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口腔衛生管理加算とは?算定要件、単位数、対象サービスなどまとめ

口腔衛生管理加算、口腔衛生管理の重要性

今回は、施設系サービスにて利用者の口腔衛生状態について歯科医師や歯科衛生士と連携し管理を行っていく「口腔衛生管理加算」について紹介します。
 
高齢者は老化に伴う筋力の低下によって、硬い食べ物を噛むことは難しくなることや、活動・運動量が少なくなることで食欲が湧き難くなるなどの変化に繋がり、その人が喫食される食事の量の減少や栄養の不足に繋がることが懸念されています。
 
高齢者ご自身の活動量が減少していくと、日常生活動作(ADL)をご自身で行うことも難しくなっていき、その中の一つである歯磨きや義歯の管理など口腔衛生に関する管理も困難となる動作の一つとして挙げられます。
 
口腔内の衛生状態が管理できなくなると、不衛生な状態から歯周病などの疾患が発生しやすくなり、また食後の食べ残しが口腔内に残っていると、それが誤嚥に繋がることで誤嚥性肺炎のリスクも高まってしまいます。
 
そのため高齢者施設などでは、誤嚥性肺炎などの予防を図り、口腔衛生状態を維持していくために、ご自身で口腔ケアが行い難いご利用者に対して、歯科医師や歯科衛生士と連携・協働し口腔衛生管理を行っていく必要性が高まっています。

口腔衛生管理加算とは

口腔衛生管理加算とは、

歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が施設の利用者に対して口腔衛生の管理を行い、入所者についての口腔内の清掃等の支援について、介護職員へ具体的な技術的助言や指導を行った場合に算定できる加算

となります。

口腔衛生管理加算の目的と背景

介護領域において、自立支援・重度化防止を効果的に行うための取組の連携として、「リハビリテーション・栄養・口腔」の一体的な取組の運用が挙げられています。

口腔管理による効果として、要介護高齢者に対する歯科医師又は歯科衛生士による口腔の管理により、肺炎の発症率が下がることが示されています。

しかし、令和元年度老人保健事業にて行われた「介護保健施設等における口腔の健康管理等に関する調査研究」では、介護保健施設において利用者の歯科受診について、定期的な受診を行っている利用者は11.4%にとどまり、入所後に1度も歯科受診の経験がない利用者は約3割となっていました。

介護施設において、歯科医師・歯科衛生士との連携や介入の必要性は高まっており、加えて、できるだけ多職種も理解できるスクリーニング評価や支援方法の共有、早期に専門職に繋がる仕組みも検討されています。

施設系サービスにおいては、口腔衛生管理体制を確保し、状態に応じた丁寧な口腔衛生管理を更に充実させるため、以前より行われていた口腔衛生管理体制加算を廃止し、同加算の算定要件の取組を一定緩和した上で、基本サービスとして、口腔衛生の管理体制を整備し、入所者ごとの状態に応じた口腔衛生の管理を行うことが求められるようになりました。

併せて、口腔衛生管理に関する加算の見直しを行い、LIFEを活用したPDCAサイクルの推進を図るために口腔衛生管理加算(Ⅱ)となる上位区分が令和3年度介護報酬改定にて新設されることとなりました。

口腔衛生管理加算 介護報酬改定の流れ

2021年度の介護報酬改定において、口腔衛生管理の強化を促進する観点から「口腔衛生管理体制加算」を基本サービスに組み込むこととし、「口腔衛生管理加算」に新たな評価区分が設けられました。「口腔衛生管理加算」が「口腔衛生管理加算(Ⅰ)に、「口腔衛生管理加算(Ⅱ)」が新設されています。2024年の介護報酬改定では特に大きな変更はありませんでした。

口腔衛生管理は令和3年度からの3年間の努力義務という経過措置を経て、令和6年4月から全面的に義務化されました。対象サービスは、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院です。

口腔衛生管理加算の対象サービス

口腔衛生管理加算の対象サービスは以下の通りです。

・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設(一部除く)
・介護医療院

口腔衛生管理加算の単位数

口腔衛生管理加算の単位数は以下の通りです。

口腔衛生管理加算(Ⅰ):90単位/月
口腔衛生管理加算(Ⅱ):110単位/月

※口腔衛生管理加算は、医療保険において歯科訪問診療科が算定された日の属する月であっても算定できるが、訪問歯科衛生指導料が算定された日の属する月においては、訪問歯科衛生指導料が3回以上算定された場合には算定できない、とされており算定に際して注意が必要です。

口腔衛生管理加算の算定要件

口腔衛生管理加算の算定要件は以下の通りです。

口腔衛生管理加算(Ⅰ)の単位数・算定要件

口腔衛生管理加算(Ⅰ)の算定には、以下の基準のいずれにも適合することとされています。

(1)歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言及び指導に基づき、入所者の口腔 衛生等の管理に係る計画が作成されていること。
(2)歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者に対し、口腔衛生等の管理を月二回以上行うこと。
(3)歯科衛生士が、(1)における入所者に係る口腔衛生等の管理について、介護職員に対し、具体的な 技術的助言及び指導を行うこと。
(4)歯科衛生士が、(1)における入所者の口腔に関する介護職員からの相談等に必要に応じ対応すること。
(5)通所介護費等算定方法第十号、第十二号、第十三号及び第十五号に規定する基準のいずれにも 該当しないこと。

口腔衛生管理加算(Ⅱ)の単位数・算定要件

口腔衛生管理加算(Ⅱ)の算定には、以下の基準のいずれにも適合することとされています。

(1)上記の口腔衛生管理加算(Ⅰ)の(1)から(5)のいずれにも適合すること。
(2)入所者ごとの口腔衛生等の管理に係る情報を厚生労働省に提出し、口腔衛生の管理の実施に当たって、 当該情報その他口腔衛生の管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。

高齢者の口腔ケアの重要性

令和元年度に行われた老人保健健康増進事業の「介護保健施設等における口腔の健康管理等に関する調査研究事業報告書」にて、介護施設において、歯科専門職による口腔衛生管理を実施した利用者と比較して、口腔衛生管理が必要であるが実施できていなかった利用者を比較すると、肺炎の発症が高い結果となりました。

また、口腔衛生管理が必要な利用者で口腔衛生管理が行われなかった場合、1年間の肺炎の発症は、歯科専門職による歯科衛生管理が行われた場合と比較して3.9倍であったことが分かりました。

介護保険施設入所者の肺炎発症に対する口腔衛生管理加算の効果

参考資料:令和3年度介護報酬改定に向けて(自立支援・重度化防止の推進) P.84

介護保険施設の利用者の61.8%に歯科専門職による口腔衛生管理が必要とされており、口腔衛生管理が必要な利用者で口腔衛生管理が行われなかった場合、1年後に体重(BMI)減少がみられるリスクは、歯科専門職による口腔衛生管理が行われた場合と比較して2.2倍であったことも報告されています。

介護保険施設入所者の体重減少に対する口腔衛生管理加算の効果

参考資料:令和3年度介護報酬改定に向けて(自立支援・重度化防止の推進) P.83

もちろん口腔ケアは利用者自身の口の中の清潔を保つことや、歯周病など口や歯の病気から予防することなど、口腔機能を維持していくために重要となります。加えて、これらの報告から、施設サービスにおける口腔衛生管理を行うことで、誤嚥による肺炎や、体重(BMI)の低下などのリスクの予防に繋がることが示されています。

口腔衛生管理加算の課題

口腔衛生管理加算は、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が利用者の口腔内の清掃等の支援について、介護職員へ具体的な技術的助言や指導を行った場合に算定できます。そのため、施設職員としてはただ単に歯科衛生士に介入してもらえばよいというだけではありません。

施設の職員は歯科衛生士から受けた助言をしっかりと理解し、日頃の口腔ケアに繋げていかなければなりません。歯科衛生士から受けた指導の内容を、職員間で共有するための方法を工夫することや、LIFEからのフィードバックデータを活用しながら、口腔衛生管理に取り組んでいく必要があります。

まとめ

令和3年度の介護報酬改定では、施設系サービスを対象に口腔衛生管理体制加算を廃止し、基本サービスに組み込むこととなりました。また、口腔衛生管理体制加算の廃止に伴い、口腔衛生管理加算の上位区分としてLIFEに情報提供しフィードバックデータを活用することを要件とした口腔衛生管理加算(Ⅱ)が新設されました。

令和6年度介護報酬改定では、介護保健施設において、事業所の職員による適切な口腔管理等の実施と、歯科専門職による適切な口腔管理につなげる観点から、事業者に利用者の入所時及び入所後の定期的な口腔衛生状態・口腔機能の評価の実施が義務付けられています。

そういった流れからも、施設系サービスにおける口腔衛生管理の重要性は高まってきていることがわかります。施設では、歯科医師や歯科衛生士の専門職と連携・協働して、利用者の口腔衛生状態の維持や誤嚥性肺炎や体重(BMI)の低下などのリスクの予防に努めなければなりません。

高齢者施設において、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組は必須の内容となっており、全ての取組を通してリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養それぞれが相互的に作用することで、自立支援・重度化防止に向けた取組となり得るでしょう。

この記事の執筆者こまさん

所有資格:作業療法士

経歴:作業療法士として医療分野では病院でのリハビリテーション業務に従事、介護分野では訪問リハビリテーション事業所を経て、現在は特別養護老人ホームの機能訓練指導員として従事。

入居者へ多職種で行う機能訓練の提供や、介護士への介護技術指導、LIFEや介護報酬改定に関わる業務などを担っている。

 
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