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【教えて!】介護職に求められる言葉遣いとは?【チェックリスト付き】接遇マナーも解説

介護職に求められる言葉遣いとは

介護職に求められる言葉遣いには、さまざまな種類があることをご存じですか?介護現場で使われる敬語には、丁寧語、尊敬語、謙譲語があり、それぞれ意味や使い方が異なります。
 
この記事では、正しい言葉遣いや接遇に興味のある介護職に向けて、介護職に求められる正しい言葉遣いと接遇マナーについて解説します。
 
介護現場の事例をまじえて解説しますので、現場の接遇向上を任されている管理者や現場リーダーの方もぜひご覧ください。

介護現場で求められる正しい言葉遣いとは

特養で働く介護士と施設長、入居者

介護サービスを利用する高齢者は、介護施設ではお客さまにあたります。介護施設の職員にとって、お客さまは目上の人です。そのため、介護現場で基本となる言葉遣いは敬語となります。

敬語の重要性や「普通語」との違いについて、もう少し詳しく確認しましょう。

介護現場で基本となる言葉遣いは「敬語」

敬語とは、相手に敬意や尊敬を伝えるための言葉遣いです。介護現場の敬語には、大きく分けて2つの意味があります。

介護現場の敬語

 
1.利益をあたえてくれる利用者(お客さま)に尊敬の念をしめす
2.長い人生を生きてきた高齢者へ敬意をしめす

敬語は、言葉遣いを丁寧により礼儀正しくした言葉遣いです。敬語を使用すると「あなたに丁寧に接します」という気持ちも相手に伝えられます。

丁寧に接してもらって、嫌な気持ちになる人は少ないですよね。敬語には、コミュニケーションをとりやすくする効果もあるのです。

また、長い人生を生きてきた高齢者は、社会の発展や文化の継承に力を注いできた方ともいえます。敬語には、そうした功績に対して、尊敬や敬意をしめす意味も込められています。

普通語を使ってもよい場面とは

普通語とは、家族や友人といった親しい人たちとの間でやり取りされる言葉です。普通語を使用する介護職に対して、親しみやすさや安心感を覚える利用者もいるでしょう。

しかし、日常的に普通語で利用者と接することはおすすめできません。なぜなら、介護現場で普通語を用いることには以下のリスクがあるからです。

介護現場で普通語を用いるリスク

 
・利用者の尊厳を傷つける
・ご家族や関係者が不快に感じる
・タメ口がエスカレートして虐待につながる
・介護職としての評価が低下する

利用者本人やその家族から「普通語で接してほしい」と希望があり、普通語が利用者の課題解決に役立つ場面では、普通語を使うのがよいでしょう。それでも、本人の尊厳を傷つけないように、的確な言葉をタイミングよく使用する必要があります。

入職間もない介護職や接遇スキルをこれから学ぶ方は、上記のリスクを避けるためにも、正しい言葉遣いを身につけることからはじめましょう。

なお、普通語を使用せずに利用者との距離を縮めるテクニックを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

介護職が知っておくべき言葉遣いの基礎

介護職が知っておくべき敬語には、重要な基礎項目があります。ここでは「尊敬語」「丁寧語」「謙譲語」について、それぞれの意味や使い方を紹介します。

尊敬語

尊敬語とは、相手の立場や行動を高めて、相手に敬意をしめす言葉遣いです。介護現場では、施設の利用者や家族といった目上の人に対して使用します。

介護現場でよく使われる尊敬語と具体例は下表のとおりです。

動作 尊敬語 具体例
言う おっしゃる、言われる 散歩に行きたいと、Aさんがおっしゃっています
行く いらっしゃる、お越しになる、おいでになる (利用者に対して)ご家族がいらっしゃいましたよ
食べる 食べられる、召し上がる、お食べになる Aさんは昼食を召し上がっています
見る ご覧になる、見られる (利用者に対して)テレビをご覧になりますか?

 

尊敬語を多用すると「そんなにかしこまって喋んなくていいよ」「普通に話していいよ」と利用者が気にするケースもあります。そんなときは、尊敬語にこだわらず次に紹介する丁寧語を使用しましょう。

なお、尊敬語は、利用者や家族に敬意をしめすための言葉です。自分や上司に使用しないようにご注意ください。

丁寧語

丁寧語は、「です」「ます」をつけて礼儀正しい言葉に置き換えた言葉遣いです。丁寧語は、利用者にも職員にも、どのような行動に対しても使用できます。

丁寧語の具体例を表で確認しましょう。

動作 丁寧語 具体例
言う 言います Aさんが外出したいと言っています
行く 行きます Aさんの介助に私が行きます
食べる 食べます 温かいうちにご飯を食べましょう

 

「これ」「あれ」「どれ」といった言葉を指示代名詞と呼びます。指示代名詞も丁寧語に置き換えることが可能です。

指示代名詞 丁寧語 具体例
これ、こっち、ここ こちら こちらのお食事をどうぞ
あれ、あっち、あそこ あちら あちらのリビングで休みますか?
どれ、どっち、どこ どちら どちらに行かれますか?

 

言葉の頭に「お」や「ご」をつけて丁寧な言い方にするのも丁寧語です。

丁寧語

 
・お食事、お散歩、お時間は「お」をつけた丁寧語
・ご自宅やご連絡は「ご」をつけた丁寧語

丁寧語は、介護現場で最も使用される言葉遣いです。敬語を身につける際は、丁寧語の習得からはじめてみましょう。

謙譲語

謙譲語とは、自分を相手よりも低くすることで、相手に敬意をしめす言葉遣いです。謙譲語は、自分自身や同僚、自分や同僚の動作に対して使用します。

謙譲語の具体例を表で確認しましょう。

動作 謙譲語 具体例
来る うかがう 後ほど、お部屋にうかがいます
食べる いただく 先にお食事をいただきます
見る 拝見する 昔の写真を拝見します
わかる 承知する 承知しました

 

尊敬語は、利用者や家族といった目上の人について話すときに使います。一方の謙譲語は、介護職である自分や同僚に対して使う言葉遣いです。

介護職が意識したい言葉遣いのポイント

介護職の言葉遣いのポイントとは

介護職が意識したい言葉遣いのポイントは3つです。

介護職が意識したい言葉遣いのポイント

 
1.相手に敬意をもって接する
2.クッション言葉を用いる
3.無意識のスピーチロックに気をつける

利用者との信頼関係を構築するためにも、各ポイントを確認しましょう。

相手に敬意をもって接する

敬意をもって接するとは、話し方や行動で相手に敬意を示すことを指します。

話し方や行動を丁寧にすると、敬意や尊敬の気持ちが相手に伝わります。反対に、腕を組んで話したり相手の話を無視したりすれば、たとえ言葉遣いが正しくても、クレームが発生するでしょう。

無理なく相手に敬意を抱くコツとして、相手のよいところを意識する方法があります。「家事や育児で家庭を支えた」「1つの会社で定年まで勤めた」など、尊敬できるところを探してみてください。

クッション言葉を用いる

クッション言葉とは、本題の前に置く言葉のことです。「枕詞(まくらことば」とも呼ばれています。

クッション言葉が使える場面と例文について、下表で確認しましょう。

頼みごとをしたいとき 恐れ入りますが、
お手数ですが、
差し支えなければ、
お断りしたいとき あいにくですが、
せっかくですが、
申し訳ございませんが、
質問したいとき よろしければ、
失礼ですが、
おうかがいしたいことがあるのですが、

 

クッション言葉は、利用者に頼みごとをする場面で効果的です。たとえば、更衣介助の場面で「衣服が汚れていますね。お手数ですが、着替えのためにシャツを脱いでくれますか?」と伝えるとうまくいくケースがあります。

クッション言葉には、言葉の印象を柔らかくする効果があるのです。上手に活用すれば、現場業務を効率化できるでしょう。

なお、クッション言葉は、利用者だけでなく職場の同僚や上司にも使用できます。忙しそうな相手に話しかける場面などに、クッション言葉を活用してみましょう。

無意識のスピーチロックに気をつける

スピーチロックとは、介護職の言葉や態度によって、利用者の自由な意思表示や行動を制限する行為です。「言葉の拘束」とも呼ばれます。

スピーチロックは、虐待にエスカレートするおそれがあるため、施設全体で注意すべき言葉遣いです。

以下の行動は、介護職によるスピーチロックに該当します。

スピーチロック

 
・「~しないで」
・「動かないで」
・「危ない!」
・「~したらダメです」
・「どうしてそんなことをするの!」

スピーチロックは、忙しくて時間がないとき、人手が足りないのに業務過多なときなど、職員の心身に余裕がない状況で起こりやすくなります。無意識に使っているケースもありますので、防止の意識を高めるために施設全体で研修などを行うことも大切だと言えるでしょう。

スピーチロックの詳細や対応策を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

介護現場でNGな言葉遣いのチェックリスト

介護施設でNGな言葉や話し方の代表例を確認して、利用者や家族に喜ばれるサービス提供に役立てましょう。

利用者に使ってはいけない言葉遣い

利用者に使ってはいけない言葉遣いは、相手の威厳を傷つける話し方や幼児言葉です。

相手の尊厳を傷つける話し方 こんなことも、できないんですか?
こんなことも、わからないんですか?
また忘れたんですか?
幼児言葉 おねんねしましょう
ぬぎぬぎしましょう
ぽんぽんが傷みますか?

 

また、語尾を必要以上に伸ばしたり上げたりすると、利用者は「馬鹿にされている」と感じやすくなります。上記の言葉と同様、使用は控えましょう。

家族に使ってはいけない言葉

専門用語を多用する話し方や曖昧な言葉を家族に使う際は要注意です。

具体例と改善例を下表にまとめました。

  具体例 改善例
専門用語を多用する話し方 〇〇さんはIADLが低下しており、このままではQOLが低下するかもしれません。 食事の準備や服薬管理に支援が必要になってきました。このままでは、〇〇さんの生活の質が落ちてしまうかもしれません。
曖昧な言葉・話し方① 私にはわかりません
私は知りません
・わかるものに確認してまいります
・ただ今確認してまいりますので、少々お待ちください
曖昧な言葉・話し方② 多分、大丈夫だと思います。 ・様子を観察して、受診を検討します
・問題ないと思いますが、様子観察を続けます

 

家族からの質問に返答がむずかしい場合は、無理に答えようとせず事実確認をしてから返答するようにしましょう。たとえ返答まで時間がかかっても、トラブル防止につながります。

同僚に使ってはいけない言葉遣い

同僚に使ってはいけない代表的な言葉遣いは、利用者が傷つくような言葉や利用者や家族の悪口です。

利用者が傷つくような言葉 ・Aさんは認知症だから、どうせ話してもわからない
・Aさんにやらせても、どうせできない
利用者や家族の悪口 ・Aさんの家族は、全然面会にも来ない冷たい家族だ
・Aさんの家族はあいさつもしない。こっちのやる気が下がる

 

これらの言葉は、同僚のモチベーションを低下させる恐れがあります。上司や同僚が耳にした場合、口にした本人の評価を下げる可能性もあり、注意が必要です。

正しい言葉遣いは介護現場で大切な接遇マナーの1つ

会話をする介護施設の利用者と介護士

言葉遣いは、介護現場で重要な接遇マナーの1つです。接遇マナーとは、おもてなしの気持ちをもってサービスを提供すること。接遇マナーは、お客さまと直接接するサービス業では、重要なスキルとなります。

接遇マナーの5原則の内容は、以下のとおりです。

接遇マナーの5原則

 
1.表情
2.あいさつ
3.身だしなみ
4.言葉遣い
5.態度

表情や態度、身だしなみといった項目は、非言語的コミュニケーションにあたります。非言語的コミュニケーションは、言葉による理解がむずかしい認知症の方とのコミュニケーションでも有効です。

よりよい介護サービスの提供や介護施設のイメージアップを実現するためにも、接遇マナーについても学んでみましょう。

介護現場における接遇の必要性やポイントを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

正しい言葉遣いで介護現場における円滑なコミュニケーションを実現しよう

正しい言葉遣いは、尊敬や敬意の気持ちを利用者に伝える効果的な方法です。利用者が「この人なら丁寧に対応してくれそうだ」と思えば、円滑なコミュニケーションを実現できます。

また、正しい言葉遣いは、職員同士のコミュニケーションにおいても丁寧さや誠実さを相手に伝えるのに役立ちます。お互いの間に適切な距離感が生まれ、これまで以上にチームワークが向上するでしょう。

まとめ

最後に、介護現場で求められる言葉遣いを身につけるメリットを記載します。

・尊敬や敬意を言葉によって伝えられる
・常識のある社会人として評価される
・施設イメージの向上に貢献できる
・現場のチームワークが向上する
・どの介護施設でも通用するスキルが身につく

正しい言葉遣いが身につくまでには、ある程度の時間や労力が必要です。正しい言葉遣いを使いこなせる人は、それだけの時間や労力を費やした人といえるでしょう。

そして、正しい言葉遣いは介護職の評価を高めるスキルの1つです。資格証のように形にはあらわせませんが、施設における評価や異動・転職の際に自分をアピールするポイントになります。

介護職としてステップアップしたい方、現場の接遇向上を目指したい方は、この機会に正しい言葉遣いを身につけてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
千葉拓未

所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級)

専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。
以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。

生活相談員として5年間の勤務実績あり。
利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。

現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、
Webライターとして活躍している。

 

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