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【教えて!】介護施設における危険予知トレーニング(KYT)とは?どんな効果が期待できる?

介護施設における危険予知トレーニング(KYT)とは

介護施設の中には、様々な危険要因が潜んでいます。危険要因に気がつくことができないと、介護事故やヒヤリハット、労働災害などにつながる可能性が高くなります。施設内の環境を安全にするための取り組みが、危険予知訓練(KYT)です。
 
危険予知訓練(KYT)とは、職場で災害につながる危険を探し出して対策を行うために考案・実施されている訓練のことを言います。ローマ字のKYTは、危険のK、予知のY、訓練(トレーニング)のTです。危険予知訓練(KYT)には、決まった手法があり、手順通りに行うことで効果を発揮します。
 
基本的には小集団で活動するのが一般的で、メンバー同士で職場に潜む危険要因を見つけ話し合いを行い、対策を検討する活動です。本記事では、介護施設における危険予知訓練の重要性や効果、具体的な方法、注意点などを解説します。

介護施設における危険予知訓練の重要性

介護施設での高齢者の転倒

危険予知訓練(KYT)の実施は、介護施設においても有効です。介護現場では常に介護事故のリスクが絶えません。事故やヒヤリハットは「誰が」起こしたのかを追求するのではなく、「どうして」起こってしまったのかを考えることが重要です。

そのためには、事故やヒヤリハットを起こしにくい環境作りと、危険を予測する能力を向上させる必要があります。危険を予測する能力を向上させるトレーニングが、危険予知訓練(KYT)です。

介護施設では事故もひとたび起これば重大な事故に繋がる恐れが高いため、介護現場において非常に重要性が高い訓練だといえます。

危険予知トレーニング(KYT)の効果・メリット

危険予知訓練(KYT)を行う場合のメリット・デメリットを解説します。

メリットとしては、事故やヒヤリハットを未然に防ぐことができる、職員の安全意識の向上、生産性の向上が考えられます。

事故やヒヤリハットを未然に防ぐ

危険予知訓練(KYT)を行うことで、介護施設で起こりうる事故やヒヤリハットを予測し、前もって対策を立てることができます。事前に危険を予測し対策を立てることで、事故やヒヤリハットの回避につながります。

職員の安全意識の向上

危険意識は一部の人が向上しても、職場の安全性が向上するわけではありません。全職員が同じように、危険意識を向上しないと意味がありません。

危険予知訓練(KYT)を全職員が受けることで、施設全体で危険を予測する能力が向上します。さらに対策を講じることができるようになり、危険要因を評価することで施設内の危険を明確化することができます。

生産性の向上

事故やヒヤリハットが発生すると、業務が中断したり、物品や設備の破損などの場合は、代用の検討などを余儀なくされます。しかし、危険予知訓練(KYT)を受けることで、トラブルを未然に防ぐことができるようになる可能性が高まります。

未然に事故・ヒヤリハットを防ぐことができれば、職員の心理的ストレスを防ぎ、物品や設備の修理費用等のコストの削減に繋がります。これにより、生産性の向上に繋がります。

危険予知訓練(KYT)の注意点・デメリット

次にデメリットとしては、導入方法によっては費用がかかることもある、時間がかかる、効果がすぐにわからないということが考えられます。

費用がかかる場合がある

危険予知訓練(KYT)は自己学習で行うことは可能です。しかし、より効果的に行うには、外部講師に依頼したり、教材を導入する方法が良いでしょう。その場合、講師派遣の費用や教材購入などの費用がかかります。

時間がかかる

危険予知訓練(KYT)を行うためには、事前準備や、訓練自体にも時間がかかります。また、定期的に危険予知訓練(KYT)を行う必要がある事を考えると、長い期間取り組む必要があるでしょう。

効果がすぐにわからない

危険予知訓練(KYT)は、危険要因を予測して対策を講じる訓練です。そのため、効果がすぐに分かるものではありません。

このようにデメリットもありますが、メリットの方が介護施設の運営において大きいと考えられます。

危険予知トレーニング(KYT4ラウンド法)の進め方

危険予知訓練(KYT)の具体的な方法としては、KYT4ラウンド法があります。これは、4つのラウンド(見る・考える・話す・決める)を繰り返し行うことで、職員が危険を予測し、事故やヒヤリハットを未然に防ぐ力を身につける方法です。

第1ラウンド:現状把握

写真や指定された場所を見て、どこに危険が潜んでいるか意見を出していきます。発言は「〇〇(行動)すると、▢▢(状態)となって、△△(結果)のリスクがある。」と話していくのがポイントです。

(例)車いすのブレーキを掛けずに立ち上がると、車いすが意図せず動いて、転倒のリスクがある。

第2ラウンド:本質追究

第1ラウンドで出てきた意見をもとに、グループで重要な危険要因なのかを検討していきます。検討方法は、グループで重要と思う危険要因をそれぞれ発言します。そして、グループで1〜2つ重要な危険要因を選出します。

第3ラウンド:対策樹立

第2ラウンドで選出した危険要因を、予防・防止するための対策をグループで話し合います。このとき、具体的で実施可能な対策を発言することがポイントです。

第4ラウンド:目標設定

第3ラウンドで出された対策の中で、グループで必ず実施する対策を検討します。グループ内で重要実施事項を発言していきます。その際、「〇〇する時」は「〇〇をする」と行動を決定します。

(例)車いすを止める時は、必ずブレーキをかける。

介護施設で危険予知訓練を行う際の注意点

介護施設で危険予知訓練を行う際には、注意点がありますので解説していきます。

積極的に意見を出す

危険予知訓練(KYT)の効果を実感するためには、すべての職員が参加することが必須です。実施する時は、小集団で行い、全員が意見を発言する必要があります。

グループ内で発言ができていない人がいれば、発言を促す働きが必要です。それぞれの発言が、新たな発見や認識の相違などの気づきになります。

また、全職員が当事者として参加することで、より安全意識が高まり危険予知訓練(KYT)の効果に繋がります。

設定した目標を必ず実行する

危険予知訓練(KYT)の中で決めた目標は、常に実行できている状態である必要があります。目標を設定して終わりではなく、実際に業務中に実行することに意味があります。そのため、目標は実施可能なものであることが大切です。

継続して目標を実施することで、職員の中で習慣化することができます。そうすれば、意識しなくても当たり前に行動できるようになります。

目標を常に改善していく

危険予知訓練(KYT)は、定期的に行い常に改善していく必要があります。回数を重ねることで、職員の安全意識を高めることができ、初回の時より回を重ねるごとに、より充実した議論ができるようになります。

また介護施設では人も環境も日々変化するので、定期的な見直しを行い目標を改善していくことは、とても重要です。

危険予知訓練は介護施設でも効果が期待できる

介護施設では事故やヒヤリハットなどの危険因子が、いろいろなところに潜んでいます。危険予知訓練(KYT)に取り組むことで、事故やヒヤリハットが起こる危険要因を施設全体で予測できるようになります。

危険要因が明確になり、具体的な対策を講じることができ、共通認識をもち実行できるようになります。そうすることで、介護施設全体の事故やヒヤリハットを未然に防げる効果が期待できます。

まとめ

介護現場では、常に介護事故のリスクが絶えません。しかし、危険予知訓練(KT)を繰り返し施設全体で取り組むことで、事故やヒヤリハットなどの危険要因を予測し、未然に防ぐ対策を講じることができます。また、全職員で取り組むことで、職員の危険予測の意識が高まります。

危険予知訓練(KYT)には、一般的にKYT4ラウンド法を活用します。一連の手順を1回だけ取り組んで終わりではなく、繰り返し行うことで効果が期待できます。また、一度立てた目標も、定期的に見直しを行うことが大切です。

施設全体で危険予測訓練(KYT)に取り組み、ご利用者・職員が安心できる施設環境の整備を行って下さい。

この記事の執筆者yoko

所有資格:介護福祉士 介護支援専門員

介護職として、デイケア、訪問入浴、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、訪問介護、定期巡回随時対応訪問介護、ホームホスピスで計25年勤務。

25年の経験の中で、介護主任として介護職員の指導・育成・管理業務を経験し、さらに介護部長、管理者として施設運営も経験し、地域密着型特別養護老人ホームの開設にも携わる。

現在は介護老人保健施設で、一般介護職として勤務。今後は主任ケアマネを取得するために、特別養護老人ホームで、介護支援専門員としての勤務予定。

長い現場経験を活かし、介護特化のライターとしても活動中。

 

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