スピーチロックとは、要介護者・ご利用者に対して言葉によって行動を制限することです。
ご利用者の行動をただ抑えるだけではなく、意欲や心も傷つけてしまう恐れもあります。
そのため、介護現場ではスピーチロックの防止策を講じる取り組みが大切です。
ただし、「スピーチロックをどうやってチェックすればいいか?」「施設全体でどのように改善すればいい?」と悩む職員やリーダーも多いでしょう。
そこで役立つのが、スピーチロック チェックシートです。
この記事では、スピーチロックとなる声かけ・行動をチェックできるスピーチロック チェックシート、そして取り組みについて解説します。
また、言い換え例や施設全体でのスピーチロック防止に向けた対策もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
スピーチロックとは?基礎知識のおさらい

ここでは、スピーチロックについて以下2点を解説します。
1.スピーチロックの定義と問題点
2.スピーチロックチェックシートの必要性
まずは、スピーチロックの基礎知識をおさらいしましょう。
スピーチロックの定義と問題点
スピーチロックとは、言葉によって要介護者の身体・精神行動を制限することです。
言葉での行動制限により、要介護者の意欲低下・ADL低下する恐れがあります。
スピーチロックに該当する声かけ例は、以下のとおりです。
・「ちょっと待って!」
・「やめて!」
・「立たないで!動かないで!」 など
スピーチロックは、物理的に拘束する「フィジカルロック」と薬物で行動を抑え込む「ドラッグロック」とともにスリーロックの1つに該当します。
とくに、スピーチロックはスリーロックの中でも以下の問題点を含んでいます。
・拘束具などの道具や投与する薬など、モノが必要ない
・どの介護者でも要介護者を制限できるタイミングがある
・無意識に行われやすい
・目に見えず、制限したという証拠がつかみにくい
・介護者が「制限している」と自覚しにくい など
つまり、「誰もが・簡単に・つい」スピーチロックをする危険性があり、他の拘束と比べ明確なモノとして視認しにくいのです。
介護職員はスピーチロックの知識をきちんと学び、ご利用者のADL・QOLを低下させない取り組みが求められます。
スピーチロック・スリーロックの基礎知識や具体例を詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
なぜスピーチロック チェックシートが必要なのか
スピーチロックのチェックシートが必要な理由は、以下のとおりです。
・客観的に声かけを振り返ることができる
・施設全体でスピーチロックの基準を統一できる
・スピーチロックとなるケースを明文化することで、問題意識を持てる など
「スピーチロックをしてはダメ」といっても、具体的に何が・どういう声かけがダメで、どうすれば改善できるのかを明確にすることが必要です。
たとえば、フィジカルロックでは主に柵やベルト、ドラッグロックでは薬を取り除くことで拘束が解消できます。
しかし、スピーチロックに該当する言葉は目に見えず、さらにはスピーチロックを主観・曖昧に判断してしまっては効果的な防止策とはなりえません。
そこで、スピーチロックに該当する声かけや行動・態度を明確にして、適宜チェックできる体制を整えることが重要です。
そのためにスピーチロックのチェックシートを用意することは有効です。
スピーチロック セルフチェックシート
ここでは、スピーチロックのセルフチェックシートについて3つのポイントに沿って紹介します。
1.日常的な声かけのチェック項目(15項目)
2.スピーチロックの兆候を見逃さないチェックポイント
3.チェックシートの使い方と実施頻度
施設や事業所でチェックシートを作成したい方は、ぜひ参考にしてください。
日常的な声かけのチェック項目(15項目)
日常の介護業務における声かけのチェック項目は、下表のとおりです。
| No. | チェック項目 | 使用頻度 | ||
| 多い | たまに | 無い | ||
| 1 | 「ちょっと待って」「ちょっと待ってて」と声をかける | □ | □ | □ |
| 2 | 「動かないで」「立たないで」と制止する | □ | □ | □ |
| 3 | 「ダメです」「やめてください」と否定する | □ | □ | □ |
| 4 | 「危ない!」と大きな声で注意する | □ | □ | □ |
| 5 | 「○○しないでください」と命令口調で伝える | □ | □ | □ |
| 6 | 「早く食べて」「早く歩いて」と急かす | □ | □ | □ |
| 7 | 「どうしてそんなことするの?」と叱責する | □ | □ | □ |
| 8 | 「さっき言ったでしょ」と責める | □ | □ | □ |
| 9 | 理由を説明せずに「今は無理です」と断る | □ | □ | □ |
| 10 | 具体的な時間を伝えずに「後で」と返答する | □ | □ | □ |
| 11 | 利用者の話を遮って「今忙しいから」と断る | □ | □ | □ |
| 12 | 「勝手に○○しないで」と注意する | □ | □ | □ |
| 13 | 「もう!」「またですか?」とイライラした口調で話す | □ | □ | □ |
| 14 | 利用者の要望に対して無言や無視をする | □ | □ | □ |
| 15 | 威圧的な態度や表情で接する | □ | □ | □ |
| 【評価基準】 ・「多い」5項目以上:要注意 ・「多い」2~4項目:改善の余地あり ・「多い」0~1項目:良好 |
||||
それぞれの項目を見て、
・こういう声かけを毎回しちゃっているかも…
・この声かけもスピーチロックにあたるんだ!
・あの職員、こういった声かけばっかりしているな…
と、いろいろと感じることもあるかもしれません。
チェックシートによってスピーチロックとなる言葉を可視化させることができます。それにより、今後現場で働くときに適切な声かけを意識できるでしょう。
また、場面別でのスピーチロック事例や言い換え例については、後述する【場面別】スピーチロック チェックリストをご覧ください。
スピーチロックの兆候を見逃さないチェックポイント
スピーチロックの兆候を見逃さないことが大切です。
スピーチロックが起こりやすい状況・環境は、下表のとおりです。
| 個人要因 | 外的要因 |
| ・個人での業務過多 ・ご利用者対応での焦り・いらだち ・ケアに入る前の準備不足 ・認知症ケア方法の知識不足 など |
・人手不足 ・無理な業務スケジュール ・集団で不適切なケアをしている など |
まずは、スピーチロックの兆候が個人的か外的かを分類する必要があります。
介護する側に時間・心の余裕がなく、強い口調や態度で対応してしまうこともあるでしょう。とくに、以下のような意識・気持ちになっていると要注意です。
・ご利用者に対して「言うことをきかない」と思っている
・「ご利用者のせいで業務が進まない」と感じる
・認知症の人はよくわからない行動するのでいやだ など
こうした考えがスピーチロックの兆候となり、さらにはフィジカルロック・ドラッグロックにも転化されてしまいます。
そのときに、自分に余裕がなくなってしまっている原因は何なのかを見直すことが大切です。
個人的な要因ならば、スピーチロックの知識やその言い換え方法を学びます。
外的要因(個人だけでは解決できない要因)ならば、業務負担の見直しや定期的な研修・勉強会を開催し、施設・事業所全体で意識改革を進めましょう。
スピーチロックの兆候は個人・外的要因が複雑に絡み合って発生することも多いため、それぞれ優先順位をつけて対応することが必要です。
チェックシートの使い方と実施頻度
スピーチロック チェックシートの効果的な使用方法は、下表のとおりです。
| 使い方 | ・1人で落ち着いた時間に実施 ・正直に回答・評価 ・改善したい点を1~2つ選択 |
| 頻度 | ・月1回が理想的 ・最低でも3か月に1回 ・新人職員が入職して1~2か月程度経った時 ・研修を受けた後 ・その他気になったとき |
| 記録方法 | ・チェックシートを使った日付を記入 ・前回の内容からの変化を確認 ・改善点を書き留める |
| 注意点 | ・すべて改善しようとしない ・完璧を求めすぎない ・自分を責めすぎない |
チェックシートを活用するにあたり、定期的に継続して実施することが大切です。
日常の介護業務や雑務が忙しくなると、スピーチロックとなる言葉をだんだん忘れて「うっかり・つい・簡単に」使ってしまいます。
そのため、自分自身で意識しやすいよう落ち着いたタイミングで定期的にチェックしましょう。
また、今後の取り組みとして「すべて・完璧」を求めすぎないことも大切です。
もちろんスピーチロックを改善する姿勢も大切ですが、完璧を追求しすぎると1つ1つのケアに疲れてしまいます。
また、自分を責めすぎると「こんなことを言ってしまった」「スピーチロックが気になって何も話せない」と気疲れしてしまうため注意しましょう。
【場面別】スピーチロック チェックリスト
ここでは、5つの場面におけるスピーチロックのチェック項目を解説します。
1.食事介助時
2.移動・移乗介助時
3.排泄介助時
4.入浴介助時
5.レクリエーション・日常会話時
それぞれの場面で使われがちなスピーチロック例やその影響について紹介するので、ぜひ参考にしてください。
また、自分自身のチェックだけではなく「他の職員から聞いたことがある」というチェック欄をあわせて作成しておくと、事業所・施設全体の状況も把握できるためおすすめです。
食事介助時のチェック項目
| 項目 | 自身の使用頻度 | 他職員から聞く頻度 | ||||
| 多い | たまに | 無い | 多い | たまに | 無い | |
| 「早く食べて」「もっと食べて」と急かしている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「こぼさないで」「汚さないで」と注意している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「それは食べちゃダメ」と強い口調で制止している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 食べる順番や量を一方的に決めている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 利用者の「いらない」という意思を無視している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 無言で口に食べ物を運んでいる | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 食事の途中で「まだ終わらないの?」と言っている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
食事介助時におけるスピーチロックでは、以下のような点で、ご利用者に影響を与える可能性があります。
・介護者からの言葉がプレッシャーとなり、食欲・食事量が低下する
・「自分で食べる」機会が減り、食事で必要な機能が下がる
・介護者のペースになり、最悪の場合誤嚥性肺炎につながる など
ご利用者の食欲・ADL低下のみならず、誤嚥性肺炎などのリスクも考えられます。
食事は栄養面だけではなく口腔機能・生活リズムの維持などの効果があり、重要な生活の一部です。
ご利用者のペースを尊重しながら、自力摂取が難しい場合は選択肢を提示して安全に食事介助するようにしましょう。
移動・移乗介助時のチェック項目
| 項目 | 自身の使用頻度 | 他職員から聞く頻度 | ||||
| 多い | たまに | 無い | 多い | たまに | 無い | |
| 「立たないで」「動かないで」と制止している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「危ない!」と大きな声で注意している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 理由を説明せずに「座っていて」と命令している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「勝手に歩かないで」と強く注意している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 利用者の「トイレに行きたい」を「待って」と制止している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 車椅子を無言で押している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「こっちに来ないで」と行動を制限している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
移動・移乗介助時におけるスピーチロックは、ご利用者に以下の点で影響を及ぼします。
・行動を制止され、意欲が低下する
・急に止められたせいで怒り・苛立ちの感情がでる
・行動意欲の低下に比例して、筋力・自尊心も低下する など
ご利用者の「〇〇に行きたい」「〇〇したい」という思いが言葉1つで遮られるとともに、何度も言われると意欲や筋力低下のリスクにもつながります。
介護職員は、ご利用者の「行きたい」「歩きたい」という意欲を尊重したい一方で、転倒・ケガのリスクを考慮する必要があり、とくに焦りでスピーチロックをしてしまう場面が多くあります。
まずは、ご利用者の行動理由を確認しつつ、必要に応じて安全策を提案したり同行介助する意思を伝えましょう。
排泄介助時のチェック項目
| 項目 | 自身の使用頻度 | 他職員から聞く頻度 | ||||
| 多い | たまに | 無い | 多い | たまに | 無い | |
| 「トイレはまだ行かなくていい」と一方的に断っている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「さっき行ったでしょ」と責めるような口調で言っている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「出ないから行かないよ」と決めつけている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「ちょっと待って」と長時間待たせている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「早く終わらせてよ」と急かしている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 失禁時に「どうしてトイレに行かなかったの」と叱っている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 排泄の失敗を他の利用者の前で話題にしている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| オムツ交換を無言で行っている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
排泄介助時におけるスピーチロックは、ご利用者に以下の影響を与えます。
・羞恥心やプレッシャーを感じる
・行きたいときに行けず、我慢したり失禁したりする
・トイレを我慢するために水分摂取を控え、水分不足となる
・失禁が増えて皮膚疾患や尿路感染症のリスクが高まる など
排泄は、誰にとってもプライバシーにかかわるデリケートな行動です。
我慢・失禁などの身体機能への影響はもちろん、精神的な負担が強くでてしまいかねません。
また、排泄は生理現象でコントロールが難しく、食事・入浴よりも優先する必要があります(=排泄最優先の原則)。
そのため、ご利用者の尊厳の保持・精神の安定をはかるうえで、重要な介護ケアの1つです。
排泄介助における言葉による制限には、細心の注意を払いましょう。
入浴介助時のチェック項目
| 項目 | 自身の使用頻度 | 他職員から聞く頻度 | ||||
| 多い | たまに | 無い | 多い | たまに | 無い | |
| 「今日はお風呂の日だから入って」と強制している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 利用者の「今日は入りたくない」を無視している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「早く脱いで」「早く出て」と急かしている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「動かないで」と強い口調で制止している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 湯温や洗い方の希望を聞かずに進めている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 無言で身体を洗っている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「もう終わり」と一方的に終了している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
入浴介助時のスピーチロックは、ご利用者に以下のような影響を与えます。
・入浴でリラックス・気分転換できない
・入浴への意欲が下がり、不潔につながる
・浴室や脱衣所での転倒リスクが高まる など
入浴は、ご利用者にとってはリラックス・気分転換となる一方、介護職員からすると「早く入浴業務を進めなければいけない」「安全に進めなければいけない」とプレッシャーや身体負担の強い業務です。
その焦りや疲れからスピーチロックが出やすくなります。
入浴介助時はご利用者の意向を伺いつつ、安全に・スムーズに業務を進めるための準備が必要です。
その準備こそが、余裕のあるケア=スピーチロックの防止につながるでしょう。
レクリエーション・日常会話時のチェック項目
| 項目 | 自身の使用頻度 | 他職員から聞く頻度 | ||||
| 多い | たまに | 無い | 多い | たまに | 無い | |
| 「参加しなさい」とレクへの参加を強制している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「静かにして」「うるさい」と会話を制止している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 利用者の話を途中で遮っている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「今忙しいから後で」と話を聞かずに去っている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 利用者の訴えに「またその話?」と返している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 「そんなことないですよ」と利用者の気持ちを否定している | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
| 同じ質問に「さっき言ったでしょ」と苛立って答えている | □ | □ | □ | □ | □ | □ |
レクリエーションや日常会話時のスピーチロックは、ご利用者に以下のような影響を与えます。
・楽しみを喪失させる
・ADLや意欲を低下させる
・精神的な不安や萎縮を引き起こす など
とくに、認知症のあるご利用者がレクリエーションに参加するとき、うまくできなかったり本来と違うルールで行ったりすることもあるでしょう。
間違っていてもすぐに否定せず、丁寧に対応することが大切です。
スピーチロックのNG表現と言い換え例

スピーチロックにおけるNG表現とその言い換え例について、4つのポイントに沿って解説します。
1.命令口調の表現を言い換える
2.否定的な表現を言い換える
3.曖昧な表現を具体的にする
4.言い換えの基本ルールを学ぶ
セルフチェックシートを踏まえて「実際どのように改善したらよいか」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
命令口調の表現を言い換える
| NG例 | 言い換え例 |
| 「早く食べて」 | 「ゆっくり召し上がってくださいね」 |
| 「危ない!立たないで!」 | 「どうかされましたか?」「この手すりを持ったほうが安全ですよ」 |
| 「参加しなさい」 | 「一緒にどうですか?」 |
「〇〇しなさい」や「〇〇しないで」といった命令口調の表現は、スピーチロックにあたります。
丁寧な言葉や依頼する形・選択肢を提示するような言い換え表現が有効です。
否定的な表現を言い換える
| NG例 | 言い換え例 |
| 「さっきトイレ行ったばっかり!」 | 「またお手洗い行きたくなりましたか?」 |
| 「トイレはまだ行かなくていい」 | 「〇〇さんの後にご案内しますね」 |
| 「静かにして」「うるさい」 | 「お話は後でゆっくり聞きますね」 |
「〇〇しなくていい」や「うるさい」など、その人を否定するような表現もスピーチロックに該当します。
否定ではなく肯定する表現に言い換えるようにしましょう。
曖昧な表現を具体的にする
| NG例 | 言い換え例 |
| 無言で口に運ぶ | 「次は〇〇と△△、どちらがいいですか?」 |
| 「ちょっと待って!」 | 「〇〇をした後に伺いますね」 |
無言・無表情や曖昧な表現などは、ご利用者に不安を与えてしまいます。できる限り具体的に伝えるようにしましょう。
言い換えの基本ルール5つ
スピーチロックに該当する言葉を言い換えるときには、以下5つのポイントを押さえておきましょう。
1.利用者の気持ちをまず受け止める
2.クッション言葉を活用する
3.命令形ではなく依頼形を使う
4.否定ではなく肯定の表現にする
5.具体的な理由と時間を伝える
まずは、ご利用者の意思や理由を聞く姿勢を持つことが大切です。
ご利用者の視点に立ち「今何を考えているのかな?」「どうしたいのかな?」と一緒に歩んでいくようなアプローチをすると、自然とスピーチロックがなくなるでしょう。
もちろん、介護職員も他のご利用者対応や業務に忙殺され、ゆっくりとご利用者のお話を聞いたり、具体的な説明したりする時間もとれないかもしれません。
その場合、焦って物事を伝える前にクッション言葉(例:申し訳ございませんが…、できましたら…、など)を活用しましょう。
否定・命令の表現ではなく肯定・依頼の表現を使うことで、ご利用者の尊厳を守るとともにご利用者が安心して介護職員とより良い関係を築けます。
肯定・依頼表現は正しい言葉遣いや接遇にもかかわるため、適切なコミュニケーションをとるうえで積極的に取り入れましょう。
介護職員が求められる言葉遣いやそのポイント、クッション言葉などについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
スピーチロック チェックシート活用後の改善ステップ

スピーチロックのセルフチェックシートを活用したら、次に以下4つのステップに沿って改善していきましょう。
1.自分の傾向を把握する
2.優先的に改善すべき声かけを決める
3.言い換え表現を練習する
4.定期的にチェックを繰り返す
それぞれのステップでの取り組みについて解説します。
ステップ1:自分の傾向を把握する
チェックシートの回答を見て、自身がスピーチロックを使ってしまっている場面・タイミングを分析しましょう。
スピーチロックしてしまう場面・時間帯を知り、そこで自分がどういった状況・心情のときに使ってしまう傾向にあるかを把握することが大切です。
たとえば、例として、以下のような場面・タイミングが想定されるでしょう。
・食事介助中に複数ご利用者を対応している時
・夜勤で眠たい中明け方~起床介助している時
・転倒リスクの高いご利用者が立ち上がって焦った時 など
こうした分析を通して、まずは無意識に使ってしまっているスピーチロックを明らかにすることが重要です。
ステップ2:優先的に改善すべき声かけを決める
自分の傾向をある程度把握したら、改善したい声かけに優先順位をつけましょう。
そのとき、すべてを一度に改善しようとせず、1~2つに絞って改善すると効果的です。
また、優先順位をつけるときには「自分が言われたら嫌だ」「周りが使っているのを聞いたら嫌だ」とイメージしてみましょう。
ステップ3:言い換え表現を練習する
改善したい声かけを絞ったら、その言い換え表現を練習しましょう。
1~2つの声かけに焦点をあてておくと、自分が使ってしまいそうになった時や周りが使っている時など、以下のような場面・タイミングでアンテナを張ることができます。
・こういう場面で使ってしまいがちだ
・周りも同じタイミングの時に使ってしまうんだな
・先輩の言い換え表現がわかりやすい など
ただし、自分や周りがスピーチロックを使ってしまっている場面に対し、敏感に反応したり責めすぎたりするのは好ましくありません。
できる限り、肯定的な言い換え表現を学び、練習していきましょう。継続して取り組むことが大切です。
ステップ4:定期的にチェックを繰り返す
チェックシートは1回限りで終わるのではなく、定期的に繰り返しチェックすると効果的です。
改善ポイントがどの程度意識できているかを再確認すると同時に、優先順位の見直しや新たな改善項目の発見に役立ちます。
少しずつ改善し、スピーチロックとなり得る言葉・態度を減らしていきましょう。
施設全体でチェックシートを活用する方法
介護職員が個人でスピーチロックをチェックするとともに、事業所や施設でもチェックシートを活用しましょう。
施設全体でスピーチロックを防ぐ取り組みを行い、職員の意識を高めていくことも大切です。
全体でチェックシートを活用するときのポイントは、以下5つです。
1.職員全員でチェックシートを実施する
2.チェック結果をもとにアンケート調査を行う
3.結果を共有し改善策を話し合う
4.定期的な振り返りとフォローアップ
5.管理者・施設長が率先して取り組む姿勢
それぞれのポイントについて解説します。
職員全員でチェックシートを実施する
まずは、事業所・施設で働く職員全員でチェックシートを実施しましょう。
新人・ベテラン関係なく、現場で感じたことや「スピーチロックかも?」と疑問に感じたことを集めていきます。
また、以下のタイミングで実施できるとより効果的です。
・毎月のミーティング
・新人研修での実施
・入職時研修(※) など
(※ 入職時研修のときは、スピーチロックの基本知識・事例集として活用)
チェックシートは、ご利用者とかかわっている職員全員で取り組むようにしましょう。
チェック結果をもとにアンケート調査を行う
チェック結果を踏まえて、アンケート調査を行います。
具体的なアンケート項目は、以下のとおりです。
・スピーチロックと感じる言葉は?
・自分がしていると思っていますか?
・どういった場面でしやすいと感じますか?
・他の職員でスピーチロックしていると思う場面はありますか? など
上記アンケートは、個人が特定されない形で実施します。
ある特定の職員を責めるためではなく、施設全体でスピーチロックがおきやすい場面・傾向を把握することが重要です。
現場ではすぐに言えなかったことや、直接言いづらい指摘も判明することがあるので、アンケートを通して施設全体の課題を見つけましょう。
結果を共有し改善策を話し合う
チェックシートやアンケート結果を踏まえて、改善策を現場職員と一緒に考えましょう。
ここで重要なのは「スピーチロックを使わない環境」を作るということです。
もちろん結果を踏まえた改善策も必要ですが、まずはスピーチロックそのものを問題視する取り組みが求められます。
たとえば、改善策として言い換えだけに注目してトップダウンで指示してしまうと、現場職員は以下のように感じてしまうでしょう。
・どうせただの「キレイゴト」だ
・今すぐ倒れそうな人に、そんな悠長に話している余裕なんてない!
・伝える言葉数が多くなりすぎて、ご利用者が理解できなさそう… など
あくまで改善する中心は現場であり、現場職員とともにスピーチロックを意識した改善策を考えることが大切です。
定期的な振り返りとフォローアップ
セルフチェックシートと同様に、定期的な振り返りとフォローアップをするようにしましょう。
ミーティングや研修会にて、スピーチロック事例やこれまでの改善策を再度確認します。
また、主任やリーダーが中心となり日頃の業務内で声かけをチェックし、スピーチロックや不適切な声かけを発見したら、その都度一緒に言い換え方法を学ぶ取り組みも大切です。
管理者・施設長が率先して取り組む姿勢
スピーチロックの是正・改善をするためには、管理者や施設長が率先して取り組む姿勢を見せましょう。
管理者・施設長も一緒に取り組む場合、丁寧すぎたり説明が長すぎたりしないよう考慮することが必要です。
もちろん管理者が接遇まで意識した声かけをするのも重要ですが、回りくどい話し方を現場の職員がみると、
・どうせ経験があるからできるだけだ。私にはできない。
・管理者・施設長は実際に現場に立ってないし、このご利用者の状況がわかんないだろう。
・そりゃ管理者は時間があるから、ゆっくり話もできるだろうな。こっちは業務で手一杯なのに!
など、逆に管理者・施設長と現場職員にギャップが生まれてしまいます。
そのため、以下のようにコンパクトでわかりやすく関わるようにしましょう。
・もちろん「ちょっと待って!」「ダメ!」は言わない
・「どうかされましたか?」と一言の言い換えを積極的に活用する
・言い換えなどの改善策を試してみてどうだったかを、積極的に現場職員に確認する など
つまり、管理者・施設長が問題を解決に導くのではなく、共にスピーチロックを使わない姿勢を見せることが大切です。
チェックシートと併せて実践したい防止対策
スピーチロックを防止するためにはチェックシートによる意識化が大切です。
また、併せて実践したい防止対策を5つ紹介します。
1.言い換え表の作成と掲示
2.定期的な研修会の実施
3.身体拘束廃止委員会(身体拘束適正化委員会)での検討
4.職員間での声かけチェック体制
5.スピーチロックが起こりやすい環境・背景を探る
スピーチロック防止に向けて、ぜひ参考にしてください。
言い換え表の作成と掲示
言い換え表を作成・掲示すると、日頃の介護現場でもスピーチロックとなる言葉を防ぐのに役立ちます。
また、掲示する時には以下の点も考えておきましょう。
・使ってはいけない言葉のみに絞る
・言い換え表の内容も適宜精査する
・言い換え表をもとに、個別ケアも深化させる など
スピーチロック防止対策とあわせて、伝え方の精査と個別ケアの深化も進めていくことが重要です。
さまざまな伝え方をすると、「もっとこういう伝え方をすればわかりやすいかも」「このご利用者には、こういう伝え方がいいかも」と感じる場面が多くあります。
言い換え表を周知しておくと、コミュニケーション技法を見直すきっかけとなるため積極的に活用しましょう。
定期的な研修会の実施
スピーチロックの見直しや再確認するために、定期的に研修会を実施しましょう。
研修では以下の内容もあわせて実施すると効果的です。
・座学でスピーチロックとなる言葉を学ぶ
・言い換え方法をグループワークで考える
・スピーチロックを言う職員役・言われる利用者役でロールプレイする
・言う職員・言われた利用者の気持ちを体験する など
とくに、ロールプレイを通じて利用者の心理的影響を学ぶと、より理解が深まるでしょう。
身体拘束廃止委員会での検討
身体拘束を組織的に対応する「身体拘束廃止委員会」にて、スピーチロックの事例共有や対策を検討しましょう。
「身体拘束廃止委員会(身体拘束適正化検討委員会)の開催は、施設・居住系サービス、短期入所系サービス、多機能系サービスで必須です(3か月に1回以上)。
なお、訪問系サービス、通所系サービス、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、居宅介護支援については、委員会開催は義務ではありませんが、身体拘束は原則禁止とされ、緊急やむを得ない場合に限り実施可能で、その際の記録作成(態様、時間、心身状況、理由)が義務化されています(2024年4月~)。
・厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1345」(2025年1月20日)
・厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 運営基準解釈通知」(2024年3月15日)
・JOINT「訪問、通所、ケアマネにも身体拘束の禁止規定」(2024年1月27日)
委員会では、定期的な虐待防止における指針整備や、実際に身体拘束事例があった時に解除に向けて取り組む役割を担っています。
虐待防止に関する未実施減算や虐待防止に関する取り組みについて、さらに知りたい方は以下の記事もチェックしてください。
職員間での声かけチェック体制
セルフチェックシートや言い換え表をもとに、職員間で声かけチェック体制を構築しましょう。
スピーチロックは、「その場で・すぐ・目に見えない形」で起こりがちです。そのため、管理者や現場のリーダーが率先してチェック体制を整えます。
ただし、以下の点で注意が必要です。
・あくまでシートや言い換え表に準じてチェックする
・スピーチロックを使用している場面を発見したら、その場で指摘する
・指摘するときはポジティブにフィードバックする など
たとえば、スピーチロックを使用してしまった職員に対して「〇〇と言ってはダメ!」「そんな言い方よくない!」とただの善悪だけで指摘してしまっては、現場職員も萎縮・反発してしまいます。
「『ちょっと待って!』より『どうしましたか?』を先に伝えてみよう」「今の伝え方でご利用者が安心したね!」と、良かった点・ポジティブ面を中心に評価すると効果的です。
スピーチロックを防止することは、ただ職員の声かけを強く取り締まるわけではありません。
ご利用者も職員も安心できる雰囲気を整えるために、チェック体制を作りましょう。
スピーチロックが起こりやすい環境・背景を探る
短期・中期目標として、セルフチェックシートや言い換え表をもとにスピーチロックを防止する対策を講じます。
また長期的な視点では、スピーチロックが起こってしまう環境や背景を探り、少しずつ対策していくことが大切です。
たとえば、下表のような視点でもスピーチロックを観察してみましょう。
| 項目 | 具体例 |
| 環境整備 | 見守りするフロアと記録するスペースが遠く、ご利用者の立ち上がりを発見するのが遅くなり、職員が「ちょっと待って!」と言ってしまう。 |
| 業務改善 | 入浴介助で浴室・脱衣所が整理整頓されておらず、ムダな業務が増えてご利用者へかかわる時間・余裕をもって接する時間が減っている。 |
| 無理なシフト | 夜勤続きや逆循環シフト(遅番→日勤→早番…など)で職員が疲弊しており、余裕がなくなっている。 |
これらの項目は、スピーチロックの課題をより掘り詰めていくと対応すべきタイミングがやってきます。
対策を講じてもすぐスピーチロック防止の効果がでるわけではありませんが、環境整備や業務改善もあわせて実施しておくと、さまざまな問題解決にも貢献できるでしょう。
環境整備の方法や業務改善への取り組み事例について、さらに知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
スピーチロックは、スリーロックの中でも「誰でも・簡単に・つい」してしまう声かけによる行動制限です。
無自覚のまま使い続けてしまうと、ご利用者の意欲低下・ADL低下につながります。
「声」という目に見えづらいものだからこそ、きちんと基準を設けるとともにチェックシートやチェックリストなどを活用した明文化が大切です。
日常での現場のみならず、さまざまな場面に応じて適切な言い換えができるよう何度も見直し練習していきましょう。
また、スピーチロック防止策は職員個人だけで講じるのではなく、施設・事業所全体でチェック体制を整える点が重要です。
全員でスピーチロック防止を意識しながら取り組むことで、より効果が期待できます。
ご利用者や働く職員が安心・安全に過ごせるよう、スピーチロックを防止していきましょう。
| この記事の執筆者 | しょーそん 保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了 グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。 現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。 現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。 |
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