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【教えて!】デイサービス 看護師不在時の人員基準欠如減算とその回避方法

デイサービス 人員基準欠如減算

利用定員が10名以上のデイサービスは、サービス提供日に看護師を1名以上配置して、法律で定められた人員基準を満たす必要があります。
 
では、看護師が私用や病欠などで不在になった場合、人員基準欠如減算の対象となるのでしょうか。人員基準欠如減算の対象となる場合、どのくらい介護報酬から減算されるのでしょうか。
 
この記事では、デイサービスにおける看護師不在時の人員基準欠如減算について解説します。項目は次のとおりです。
 
・人員基準欠如減算の概要
・デイサービスが満たすべき人員基準
・看護師不在による減算の仕組み
・減算の計算方法
・看護師不在への対応策
・減算を回避するための方法
 
デイサービスで請求業務を担当している事務職員や施設管理者の方はぜひご参考にしてください。

看護師不在時の減算について

高齢者とデイサービスで働く看護師

介護保険制度には、適正な介護サービスを提供するための運営基準や人員基準が定められています。人員基準を満たせない場合は、人員基準欠如減算の対象となります。

利用定員が10名を超えるデイサービスの場合、単位ごとに専従の看護師を1名以上配置しなくてはいけません。

看護師又は准看護師(以下この章において「看護職員」という。) 指定通所介護の単位ごとに、専ら当該指定通所介護の提供に当たる看護職員が一以上確保されるために必要と認められる数

引用:厚生労働省|指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第93条

そのため、看護師が何らかの事情で不在となり人員基準を満たせない場合、介護施設は基本報酬から減算した単位数で請求することになります。減算せずに請求を行うと、行政指導の対象となるため注意が必要です。

介護報酬の請求内容に間違いが見つかった場合は、「過誤請求」によって正しく請求しましょう。

参考:大分市ホームページ|介護給付費等の過誤請求について

人員基準欠如減算とは

デイサービスにおける人員基準欠如減算は、「介護職員や看護職員が人員基準に満たない状態でサービスを提供している場合」に対象となる減算です。

対象となるデイサービスの種類は、以下のとおりです。

・通所介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護

人員基準欠如減算の減算率は、基本報酬の30%となります。減算の仕組みや計算例については後述します。

人員基準欠如減算と混同しやすい制度が「人員基準違反」です。人員基準違反では、管理者、生活相談員、機能訓練指導員といった介護職員・看護職員以外の人員配置も審査の対象となります。

こちらの記事では、人員基準違反の概要や事例を紹介しています。人員基準違反を先に確認したい方はご覧ください。

デイサービスの人員基準

デイサービスの人員基準を確認しておきましょう。デイサービスで運営基準上配置が必要な職種は、管理者、看護職員、介護職員、機能訓練指導員、生活相談員です。

それぞれの配置基準は下表のとおりです。

職種 配置基準
管理者 常勤専従の者を1名配置
看護職員 単位ごとに専従で1以上
介護職員 ①単位ごとにサービス提供時間に応じて専従で以下の数以上

ア 利用者数が15人まで

1以上

イ 利用者数が15人以上

利用者の数が1増えるごとに、アの数に0.2を加えた数以上

②単位ごとに常時1名の配置が必要

③①の数および②の条件を満たす場合は、当該事業所の他の単位における介護職員として従事できる

機能訓練指導員 1以上
生活相談員 事業所ごとにサービス提供時間に応じて専従で1人以上

 

参考:
厚生労働省|令和2年7月 介護給付費分科会資料1 通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護
厚生労働省|令和5年9月 介護給付費分科会資料2 人員配置基準等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

デイサービスの人員基準を考える際は、以下の項目も把握しておきましょう。

・生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤
・定員10名以下の地域密着型通所介護事業所の場合は、看護職員または介護職員のいずれか1名の配置で可(常勤換算)

ここまで「単位ごとに」という文言が出てきましたが、どういった意味なのでしょうか。「単位ごとに」とは、

通所介護が同時かつ一体的に提供されている状況

を指します。

仮に「通所介護が一定の距離がある2つの場所で行われており、一体的にサービスが提供されているといえない場合」は、2単位として扱わなくてはいけません。

例えば、通所介護と認知症対応型通所介護を提供している法人の場合、それぞれの事業所で生活相談員や介護職員や看護職員などを配置して、人員基準を満たす必要があるわけです。

また、「午前と午後で別の利用者に対して通所介護を提供する場合」も2単位として扱う必要があります。こちらも同時かつ一体的に介護サービスが提供されているとはいえないからです。

ただし、以下のケースでは、同一単位で提供時間数の異なる利用者に対して通所介護を行うことが可能です。

・利用者ごとに通所介護計画書が策定されている
・策定した通所介護計画にそって介護サービスが一体的に提供されている

利用者ごとに策定した通所介護計画に位置づけられた内容の通所介護が一体的に提供されていると認められる場合は、同一単位で提供時間数の異なる利用者に対して通所介護を行うことも可能である。同時一体的に行われているとは認められない場合は、別単位となる。

引用:大分県高齢者福祉課|平成26年3月 これだけは知っていてほしい!!「通所介護」の関係法令基礎知識

看護師不在による減算の仕組み

看護師が不在の場合、どのように減算されるのでしょうか。減算の仕組みについて解説します。

減算の具体的な内容と影響

看護師不在により看護職員の人数が人員基準を満たさない場合、介護報酬の基本報酬に100分の70をかけた単位数を算定することになります。

つまり、介護施設が受け取る報酬は基本報酬から30%が減額された残りの70%となります。

基本報酬はデイサービスの規模や提供時間数によって異なります。ご注意ください。

参考:厚生労働省|平成12年2月 厚生労働大臣が定める利用者等の数の基準及び看護職員等の員数の基準並びに通所介護費等の算定方法

収入の30%減算の詳細

人員基準欠如減算の対象範囲は、デイサービスの利用者全員です。これは人員基準欠如減算が、デイサービスの適正な運営を確保することを目的としているためです。

介護報酬は介護施設にとって重要な収入の柱といえます。大幅な収入減を防ぐためには、人員基準を満たし利用者に適正な介護サービスを提供する必要があります。

減算が適用される条件

利用定員10名以上のデイサービスの場合、看護師が常勤換算で1を満たさない場合に人員基準欠如減算の対象となります。

例えば、看護師を1名だけ配置している場合、その看護師が欠勤すると常勤換算の1を満たせず人員基準欠如減算の対象となります。

健康上の理由や忌引きなどの急な事情であっても、人員基準欠如とみなされ減算の対象となるため注意が必要です。

なお、定員10名以下の地域密着型通所介護事業所の場合は、常勤換算で看護職員または介護職員のいずれか1名の配置で可とされています。

参考:厚生労働省|令和2年7月 介護給付費分科会資料1 通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護

減算の計算方法

人員基準欠如減算の計算方法についてみていきましょう。

サービス提供日における看護師の配置基準

看護師が人員基準を満たしているかどうかは、配置基準を計算して確かめられます。配置基準の算定式がこちらです。

配置基準の算定式

看護師の配置基準=サービス提供日に配置された看護職員の延べ人数÷サービス提供日数

看護職員の延べ人数とは、実際に勤務した看護職員の人数の合計を意味します。サービス提供日数とは、デイサービスが営業して介護サービスを提供した日数の合計値です。

月曜日から金曜日まで週5日間営業しているデイサービスを例に挙げてみましょう。

毎日1人の看護師が勤務していると仮定すると、1週間あたりの看護師の配置基準とサービス提供日数は以下のようになります。

営業日 定休日
1人 1人 1人 1人 1人 × ×
配置基準の算定式

 

サービス提供日に配置された看護職員の延べ人数=1+1+1+1+1=5
サービス提供日数=5
 

看護師の配置基準=5÷5=1

したがって上記の場合は、人員基準である「単位ごとに専従を1」という基準を満たしています。上記の人数が、「1未満」の場合、人員基準を満たさないため、人員基準欠如減算の対象となります。

こちらは1週間の例になります。自社の介護施設の配置基準を計算する際は、サービス提供日数にご注意ください。

減算の期間と計算例

看護師の配置基準が1未満の場合、人員基準欠如減算の対象となります。減算の期間は2つのケースに分けられます。

減算期間のケース

 
1.看護師の配置基準が0.9未満の場合
2.看護師の配置基準が0.9以上1未満の場合

1のケースでは、人員基準を満たせなかった月の翌月から、人員基準欠如減算が解消された月まで、利用者全員について所定単位数が減算されます。

2のケースでは、人員基準を満たせなかった月の「翌々月」から、人員基準欠如減算が解消された月まで、利用者全員について所定単位数が減算されます。ただし、翌月の末において人員基準を満たした場合は除かれます。

このように人員基準を満たせなかった範囲によって、減算の対象期間が異なる点にご注意ください。

参考:厚生労働省|指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(老企第36号)

看護師不在時の対応策

看護師不在時には、どのような対応策が考えられるのでしょうか。2つの対応策を紹介します。

・近隣の病院や訪問看護ステーションとの連携
・非常勤看護師の配置

それぞれのやり方や注意点をみていきましょう。

近隣の病院や訪問看護ステーションとの連携

1つ目の対応策が、病院や診療所、訪問看護ステーションと密接かつ適切な連携を図る方法です。

看護職員については、指定通所介護事業所の従業者により確保することに加え、病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により確保することも可能である。

引用:厚生労働省|平成11年9月 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(老企第25号)

病院や訪問看護ステーションとの連携により看護師を確保する場合は、以下の条件を満たす必要があります。

・デイサービスの営業日ごとに、看護職員が利用者の健康状態の確認を行う
・病院、診療所、訪問看護ステーションと提供時間帯を通じて密接かつ適切な連携を図る
・密接かつ適切な連携とは、デイサービスへ駆けつけることができる体制や適切な指示ができる連絡体制などを確保すること

病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により確保する場合、看護職員が指定通所介護事業所の営業日ごとに利用者の健康状態の確認を行い、病院、診療所、訪問看護ステーションと指定通所介護事業所が提供時間帯を通じて密接かつ適切な連携を図るものとする。なお、アとイにおける「密接かつ適切な連携」とは、指定通所介護事業所へ駆けつけることができる体制や適切な指示ができる連絡体制などを確保することである。

引用:厚生労働省|平成11年9月 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(老企第25号)

看護師を確保するための体制作りとして、病院や訪問看護ステーションとデイサービスとの間で委託契約を結ぶ方法が挙げられます。

デイサービスの看護師が不在になる場合に、看護師を派遣してもらうことで、看護師を確保することが可能です。

非常勤看護師の配置

非常勤看護師を配置する方法も、看護師不在時の対応策です。デイサービスの看護師は、密接かつ適切な連携を図ることができれば、提供時間帯を通じて専従する必要はないと考えられています。

そのため、非常勤看護師を配置して臨時勤務してもらうことでデイサービスの人員基準を満たせます。

看護職員については、提供時間帯を通じて専従する必要はないが、当該看護職員は提供時間帯を通じて指定通所介護事業所と密接かつ適切な連携を図るものとする。

引用:厚生労働省|平成11年9月 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(老企第25号)

例えば、法人内に特別養護老人ホームを併設している場合、特別養護老人ホームに非常勤看護師を配置して、デイサービスで看護師が不在の際にそこから応援を頼む方法が考えられます。

その場合は、特養の看護師に「デイサービスの看護師が不在の際は、デイサービスに臨時勤務してもらう旨」を事前に伝えるのがよいでしょう。

また、デイサービスのスタッフに「看護師不在の場合は、他部署の看護師が応援に来てくれる」と伝えると、現場で働く介護士などは安心して業務に集中できるはずです。

減算を回避するための具体的な方法

デイサービスで働く看護師

人員基準欠如減算を事前に回避するためには、どのような方法が有効なのでしょうか。ここでは、看護師の確保と適切な配置計画の作成について解説します。

看護師の確保と配置計画

看護師を確保する方法に新規採用の強化と労働環境の改善が挙げられます。これまで同じ採用方法を選択していた場合は、他に有効な採用方法がないか探してみるのはいかがでしょうか。

公共職業安定所(ハローワーク)や民間の職業紹介事業者といった採用方法にくわえ、近年は求人検索エンジン(Indeed、求人ボックスなど)やインターネット・SNSを活用する事業所も存在します。さらに、労働環境の改善を同時に進行して在籍している看護師の離職を防ぎましょう。

看護師の欠勤や欠員があった際に対応できる配置計画の策定も重要です。

併設する介護施設があれば、そこに非常勤の看護師を配置して、必要なときにサポートを依頼できる体制を構築します。近隣の病院や訪問看護ステーションと委託契約を結び、連携体制を構築する方法も有効です。

休日の看護師に出勤を頼む方法という方法も考えられますが、急なシフト変更を伴うため、代替案がない場合に選択するのがよいでしょう。

看護師不在時の減算に関するよくある質問(FAQ)

厚生労働省が公表している「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A」から抜粋して紹介します。

問50
病院、診療所又は訪問看護ステーションとの契約で確保した看護職員は、営業日ごとに事業所内で利用者の健康状態の確認を行う必要があるが、その場合どの程度の従事時間が必要か。また、事業所に駆けつけることができる体制とは、距離的にどの程度離れた範囲までを想定しているのか。


健康状態の確認を行うために要する時間は、事業所の規模に応じて異なるため、一概
に示すことはできないが、利用者全員に対して適切に健康状態の確認を行えるように病
院、診療所又は訪問看護ステーションと契約を結ぶ必要がある。
また、事業所に駆けつけることができる体制に係る距離的概念については、地域の実
情に応じて対応するため、一概に示すことはできないが、利用者の容態急変に対応でき
るよう契約先の病院、診療所又は訪問看護ステーションから適切に指示を受けることが
できる連絡体制を確保することでも密接かつ適切な連携を図っていることになる
参考:厚生労働省|平成 27 年度介護報酬改定に関する Q&A (平成 27 年4月1日)

まとめ

デイサービスにおける人員基準欠如減算は、介護職員や看護職員が人員基準に満たない状態でサービスを提供している場合に対象となる減算です。

人員基準欠如減算に該当する場合、基本報酬から30%減額されます。介護施設が受け取れるのは基本報酬の70%です。人員基準欠如減算の対象範囲はデイサービスの利用者全員に及ぶため、適切な方法で回避しましょう。

看護師不在を回避する方法について、この記事では2つの方法を解説しました。

・近隣の病院や訪問看護ステーションと委託契約を結び、密接な連携体制を築く
・非常勤看護師を配置して看護師不在の日に臨時勤務してもらう

人員基準は、デイサービスの利用者に対して適正な介護サービスを提供するとともに、介護施設の収入をマイナスにしないための重要な基準です。自社の運営体制にあわせた方法で、人員基準を満たしてください。

この記事の執筆者
千葉拓未

所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級)

専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。
以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。

生活相談員として5年間の勤務実績あり。
利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。

現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、
Webライターとして活躍している。

 

 

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