
2023年(令和5年)度 約233万人 +約22万人
2025年(令和7年)度 約243万人 +約32万人
2040年(令和22年)度 約280万人 +約69万人

出典:厚生労働省 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の将来推計について

つまり、生産人口自体の減少や介護業界のなり手不足により、介護人材が約69万人不足すると考えられています。さらには、団塊の世代が75歳以上となる2025年や総人口の35%が高齢者となる2040年と、今後高齢者の増加が見込まれているのです。

高齢者の増加に比例して要介護者の増加もさらに増えると推測されており、介護職員の人手不足が今よりも深刻になる可能性が高いといえます。

2025年問題・2040年問題について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご参考ください。

国が介護現場のICT導入を推進している

介護人材の不足に対して、国の取り組みのひとつに「生産性向上」があります。この「生産性向上」の内容は、以下のとおりです。

・人手不足の中でも介護サービスの質の維持・向上を実現するマネジメントモデルの構築
・ロボット・センサー・ICTの活用
・介護業界のイメージ改善と人材確保

引用:厚生労働省 介護分野における生産性向上ポータルサイト 介護分野における「生産性向上」とは?

とくに、マネジメントモデルでは介護業務を直接的なケアと間接的業務に分けたうえで、施設や事業所内の課題を抽出していくことが求められています。ロボット・センサー・ICTを活用し、介護現場のケアや業務をより効率化する必要があるのです。

さらに、2024年(令和6年)の介護報酬改定では、「生産性向上推進体制加算」が新設されました。この加算は、生産性向上委員会の設置や見守り機器等の導入、業務改善データの報告を行うことで取得できます。

つまり、加算を通して介護現場にICT化の活用を促していると考えられるのです。介護職員の人手不足や離職防止、職場環境の改善に向けて、国をあげてICT化が加速しているといえるでしょう。

生産性向上推進体制加算について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

介護施設におけるICT化・ICT活用例

介護DX化

介護施設におけるICT化とは、具体的にどういった機器を導入すればよいのでしょうか?

具体的な機器や活用例、効果については下表のとおりです。

機器 活用例 導入効果・メリット
勤怠管理ソフト ・シフトの自動集計
・希望休や有給休暇の残数を管理
・人員配置基準などをすぐ確認
・シフト作成時間を削減できる
・多様な勤務区分も管理しやすい
・従業員の残業時間や有給取得数を管理
・給与計算の負担を軽減できる
チャットツール ・情報共有をよりスムーズに行える
・データでの資料配布、確認
・写真や動画の共有
・電話時間を削減できる
・情報共有の漏れが少なくなる
・グループ機能を通して、目的に合わせたやり取りができる
・特変時にすぐ共有できる
記録ソフト ・介護記録をスマホやタブレット、PCで管理
・データでの記録保管が可能
・他事業所やLIFEへデータ連携
・記録業務の負担を軽減できる
・記入漏れ、転記漏れを防げる
・介護記録の質が向上する
・写真や動画も保存できる
インカム ・職員同士、離れた場所で情報共有
・インカムにてヘルプ要請
・ハンズフリー対応
・1対多数といったコミュニケーションを行える
・緊急時に迅速な共有が行える
・ケアを行いながら通話できる
見守りシステム ・センサーやカメラを設置
・人感や赤外線などがあり、施設状況に応じて使い分けも可能
・転倒や転落事故防止につながる
・訪室回数を削減できる
・ご利用者の生活リズムを把握・分析できる
排泄予測機器 ・膀胱内の尿の溜まり具合を測定し、排尿タイミングを可視化
・ご本人が排尿タイミングがわかることで、トイレの自立を促す
・職員が要介護者の排尿タイミングがわかることで、トイレでの排泄を促す
・失禁やそれに伴う皮膚疾患を減らせる
・排泄タイミングに合わせたトイレ誘導ができる
・オムツやパッド代の削減にもつながる

 

ICT化と一言でいっても、数多くの機器があることがわかります。施設や事業所の課題や状況にあわせて、機器の選択・活用をしましょう。

介護施設のICT導入率

介護業界において、近年人手不足や国での推進によりICT化が加速していることがわかりました。では、実際どれほどの施設がICT機器を導入・活用しているのでしょうか?

公益財団法人介護労働安定センターが、2023年(令和4年)度に行った調査によると、下表のような結果でした。

回答内容 サービス全体の回答率
パソコンで介護記録などの利用者情報を共有している 55.9%
記録から介護保険システムまで一括管理している 45.6%
タブレット端末などで介護記録などの利用者情報を共有している 32.5%
グループウェアなどで事業所内の報告・連絡・相談をしている 23.4%
給与計算や勤怠管理、シフト管理を一元化している 22.5%
情報共有システムを用いて他事業者と連携している 15.3%
他事業所とデータ連携システムによりケアプランやサービス提供票をやりとりしている 11.2%
その他 0.8%
いずれも行っていない 19.3%

引用:公益財団法人介護労働安定センター 令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要について P.12をもとに作成

2022年(令和3年)度のデータと比較すると、

・パソコン利用率:3.1%増
・タブレット利用率:3.9%増

と、昨年から少しずつ増えてきているのがわかります。約2割程度「いずれも導入していない」事業所もありますが、約8割の事業所で何らかのICT機器を導入しています。

今後、ICT機器の導入自体はもちろん、それらの活用方法について知っておく必要があるのです。

介護施設でICT化に失敗する主な原因

近年少しずつ増えてきている介護施設のICT化ですが、導入したのはよいもののうまく活用できず失敗してしまう例も多くあります。

ICT化に失敗する主な原因は、以下の4つです。

介護施設でICT化に失敗する主な原因

 
1.使用する職員のスキル・知識不足
2.職員がICT化に苦手意識を持っている
3.施設のニーズに合わないICT化を進めてしまう
4.資金不足で中途半端な導入になってしまう

それぞれの原因について解説します。

職員のスキル・知識不足

介護職員のICTに関するスキルや知識が不足しているため失敗するケースがあります。導入や運用については管理職が行いますが、実際にICT機器を利用するのは介護職員です。

利用方法がわからないままだと、ただでさえ現場業務が多い介護職員からするとより負担が増えてしまいます。後述する「職員への周知」や「現場への研修」を通して、スキル・知識不足を解決することが求められます。

職員がICT化に消極的(苦手意識が強い)

介護職員の中には、新しい機器に苦手意識を持ち、導入・運用に消極的な人もいます。「慣れていない」「難しくてわからない」とネガティブなイメージをもっている方もいるかもしれません。

そういった声を無視して導入を進めていくのではなく、消極的な意見も聞いたうえで、現場の実情やニーズに合わせた機器の検討が大切です。

たとえば、記録ソフトでタイピング入力に苦手意識を持った人が多くいれば、音声入力にも対応したソフトを検討しましょう。ICT機器を導入することの目的やメリットを何度も伝え、苦手意識を少しずつ和らげていく必要があります。

施設のニーズに合わないICT化を進めてしまう

施設のニーズに合わないICT化を進めてしまうと失敗する可能性が高くなります。導入自体が目的となってしまうと、介護職員の業務負担やご利用者やご家族の安全・安心といった本来の目的からかけ離れてしまいます。

例えば、

・ICT化が流行っているみたいだからなんとなく使ってみよう
・いろんなソフトを入れるだけで負担が減らせるだろう
・とりあえず導入だけしておいて、あとで使用方法を見たらよい

と、なんとなくではじめてしまうと長続きしません。まずは、施設で抱えている課題は何か、課題解決のためにICT機器をどのように導入するか、計画的に進めていくことが重要です。

資金不足で中途半端な導入になってしまう

ICTの導入について、施設のニーズや課題を抽出したうえで、計画的に進める必要があります。それと同時に、ICT機器に関する予算計画も立てておくことが重要です。

特に、ICT機器の中には見守り機器と記録ソフトが連携するものもあれば、記録から請求までを一元管理できるソフトもあります。しかし、予算が足りなければこういった連携が中途半端になり、負担軽減の恩恵が受けられず、逆に負担が増え混乱を招く可能性もあるのです。

ICT機器の導入に関するコストや法人予算を把握しておくことが大切です。また、補助金などのコスト削減できる方法も活用し、スムーズに導入できるようにしましょう。

介護現場にICTを導入するメリット・デメリット

ICT導入を進める介護施設で働く介護士

次に、介護現場にICT機器を導入するメリット・デメリットについて解説します。導入前に確認し、現場にあったソフト選びを行いましょう。

ICT導入のメリット

ICT導入におけるメリットは、以下の点です。

介護施設 ICT導入におけるメリット

 
・情報共有がしやすい
・円滑なコミュニケーションがとれる
・データの管理・共有がしやすい
・ご利用者へのケアに注力できる

介護施設をICT化することの最も重要なメリットは、ご利用者へのケアに集中できることです。もちろんICT機器の導入を行うことで、職員の無駄な業務を削減でき、人手不足の解消や残業などの削減、離職率の低下につながります。

介護職員は、間接的業務負担を減らせた分、ご利用者の直接的なケアに集中でき、結果としてご利用者・ご家族の安全や安心につながります。

ICT導入のデメリット

一方、ICT導入のデメリットは、以下の点です。

介護施設 ICT導入のデメリット

 
・導入コストがかかる
・スタッフへの教育など時間コストもかかる
・情報漏洩などのリスクがある

さまざまなコストがかかることが大きなデメリットであるといえます。導入では、ソフト自体だけでなくパソコンやタブレット、インターネット環境整備における通信費がかかります。

金銭的コストだけではなく、職員への研修や運用後のフォローといった時間的コストも考慮することが必要です。とくに、介護職員は現場業務もこなしながら、新しい機器の使い方を学ばなければなりません。

そのため、導入から運用まで数ヶ月・年間単位でかかる見込みで進めていきましょう。さらに詳しくメリット・デメリットを知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

介護施設がICT導入前に準備しておきたいポイント

あなたの施設や事業所でICT導入を成功させるためには、いくつかポイントをおさえて準備する必要があります。

主なポイントは、以下の5つです。

1.ICT化で達成したい成果を明確にする
2.職員へ事前に周知しておく
3.現場への研修準備をしておく
4.ITリテラシーが高い職員を見つける
5.活用できる補助金を調べる

それぞれのポイントについて解説します。

ICT化で達成したい成果を明確にする

ICT化の導入にむけて最初に行うことは、達成したい成果を明確にする点です。ICT化を推進する目的や課題解決のイメージを行い、なぜICT化を行うのかを共有しやすくします。

たとえば、以下のような目標設定があります。

・ご利用者の満足度を〇%にする
・見守りシステムを導入し、転倒事故を〇件に減らす
・シフト作成ソフトで、リーダー業務を〇時間にする
・記録ソフトを使い、職員の残業時間を〇時間減らす

具体的な数字を用いながら、達成したい目標を設定しましょう。また、一気に達成するよりも短期・中期・長期とわけることが重要です。

小さな目標を少しずつ達成することで、ICT化での成功体験を施設内で共有できるでしょう。

職員への事前周知

達成したい成果や目標を定めたら、それを職員に事前に周知します。ICT機器を実際に使用し効果を実感するのは、あくまで現場にいる介護職員です。

導入した目的がわからないままだと、職員のモチベーションはあがりません。職員への事前周知をするときは、以下の点を伝えるようにしましょう。

・導入する目的
・導入後に達成したい成果
・導入までのスケジュール
・導入後のフォロー体制
・職員での役割(担当者など)

ICTツール導入について、不安や苦手意識を持った職員も少なからずいます。目的や成果を何度も伝えつつ、導入・運用までの道筋を共有しましょう。

現場への研修準備

ICT導入にむけて、現場職員への研修準備を行いましょう。新しいものの導入に苦手意識のある職員や、電子機器が苦手な職員もいます。

1回だけでなく複数回研修を開催することが必要です。とくに、現場への研修準備は現場職員のためだけではありません。

導入担当者にとっても、実際の現場職員が機器を操作している様子や機器の配置動線など、研修を通して発見する課題もあります。そのため、複数回研修を行いながら機器使用方法やマニュアルを精査していきましょう。

ITリテラシーが高い職員を見つける

実際にICT機器を導入していくうえで、ITリテラシーが高い職員を見つけておくことが必要です。すべての職員を対象にした研修も必要ですが、ITリテラシーの高い職員が導入後に現場で機器操作に関する困ったことを解決してくれます。

施設内のICT担当者だけでは、現場で起こった細かい問題やトラブルを解決することができません。細かい問題やトラブルにより業務が進まないなどがあると、現場職員は機器に対するストレスを感じてしまいます。

ITリテラシーの高い職員がいると、トラブル解決までの時間が短くなるためスムーズに機器を活用できるでしょう。

活用できる補助金を調べる

ICT機器を導入するにあたり、それなりのコストが発生します。厚生労働省では、ICT導入支援事業としてICT機器・設備の導入費用を補助してくれます。費用負担を軽減するために活用できる補助金を調べ、申請してみることも検討してみてください。

実施主体は都道府県で、各都道府県により申請方法や要件に違いがあります。例えば、東京都における補助金事業の概要は下表のとおりです。

対象経費 介護業務支援システム導入等経費
具体的な内容 ・ソフトウェアやクラウドサービス
・タブレットやスマートフォン等のハードウェア
・Wi-Fiルーター等のネットワーク機器
・他事業所からの紹介に応じた経費
※介護業務支援システム導入に関する照会等
補助上限額 最大260万円
※施設の職員数に応じ上限金額が決定
主な対象要件 1.記録業務、情報共有業務、請求業務を一通り行うことが可能となるもの
2.日中のサポート体制を常設しているもの
3.「LIFE」による情報取集に協力する意思があること
4.「SECURITY ACTION」の一つ星又は二つ星であること

参考:公益財団法人東京都福祉保健財団 令和6年度デジタル機器導入促進支援事業

ICT機器導入の負担軽減ができるよう、施設や事業所のある都道府県ホームページをチェックし申請しましょう。

まとめ

この記事では、介護施設でICT導入するうえでの活用例やメリット・デメリット、準備するときのポイントについて解説しました。

2025年問題における高齢者の増加や今後の介護人材の不足のため、介護施設におけるICT機器導入は必要不可欠です。ICT化の推進により、介護職員が働きやすい環境を作るとともに、ご利用者へのサービスの質向上が期待されます。

メリットやデメリット、導入前のポイントを確認し、スムーズな導入を目指しましょう。この記事をご覧いただき、ぜひ施設運営の一助になれば幸いです。

介護業界におけるICT化について、以下の関連記事を掲載しています。ぜひ合わせてご覧ください。

 

この記事の執筆者しょーそん

保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了

グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。
現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。

現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。

 

この記事をシェアするSHARE

記事一覧に戻る

シンクロシフト

人気記事RANKING

カテゴリーCATEGORY

キーワードKEYWORD