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サイコロジカル・ディタッチメントの重要性:オフには仕事から物理的にも心理的にも離れること

サイコロジカル・ディタッチメント

前回の記事では休む力という意味での私の造語「レスタビリティ」について労働者の疲労回復3原則という視点からご紹介してきました。
 
今回はレスタビリティの概念の中でも重要なサイコロジカル・ディタッチメントという考え方を中心に解説していきます。
 
サイコロジカル・ディタッチメントは、働く人々の疲労回復、ストレスの解消においてとても重要な概念です。
 
前回記事はこちら:レスタビリティを高めよう:労働者の疲労回復3原則

眠る前のスマホは良い、悪い?

次の場面を想像してみて下さい。

ベッドに入って寝ようとしている時に何気なくスマホを弄っていたら、上司からの厄介な案件の連絡LINEを見てしまいました。読者の皆さんはどう思われますか?

おそらく、嫌な気持ちになったのではないでしょうか?

そして更に質問です。こういう状況で読者の皆さんはぐっすり眠ることができますか?

その答えは、一部の肝の据わった方を除いて、大半の方は「NO」と回答するのではないでしょうか?

オフには心理的にも仕事の拘束から離れることが重要

では、その心理的な状態について科学的な見地から解説いたします。

図1をご覧ください。こちらは実験室に被験者の方に来ていただいて睡眠脳波と翌日への不安度を測定した結果です。

・横軸:次の日への不安度

・縦軸:睡眠脳波を測定した時の深い睡眠の出現量

をプロットしています。

数十名のデータを集めてきて散布図を描いた場合、負の相関関係が浮かび上がってきました。

つまり、次の日への不安度が高い、つまり、寝る前に仕事から心理的に離れられていなければいないほど、疲労回復に重要な深い睡眠が少なくなるという関係性です。

翌日の仕事への不安度と深い睡眠の関係
図1.翌日の仕事への不安度と深い睡眠の関係

サイコロジカル・ディタッチメントとは?

そこで、情報通信機器の発達によっていつでもどこでも仕事につながりやすい現代社会では、働く人々の疲労回復、ストレスの解消において、オフには仕事から物理的に離れるだけではなく、心理的にも離れることの重要性が指摘されています。

これをオフでは心理的に仕事から離れるという意味でサイコロジカル・ディタッチメントと呼びます。ドイツの産業保健心理学者であるサビーネ・ソネンターグ教授らが提唱した概念です。

余暇の過ごし方別にみた回復効果を示した結果

また、次の図2は余暇の過ごし方別にみた回復効果を示した結果です。

余暇の過ごし方別にみた回復効果を示した結果
図2.余暇の過ごし方の違いによる回復効果

この結果では回復効果が高いのは、

1.アウトドアでのエクササイズ

2.自然環境でのレジャー

3.リラックスする活動

4.誰かと会う等の社会的な活動

でした。

いずれの活動もサイコロジカル・ディタッチメントが出来るような素地を持った過ごし方として考えられます。

とくに、山や海などの自然環境に身を置くことは自ずと仕事からディタッチできやすくなるのでおススメです。

一方で一番、回復効果が低い過ごし方と言えば「仕事関連の活動」になります。

当然と言えば当然なのですが、オンとオフのメリハリのない過ごし方は改めて、日々の疲労やストレスの回復という点でも望ましくないことがここから分かるでしょう。

ディタッチの効果

では、ディタッチすることの大切さを更に示すデータとして図3の調査結果をご紹介します。

こちらは仕事の要求度の高低、つまり忙しい時とそうではない時で1年後の心身の訴えやワークエンゲージメント(仕事に対してポジティブで充実した心理状態)に対してディタッチがどう影響していたかを検討した調査結果です。

仕事の要求度とサイコロジカル・ディタッチメントの関係
図3.仕事の要求度とサイコロジカル・ディタッチメントの関係

ディタッチが低い、つまり出来ていない人たちとディタッチが高い、出来ている人たちでは、仕事の要求度が低い(忙しくない)時ではあまり心身の訴えやエンゲージメントに差はないのですが、これが要求度が高い(忙しい)時では変わってきます。

赤枠で囲った部分をご覧ください。そうすると、ディタッチが出来ていない人たちでは1年後、心身の訴えの増加やエンゲージメントの低下がみられるのに対して、、ディタッチが出来ている人たちでは、それらの悪影響がセーブされていることが図から読み取ることができます。

つまり、自分が忙しい状況においてもオンとオフのメリハリをつけて過ごすことは有効であることが示唆されます。

ただし、このデータから直接は分かりませんが、忙しい時のディタッチの効果も程度の問題だと著者は捉えています。

日常生活の中で忙しい時期は誰もが経験することだと思いますが、忙しすぎる状態が長期にわたった場合を考えると、このディタッチの効果も薄れてしまうので、やはり、そもそも長時間労働や過重労働は避けるべきでしょう。

ディタッチをするための秘訣

では、次に効果的なディタッチの仕方について解説したいと思います。

効果的なディタッチの仕方

ディタッチには上の図が示すように、少なくとも3種類あるとされています。

・身体的なディタッチは身体的な負荷から離れること

・認知的なディタッチは頭脳を使うようなことから離れること

・情動的なディタッチは気を遣うようなこと

から離れることとされています。

そこでディタッチをするための秘訣は「自分が仕事で使う能力とは反対のことをする」です。

つまり、精神的な能力を多く使うような仕事ではオフでは意識的に身体を使うような過ごし方をしたり、身体的な能力を仕事で多く使う場合はオフでは精神的な活動をするような過ごし方をするといった具合です。

まとめ

以上、サイコロジカル・ディタッチメントの研究から、その重要性についてご紹介してきました。

現代社会ではいつでもどこでも仕事に簡単につながることができます。新幹線の中でも飛行機でも、寝室でも仕事に簡単にアクセスできるようになっています。

海外では「つながらない権利」としてオフには仕事からの連絡を規制する法律がヨーロッパ諸国を中心に次々と法制化されています。

この動きは、本来、オフを大事にするヨーロッパ諸国の人々でも法律という盾がないと、もしかしたら自分たちのオフを仕事からの侵食から守れなくなってきていることを示しているのかもしれません。

読者の皆さんもオフには思い切って仕事からディタッチできるように心がけてみてはどうでしょうか?
 

全3回記事

第1回記事:レスタビリティを高めよう:労働者の疲労回復3原則
 
第2回記事:サイコロジカル・ディタッチメントの重要性:オフには仕事から物理的にも心理的にも離れること
 
第3回記事:「交代勤務の疲労マネジメント」は10月下旬 更新予定です

 

この記事の執筆者
JNIOSH 久保先生
久保 智英

【略歴】
2003年3月 中央大学文学研究科心理学専攻にて修士(心理学)、2007年10月 名古屋市立大学医学研究科にて博士(医学)を取得。2008年4月 (独) 労働安全衛生総合研究所に任期付研究員として着任。2017年4月より上席研究員。2011年2月 フィンランド労働衛生研究所にて客員研究員。2020年4月より Journal of Occupational Health / 産業衛生学雑誌のField Editor(人間工学領域)。 2022年10月から日本産業衛生学会の代議員、2024年4月からWorking Time SocietyのBoard Member(理事)。

労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年版)の見直し関する検討委員会に参画。専門は産業保健心理学、睡眠衛生学、労働科学。

現在は勤務間インターバル、つながらない権利、夜勤・交代勤務対策や自主対応型の疲労対策としての職場の疲労カウンセリングの研究に従事。

 
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