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介護現場のヒヤリハット事例集【25事例】転倒・誤嚥・認知症まで例文つき

介護現場のヒヤリハット事例集

この記事では、介護のヒヤリハット事例集として、介護現場でよくある25の事例を場面別に紹介します。
 
転倒・誤嚥・服薬・認知症・夜間対応など、日々の業務で起こりやすいケースを、原因と対策、ヒヤリハット報告書の例文とあわせてまとめました。
 
ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの一歩間違えば重大な事故につながる出来事を指します。
 
日々の業務で起こる小さなヒヤリハットを見逃さず記録・共有することが、重大事故を未然に防ぐ最も確実な手段です。
 
ご利用者の安全を守ると同時に、施設や職員を守るための実践的な事例集としてご活用ください。

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目次

介護現場のヒヤリハットとは

食事でむせる高齢者

この章では、介護現場におけるヒヤリハットの基本をまとめます。ヒヤリハットの定義、介護事故との違い、そして事故防止の考え方として知られるハインリッヒの法則について、現場で押さえておきたいポイントを整理しました。

ヒヤリハットの定義

ヒヤリハットとは、事故には至らなかったものの、一歩間違えば重大な事故につながっていた「ヒヤリとした」「ハッとした」出来事を指します。介護現場では、転倒しそうになった、誤嚥しそうになった、薬を飲み間違えそうになった、といった日常的に起こり得るケースが該当します。

ご利用者のいつもと異なる体調変化、設備の不具合、職員間のコミュニケーション不足など、小さなサインもヒヤリハットに含まれます。こうした気づきを見逃さず記録・共有することが、重大事故を未然に防ぐための手がかりとなります。

介護職員には、日常業務のなかでヒヤリハットに敏感に気づき、早期に適切な対応をとる姿勢が求められます。

ヒヤリハットと介護事故の違い

ヒヤリハットと介護事故の違いは、実際に被害や怪我が発生したかどうかにあります。ヒヤリハットは事故には至らなかった未遂の出来事、介護事故は実際にご利用者に被害や怪我が発生した出来事です。

たとえば、ご利用者が椅子から立ち上がろうとしてバランスを崩し、近くにいた職員が支えて転倒を防げた場合はヒヤリハットに当たります。一方、支えきれず転倒して打撲や骨折を負った場合は介護事故となります。

ヒヤリハットは「事故の予兆」として未然防止の手がかりに活用するもの、介護事故は発生後の自治体報告や再発防止、ご家族対応の対象となるもの、と役割が分かれます。

ヒヤリハットを丁寧に拾い上げることが、介護事故の発生を減らす最も効果的な対策です。

ハインリッヒの法則とヒヤリハットの関係

ハインリッヒの法則とは、1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故、さらに300件のヒヤリハットが存在するという労働災害に関する経験則です。アメリカの損害保険会社の安全技師であったハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが、1930年代に提唱した考え方として知られています。

この法則をヒヤリハット対策に当てはめると、「300件のヒヤリハットを記録・分析・対策できれば、29件の軽微な事故と1件の重大事故を未然に防げる可能性がある」という考え方になります。

つまり、日々のヒヤリハットを「小さな出来事だから」と見過ごさず、一件ずつ丁寧に記録・共有していくことが、重大事故の発生を防ぐ最も確実な近道となります。介護現場で「ヒヤリハットは多いほど良い」とされるのは、この法則に基づく考え方です。

介護現場のヒヤリハット事例集

この記事で紹介するヒヤリハット事例は以下のとおりです。気になるカテゴリーから確認してみてください。

事例番号 カテゴリー 場面の概要
事例1 転倒・転落 トイレ内での転落
事例2 転倒・転落 椅子やベッドからの転倒
事例3 転倒・転落 車椅子からの転落
事例4 転倒・転落 浴室内の転倒
事例5 食事・嚥下介助 食事中の誤嚥
事例6 食事・嚥下介助 入れ歯を付け忘れる
事例7 食事・嚥下介助 熱いお茶がこぼれ身体にかかった
事例8 服薬 朝食後と夕食後の飲み間違え
事例9 服薬 隣の利用者の薬を飲もうとした
事例10 食事(食事形態) 食事形態の制限があるが普通食を食べそうになった
事例11 移乗介助 ベッドから車椅子への移乗中に転落しそうになった
事例12 移乗介助 移乗介助後に利用者の皮膚に内出血が生じた
事例13 移乗介助 ポータブルトイレへの移乗中に前のめりになった
事例14 移乗介助 入浴介助のリフト使用中にスリングがずれた
事例15 認知症 他の利用者の居室に入り込んだ
事例16 認知症 食べ物以外のものを口に入れようとした(異食)
事例17 認知症 施設外に出ようとした(離設の危険)
事例18 認知症 服薬後に薬を口の中に隠していた
事例19 夜間・就寝中 夜間にベッドから転落しそうになった
事例20 夜間・就寝中 ナースコールを使えずに床に座り込んでいた
事例21 夜間・就寝中 夜間巡回時に呼吸異常に気付いた
事例22 夜間・就寝中 夜間に自力でトイレに行こうとして転倒しそうになった
事例23 皮膚ケア・環境・設備 褥瘡(床ずれ)の前兆サインを見落としそうになった
事例24 皮膚ケア・環境・設備 屋外移動中に段差で車椅子が傾いた
事例25 皮膚ケア・環境・設備 更衣介助中にファスナーで皮膚を挟んだ

 

全国データで見る介護事故・ヒヤリハットの傾向

全国規模の統計を見ると、介護現場で発生する事故の多くが「転倒・転落」に集中していることがわかります。マクロな傾向を押さえておくと、自施設で重点的に備えるべきリスクの優先順位が見えてきます。

公益財団法人介護労働安定センターが2018年に公表した報告書では、消費者庁から厚生労働省老健局に報告された重大事例276件のうち、転倒・転落・滑落が181件(65.6%)、誤嚥・誤飲・むせこみが36件(13.0%)を占めると示されています。

重大事例は概ね30日以上の入院を伴う事故に限定されますが、事業所内で起こる重大事故の傾向を示す代表的なデータとして今も参照されています。

(参照:介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業報告書|公益財団法人介護労働安定センター

また厚生労働省「人口動態調査」を基にした消費者庁の集計によると、65歳以上の「転倒・転落・墜落」による死亡者数は令和2年で8,851人にのぼり、交通事故(2,199人)の約4倍にあたります。

同資料では厚生労働省「国民生活基礎調査(令和元年)」も整理されており、要介護となった主な原因のうち『骨折・転倒』が13.0%で第4位(認知症・脳血管疾患・高齢による衰弱に次ぐ)と示されています。

高齢者にとって転倒は命や要介護度に直結するリスクであることが、国の統計からも読み取れます。

(参照:毎日が#転倒予防の日 参考資料|消費者庁消費者安全課

なお、全国レベルの事故データ整備はまだ途上にあります。

厚生労働省は令和6年11月29日付の通知(介護保険最新情報Vol.1332)で、介護保険施設等における事故の報告様式を統一化し、電子的な報告・受付の推進を打ち出しました。

今後、標準化された様式に基づく報告が蓄積されることで、より精度の高い全国統計の整備が期待されています。

(参照:介護保険最新情報Vol.1332 介護保険施設等における事故の報告様式等について|厚生労働省老健局)https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2024/1202092706494/ksvol.1332.pdf

自治体データで見る事故の発生場所・種別

自治体が公表する事故報告統計を見ると、発生場所や事故種別の傾向をより具体的に確認できます。全国データと自治体データを組み合わせることで、現場で優先して備えるべきリスクの輪郭が明確になります。

介護現場では、いつどこで事故が起こってしまっても不思議ではありません。

インターネットで検索すると様々な事故の集計や調査結果を見ることができますが、居室や食堂など滞在時間が長い場所や、トイレや浴室などの普段とは異なる動作を行う場所で事故やヒヤリハットが多いことがわかります。

また、事故の統計を見ると概ね毎年同じような傾向があり、転落や転倒事故、服薬に関する事故などが多いことがわかります。昨今は感染症による事故が増加していますが、コロナウイルスの拡大による影響と考えられます。

(参考:青森県南部町「令和3年度介護事故・ヒヤリハットの発生状況調査の集計・分析結果」 P11)

介護事故の発生場所

(参考:福岡市「令和4年度福岡市 介護サービス事業所事故報告統計」 P2)

介護事故の種別別

介護現場のヒヤリハット事例【転倒・転落関連】

介護施設での高齢者の転倒

介護現場の事故やヒヤリハットで最も多いのが、転倒や転落による事例です。高齢者は足腰の筋力が弱まっていることや視力の低下、認知症状などにより思わぬ転倒や転落が起こります。

実際にどのような事例で、事故やヒヤリハットが起こっているのかを見てみましょう。

事例1【トイレ内での転落】

【内容】
排泄介助中に尿取りパッドを取り行こうとして側を離れたところ、利用者が立ち上がろうとして便座から転落しそうになりました。

【原因】
・トイレ内の床が濡れて滑りやすくなっていた
・手すりの設置が不十分で、立ち上がる際に身体を支えられなかった
・介助者が尿取りパッドを取りに離れ、ご利用者の側を離れる時間が発生した

【対策】
・床の乾燥状態を定期的に確認し、滑り止めマットを設置する
・トイレ内に手すりを増設し、ご利用者が安全に利用できる環境を整える
・尿取りパッドは介助前に手元へ用意し、介助中に側を離れない運用を徹底する

事例2【椅子やベッドからの転倒】

【内容】
利用者が椅子から立ち上がろうとした際にバランスを崩し、床に転落しました。腰部に軽い打撲を負いましたが、幸いにも重大な怪我には至りませんでした。

【原因】
・椅子やベッドの高さがご利用者に適しておらず、立ち上がる際に重心が不安定になった
・介助が間に合わず、バランスを崩した瞬間に支えられなかった
・肘掛けやベッドレールなど、身体を支える補助具の活用が不十分だった

【対策】
・ご利用者ごとに適切な高さの椅子やベッドを選定する
・立ち上がる際は必ず介助に入り、見守りだけで済ませない
・ベッドレールや椅子の肘掛けを活用し、転落を物理的に防ぐ

事例3【車椅子からの転落】

車椅子からの転倒は介護施設の中でも最も多い事故のひとつと言えます。

【内容】
ブレーキを掛けずに立ち上がりそのまま転落してしまった。

【原因】
・高齢者の力では、ブレーキを掛けづらい車椅子がある
・麻痺のある利用者の場合、患側のブレーキを掛けにくく、しっかりとブレーキがかからない場合がある
・認知症等によりブレーキを掛けることを忘れてしまい立ち上がってしまう

【対策】
・ご利用者の体格やADLに合わせた車椅子を選定する
・転倒防止バーや自動ブレーキ機能付きの車椅子の導入を検討する
・車椅子利用時は見守りを強化し、必要に応じて普通の椅子への座り替えを提案する

事例4【浴室内の転倒】

【内容】
介護施設の利用者が浴槽に入ろうとした際に足を滑らせて転倒し、膝を強打しました。幸い、骨折などの重傷は避けられましたが、痛みと腫れが生じました。

【原因】
・浴槽の縁が高く、またぐ動作で重心が大きく移動した
・浴室の床が濡れて滑りやすくなっていた
・手すりや補助具の使用が不十分で、身体を支えられなかった

【対策】
・浴槽の縁に滑り止めを設置し、浴室の床には滑り止めマットを敷く
・入浴時は必ず補助具や手すりを使用するようにご利用者へ案内する
・入浴中は衣服を掴んで支えられないため、身体を直接支える準備をしておく
・脱衣所も濡れやすいため、吸水マットを敷いて床を乾いた状態に保つ

事例5【夜間のトイレ移動時の転倒】

夜間帯は職員数が限られ、ご利用者の覚醒も不十分なため、転倒リスクが特に高まる場面です。

【内容】
夜間、ご利用者が1人でトイレへ向かおうとしてベッドから立ち上がった際、ふらつきで壁に手をつきそのまま床にしゃがみ込みました。幸い大きな怪我はありませんでしたが、頭を打つ寸前の危険な状態でした。

【原因】
・就寝中の覚醒が不十分で足元がふらついた
・居室からトイレまでの廊下が薄暗く、障害物の判別が難しかった
・ナースコールを押す習慣がなく、1人で動こうとした
・夜勤帯は職員数が少なく、見守りが行き届いていなかった

【対策】
・離床センサーや見守りセンサーを導入し、夜間の動き出しを早期に把握する
・ベッド周辺から廊下・トイレまでの足元灯を設置し、夜間の視認性を確保する
・ポータブルトイレの設置を検討し、長距離移動を避ける
・ナースコールの位置と使い方をご家族同席で繰り返し説明し、1人で動かない習慣づけを行う

事例6【移乗介助時のベッド・車椅子間での転倒】

移乗介助は介護職員の動作とご利用者の残存機能が噛み合う必要があり、ヒヤリハットが起こりやすい場面です。

【内容】
ベッドから車椅子への移乗介助中、ご利用者の膝折れが起き、介助者が支えきれずに2人で床に座り込みそうになりました。車椅子のブレーキは掛かっていたものの、フットレストを上げ忘れており、ご利用者の足が引っかかりました。

【原因】
・フットレストの上げ忘れで足が引っかかった
・車椅子とベッドの高さが合っておらず、重心移動が大きくなった
・介助者の足幅が狭く、ボディメカニクスが十分に活かせていなかった
・ご利用者の当日の体調変化(下肢筋力の低下)を把握できていなかった

【対策】
・移乗前にフットレストの上げ下げ、ブレーキ、ベッド高さの3点を指差し確認する
・ご利用者の残存機能や当日の体調に応じて、二人介助やスライディングボードの活用を判断する
・移乗手順を施設内で標準化し、新人職員には先輩職員によるOJTを実施する
・ヒヤリハット報告を通じて要因分析を行い、移乗介助の研修内容に反映する

事例7【歩行器・杖を使った歩行中の転倒】

自力歩行が可能なご利用者でも、床の状態や補助具の不具合によって転倒ヒヤリハットが発生します。

【内容】
歩行器を使って食堂へ向かっていたご利用者が、廊下の段差にキャスターを取られてバランスを崩しました。介護職員がとっさに支えたため転倒は避けられましたが、数秒遅れていれば転倒していた状況でした。

【原因】
・廊下のカーペットがめくれており、キャスターの進行を妨げた
・歩行器のキャスターに髪の毛やほこりが絡まり、動きが重くなっていた
・スリッパのかかとが浅く、つま先が引っかかりやすかった
・他のご利用者とすれ違う際に動線が交錯した

【対策】
・廊下や居室の動線上にあるカーペット、コード類、段差などのハザードを定期的に点検する
・歩行器・杖のキャスターやゴム先端を月1回を目安に整備・交換する
・かかとのある滑り止め付きの室内履きへの切り替えをご家族へ提案する
・食堂への移動時間帯はスタッフが動線の混雑を調整し、接触リスクを下げる

介護現場のヒヤリハット事例【食事・嚥下介助関連】

配膳をする介護士

介護施設において、利用者の食事は日々のケアの中で非常に重要な役割を担っています。食事中の誤嚥や嚥下障害に関連する事故は、命に関わる事故にも繋がります。

これらの事故を未然に防ぐためには、利用者一人ひとりの嚥下機能を的確に評価し、適切な食事形態や介助方法を提供することが不可欠です。

事例5【食事中の誤嚥】

・内容
介護施設の利用者が食事中に誤って食べ物を飲み込み、咳き込みました。すぐに対応したため、大事には至りませんでしたが、窒息の危険がありました。

・原因
食事の形態が利用者の嚥下能力に適していなかったため、誤嚥が発生した。また、食事中の見守りが不十分であった。

・対策
利用者の嚥下機能を定期的に評価し、それに応じた食事形態を提供する。また、食事中は必ず介護スタッフが見守り、適切な食べ方を確認する。体調が悪い時など、いつもと様子が異なる場合は特に注意して見守りを行う。

事例6【入れ歯を付け忘れる】

・内容
利用者が入れ歯を付け忘れたまま食事を開始し、食べ物をしっかりと噛むことが出来ずに誤嚥の危険が生じました。幸い、スタッフが早期に気付き大事には至りませんでした。

・原因
介助スタッフが入れ歯の装着を確認せずに食事を提供したため、利用者がそのまま食事を摂ってしまった。

・対策
食事前に入れ歯の装着を確認するチェックリストを作成し、介助スタッフ全員に周知徹底する。また、利用者にも食事前に入れ歯を確認するよう促す。

介護ヒヤリハットの事例

 
以前、介護老人保健施設で働いていた際に、「入れ歯の紛失」という事例を何度も見てきました。ご利用者様が食べ残しの汁物椀に入れ歯を入れてしまったり、ティッシュペーパーに包んで居室内のゴミ箱に破棄してしまったり、その度に職員と一緒にゴミ庫を探したり…ということもありました。入れ歯は高価なものなので、破損や紛失にも十分気をつける必要があります。

事例7【熱いお茶がこぼれ、身体にかかってしまった】

・内容
利用者が熱いお茶を誤ってこぼし、腕にかかって軽い火傷を負いました。応急処置を行い、大事には至りませんでした。

・原因
利用者が安定した姿勢でお茶を飲んでいなかったため、手元がくるってこぼしてしまった。また、お茶を入れすぎたことでカップが重く、うまく持つことができなかった。

・対策
利用者が安定した姿勢で飲み物を摂取できるよう、サポートする。また、取っ手付きの安定したカップを使用し、温度を適切に調整する。高齢者は握力が弱まっている場合があるため、飲み物の量を調整し入れすぎないようにする。

介護現場のヒヤリハット事例【服薬関連】

介護施設での服薬管理

介護施設における服薬管理は、利用者の健康維持と医療の一環として非常に重要な役割を果たしています。しかし、高齢者は複数の種類の薬を飲んでいたり、服用時間が人によってことなったり、誤薬や服薬忘れなどのヒヤリハット事例が発生するリスクも高まります。

これらの事例は、利用者の体調を悪化させるだけでなく、命に関わる重大な問題となり得ます。

事例8【朝食後と夕食後の飲み間違え】

・内容
利用者が朝食後に飲む薬と夕食後に飲む薬を誤って服用しました。幸い、大きな副作用はなく、体調にも影響はありませんでした。

・原因
薬の管理が不十分で、朝食後と夕食後の薬が混在していたため、利用者が誤って服用した。

・対策
服薬カレンダーを導入し、薬の時間帯ごとに分けて管理する。また、スタッフが二重確認を行い、利用者に適切な服薬を徹底する。
薬を一包化することで、服薬が誤らないように徹底する。

事例9【利用者が隣の利用者の薬を飲もうとした】

・内容
介護施設の利用者が間違えて隣の利用者の薬を取り、飲もうとしました。スタッフが間一髪で防ぎ、被害はありませんでした。

・原因
利用者同士の薬の位置が近く、混同しやすかったこと。利用者が口に入れるまで見守らなかったこと。

・対策
各利用者ごとに明確な薬の収納場所を設け、間違いを防止する。薬の管理と配布は厳格に行い、スタッフが定期的に確認を行う体制を整える。しっかりと服薬が出来たか、口に入るまで見て、飲み込んだことを確認してから別の利用者の対応を行う。

介護現場のヒヤリハット事例【食事関連】

グループホームで食事を運ぶ介護職員

食事関連のヒヤリハットは、食事形態や食べ物の適温管理、アレルギーや禁食など様々な事例で起こります。食事関連の事故やヒヤリハットは、利用者の安全を脅かす可能性があるため、スタッフの正確な見守りと適切な対応が求められます。

事例10【食事形態の制限があるが普通食を食べそうになった】

・内容
利用者が食事形態の制限(例:嚥下障害での流動食)を忘れ、普通食を食べようとしました。幸いスタッフが気付くことが出来たので、大事には至らずにすみました。

・原因
食事制限の理解不足や、利用者自身の意識の低下が原因となった。また、厨房との連携が不足して厨房に情報が伝わっていなかった。

・対策
配膳時に食事形態が正しいかを毎回チェックする。適切なタイミングで厨房に食事箋を提出し、食事形態を書いたプレートを用意するなど、見た目でわかるような工夫を行う。

介護現場のヒヤリハット事例【移乗介助関連】

移乗介助とは、ベッドから車椅子へ、車椅子からトイレへといった、利用者の体を別の場所へ移す介助のことです。
介護現場でのヒヤリハットや事故は、この移乗介助の場面でも多く発生しています。
利用者の体格や身体機能の状態を把握し、正しい手順で行うことが大切です。

事例11【ベッドから車椅子への移乗中に転落しそうになった】

・内容
ベッドから車椅子への移乗介助中に、利用者がバランスを崩して転落しそうになりました。
スタッフが素早く支えたため転落には至りませんでしたが、一歩間違えば床への転落につながる状況でした。

・原因
車椅子のブレーキをかけ忘れたまま移乗を開始したため、車椅子が動いて不安定になった。
また、ベッドの高さが車椅子の座面と合っておらず、移乗時の段差が大きくなっていた。

・対策
移乗前に車椅子のブレーキがかかっているか、フットレストが上がっているかを必ず確認するルーティンを徹底する。
ベッドの高さを車椅子の座面に合わせてから介助を始める。
2人介助が必要な利用者については、必ず複数のスタッフで対応する体制を整える。

事例12【移乗介助後に利用者の皮膚に内出血が生じた】

・内容
移乗介助後に利用者の腕に内出血(皮下出血)が見つかりました。
移乗の際に腕を強く掴んでしまったことが原因と考えられましたが、利用者本人は痛みを訴えなかったため、発見が遅れました。

・原因
高齢者は皮膚が薄く、少しの摩擦や圧迫でも皮下出血が起きやすい状態にある。
スタッフが皮膚の状態を意識せず、通常の握り方で介助を行った。

・対策
移乗介助の際は腕を強く握らず、手のひら全体で支えるようにする。
移乗の前後に利用者の皮膚状態を確認する習慣をつける。
特に皮膚が弱い利用者については、ケアプランに皮膚保護の対応を明記し、スタッフ間で情報を共有する。

事例13【ポータブルトイレへの移乗中に前のめりになった】

・内容
ベッドサイドのポータブルトイレへ移乗しようとした際に、利用者が前のめりになりそのまま転落しそうになりました。
スタッフがとっさに体を支え、転落は防げました。

・原因
ポータブルトイレの位置がベッドから離れすぎており、移乗の距離が長くなっていた。
また、移乗を始める前に利用者の足底が床にしっかりついているかを確認していなかった。

・対策
移乗前に利用者の足底が床にしっかり接地しているかを確認する。
ポータブルトイレはベッドのすぐ横に配置し、移乗距離を最小限にする。
移乗時は利用者の重心の動きを注意深く観察しながら介助する。

事例14【移乗用リフト使用中にスリングがずれた】

・内容
重度の身体障害がある利用者のベッドから車椅子への移乗に移乗用リフトを使用した際、スリング(吊り具)の装着位置がずれており、吊り上げた後に利用者の体が不安定な状態になりました。
スタッフが気付いてすぐにベッドへ戻したため事故には至りませんでしたが、落下の危険がありました。

・原因
スリングの装着確認が1人のスタッフのみで行われ、ダブルチェックがされていなかった。
リフト操作の研修が定期的に行われておらず、スタッフによって習熟度に差があった。

・対策
リフト使用前のスリング装着確認は必ず2名以上で行い、ダブルチェックを徹底する。
リフト操作の手順をマニュアル化し、定期的な研修で技術を確認する。

介護現場のヒヤリハット事例【認知症関連】

認知症の女性

認知症のある利用者は、記憶障害や見当識障害、判断力の低下などにより、一般的な注意では予測しにくいヒヤリハットが起こりやすいという特徴があります。
認知症の症状や行動特性を理解したうえで、環境の整備や見守り体制の強化が求められます。

事例15【他の利用者の居室に入り込んだ】

・内容
認知症のある利用者が夕方の時間帯に他の利用者の居室に入り込み、居室の利用者とトラブルになりそうな状況が発生しました。
スタッフが気づいて対応しましたが、もう少し遅ければ利用者同士の転倒や衝突につながっていたかもしれません。

・原因
認知症による見当識障害で、自室の場所がわからなくなった。
夕方(夕暮れ症候群が出やすい時間帯)はスタッフが夕食準備などで手が離れやすく、見守りが手薄になっていた。

・対策
各利用者の居室ドアに本人の写真や馴染みのある目印をつけ、自室を認識しやすくする工夫を行う。
夕方の時間帯は見守りスタッフを増やすなど、帰宅願望が出やすい時間帯の体制を強化する。

事例16【食べ物以外のものを口に入れようとした(異食)】

・内容
食事中に認知症のある利用者がティッシュペーパーを食べ物と間違えて口に入れようとしました。
スタッフが気づいてすぐに止めたため、誤飲には至りませんでした。

・原因
認知症の症状により、食べられないものを食べ物と誤認する「異食行動」が起きやすい状態だった。
食事のトレイやテーブル上にティッシュなど、誤食のリスクになるものが置かれたままになっていた。

・対策
食事中はテーブルまわりから食べ物以外のものを事前に片付けておく。
認知症がある利用者の食事は、スタッフが必ず側で見守るようにする。
異食リスクのある利用者の情報はスタッフ全員で共有し、居室内の小物管理にも気を配る。

事例17【施設外に出ようとした(離設の危険)】

・内容
認知症のある利用者が「家に帰る」と言いながら玄関から施設外に出ようとしました。
スタッフが声をかけて引き留めましたが、一時的に施設の外に出てしまっていました。

・原因
帰宅願望が強く出やすい夕方の時間帯に見守りが手薄になっていた。
玄関の施錠や離設防止の仕組みが十分でなかった。

・対策
帰宅願望が出やすい夕方の時間帯のスタッフ配置を見直す。
玄関などの出入口に離設防止センサーや施錠システムを導入し、外に出ようとした際に即座に気づける環境を整える。
離設リスクの高い利用者には、GPS端末の装着も選択肢として検討する。

事例18【服薬後に薬を口の中に隠していた】

・内容
認知症のある利用者が服薬したように見えたにもかかわらず、実際には薬を口の中に隠していたことが後から発覚しました。
隠していた薬をまとめて飲もうとしていたため、過剰摂取の危険がありました。

・原因
服薬後に口の中を確認する手順が徹底されていなかった。
認知症の症状により服薬の意味が理解できず、薬を飲みたくないという気持ちがあったと考えられた。

・対策
服薬後は「お口を開けてください」と声をかけ、薬が残っていないかを必ず確認する。
飲み込みにくい場合は薬の粉砕やゼリーへの混入など、服薬方法を主治医・薬剤師と相談して変更することを検討する。

介護現場のヒヤリハット事例【夜間・就寝中関連】

夜間はスタッフの人数が少なく、1人で多くの利用者を担当しながら対応しなければならないという環境です。
また、就寝中は利用者の状態変化に気づくのが遅れやすく、重大事故につながりやすい時間帯でもあります。
夜間特有のヒヤリハット事例を把握し、対策を整えておくことが大切です。

事例19【夜間にベッドから転落しそうになった】

・内容
夜間巡回の際に、利用者がベッドの端ギリギリの位置で眠っている状態が発見されました。
あと少し動いていれば転落していた状況で、スタッフが体の位置を安全な場所へ修正しました。

・原因
就寝中に寝返りを繰り返すうちにベッドの端に寄ってしまった。
ベッドサイドレールの設置位置が不十分で、転落を防ぐ機能が果たされていなかった。

・対策
就寝前にベッドサイドレールが正しく設置されているかを確認する。
転落リスクの高い利用者にはベッドセンサーや離床センサーを設置し、動きがあった際に即座に対応できる体制を整える。
ベッドの高さをできる限り低くして、万が一転落した際の衝撃を最小限にする。

事例20【ナースコールを使えずに床に座り込んでいた】

・内容
夜間巡回時に、利用者がベッドから自力で降りようとして床に座り込んでいる状態で発見されました。
ナースコールが手の届かない場所に落ちており、長時間そのままの状態でいた可能性がありました。

・原因
ナースコールのコードが短く、就寝中の動きでコードが引っ張られナースコールが床に落ちてしまった。
夜間の巡回間隔が長く、発見が遅れた。

・対策
就寝前にナースコールが手の届く位置(枕もとや柵)に固定されているかを確認する習慣をつける。
センサーマットや離床センサーを導入し、夜間の体動や離床をすぐに察知できる体制を整える。

事例21【夜間巡回時に呼吸異常に気付いた】

・内容
夜間巡回中に利用者の呼吸音が普段と異なり、「ゴロゴロ」という喘鳴(ぜんめい)が確認されました。
すぐに看護師に連絡して対応したところ、誤嚥性肺炎の前兆であることが判明し、早期対処につながりました。

・原因
就寝中の体位が仰向けのままで、胃内容物が逆流して誤嚥が起きやすい状態になっていた。

・対策
誤嚥リスクの高い利用者は就寝時の体位に注意し、上体を少し起こした姿勢(ファウラー位)を保つようにする。
夜間巡回時のチェック項目に呼吸の状態・呼吸音を含め、普段と異なる場合はすぐに看護師へ報告するフローを徹底する。

事例22【夜間に自力でトイレに行こうとして転倒しそうになった】

・内容
夜間にトイレに行きたくなった利用者が、スタッフを呼ばずに自力で廊下を歩き始めたところ、足元がふらついて転倒しそうになりました。
たまたま近くにいたスタッフが気づいて支えたため、転倒は防ぐことができました。

・原因
利用者がスタッフを呼ぶことを「迷惑をかけてしまう」と遠慮していた。
夜間の廊下が薄暗く、足元が見えにくい状態だった。

・対策
「夜間のトイレは必ずスタッフに声をかけてほしい」ということを日頃から利用者に丁寧に伝え、遠慮なく呼べる雰囲気をつくる。
廊下の足元灯を確認し、夜間でも安全に移動できる明るさを確保する。
夜間の頻尿が多い利用者には、居室にポータブルトイレを設置することも検討する。

介護現場のヒヤリハット事例【皮膚ケア・環境・設備関連】

皮膚トラブルや施設の環境・設備に起因するヒヤリハットも、介護現場では決して少なくありません。
日常的に繰り返す介助の中で、見落とされやすいリスクが潜んでいます。
小さなサインを見逃さないよう、日々の観察と確認の習慣が重要です。

事例23【褥瘡(床ずれ)の前兆サインを見落としそうになった】

・内容
定期的な体位変換を行っていた利用者の仙骨部(お尻の骨が出っ張った部分)に、わずかな発赤(皮膚の赤み)が確認されました。
申し送りを引き継いだスタッフが気づいて報告し、早期に対処することができました。
利用者本人は痛みを訴えていなかったため、申し送りがなければ見落とされていた可能性がありました。

・原因
同じ体勢を長時間続けたことによる圧迫が原因。
高齢者は皮膚の血行が悪くなりやすく、褥瘡が進行しても痛みを感じにくい場合がある。

・対策
入浴・清拭の際に全身の皮膚状態を確認し、発赤など褥瘡の前兆を早期に把握する。
褥瘡リスクの高い利用者は体位変換の頻度を増やし、エアマットの導入も検討する。
皮膚の状態をケア記録に残し、変化があればすぐに看護師・医師へ報告するフローを整える。

事例24【屋外移動中に段差で車椅子が傾いた】

・内容
外出支援の際に歩道の段差を乗り越えようとしたところ、車椅子が大きく傾き利用者が転落しそうになりました。
スタッフが支えて転落は防げましたが、利用者は非常に怖い思いをしました。

・原因
スタッフが段差の高さを事前に確認せずに進んでしまった。
車椅子の前輪を持ち上げるティッピングレバーの操作が習熟されておらず、操作が遅れた。

・対策
屋外移動の前にルート上の段差の場所と高さを確認する。
段差を乗り越える際の車椅子操作(ティッピングレバーの使い方)を定期的な研修で確認し、習熟度を統一する。
必要に応じて2名で介助する体制を整える。

事例25【更衣介助中にファスナーで皮膚を挟んだ】

・内容
更衣介助の際に衣類のファスナーが利用者の腹部の皮膚を挟んでしまい、小さな傷ができました。
利用者は声を上げなかったため、次の介助者が発見するまで気づかれませんでした。

・原因
介助スタッフが衣類にファスナーが付いていることを確認せず、素早く着替えさせようとした。
高齢者は皮膚が薄く、わずかな摩擦でも傷つきやすいことへの意識が不十分だった。

・対策
更衣介助前に衣類にファスナーや金属パーツがないかを確認する。
介助は焦らず丁寧に行う。
ファスナーのある衣類は避け、マジックテープや紐タイプの衣類を選ぶよう家族へ協力を依頼することも有効。

ヒヤリハット報告書の書き方・記入例

ヒヤリハット事例を施設全体の安全対策に活かすためには、報告書に正確かつ具体的な情報を記録し、スタッフ間で共有することが欠かせません。
ここでは、報告書に書くべき項目と記入のポイントを解説します。

報告書に書くべき6つの項目(5W1H)

ヒヤリハット報告書には、以下の5W1Hを意識して記載することが基本です。

項目 記載内容 記入のポイント
いつ(When) 発生した日時 日付・時間帯(例:食事介助中、夜間巡回時)まで具体的に記載する
どこで(Where) 発生した場所 居室番号・フロア・トイレ・浴室など場所を特定して記載する
誰が(Who) 関係者(利用者・スタッフ) 利用者の状態(認知症の有無・ADLなど)も補足すると対策を考えやすい
何を(What) 起きた出来事・状況 起きた事実を客観的に書く。感情的な表現は避ける
なぜ(Why) 発生した原因・背景 個人の「不注意」で終わらせず、環境・手順・体制など構造的な原因を探る
どのように(How) その後の対応・対策 その場の対応だけでなく、再発防止のための対策まで記載する

報告書の記入例

以下は転倒・転落のヒヤリハット事例を報告書に記載した場合の例文です。

発生日時:○○年○月○日(月) 14時30分ごろ

発生場所:2階 トイレ(102号室隣)

関係者:利用者 ○○様(80代・女性)/担当スタッフ ○○

内容(何が起きたか):
排泄介助中に尿取りパッドを取りにその場を離れたところ、利用者が立ち上がろうとして便座から転落しそうになった。
すぐに駆け寄り体を支えたため転落には至らなかった。利用者の体調に変化はなし。

原因(なぜ起きたか):
介助中に目を離してしまった。尿取りパッドを事前にトイレへ持参しておらず、その場を離れる必要があった。
また、トイレ内の手すりの位置が利用者の立ち上がりに合っていなかった。

対応・再発防止策:
今後は排泄介助前に必要な物品をすべてトイレに持参し、利用者のそばを離れないようにする。
手すりの設置位置については施設長へ報告し、環境改善を検討する。

報告書を書くうえで大切なこと

ヒヤリハット報告書を書くうえで、特に意識してほしいポイントが2つあります。

1つ目は、「個人の責任追及にならないよう書く」ことです。
報告書は誰かを責めるためのものではなく、施設全体の安全を高めるための情報として活用するものです。
事実を客観的に記録し、原因を「環境・手順・体制」の視点から探ることが重要です。

2つ目は、「書いて終わりにしない」ことです。
報告書を提出したあと、情報が上司の手元にとどまったままでは再発防止につながりません。
回覧・掲示・介護システムでの共有など、スタッフ全員が内容を確認できる仕組みをつくることが大切です。

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介護現場でヒヤリハットを放置するリスク

介護現場でヒヤリハットを放置することは、更に大きな事故に繋がる可能性があります。例えば、利用者が転倒して重篤な怪我を負う、誤嚥によって窒息の危険が生じる、または薬の誤服用が健康に悪影響を与えるなどの事態が起こり得ます。

これらのヒヤリハットが放置されると、利用者の安全や健康に直接影響を及ぼすだけでなく、施設の信頼性や運営の質にも大きな影響を与えかねません。

介護事故を防止するためにもヒヤリハット報告の有効活用を

介護事故を防止するためには、ヒヤリハット報告の有効活用が不可欠です。ヒヤリハット報告は、日常の業務遂行中に気付かれたリスクや問題点を記録し、共有することで、将来の事故やトラブルを予防する役割を果たします。

これにより、スタッフ間での情報共有が促進され、安全対策が効果的に実施されると同時に、組織全体の意識向上にもつながります。

ヒヤリハット報告は、安全な介護環境を維持するための重要なツールであり、積極的に活用されることが重要です。施設によってどの基準がヒヤリハットで、どの基準が事故報告になるのか異なることもあります。

大切なのは、ヒヤリハットや事故報告は職員のミスとして片付けることなく、大切な情報として取り扱うことです。そして、ヒヤリハットを出すことを面倒なことと思わず、しっかりと提出してもらうことも大切です。

特に、ヒヤリハットを書いて上司に提出して終わりにしてしまっては、各スタッフに共有されませんので、常に目を通せるように回覧したり綴って誰でも読めるようにしたり、介護システムで共有してみんながみられるようにするなどの工夫も必要です。

自分たちの身を守るための記録の重要性

最近では、介護施設での事故により施設が訴訟に巻き込まれるケースが増加しています。現実的には限られた人員の中で最善を尽くしても、事故を完全にゼロにすることは現実的に難しいと言わざるを得ません。

しかし、家族からすれば、介護のプロに任せているのに事故が起こることに納得がいかない面もあるでしょう。特に最近では、感染症の拡大により面会が制限されている施設があり、家族は利用者の具体的な状態を把握しづらくなっています。

遠方に住む家族などは、まれにしか面会に来ないため、利用者の健康状態の変化に気付きにくいこともあります。その結果、以前の元気な姿をイメージしてしまうこともありますが、そうした状況で事故が発生し、施設が家族から訴えられるケースも起こり得ます。

そのような場合、施設や職員自身を守るためにも、適切な記録が重要です。日々の業務でヒヤリハットが発生している利用者は、事故の危険性も含んでいます。その際に、普段の記録があれば、客観的な事実として家族にも伝えることができます。

私自身も以前、勤務していた介護老人保健施設に入所中の高齢者が転倒して骨折し、家族から訴えられた経験があります。普段から頻繁に面会に来ていた家族は、利用者の健康状態を理解しており、事故について訴えることはありませんでしたが、遠方の親戚からは慰謝料を求める連絡がありました。

その際には、すべての介護記録を証拠として提出しました。ヒヤリハットや介護記録は、自己防衛のためにも、しっかりと残すべきであると強く感じました。

介護現場のヒヤリハットに関するよくある質問

Q1:ヒヤリハットと介護事故の違いは何ですか?

A: ヒヤリハットは事故には至らなかったものの、一歩間違えば重大な事故につながっていた出来事を指します。一方、介護事故は実際に被害や怪我が発生した出来事です。たとえば、ご利用者が椅子から立ち上がろうとしてバランスを崩し、近くにいた職員が支えて転倒を防げた場合はヒヤリハット、支えられず転倒して打撲を負った場合は介護事故となります。ヒヤリハットは未然防止の手がかり、介護事故は発生後の対応と再発防止の対象という位置づけです。

Q2:介護現場で最も多いヒヤリハットは何ですか?

A: 介護現場で最も多いのは転倒・転落に関するヒヤリハットです。公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、介護事故の約65.6%が転倒・転落によるものとされています。次いで多いのが誤嚥・誤飲・むせ込みで、全体の約13%を占めます。高齢者は足腰の筋力低下や視力低下、認知症状などから、トイレ・浴室・居室などの日常生活動作のなかで転倒が起こりやすい傾向があります。
(参照:介護サービスの利用に係る事故の防止に関する調査研究事業|公益財団法人介護労働安定センター

Q3:ヒヤリハット報告書は月に何件書けばいいですか?

A: 明確な基準はありませんが、ハインリッヒの法則では1件の重大事故の背後に29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがあるとされています。この法則に基づけば、ヒヤリハットが多く報告されている施設ほど事故予防の網が細かく張れているといえます。件数を競うのではなく、「ヒヤリとした」「ハッとした」と感じた場面を気軽に共有できる職場の雰囲気づくりが重要です。報告書は簡易な形式で構わないため、まずは一件でも多く記録することを優先しましょう。

まとめ

ヒヤリハットは、日常の業務で発生する潜在的な危険や問題点を早期に把握し、それに基づいて安全対策を実施するための重要な手段です。これにより、利用者の安全を確保すると同時に、施設の信頼性と介護の質を向上させることが可能です。

積極的にヒヤリハットを報告・分析し、その結果をもとに教育や改善を行うことが、介護事故の未然防止につながると言えます。また、積極的にヒヤリハットを提出させるためには、管理者の意識も重要になります。

ヒヤリハット事例を施設内、職員間でしっかりと共有し対策を行うことによって、よりよい施設運営に繋がっていくことが一番の理想ではないでしょうか。そうした施設の文化を作っていくことも、管理者の大切な役割といえるでしょう。

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この記事の執筆者伊藤

所有資格:社会福祉施設長認定講習終了・福祉用具専門相談員・介護事務管理士

20年以上、介護・医療系の事務に従事。
デイサービス施設長や介護老人施設事務長、特別養護老人ホーム施設長を経験し独立。
現在は複数の介護事業所の経営/運営支援をしている。

 
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