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【教えて!】介護職に多いバーンアウト(燃え尽き症候群)は甘え?対処法も解説

介護職に多いバーンアウト(燃え尽き症候群)とは?

バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、それまで意欲的に仕事に取り組んでいた人が、突然意欲を失ってしまったり投げやりな態度をとってしまったりする状態を指します。
もしも「はっきりした理由はないけど仕事に行きたくない」「いつも体が重い……」と感じているなら、バーンアウトの予兆かもしれません。
 
本記事では以下の項目を解説します。
・バーンアウトの予兆
・具体的な症状
・バーンアウトになりやすい人の特徴
・立ち直り方や対処法
 
バーンアウトに陥っている方を見極める方法も紹介しますので、「メンタルの心配な部下がいる」「最近様子が変だけど、どうしたんだろう?」と、心配や不安を抱えている介護リーダーや管理者の方も参考にしてください。

介護職にも多いバーンアウト(燃え尽き症候群)とは

バーンアウトしている様子の女性

バーンアウトは、正式名称をバーンアウト・シンドロームと呼び、ドイツ人の精神心理学者ハーバート・フロイデンバーガー氏が提唱した概念です。厚生労働省が運営している「e-ヘルスネット」では、以下のように説明されています。

それまでひとつの物事に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できなくなること。

引用:厚生労働省|生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット

介護業界で働く人にも、実はバーンアウトは多いのです。

バーンアウトを介護職員にあてはめてみましょう。

シフト通りに出勤して介護業務に従事していた職員が、以前よりも元気がなくなったり意欲を失ったりして、業務に支障が生じている状態がバーンアウトだといえます。
遅刻や早退が増えて、欠勤する日がでてくるかもしれません。

バーンアウトは心身に負荷がかかっているときに発症しやすい症状です。
特に介護職は、入浴介助や排泄介助といった肉体労働で体に負荷がかかっています。

介護職は感情労働と言われます。

自分の感情をコントロールする機会も多いため、精神的な負担を感じている人も少なくありません。

介護職のバーンアウトの予兆

バーンアウトの予兆について、本人が感じること、周りからみてわかることに分けて紹介します。

バーンアウト(本人が感じること)

・仕事に行きたくないと感じる
・自信を感じられなくなった
・やる気がでない
・いら立ちや焦ることが増えた
・利用者の顔や声を聞くのが嫌になった

バーンアウト(周りからみてわかること)

・勤務態度の変化(遅刻、早退、欠勤の増加)
・表情の変化(笑顔が減った、険しい表情をしているなど)
・様子の変化(口数が減った、怒りっぽくなったなど)

社会に出ると、仕事以外にも家族の問題や金銭問題といったさまざまな悩みに直面します。
そのため、一時的に気分が落ち込んだりして元気がなくなることもあるでしょう。

しかし上記のように普段と違う様子が続くようなら、バーンアウトを疑う必要があります。

バーンアウト(燃え尽き症候群)の症状

落ち込む男性

バーンアウトに関する科学的な指標として、マスラック・バーンアウト・インベントリー(MBI)があります。
MBIによるとバーンアウトには以下の特徴的な要素が3つ存在します。

・情緒的消耗感
・脱人格化
・個人的達成感の低下

それぞれの特徴をみていきましょう。

なお、各症状の解説にあたり、日本労働研究雑誌2007年1月号「バーンアウト(燃え尽き症候群)ヒューマンサービス職のストレス」を一部引用して解説します。
参考:日本労働研究雑誌 2007年1月号(No.558) 同志社大学教授 久保 真人 著|バーンアウト(燃え尽き症候群)ーヒューマンサービス職のストレス

情緒的消耗感

情緒的消耗感とは、「仕事を通じて、情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態」と定義されています。
本人の立場に置き換えると「疲れ果てた」「働きたくない」「もう辞めたい」と感じている状態です。

情緒とは、喜怒哀楽を生む心の動きを意味します。

情緒が日頃のストレスや疲労などによって消耗してしまうと、その人本来の生き生きとした感情が消耗・枯渇してしまうのです。

脱人格化

脱人格化とは、「クライアントに対する無常で非人間的な対応」と定義されています。
介護職のクライアントは、利用者やその家族と捉えてよいでしょう。

脱人格化の場合、利用者やその家族に対して、冷たい態度をとったり関わり合いを避けたりしてしまいます。
利用者が嫌いなので冷たい態度をとるわけではありません。

あくまで、本人がそれ以上の精神的な消耗を避けるための防御反応だといえます。

個人的達成感の低下

個人的達成感とは、「ヒューマンサービスの職務に関わる有能感、達成感」と定義されています。
介護職でいえば、身体介助をうまく行えたときや相手から感謝の言葉をもらったときなどに、自分に自信を持ったり達成感を得られたりするでしょう。

しかし、情緒的消耗や脱人格化が進むと、その人本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。

その結果、自分が理想とする働きができなくなり、思うような成果を得られなくなるのです。

バーンアウト(燃え尽き症候群)になりやすい人の特徴

バーンアウトになりやすい人には特徴があると言われています。

バーンアウトになりやすい人の特徴

・真面目
・理想が高い
・完璧主義
・気分転換が苦手
 
といった傾向のある人と考えられています。

筆者のバーンアウト経験

実際に、筆者は特別養護老人ホームの介護職時代にバーンアウトを経験していますが、周囲から「真面目だよね」「信頼できる」と言われることが多くありました。
一方で気分転換は苦手で、自宅にいることが多い生活でした。

仕事に手を抜かずに取り組み、高い目標にも果敢に挑戦する…仕事に誠実に取り組む姿勢は利用者だけでなく周りの職員から評価されるでしょう。

しかし、そういった傾向がマイナスに作用すると、自分にも他人にも厳しくなったり成功するまでやり直そうとしたりして、次第に消耗してしまいます。

また、目標が達成できないとわかると、投げやりな態度をとってしまうことも。

介護の仕事は、定量的な成果が見えにくい仕事です。
頑張って質の高い介護サービスを提供しても、期待通りの反応が返ってこないこともあります。

気分転換がうまくできないと、そうした不満を解消できないため、バーンアウトしやすくなるのです。

バーンアウトしてしまうと、その後に回復するために時間を要してしまいますし、場合によっては休職や退職につながってしまう可能性もあります。

バーンアウトする前に、自分でケアをする。
または部下の心身のケアをする、といったことが大切になります。

燃え尽き症候群は「甘え」ではない

バーンアウトになると、仕事に必要な「やる気」「精神的余裕」を持ちにくくなります。
そのため、以前のように働けないことに焦りを感じるかもしれません。

また、「やる気がない」「人に頼っている」と厳しい見方をする人が周りにいる可能性もあります。

しかし、甘えとバーンアウトは同じではありません

明確な定義はないものの、「わざと仕事の手を抜く」「心身に不調はないけど、仕事が面倒だから欠勤する」といった無責任な態度が「甘え」でしょう。

それならば、バーンアウトに陥っている人に必要なのは、自分を鼓舞して頑張り続ける態度ではないのかもしれません。

むしろ立ち直るための休息や、この後に紹介する対処法が必要になるでしょう。

バーンアウトからの立ち直り方・対処法

バーンアウトの大きな原因は、心身へのストレスだと考えられています。
そのためストレスとの付き合い方によっては、発症のリスクを低減させたり、立ち直りを早めたりできるでしょう。

信頼できる職場の同僚や上長に相談するほか、職場の相談窓口を利用する方法が効果的です。
職場で話しにくい場合は、家族や友人に吐き出すだけでも大きな効果があるでしょう。

生活習慣の改善も有効です。

以下に、食事、運動、睡眠に分けて紹介しますので、実行できそうなものがないか探してみてください。

食事

疲労回復効果を期待できるのがビタミンB1です。ビタミンB1は、糖質を燃やしてエネルギーに変える性質があるため、普段から糖質の多い食事やお酒を飲む人におすすめです。ビタミンB1は、豚肉、赤身肉、ナッツや大豆、ほうれん草などに多く含まれています。

一方で、人は美味しい食べ物を食べるとき、脳内にセロトニンと呼ばれるホルモンが分泌されます。

セロトニンには精神の働きを落ち着かせる働きがあるため、仕事を頑張った後など、ご褒美の意味で好きなものを食べるのもよいでしょう。

参考:e-ヘルスネット|セロトニン

運動

適度な運動は、心身にさまざまなプラス効果をもたらします。

例えば、散歩や軽いジョギングで筋肉を動かすと、体の緊張がほぐれて血行が促進されるでしょう。
新陳代謝の向上も期待できます。

膝や腰に痛みがある人なら、スポーツクラブや自治体が運営しているプールを利用して、水中ウォーキングや水泳に取り組んでみてはいかがでしょうか。
負担をかけずに運動の効果を感じられますよ。

もしも過去に取り組んでいたスポーツがあれば、再挑戦してみるのもおすすめです。
経験のある分野だけに、楽しんで汗をかけるでしょう。

睡眠

心身の疲労をとるのに効果的な方法が睡眠です。

良質な睡眠をとるために寝室の環境や寝具を再考してみましょう。

「枕を自分に合った高さのものに替える」「掛け布団や敷布団などの素材を替えてみる」などは効果的な方法です。
空気清浄機や除湿器を活用するのもよいでしょう。

目覚めがよくない方なら、日の光で自然に目覚められるように、カーテンを少し開けて日の光が入るようにするのよいでしょう。

介護職など対人援助職のメンタルヘルスは重要

気分転換にウォーキングする女性

介護職員などの対人援助職は、体のケアだけでなく心のケアに取り組むことも重要です。

なぜなら、対人援助職は、感情労働に従事している専門職だからです。

感情労働とは、自分の感情をコントロールして利用者への傾聴や共感を示したりコミュニケーションをとったりする働き方。
気分が落ち込んでいるときでも、利用者や家族に不安をあたえないように、いつも通りの態度をとったりします。

その結果、感情労働に従事する人には少なくない負荷がかかっており、バーンアウトしやすい状態になっているといえます。

従って、自分自身のケアをしっかり行うことが重要なのです。

まとめ

仕事をこなすために必要な心身のエネルギーが、消耗・枯渇してしまっている状態を意味するバーンアウト。

バーンアウトを予防するためには、悩みや不満を1人で抱え込まずに周りの人に相談することが重要です。
生活習慣を改善する方法も効果を発揮します。

介護の仕事を自分らしく継続するためにも、自分を大切にしてください。

また、近くにバーンアウトに陥っている職員がいたら、叱責よりもサポートの姿勢で関わってみましょう。

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合わせてご覧ください。

介護職のストレスマネジメント

介護職のストレスマネジメントはどうすれば良い?重要性について
介護の仕事は、やりがいがある一方で、肉体的・精神的なストレスがたまりやすい職種です。
介護職が抱えるストレスの原因や対処法についてご紹介しています。

 

この記事の執筆者
千葉拓未

所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級)

専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。
以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。

生活相談員として5年間の勤務実績あり。
利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。

現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、
Webライターとして活躍している。

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