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【今さら聞けない!】介護現場の言葉遣い|介護の接遇で重要な言葉遣いを解説

介護の接遇で重要な言葉遣いを解説

介護現場で働く介護職には、介助技術だけでなく接遇に関するスキルも要求されます。中でも「言葉遣い」は、必ず身につけておきたいスキルです。
すぐれた介助技術を持っていても、言葉遣いが間違っていると、正しい評価につながらないかもしれません。反対に、言葉遣いがしっかりしていれば、利用者や家族、職場の同僚や上長から好感を得られます。
 
そこで今回は、介護職としてスキルアップを図りたい方、職場の接遇向上に取り組みたい管理職の方に向けて、介護現場での言葉遣いについて解説します。

介護現場の接遇に「言葉遣い」は重要

介護スタッフと高齢者

接遇とは、利用者一人ひとりに対して、おもてなしの気持ちを持ってサービスを提供することです。利用者に心を込めて対応することで、利用者や家族の満足度を高めたり、心地よい毎日を送れるようサポートをしたりします。

接遇で重要な項目が、「挨拶」「表情」「傾聴」「身だしなみ」「言葉遣い」の5項目です。言葉遣いは日常的に利用者が耳にするため、適切な言葉遣いを身につける必要があるでしょう。

言葉遣いとは、敬語を正しく使えているかどうか、ともいえます。

敬語を使用する目的や意味

敬語を使用する目的や意味を改めて確認しておきたいと思います。

・「あなたを尊重します」という気持ちを表すため
・相手の社会的な立場・存在を認めるため
・社会人としての常識を持っていることを示すため
・相手と適切な距離を保つため

参考:文化庁|国語施策・日本語教育 敬語おもしろ相談室 第一話「敬語の心得」

つまり、言葉遣いが適切な人は、

・相手に尊重の気持ちを示せる人
・相手の立場を認めていることを言葉で伝えられる人
・社会人としての常識を持っていることを示せる人
・言葉を使って相手と適切な距離を保てる人

となります。

反対に、不適切な言葉遣いを使用していると、利用者が不快感をおぼえるかもしれません。例えば、いつも元気で明るく身だしなみが整っている職員の言葉遣いが間違っていたら「いつも元気なのはいいけど、言葉遣いがよくない」「失礼なときがある」と評価される可能性があります。

入職後、先輩に教わりながら苦労して身につけてきた介助技術。出勤前は、鏡の前で身だしなみもチェック、現場では挨拶を元気よくして……。これまで努力してきたことはきちんと評価されたいですよね。

言葉遣いの間違いだけで評価されないのは、もったいないことです。

何より適切な言葉遣いで、利用者さんに満足してもらいたい介護職も多いのではないでしょうか。介護職にとって、言葉遣いは必ず身につけるべきスキルなのです。

介護現場で気をつけるべき言葉遣い

具体的に、介護現場ではどのような言葉遣いに気をつけたらよいのでしょうか?

結論から述べると、介護現場で気をつけたい言葉遣いとは

「尊敬語」
「謙譲語」
「丁寧語」

の3種類です。

以下の表で概要をチェックしてから、詳しい内容をみていきましょう。

尊敬語 謙譲語 丁寧語
使用する場面 目上の人と話すとき
相手を立てるとき
自分がへりくだることで、相手を立てたいとき 言い方を丁寧にしたいとき
使用する対象 相手 自分 相手または自分
例①
行く
いらっしゃる、お越しになる 参る、伺う 行きます
例②
食べる
召し上がる、食べられる、あがる、お食べになる いただく、頂戴する 食べます

尊敬語

尊敬語とは、目上の人と話すときや相手を立てるときに使用する敬語です。

「目上の人」とは、自分より地位、階級、年齢が上の人を指します。しかし現代では、地位や階級の上下関係でだけで、尊敬語を使うことはあまり多くありません。

介護現場でも、相手の社会的な立場・存在を認めたり、相手に尊重の気持ちを示したりするために使用するのがよいでしょう。また、利用者は介護職より年上の方が多いので、利用者全員に尊敬語を使用しても問題はありません。

続いて、介護現場で使う尊敬語をみていきましょう。

利用者を紹介する場面

「こちらにいらっしゃるのが、今日から利用されるA様です」

ご家族の面会を待っている入居者に話しかける場面

「もう少しでご家族がお越しになりますよ」

尊敬語の対象は相手になります。利用者やご家族の動作、持ち物などに対して使用します。
介護現場では、自分の行動や職員の行動に対して使用しませんのでご注意ください。

尊敬語を間違えて使った例も確認してみてください。

管理者に会いに来た家族と話す場面

×「ただ今、管理者のAがいらっしゃいますので、もう少々お待ちください」
〇「ただ今、管理者のAが参りますので、もう少々お待ちください。

利用者に管理者の伝言を伝える場面

×「今月の請求書は明日お渡しします、と管理者のBがおっしゃっていました
〇「今月の請求書は明日お渡しします、と管理者のBが申しておりました

介護現場で立てるべき相手は、上長ではなく利用者または家族になります。職員は身内ですので、尊敬語は使用しないとおぼえておきましょう。

謙譲語

謙譲語とは、自分がへりくだることで、相手に敬意を示したいときに使用する敬語です。

「へりくだる」とは、自分や自分の行為を低くした態度を指します。自分を控えめにする、謙遜するとも言い換えられます。

相手や相手の行為を高めて敬意を示す尊敬語に対して、謙譲語は、自分を低くすることで相手に敬意を示します。

介護現場で使う謙譲語をみてみましょう。

担当者会議のため、A利用者の自宅へ行く約束する場面

「それでは、〇日の11時に伺いますのでよろしくお願いいたします」

担当者会議にてお茶を飲む場面

「お茶をいただきます」「お茶を頂戴します

謙譲語の対象は、自分や会社の人間になります。利用者やご家族には使用しないようご注意ください。

丁寧語

丁寧語とは、語尾に「です」「ます」を付け加えて言葉を丁寧にすることで、相手への敬意を示す敬語です。

丁寧語を使用しない例と丁寧語を使用した例を見比べてみましょう。

丁寧語なし「Aさんの通院日は〇月△日だ」
丁寧語あり「Aさんの通院日は〇月△日です」

丁寧語なし「Aさんはお昼ご飯にカレーを希望している」
丁寧語あり「Aさんはお昼ご飯にカレーを希望しています」

丁寧語は、自分にも相手にも使用できるため使いやすい敬語です。丁寧語を問題なく使用できると、相手に失礼のない対応となります。

介護現場では親しい関係でもタメ口は避けた方がよい?

疑問を持つ介護スタッフ

タメ口とは、先ほどの「です」「ます」といった丁寧語を含まない話し方を指します。

「笑っているよ」「おもしろいよね」「疲れたの?」といった話し方です。敬語に比べて短い言葉で物ごとを伝えられるほか、場合によっては親しみも演出できます。相手との距離を縮めたいときにも効果的です。

しかし介護現場では、たとえ親しい関係だとしても、介護職がタメ口を使用することは避けるべきです。なぜなら、介護現場の利用者は、自分より年上の方でありサービスを利用しているお客様であるからです。

介護現場でタメ口を使用するリスク

介護現場でタメ口を使用するリスクを確認しましょう。

・ご家族が不快に感じる(施設イメージ低下のリスク)
・相手のプライドを傷つけてしまう
・同僚のモチベーション低下につながる
・タメ口がエスカレートして上から目線の物言いになる(虐待のリスク)
・上長・同僚・会社からの評価が低下する

「相手の方と距離を縮めたい」「心を開いてほしい」「アットホームな雰囲気を感じてほしい」と、利用者のためにタメ口を使用したいと考える介護職もいるかもしれません。しかし、タメ口には上記のようなリスクが存在するため、以下の方法をおすすめします。

タメ口を使わずに利用者の心を開くテクニック

・傾聴のスキルを磨いて相手との距離を縮める
・非言語コミュニケーションを意識して信頼関係を構築する

傾聴のスキルを磨いて相手との距離を縮める

傾聴とは、「耳を傾けて熱心に聞くこと」です。傾聴のスキルを活用すると、適切な対応を取りながら、利用者との距離を縮められます。

介護現場で傾聴するときは、以下の項目に気をつけてみましょう。

・相手の話をさえぎらないで聞く姿勢を持つ
・相手の考えや思いを受け入れる
・適度に質問する
・質問されてから、自分の考えや気持ちを話す

傾聴で大切なことは、相手が話しやすい環境をつくり、うまく言葉にできないことがあれば、話しやすいように促すことです。利用者さんの自己開示を受け止めることで、相手との距離を縮められるでしょう。

非言語的コミュニケーションを意識して信頼関係を構築する

非言語的コミュニケーションとは、言葉によらないコミュニケーションを意味します。表情、身振り・手振り、声の大きさ、トーン、話すスピード、身だしなみなどです。

非言語的コミュニケーションを取り入れた例を2つ紹介します。

例①利用者さんが家族のことを誇らしげに話されている場面

対応例

・笑顔を心がけて「それはすごいですね!」などと、少し大きな声でリアクションする
・拍手をしたり口に手をあてたりして驚きを表現する
・声のトーンを少し上げて「自慢のご家族ですね」と、合いの手を入れる

 

例②利用者さんが健康の不安を訴えられている場面

対応例

・適度に相手の目を見つめて、頷いたり相づちを打ったりする
・こちらが話すときは、声の大きさを控えめにして、ゆっくり話す

 
非言語的コミュニケーションを意識すると、「あなたの話を聞いています」という姿勢を相手に伝えられます。また、こちらの思いや感情を言葉にせずに相手へ届けられるでしょう。

結果的に、利用者との信頼関係構築につながります。身だしなみを整えることも、相手に失礼がないよう時間を費やしたことの証明になりますので、敬意を表すために有効です。

言葉は尊厳を守るために大切なもの

言葉は、使い方によって相手の尊厳を傷つけたり守ったりできます。ここで日本介護福祉士会の倫理基準の一部をみてみましょう。

日本介護福祉士会 倫理基準(行動規範)

(利用者本位、自立支援)
介護福祉士は、利用者をいかなる理由においても差別せず、人としての尊厳を大切にし、利用者本位であることを意識しながら、心豊かな暮らしと老後が送れるよう介護福祉サービスを提供します。
引用:公益財団法人 日本介護福祉士会|日本介護福祉士会倫理基準(行動規範)

介護職は、利用者と最も接する機会の多い職種です。利用者が心豊かな暮らしや充実した毎日を送れるように、尊厳を守ったサポートをしていきましょう。

続いて介護現場で避けるべき言葉遣いを解説します。

介護現場で避けるべき言葉遣いとは

介護現場で避けるべき言葉遣いを、利用者、ご家族、同僚の3項目に分けてみていきます。

利用者に使ってはいけない言葉

利用者に使ってはいけない言葉が、幼児言葉や差別的な表現です。また、介護職が格上であるような表現や高圧的な言い方も使わないようにしましょう。

利用者に使ってはいけない言葉と具体例がこちらです。

使ってはいけない言葉 具体例
幼児言葉 よくできましたね~
お口をあーんして
えらいえらい
かわいいね~
差別的な表現 ボケ(呆け)
めくら
つんぼ
びっこ
きちがい
知恵遅れ
白痴
手短か、など

参考:宝塚市|先生と市民のための人権教育・啓発パンフレット 13.差別的な言葉や表現について考えてみましょう

高圧的な表現 「早くしなさい」
「食べなさい」
「行きなさい」
「ここにいなさい」
「静かにしなさい」
介護側が格上であるような表現 「ご飯を食べさせてあげます」
「トイレに連れて行ってあげます」
「お風呂に入れてあげます」

 
年配者である利用者に対して、幼児言葉が失礼にあたるのはご承知の通りです。差別的な表現も、使ってはいけません。

高圧的な表現や格上であるような表現は、利用者の尊厳を傷つける可能性が非常に高いため、口にしないようにしましょう。

家族に使ってはいけない言葉

介護現場では、家族に利用者の近況を伝える機会が多くあります。本人の尊厳を傷つけるような言葉や話題は可能な限り避けましょう。

例えば、本人の前で排泄や失禁などのデリケートな話題は避けることをおすすめします。利用者の尊厳を守るために、相談室や人気のない場所に家族を誘導してから伝えましょう。

また、専門用語をわかりやすい言葉に置き換えると相手に親切です。例えば、「ADL」という専門用語を「トイレのときは…」「ベットから起き上がるときは…」と具体的な行動に置き換えます。専門用語を使用した場合は、後で説明を付け加えるとよいでしょう。

同僚に使ってはいけない言葉

同僚の前で使ってはいけない言葉は、利用者や家族の悪口、貶めるような表現です。

悪口や貶めるような表現を口にすると、同僚のモチベーションを低下させてしまったり、自分への評価が下がったりするおそれがあります。軽い愚痴のつもりでも、他の職員の耳に入れば大きな問題になるかもしれません。

相手が新入職員であれば「この会社に入ったのは間違いだったかもしれない」と、早期離職につながるおそれもあります。ですが、入浴業務や排泄介助、不規則なシフトにも従事している介護職には大きな負担がかかっています。思わず愚痴を吐き出したくなる場面もありますよね。

自分の胸の内を誰かに聞いてもらいたいときは、何でも話せる友人や家族、気の置けない同僚に相談してみてはいかがでしょうか。あなたのことを理解している人なら、気持ちに寄り添った適切なアドバイスをしてくれるはずです。

介護現場における言葉遣いの事例

介護現場での言葉遣いが、他の職員のモチベーション低下につながった事例を紹介します。

事例

A職員は、認知症の利用者に対して「トイレに連れて行ってあげる」「よくできたね、えらいね~」といった言葉遣いで接していました。
 
ある日、入職して3ヶ月ほどのB職員に「どうせ何を言っても忘れるから、気にしなくていいよ」と伝えました。B職員はA職員の発言や態度に不満を感じて、「介護職員の発言として問題がある」「私は入職したばかりだから言いにくい。指導してほしい」と上長に相談することになりました。
 
その後、上長がA職員を指導しましたが、言葉遣いや勤務態度に大きな変化はありませんでした。B職員は「この職場が嫌いなわけではない。他の職員や利用者に好きな人もたくさんいる。しかし、ここではやっていけない」と。その後退職を選びました。

A職員の言葉遣いが、B職員が退職することになった直接の原因ではないかもしれません。しかし、モチベーションの低下につながったと考えられます。

不適切な言葉遣いには、施設経営に悪影響をあたえるリスクがひそんでいます。介護現場の言葉遣いを適切にしていくためには、職員1人の問題にするのではなく、施設全体で言葉遣いを改善する姿勢を持つことが大切です。

上記の事例では、

・言葉遣いに関する研修会を開いて、職員同士で学ぶ機会を設ける
・外部の研修に参加する
・全体ミーティングを開催して言葉遣いについて話し合う
・他の介護施設を見学して言葉遣いの参考にする

といった対応策が考えられるでしょう。職員同士のサポートが重要な介護現場だからこそ、問題が起きた際も全体で解決していく姿勢を持ちたいですね。

介護現場での言葉遣いは信頼関係の構築にも大切

介護職は利用者の安全を預かっています。「この人なら大丈夫」と安心してもらうためには、信頼関係の構築が大切です。

自分に失礼な言葉遣いをする介護職には、安心して介助を任せられないもの。適切な言葉遣いによって、利用者に尊重や敬意の気持ちを示し信頼関係を構築して、安全な介助を実現しましょう。

まとめ

介護現場では、適切な言葉遣いを用いた介護が求められています。最後に、適切な言葉遣いを使うメリットを以下にまとめます。

・相手に尊重の気持ちを示せる
・相手の地位や立場を認めていることを伝えられる
・社会人としての常識を持っていることを示せる
・言葉を使って相手と適切な距離を保てる

本記事が接遇を身につけたい介護職の方の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の執筆者
千葉拓未

所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級)

専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。
以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。

生活相談員として5年間の勤務実績あり。
利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。

現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、
Webライターとして活躍している。

 

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