皆さんの職場では、介護記録はコンピューターで行っていますか?
スマホやタブレット、インカムなどのICT機器の導入はありますか?
他の業界では、特にコロナ以降、電子マネーによるキャッシュレス、ビデオオンライン会議、スマホやタブレットを使用したWEB上での情報共有などIT化が急速に進みました。
介護業界はというと・・・ビデオ通話による利用者さんとご家族の面会が行われるようになりました。しかし、それ以外の職員の業務のIT化は、他の業界に比べてなぜかあまり進んでいないのが現状です。
そこで今回の記事は、
・なぜ介護業界ではIT化が進まないのか?
・今後IT化しないと、どんな影響があるのか?
をテーマに解説しています。
ITの力を取り入れることで、職員の業務も効率よく、負担なく出来るようになり、質の高いサービスを利用者さんに提供できるようになります。
介護現場のIT化を進めていくためのポイントについても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
介護業界でIT化・ICT機器導入が進まない3つの理由
介護現場でのIT化、いろいろなメリットがあると言われていますが、なぜ介護業界でIT化・ICT機器導入が進まないのでしょうか?大きく3つの理由が考えられます。
・導入費・維持費の問題
・ITスキルのある人材が少ない
・介護職員の教育が大変
介護現場のスタッフがICT機器を使いこなすためには、きちんとした教育やトレーニングが必要ですが、そのための時間が日々の業務に忙しく確保できないことも多いでしょう。また、職員を研修・教育できる人材が介護業界にいない(非常に少ない)という問題も大きいです。さらには費用面の負担もあります。
介護業界がIT化を進めるためには、これらの課題を解決する必要があります。それでは3つの課題と解決するポイントをそれぞれ詳しくみていきましょう。
導入費用・維持費の問題
介護現場におけるIT化は、効率化やサービス向上に大きな期待が寄せられていますが、導入費用や維持費の問題がハードルとなっています。
特にICT機器の導入には高額な初期費用、購入費用が発生して負担が大きいです。導入費用は、新しいシステムや機器を導入する際にかかる初期費用です。
・Wi-Fiなどネット環境
・タブレット
・パソコン
・システム導入費用 等
介護施設や事業所では、年度予算の制約があるため、これらの費用を捻出するのが難しい場合があります。さらに、導入後の維持費用も忘れてはなりません。
維持費用とは導入後もICT機器やシステムを管理するための定期的に発生する費用です。
・システムや機器のメンテナンスやアップデート
・トラブル対応
介護業界がIT化を進めるには、初期費用と維持費用、これら2つの費用面の問題も考慮して行っていく必要があります。当然、機器が壊れたりした場合には修理費用、場合によっては再度購入し直す費用なども発生することが考えられます。
導入費用の面では、自治体や関連団体が補助金や助成金を提供している場合もあります。これらの制度を活用することで、導入費用の負担を軽減することができます。
費用の問題は大きな課題ですが、計画的な資金調達や助成金の活用により、IT化が介護現場にもたらす効果を最大限に引き出すことができます。
・IT導入補助金とICT導入補助金の違いについて|介護事業で使える補助金
介護事業所を経営していく中で、IT機器やICT機器導入を検討している場合、補助金を活用する方法もおすすめです。介護事業で使える補助金について解説しています。
ITスキルがある人材が少ない
ITの導入には、介護職員に対してのITに関する研修や教育の充実が大切です。しかし研修を行えるITの知識や技術を持つ人材がいない事がほとんどの介護現場の現状です。
また介護職員の高齢化により、馴染みのないICT機器を使用する事に抵抗があり、導入に反対する意見もあるでしょう。職員のIT導入への研修体制や、サポート出来る人材育成がとても重要となります。
筆者が以前勤務していた施設では法人全体の電子カルテ導入に伴い、職員の研修やソフトのアップデートなど、ITに強い人材を確保する為に、提携する介護ソフト関連会社の社員をヘッドハンティングし、雇用しました。
介護業界がIT化を進めるには、新たにIT知識や技術のある人材を雇用する、または長期的にITに強い人材を育成する必要があります。
介護職員の教育が大変
介護系の専門学校では、主に排泄介助・食事介助など介護技術や認知症などの病気について、知識を身につけるためのカリキュラムが組まれています。しかし、介護福祉士の国家試験においてITの知識や技術が問われることはありません。
実務経験を積み介護福祉士や、介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の資格を取得し勤務する職員も同様で、過去の職歴や個人の趣味でICT機器に馴染みがない限りは、ICT機器に知識や技術があり、使いこなせる人材が介護業界には少ないのが現実です。
そのため、ITの知識やICT機器の使い方は、現場である介護事業所・施設の教育に任せられます。しかし新しい技術やシステムを理解し、使いこなすためには時間と労力が必要です。
介護現場の忙しさやスタッフの人手不足などの課題もあります。事業所・施設では、効果的な教育プログラムや研修体制を整える必要があります。
介護業界でIT化が必要な理由
介護業界でのIT化が必要な理由は大きく3つあります。
・業務効率化のため
・人手不足への対策
・質の高い介護サービスを提供するため
それぞれ、詳しくみていきましょう。
業務効率化のため
従来の介護業務は多岐にわたり、手作業や紙ベースのデータ管理が主流でした。現在でも電子カルテを導入していない介護施設では、介護記録の手書きに多くの時間を割いているのではないでしょうか?
これは効率が悪く、時間や労力を要します。
IT化により、デジタル化されたデータ管理システムを導入することで、業務の効率化が図れます。例えば、事前に申し送り内容を職員がタブレットで確認しておくことで、申し送り時間を短縮することが可能です。
利用者の服薬の管理もデジタル化することで、ヒューマンエラーによるミスを減らすことができます。ヒューマンエラーによる事故やヒヤリハットを防止できることで介護職員の精神的な負担の軽減にもつながります。
また勤務表作成のソフトを使用すれば、管理職の毎月のシフト作成業務の負担軽減を行うことができます。
・介護シフト管理 作成ソフト・アプリ10選!料金やメリットを紹介
シフト作成にかかる負担を減らしたいのなら、介護施設のシフト作成に特化したソフトやアプリの導入がおすすめです。
本格化する人手不足へ対策するため
介護業界での人手不足が深刻化しています。
2022年の厚労省の広報誌によると2040年には、介護職員が280万人必要と予想されています。特に若手層の人材確保が課題となっています。若年層は幼い頃からデジタルに馴染みがあり、ITを活用した効率的な業務環境を求める傾向があります。
要は、若手介護人材から働く職場として選ばれるために、介護現場のIT化が必要だということです。
IT化によって、業務の効率化や作業負担の軽減が図れれば、労働環境が改善され、若年層の介護職への就業意欲を高めることが期待されます。
また介護ロボットや自動化されたシステムの導入によって、介護現場での業務負担を軽減し、職員の負担を減らすことや、遠隔医療や請求業務などの事務作業はテレワークにするなどのITの導入によって、地域間の人材の活用や効率的な業務が可能となります。
質の高い介護サービスを提供するため
ITを活用することで、より質の高い介護サービスの個別対応が可能となります。
例えば独居の利用者に対しての、電気・水道の使用状況や、カメラやセンサーによる見守り体調管理など、デジタル化されたシステムを導入することで、利用者の健康状態や日々の状況をリアルタイムで把握することができます。そのため、必要時に利用者宅に訪問するなど、適切なケアプランを提供することができます。
また介護職員のコミュニケーションもタブレットやスマホによる情報共有システムを導入することで、連携や情報共有がスムーズに行う事が出来ます。
利用者家族への連絡共有もアプリやICT機器を使用すれば、迅速に行うことができます。忙しい業務の中、家族への電話連絡は職員の大きな負担になります。
これらの職員の業務軽減、ストレス軽減もIT化により実現することが可能です。
介護現場でIT化が進まないとどうなる?
介護業界でIT化が進まないと2つの問題が起こる可能性があります。
・若い職員が活躍しにくい
・加算が取れなくなる
それぞれ詳しく解説します。
介護職員から選ばれない職場になる可能性
近年、ITスキルを持った人材が求められる職場が増えています。IT化が進まない職場では、若い世代の介護職員が活躍しにくくなり、人材確保の難しさが増します。
平成24年度の『介護労働実態調査報告書』より、訪問介護に従事する介護職員(ホームヘルパーやサービス提供責任者)のうち、20代はわずか4.4%おらず、60歳以上が全体の30.2%と約3割に上っています。
施設職員は在宅介護と比較し、まだ20代が全体の23.6%、30代が22.5%と従事率は高いですが、今後の若い職員の人材確保のためにも、IT化は必須と言えるでしょう。
加算が取れなくなる可能性がある
介護業界でのIT化が進まないと、加算が取れなくなる可能性があります。介護報酬には、特定の条件を満たすことで加算される項目がありますが、その多くがIT化に関連しています。
出典:厚労省『介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き Ver.2』
上記の表は令和3年度の介護報酬改定の概要です。赤線で囲ってある部分がICT機器の導入によって加算が行われる項目です。
加算は介護事業者にとって重要な収益源の一つであり、それが取れなくなることは経営に大きな影響を及ぼします。
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介護現場のIT化を進めていくためには
介護現場のIT化を進めるための5つのポイントです。
・職員のITスキル向上
・ICT導入補助金の利用
・システム機器の選定
・導入スケジュールの作成
・ITに強い人材の確保 長期的な目線での人材育成
それでは詳しくみていきましょう。
職員のITスキル向上
IT化が進む中で、職員が新しいシステムや機器を適切に扱い、活用するための教育が必要です。定期的な研修やサポート体制の充実を行いましょう。
ICT導入補助金の利用
資金不足であれば、『地域医療介護総合確保基金』のICT導入補助金を利用しましょう。
システムや機器の選定
介護現場に最適なITシステムや機器を選定するためには、現場のニーズや要望をしっかりと把握します。せっかく導入しても現場職員から「使えない」とそっぽを向かれては元も子もありません。導入にあたっては専門家のアドバイスを受けることも大切です。
コストや導入のスケジュール
導入費用や維持費用を含めた費用対効果をしっかりと検討し、予算やスケジュールを立てます。
ITに強い人材の確保
ITに強い人材がいないのであれば、長期目線で教育をします。思い切って採用に動くなど、柔軟な人材戦略を展開することが必要です。
介護現場のIT化を進めるためには、これらの5つのポイントをしっかりと押さえて計画を立て、実行していくことが重要です。
まとめ 介護現場のIT化に向けて
介護現場のIT化は、業務効率化や質の向上に大きな効果をもたらします。
介護現場で働く職員にとっても日々の業務の負担を減らすことができるようになり、利用者ひとりひとりとゆっくり向き合いケアを行う時間を増やすことができます。
職員にとって働きやすく、利用者と接する時間が増えることで、より働きがいのある満足度の高い職場環境になるでしょう。そして利用者も今より安全でより質の高いサービスを受けることができます。
介護業界のIT化は、利用者、職員、事業所の三者にとって多くのメリットがあります。介護現場の未来を見据え、早期のIT化を目指していきましょう。
今回の記事が、少しでも皆様の職場のIT化の参考になれば幸いです。
この記事の執筆者 | みずほ 保有資格:社会福祉士 介護支援専門員 介護福祉士 特別養護養護老人ホームに介護福祉士、相談員として10年、社会福祉協議会にて介護保険認定調査員として5年勤務、介護業界で仕事をしてきました。 現在は介護・福祉系ライターとしても活動中。 |
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