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第20回 介護経営サミット オンラインセミナー告知

【いまさら聞けない!】地域包括支援センターとは?4つの役割などを解説

地域包括支援センターとは

「1人暮らしの親のことが心配…」
「もし介護が必要になったときは、どこに相談するとよいの?」
 
親が高齢になると、このような悩みや不安を抱えることが多くなるでしょう。そんなときに頼りになるのが、地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、高齢者が地域で安心して生活していけるように、4つの役割を通じて支援しています。
 
この記事では、地域包括支援センターについて詳しく紹介してまいります。ご家族の参考になれば幸いです。

地域包括支援センターとは

相談を受けるケアマネジャー

地域包括支援センターとは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるように支援を行う、「地域の総合的な相談窓口」です。

2005年の介護保険法改正により誕生して、翌2006年に創設されました。運営主体は市町村で、全国すべての市町村に設置されています。

2022年4月末現在、地域包括支援センターの数は5404カ所です。そのうち市区町村での直営は約20%で、残りの約80%は社会福祉法人や社会福祉協議会による委託形式です。

地域包括支援センターは、中学校校区を基本とした「日常生活圏域」に1ヶ所の割合で設置されています。

介護保険法第115条の46項が根拠法令です。法令上では、

「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設とする。」

とうたわれています。

地域包括支援センターの利用対象者

地域包括支援センターの主な利用対象者は、65歳以上の高齢者及びその家族です。もし、離れて暮らす親について相談したいときは、親が住んでいる市町村の地域包括支援センターに相談しましょう。

民生委員やボランティアなど、高齢者に関わる地域の方や、介護サービス事業所職員、ケアマネージャーなども利用可能です。

地域包括支援センターの主な4つの役割

デイサービスセンターの職員と高齢者

はじめに述べたとおり、地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるように支援を行う機関です。

具体的な支援の方法は、

「介護予防ケアマネジメント」
「総合相談支援」
「権利擁護」
「包括的・継続的ケアマネジメント支援」

の4つになります。ここでは、4つの役割について詳しくご紹介します。 

1.介護予防ケアマネジメント

介護予防ケアマネジメントとは、ひと言で言うと「要介護状態になることの予防」です。主に、介護保険で「要支援1」もしくは「要支援2」と認定された方のケアマネジメントを行います。

ケアマネジメントの内容は、介護予防サービス計画の作成や、介護予防サービス利用に向けての調整、利用状況の確認、評価などです。

また、基本チェックリスト(※)で、介護予防・生活支援サービス事業が必要と判断された方へのケアマネジメントも行います。
(※基本チェックリスト:日常生活に必要な心身の機能が低下していないか確認するための25項目からなる質問表)

介護保険申請の結果「非該当」となった方や、介護予防に取り組みたいという方を対象に一般介護予防事業を実施することも、地域包括支援センターの役割です。

2.総合相談支援

高齢者の介護や、生活の悩み、認知症に関する相談など高齢者に関するさまざまな相談に対応するのが、総合相談支援です。介護保険申請の窓口にもなります。

ここで、総合相談に関する事例を1つご紹介します。50代女性・Aさんについてです。

地域包括支援センター 総合相談支援の事例

地域包括支援センター 総合相談支援の事例

Aさんは、父親と離れて住んでいます。1人暮らしの父親は、身の回りのことは自分で出来ていますが、あまり外出せず、閉じこもりがちになっていたのです。
 
そのことが心配だったAさんは、相談にのってもらった知人から、地域包括支援センターについて教えてもらい、電話で問い合わせてみました。
 
そこで話が進み、Aさんの帰省に合わせて、地域包括支援センター職員が訪問することになったのです。Aさん、父親、職員が話し合い、父親は介護保険の申請をしました。認定結果は、要支援2でした。
 
最初に訪問した職員がそのまま担当になり、介護予防サービスとして、デイサービス利用につながりました。父親も少しずつデイサービスを楽しみにするようになり、Aさんの心配も軽くなったのです。

3.権利擁護

権利擁護とは、分かりやすく言うと、高齢者虐待の早期発見や悪徳商法の被害についての相談です。成年後見制度の利用促進にも関わっています。

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって、判断能力が不十分な方を支援する制度です。後見人・保佐人・補助人と呼ばれる方が、財産管理や身上監護(日常生活上のさまざまな契約や手続き)に関する支援を行います。

4.包括的・継続的ケアマネジメント支援

地域のケアマネージャーに対する支援や地域ケア会議の開催などが、包括的・継続的マネジメント支援にあたります。

地域ケア会議とは、多職種が連携して支援が難しい高齢者についての意見交換を行う場です。事例検討を重ねることで、地域での高齢者支援ネットワークづくりにつながります。

ここで言う多職種とは、保健、医療、介護の専門職です。

主に、

・ケアマネージャー
・介護保険サービス事業所
・医療機関
・社会福祉協議会職員
・自治体介護保険担当部署

などが挙げられます。

地域包括支援センターにはどんな専門家がいるの?

地域包括支援センターの職員として配置されている専門家は、

・社会福祉士
・主任ケアマネージャー
・保健師

の3職種です。以下にそれぞれの専門家の役割を簡単に紹介します。

1.社会福祉士

社会福祉士の主な業務は、総合相談支援や権利擁護です。総合相談支援では、介護保険に関する相談はもちろん、高齢者の生活に関する困りごと全般的な相談を担います。

権利擁護とは、具体的にいうと、高齢者虐待に関する相談対応、詐欺や悪徳商法への被害相談対応、成年後見制度の利用支援などです。

2.主任ケアマネージャー

主任ケアマネージャーの主な業務は、包括的・継続的ケアマネジメント支援です。地域のケアマネージャーが、「この方への支援が難しい」と感じたときの相談先になったり、保健、医療、介護福祉に関する、地域の関係機関との連携を支援したりします。

必要に応じて、ケアマネージャーが作成したケアプランへのアドバイスを行うこともあるため、ケアマネージャーに対するサポート的役割を担っているともいえるでしょう。

3.保健師

主に介護予防事業を担当するのが保健師です。介護保険の申請の結果、要支援1・要支援2の認定を受けた方の介護予防サービス計画を作成し、介護予防サービス利用に向けての流れを作ります。

また、一般介護予防事業の企画・実施の中心になります。

地域包括支援センターの利用方法

地域包括支援センターの主な利用方法は、直接出向いて相談する、もしくは電話で相談するなどです。その後、必要に応じて、地域包括支援センター職員が相談者宅に訪問します。

親が住んでいる場所を担当する地域包括支援センターがどこか分からない場合は、市区町村役場の介護保険担当窓口に問い合わせるとよいでしょう。

都市部の場合は、1つの自治体に複数の地域包括支援センターがあるので、親が住んでいる地区の支援センターを確認しましょう。

地域包括支援センターを利用するメリット・デメリット

高齢者の総合相談窓口として重要な役割を担っている地域包括支援センターですが、利用するにあたっては、メリットとデメリットの両方があります。

メリット

介護を含めた高齢者全般に関わる相談を、無料で受けられることが大きなメリットです。1つの窓口で、さまざまな相談ができることも、メリットといえるでしょう。

また、高齢者虐待に関する相談窓口でもあるので、虐待の早期発見及び支援につながります。

デメリット

「地域包括支援センターは、直接の介護保険サービス事業所ではない」ことがデメリットです。介護保険サービスを受けるためには、

・介護保険の申請をする
・要介護1~5の認定を受ける
・ケアマネージャーにケアプランを作成してもらう
・ケアプランに基づいたサービスを利用する

という段階を踏む必要があります。

要支援1~2と認定された方の場合は、地域包括支援センターにケアプランを作成を依頼することになり、そのプランに基づいたサービスを利用する流れとなります。この点を覚えておくと、戸惑いが少ないでしょう。

まとめ

この記事では、地域包括支援センターについて詳しく紹介してまいりました。全ての市町村に設置されている、地域包括支援センターは、高齢者に関する総合的な相談窓口です。

社会福祉士や主任ケアマネージャー、保健師の3職種が連携して、介護サービス利用はもちろん、高齢者の介護や日常生活に関するさまざまな困りごとの相談にのります。ご家族の介護について悩まれている方は、ぜひ一度、地域包括支援センターに相談してみることをおすすめします。

きっと、よい解決策を提案して、ご家族に寄り添ってくれるでしょう。

この記事の執筆者
古賀優美子

保有資格: 看護師 保健師 福祉住環境コーディネーター2級 薬機法管理者

保健師として約15年勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護保険などの業務を経験。
地域包括支援センター業務やケアマネージャー業務の経験もあり。
高齢者デイサービス介護員としても6年の勤務経験あり。

現在は知識と経験を生かして専業ライターとして活動中。

2024年8月 住まい介護医療展 出展告知

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