生活機能向上連携加算は、入所施設や通所施設、訪問介護事業所などで算定できる加算です。要介護者の自立支援や重度化防止を目的として、現在もさまざまな介護施設や事業所が算定しています。
生活機能向上連携加算を取得することは、介護施設の収益アップにつながります。そのため、「生活機能向上連携加算の対象施設や算定要件を知りたい」「2024年度の介護報酬改定で何か変更はある?」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、生活機能向上連携加算を算定する上で重要なポイントをまとめました。生活機能向上連携加算の対象施設や算定要件を具体的に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
生活機能向上連携加算の概要と目的
生活機能向上連携加算は、介護施設が外部のリハビリテーション専門職や医師と連携して介護計画書を作成することで算定できます。
リハビリ専門職や医師と介護事業所が連携することで、要介護者の自立支援や重度化防止に資する介護を推進することが主な目的です。
外部のリハビリテーション専門職とは、以下の専門職を指します。
・訪問リハビリまたは通所リハビリを実施している事業所の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
・リハビリを提供している医療提供施設の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
生活機能向上連携加算には、生活機能向上連携加算(Ⅰ)と生活機能向上連携加算(Ⅱ)の2種類が存在します。両者の算定要件や単位数は後述します。
2024年度の介護報酬改定で生活機能向上連携加算に変更はない
2024年度の介護報酬改定で、生活機能向上連携加算に変更点はありません。2024年度以前に生活機能向上連携加算を算定していた介護事業所は、これまでと同様に同加算を算定できます。
なお、要支援者を対象とした運動器機能向上加算は、2024年度の介護報酬改定に伴い基本報酬へ包括化されました。これにより、運動器機能向上加算と「選択的サービス複数実施加算Ⅰ」は廃止となり、一体的サービス提供加算が新たに新設されました。
参考:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について 4.(2)① 運動器機能向上加算の基本報酬への包括化
生活機能向上連携加算の対象施設
生活機能向上連携加算の対象施設は、以下の通りです。
訪問系サービス
・訪問介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
通所系サービス
・通所介護(デイサービス)
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
短期入所系サービス
・短期入所生活介護(ショートステイ)
居住系サービス
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・特定施設入居者生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
施設系サービス
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護
多機能系サービス
・小規模多機能型居宅介護
参考:厚生労働省|第158回社会保障審議会介護給付費分科会資料 平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について
生活機能向上連携加算の単位数と主な算定要件
2024年4月現在、生活機能向上連携加算には、生活機能向上連携加算(Ⅰ)と生活機能向上連携加算(Ⅱ)の2種類が存在します。
生活機能向上連携加算(Ⅰ)の単位数 100単位/月
生活機能向上連携加算(Ⅱ)の単位数 200単位/月
となります。(Ⅰ)と(Ⅱ)を併せて算定することはできませんので、ご注意ください。
続いて、生活機能向上連携加算(Ⅰ)と生活機能向上連携加算(Ⅱ)の主な算定要件をみていきましょう。算定要件の調査では、WAM NET 令和3年度介護報酬改定について 1.3各サービスの改定事項を参照しました。
生活機能向上連携加算(Ⅰ)
生活機能向上連携加算(Ⅰ)の主な算定要件がこちらです。
・訪問、通所リハビリテーションを実施している事業所またはリハビリテーションを実施している医療提供施設※の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師からの助言を受けられる体制を構築すること
・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師からの助言を受けた上で、機能訓練指導員等が生活機能の向上を目的とした個別機能訓練計画を作成すること
・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士や医師は、通所リハビリテーション等のサービス提供の場またはICTを活用した動画等により、利用者の状態を把握した上で、助言を行うこと
※原則として許可病床数が200床未満または当該病院を中心とした半径4キロメートル以内に診療所が存在しないものに限る
生活機能向上連携加算(Ⅱ)
生活機能向上連携加算(Ⅱ)の主な算定要件がこちらです。
・訪問、通所リハビリテーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者を訪問して行う場合
・リハビリテーションを実施している医療提供施設※の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師が訪問して行う場合に算定
※原則として許可病床数が200床未満または当該病院を中心とした半径4キロメートル以内に診療所が存在しないものに限る
生活機能向上連携加算を算定する際の注意点
生活機能向上連携加算(Ⅰ)を算定する際に、リハビリテーション専門職や医師が利用者の状態を把握するために、ICTを活用した動画等の方法が認められています。
これにより、介護施設はリハビリテーション専門職や医師に対して事業所への訪問を依頼せずに、同加算を算定することが可能です。ただし、ICTを用いて連携を行う際は、介護施設側は利用者や入居者の個人情報を適切に管理するよう努めなくてはいけません。
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」や「厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等」を確認して、適切な管理体制を構築しましょう。
関連リンク:
厚生労働省|医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版(平成29年5月)
厚生労働省|厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等
なお、ICTを活用した動画等で利用者の状態を把握する方法として、以下の方法が考えられます。
・ビデオ通話が可能な情報通信機器を活用して、外部の理学療法士等とオンライン会議などのリアルタイムのコミュニケーションを行う
・動画を撮影して、録画データを外部の理学療法士等と共有する
引用:平成 30 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.4)問1
ICTを活用して、リハビリテーション専門職や医師と連携を取る際は、お互いの予定や通信環境などを事前に確認してスムーズな情報共有を図りましょう。
まとめ
生活機能向上連携加算は、介護施設が外部のリハビリテーション専門職や医師と連携して介護計画書を作成することで算定できる加算です。
訪問介護、通所介護、入所施設など算定できる施設形態は幅広いため、算定要件を満たせる介護施設は、生活機能向上連携加算を活用することで収益アップを目指せます。
生活機能向上連携加算を取得する際は、自社の介護施設の形態や生活機能向上連携加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いなどに注意して、正しく算定しましょう。
この記事の執筆者 | 千葉拓未 所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級) 専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。 以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。 生活相談員として5年間の勤務実績あり。 利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。 現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、 Webライターとして活躍している。 |
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