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介護のインシデントとは?アクシデント・ヒヤリハットとの違いと事故防止のポイント

介護のインシデントとは?

介護のインシデントとは、事故につながる可能性のある事象や、実際に起きたものの重大な被害には至らなかった出来事などを指して使われる言葉です。ただし、ヒヤリハットやアクシデントとの区分は、施設・事業所によって異なる場合があります
 
報告書を書こうとしたときに、「これはインシデントなのか、それともヒヤリハットなのか」と迷った経験はないでしょうか。似た言葉が並ぶうえに、職場によって呼び方や扱いが異なる場合もあるため、判断に迷うこともあるでしょう。
 
この記事では、介護のインシデントの意味と、アクシデント・ヒヤリハットとの違いを整理しました。あわせて、介護現場でどのような出来事が該当するのか、発生したときにどう報告し対応するのか、集めた情報を事故防止にどう活かすのかまで解説します。日々の記録や報告に迷わないための手がかりとして、参考にしてみてください。

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介護におけるインシデントとは

介護現場で「インシデント」という言葉は、事故につながる可能性のある事象や、実際に起きたものの重大な被害には至らなかった出来事などを示す際に使われます。ただし、ヒヤリハットやアクシデントとの区分は、施設・事業所によって異なる場合があります。

というのも、厚生労働省が2025年11月に策定・周知した最新のガイドラインでは、3つの言葉それぞれについて、全国共通の区分となる定義は示されていないためです。同ガイドラインでは、ヒヤリ・ハット、インシデント、アクシデントをレベル別・類型別に管理し、原因分析や再発防止につなげる仕組みを構築する、という考え方が示されています。

そのため、インシデント・ヒヤリハット・アクシデントを実務上どのように区分するかは、施設・事業所の基準によって異なる場合があります。報告書を作成するときは、一般的な意味だけで一律に判断しないことが大切です。

言葉の意味を押さえたうえで、勤務先の事故報告基準やマニュアルを確認しておきましょう。報告書の様式に区分を選ぶ欄がある場合は、その定義が書かれた手順書もあわせて見ておくと判断に迷いにくくなります。

異動や転職で職場が変わったときも、前の職場と同じ感覚で判断せず、区分の考え方をあらためて確認してみてください。

参照:「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン

アクシデント・インシデント・ヒヤリハットの違い

介護施設での高齢者の転倒

3つの言葉はいずれも介護事故に関わるものですが、事故が実際に起きたかどうかと、ご利用者への影響の大きさという2つの軸で並べてみると、位置関係がつかみやすくなります

ヒヤリハットは事故に至らなかった段階、アクシデントは実際に被害が生じた事故を指すことが多い一方、インシデントが示す範囲は分類基準によって異なります。

前の章でも触れたとおり、どこで線を引くかは施設・事業所の基準によって異なる場合があります。次の表も、厳密な定義ではなく大まかな傾向としてご覧ください。

3用語のよくある使われ方(理解するための目安)

用語 おおまかな意味 事故の発生 ご利用者への影響
ヒヤリハット 事故につながりかねなかった出来事 至っていない 原則としてなし 転倒しそうになったが職員が支えた
インシデント 事故につながる可能性のある事象、または重大な被害に至らなかった出来事など 分類によって異なる なし〜軽微など 転倒したが外傷はなかった
アクシデント 実際にご利用者に被害が生じた事故 あり あり 転倒して骨折した

 

この表は全国共通の分類基準を示したものではありません。勤務先での区分は、事故報告基準やマニュアルでご確認ください。

ヒヤリハットとは

ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの、「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりした出来事のことです。

たとえば、入浴後の脱衣室でご利用者が足を滑らせたものの、そばにいた職員がとっさに身体を支えて転倒を防いだ場面が挙げられます。転倒やけがには至っていませんが、状況が少し違えば事故になっていた可能性があります。

厚生労働省のガイドラインでも、事故には至らなかった「少し気になる」程度のささいなものも含めて、ヒヤリ・ハット事例は起こりうる事故を未然に防ぎ、ケアの質を高めるための貴重な情報になると説明されています。

小さな気づきほど埋もれやすいものです。だからこそ、ヒヤリとした時点で残しておくことに意味があります。

アクシデントとは

一般的には、実際にご利用者に被害が生じた事故を「アクシデント」と呼ぶ場合があります。転倒して骨折した、熱い飲み物がかかって熱傷(やけど)を負った、といったケースです。

事故の内容や適用される基準によっては、ご家族への説明や市町村への報告が必要になります。発生したときの具体的な流れは後の章で取り上げます。

なお、どこからをアクシデントとするかも、インシデントとの区分と同じく施設・事業所の基準によって異なります。「被害が出たら必ずアクシデント」と決まっているわけではない点は、押さえておきたいところです。

ご利用者への影響の大きさで分ける考え方もある

参考として、医療分野では患者への影響の大きさをもとに分類する運用例があります。

具体的には、レベル0からレベル5に分け、レベル0から3aまでをインシデント、3b以上をアクシデントとして扱うものです。

この分類では、誤った行為が発生したものの患者には実施されなかったレベル0の事象も、インシデントに含まれます。介護現場でヒヤリハットとインシデントを分けて扱う場合とは、分類の考え方が異なるわけです。

これは医療機関での運用例であり、介護における公的な統一基準ではありません。医療分野ではこのような分類もあることを踏まえ、介護現場では勤務先のルールに沿って区分を確認しておきましょう。

参照:「インシデント・アクシデント報告件数について(厚木市立病院)

介護現場におけるインシデントの具体例

ここからは、介護現場で実際に起こりやすい場面を取り上げます。厚生労働省のガイドラインでは、介護施設等でよく起きる事故として、転倒・転落、誤嚥・窒息、異食、誤薬・与薬漏れ、医療処置における事故、外出・送迎時の事故などが挙げられています。

日々のケアの中でも、これらに関連する「ヒヤリとした」「危なかった」と感じる場面は起こり得ます。

なお、ここで紹介する出来事が必ずインシデントに分類されるわけではありません。施設の基準によっては、ヒヤリハットや事故として扱われる場合もあります。あくまで、どのような場面でインシデントやヒヤリハットが起こり得るかを知るための例としてご覧ください。

転倒・転落

介護施設等でよく起きる事故の一つが、転倒・転落です。

車いすに座っていたご利用者が座り直そうとしてずり落ちた、ベッドから降りようとしてバランスを崩した、といった場面が挙げられます。転倒の原因は一つとは限らず、ご利用者の身体状態や認知・心理面、周囲の環境など、複数の要因が重なって起こる場合があります。

外傷がなくバイタルが安定している場合でも、自施設の事故・インシデント報告基準に沿って記録し、報告しておきましょう。「何もなかったから大丈夫」で終えてしまうと、同じような状況が繰り返されていることを把握しにくくなります。

なお、ガイドラインでは、転倒の原因は身体面から精神面、環境面まで非常に多様で複雑に絡み合っており、防ぐことが難しい転倒であるケースも数多く存在するとしています。転倒のすべてを、職員の不注意によるものと決めつけるのは適切ではありません。

誤薬・与薬漏れ

服薬に関しては、誤薬や与薬漏れなどの事故・ヒヤリハットが起こることがあります。

別のご利用者の薬を渡しかけた、配薬した薬が飲まれていないことに後から気づいた、床に落ちていた錠剤を見つけた、といったケースが該当します。

ガイドラインでは、誤薬や与薬漏れを防ぐために、薬を配薬トレーに用意する段階と、ご利用者に配薬して飲んでいただく段階のそれぞれで対策を講じるよう示されています。準備のときと手渡しのときでは、ミスの起こり方が違うためです。

どちらの段階で起きたことなのかを記録に残しておくと、後から対策を考えるときの材料になります。

食事・誤嚥

食事の場面では、誤嚥に関する出来事が挙げられます。

食事中に強くむせ込んだ、食形態の異なる食事を配膳しかけた、飲み込みにくそうな様子に途中で気づいた、といった場面です。

その場は落ち着いたとしても、状況によっては大きな事故につながりかねません。むせ込みが続いていた、いつもより飲み込みに時間がかかっていた、といった気づきは、報告を通じて共有しておきたいところです

食事形態やとろみの見直しにつながることもあり、記録がその後のケアを変えるきっかけになります。

入浴・移乗

入浴や移乗の場面も、インシデントやヒヤリハットが起こり得る場面のひとつです。

脱衣室で足を滑らせた、浴槽への出入りでふらついた、移乗介助のあとに内出血や皮膚剥離が見つかった、といったケースが該当します。

ガイドラインでは、内出血や皮膚剥離は介護現場において最も頻発するけがであるとされています。原因の特定が難しい場合も多いものの、職員が介助を行う中で生じるケースもあるため、気づいた時点で記録しておきたいですね

参照:「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン

具体的な事例をもっと知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

インシデントが発生したときの報告と対応

インシデントが発生したときは、まずご利用者の状態と安全を確認し、必要な初動対応を行ったうえで、施設内での報告・記録、原因分析や再発防止策の検討へ進みます。具体的な対応や順序は、事象の内容や施設・事業所のルールによって異なるため、あらかじめ手順を確認しておきましょう。

厚生労働省のガイドラインでは、事故報告の目的は職員の責任追及ではなく、原因分析や再発防止策の検討を通じてご利用者のケアの向上につなげることだと示されています。報告する側も受け取る側も、この前提を共有しておきたいですね。

まずご利用者の状態を確認する

事故が起きたら、まずはご利用者の救命や安全確保を第一に行動します

続いて、状態をできる限り正確に把握します。ガイドラインでは、正確な状態把握には医学的知見が欠かせないため、看護職員がいる事業所では看護職員を呼び、不在の場合は電話連絡などで指示を仰ぐこととされています。意識や呼吸の有無、血圧、脈拍、体温、酸素飽和度といった確認すべき項目を決めておくと、状態把握がスムーズになります。

判断に迷いやすいのは、「事故が起きたのかどうかがはっきりしない」場面ではないでしょうか。ベッドの脇でうずくまっているところを見つけた、食事中に動きが止まっていた、といったケースです。

こうした場面の事実確認も、あらかじめルール化しておきましょう。転倒の疑いがあればご本人に状況をうかがう、目撃者がいれば話を聞く、頭を打っている場合はすぐに受診する、といった形で決めておくと、その場で迷わずに済みます。

発生した状況を記録して報告する

ご利用者の救命や安全確保を行ったうえで、口頭でもよいので現場のリーダーや上司へ速やかに報告します。他のご利用者にも起こりうる危険な環境があれば、その場で対処します。

事故発生時の状況は、記憶が鮮明なうちに事実関係を確認し、記録に残しましょう。このとき大切なのが、事実と推測を分けて書くことです。ガイドラインでも、報告様式は発生状況を時系列に沿って記載でき、原因分析では事実と推測を明確に分けられるようにすることが効果的だとされています。

「滑ったようだった」「床が濡れていた」では、情報としての性質が違います。見たことと、そこから考えたことを書き分けておくと、後の分析で役立ちます。

市町村への報告については、厚生労働省の通知で対象が示されています。介護保険施設等における事故報告について、死亡に至った事故と、医師の診断を受けて投薬や処置など何らかの治療が必要となった事故は、原則としてすべて市町村への報告対象とされています。第1報は速やかに、遅くとも事故発生後5日以内を目安に提出します。

対象や取扱いはサービス種別や自治体によって異なる場合があるため、自治体の要領もあわせて確認しましょう。

原因を分析して再発防止策を検討する

原因の分析は、事故を発見した職員や当事者だけで行うものではありません。ガイドラインでは、施設管理者や委員会のメンバーを中心に組織全体で行うこと、専門性の異なる多職種・多部門が協力することで、根本的な原因を掘り下げやすくなるとされています。

分析の手法としては、「なぜそうなったのか」という問いを繰り返して原因を掘り下げるなぜなぜ分析や、当事者以外の要因も含めて整理するSHELL分析が紹介されています。

分析の結果は、おおむねご利用者本人の要因、環境面の要因、職員全員に共通する要因、職員個人の要因に分かれます。どこに原因があるかによって、取るべき対策も変わってきます。手順書の見直しが必要な場合もあれば、家具の配置変更が対策の一つになる場合もあります。

「観察を頻回に行う」といった対策は、人員に限りがある中では実効性が低くなる場合があります。根本的な原因を踏まえ、現場で実行可能な対策を検討することが大切です。

参照:「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン

参照:「介護保険施設等における事故の報告様式等について(介護保険最新情報Vol.1332)

情報共有と振り返りの時間、確保できていますか?

原因の分析や再発防止策は、多職種・多部門で検討することが重要です。シンクロシフトは、シフト作成の効率化や職員配置の可視化、事務作業の負担軽減を支援します。
 
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インシデントやヒヤリハットを介護事故防止に活かす

施設内を手すりにつかまって歩く高齢者

集めた情報を事故防止につなげるには、報告が集まる仕組みと、分析した内容を共有して見直していく体制の両方が必要です。

厚生労働省のガイドラインでは、発生した事故に限らずヒヤリ・ハット事例も施設内で一元的に収集し、管理・分析して発生状況を把握する仕組みを整備することが、ケアの質向上や事故の未然防止・再発防止策を検討するうえで重要だとされています。

報告書を書いて終わりにするのではなく、その先まで含めた流れをつくっていきましょう。こうした取り組みの土台となる考え方は、リスクマネジメントとして整理されています。

報告しやすい職場をつくる

ヒヤリハットやインシデントの報告は、報告することで叱責されるのではないかという不安があると、ためらってしまうことがあります。

ガイドラインでも、叱責される恐れがある場合は報告を避ける意識が働くとされ、事故を職員個人ではなく施設全体の課題として捉え、職員が萎縮しない環境づくりを意識するよう示されています。

一方で、報告が実際のケアの改善に役立ち、ご利用者の安全が高まることを実感できると、報告する意欲は高まるとされています。報告内容の分析や再発防止策の検討を、現場にしっかりフィードバックする仕組みをつくりたいところです。

書きやすい様式にすることも、報告を増やす工夫のひとつです。記入例を用意する、分類できる項目はチェックボックス形式にするなど、報告書を作成する負担を減らす方法が示されています。

1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった数十件の小さな事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった数百件のヒヤリ・ハットがある。この考え方は、ハインリッヒの法則として知られています。

再発防止策を共有し、効果を見直す

対策を立てたら、速やかにチーム内で共有しましょう。

例えば、対策が記載された報告書をファイリングして出勤時に目を通す、連絡ノートに事故の概要と対策を記載するなど、全員が確認できる仕組みを整えておくことが大切です。夜勤者や休みだった職員にも確実に届く形になっているかを、あわせて確かめておきたいですね。

ガイドラインでは、再発防止策が本当に有効なのか、継続して実施できるものなのかは、実際に実行してみないと判断がつかないとされています。早急に対応が必要な事故については、「まずやってみる」という意識を持つことも必要だと示されています。

実行したあとは効果を確かめ、必要に応じて見直していきましょう。事故情報を管理・集計しておくと、定期的に分析して発生傾向の変化を確認することもできます。

なお、事故が起きる前に危険を洗い出す方法の一つに、危険予知トレーニング(KYT)があります。事故防止の取り組み全般とあわせて、こちらの記事で詳しく解説しています。

事故防止・事故発生時の基準はサービスの種類によって異なる

事故の防止に向けて求められる体制は、介護サービスの種類によって異なります。

指定介護老人福祉施設などの施設サービスでは、事故発生防止のための指針の整備、報告と分析を通じた改善策の周知体制、委員会と研修の定期的な実施、担当者の配置などが運営基準で定められています。一方、居宅サービスや介護予防サービスなどでは基準の内容が異なり、事故が発生した場合の対応がそれぞれの運営基準に定められています。

自施設にどの基準が適用されるのかを確認しておきましょう。委員会の設置や研修の実施が求められる場合、その運営が形だけのものになっていないかを見直す機会にもなります。

担当者の役割や、安全対策体制加算で求められる研修については、こちらの記事で解説しています。

 
参照:「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン
 
参照:「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

まとめ

介護現場でいう「インシデント」は、事故につながる可能性のある事象や、重大な被害には至らなかった出来事などを示す言葉として使われます。ヒヤリハットやアクシデントとの区分は施設・事業所の基準によって異なる場合があるため、まずは勤務先の事故報告基準やマニュアルを確認してみてください。

言葉の区分に迷った場合も、まずは勤務先のルールに沿って共有・報告することが大切です。事故には至らなかった小さな気づきも、集めて分析することで、その先の事故を防ぐ手がかりになります。

報告が集まる職場をつくり、立てた対策を共有して見直していく。この流れが回りはじめると、一人ひとりの気づきが施設全体の力に変わっていきます。

今日ヒヤリとした出来事があったなら、勤務先のルールに沿って記録・共有するところから始めてみましょう。一つひとつの気づきが積み重なることで、事故防止の取り組みは前に進んでいきます。

この記事の執筆者ユージン

保有資格:介護福祉士 社会福祉士 認知症ケア専門士

介護付き有料老人ホームで16年勤務。内3年は介護リーダーを務める。現在は新人職員、中堅職員の指導を行いながら、チームケアの維持に尽力。

また、長い現場経験を活かして、介護・福祉関係のライターとしても活動中。

 
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