多くの介護施設で実施されているホワイトボードを使ったレクリエーション。しかし、利用者が盛り上がるようなレクリエーションを毎回実施するのは大変ですよね。「次のレクネタを考えるのが大変…」「簡単で盛り上がるレクリエーションはないかな?」と悩むことも多いでしょう。
そこで今回は、デイサービスで盛り上がるホワイトボードを使ったレクリエーションを紹介します。具体的なやり方や成功のポイントも解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
介護施設でレクリエーションを実施する目的
介護施設のレクリエーションには、日常生活に必要な生活機能の維持・向上の機会を高齢者に提供するという目的が存在します。生活機能とは、移動や食事、排泄や入浴といった日常生活を送るために必要な機能のことです。
しかし、これらの機能を自宅で高めることはむずかしいものです。そこで、介護施設のスタッフが疾病や障がいをお持ちの方でも取り組みやすい運動や脳トレを実施することで、生活機能の維持や脳の活性化をサポートしています。
ホワイトボードを使ったレクリエーションのメリット
ホワイトボードを使ったレクリエーションには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは4つのメリットを紹介します。
効果的な脳トレを実施できる
1つ目のメリットは、効果的な脳トレを実施できることです。ホワイトボードを活用すると、利用者の負担を減らしたりレクへの集中力を高めたりできます。
例えば、ホワイトボードにルールを書いておけば、利用者は安心してレクに参加できるでしょう。ルールを忘れてしまっても、自分のタイミングで再確認できるのです。
イラストや図表をヒントとして提示する方法も効果的です。言葉で説明がむずかしい内容でも、イラストや図表なら直感的に理解しやすいため、レクへの集中力が高まるでしょう。
レクが苦手な利用者も参加しやすい
ホワイトボードを使ったレクリエーションは、「周りから注目されるのが苦手…」「指名されるのが嫌だ…」とレクに苦手意識のある利用者も参加しやすいものです。
参加者の意識は、ホワイトボードに書かれた文字や内容に向かいます。そのため、特定の利用者が注目を浴びるケースはほとんどありません。一方で、司会者からの問いかけやほかの利用者の回答などは耳に入るため、自然とレクリエーションに集中できるのです。
このようにレクリエーションの輪の中に入るだけでも、さまざまな刺激を受けられます。レクが苦手な利用者にも上記のメリットを伝えてみると、参加してくれるでしょう。
手間や時間をかけずに準備できる
ホワイトボードを使ったレクリエーションで最低限必要なものは、ホワイトボード、ペン、イレーザーです。物品庫からこれらを持ってくるだけで、会場準備はほとんど終了といえます。手間や時間をかけずに準備できるのもメリットの一つです。
準備と後片付けを短縮できると、準備するスタッフの負担が軽くなることはもちろん、利用者を待たせる時間も短くなります。なお、イレーザーとは、ホワイトボードにマーカーで書かれた文字などを消す黒板消しのようなものです。
利用者の満足度がわかりやすい
ホワイトボードを使ったレクリエーションは、利用者と職員が向かい合う形になります。利用者の反応や表情をリアルタイムで職員が確認できるため、レクに対する満足度がわかりやすいのです。
レクの様子を連絡帳やケース記録などに記入する際も、「Aさんは笑顔で参加していました」「Bさんは精力的に体を動かしていました」と具体的な様子を記載できるでしょう。実施したレクの評価・改善がやりやすい点も大きなメリットです。
ホワイトボードを使ったおすすめのレクリエーション7選
ホワイトボードを使ったおすすめのレクリエーションを7つ紹介します。それぞれのレクの概要、準備するもの、具体的なやり方や成功のポイントについてチェックしましょう。
みんなで盛り上がる!料理と食材の連想問題!
料理と食材の連想問題は、身近な食事や食材をテーマにして、記憶力や発想力にアプローチするレクリエーションです。
食材から料理を連想したり、反対に、料理から使われている食材を参加者で連想したりします。一緒に食事や料理について連想するうちに、食欲がわく方も出てくるでしょう。
【準備するもの】
・ホワイトボード
・マーカー
・イレーザー
・イラストや写真
【やり方】
料理から食材を連想してもらう場合
1.ホワイトボードに料理のテーマを書く
2.「〇〇といえば、どんな食材が使われていますか?」と質問する
3.利用者の答えをホワイトボードに書く
4.答えが出なくなったら次のテーマへうつる
【食材から料理を連想してもらう場合】
1.ホワイトボードに具体的な食材を複数書く
2.「〇〇や△△を使ったら、どのような料理ができるでしょうか?」と質問する
3.利用者の答えをホワイトボードに書く
4.答えが出なくなったら次の問題へうつる
季節の料理を取り上げると、利用者の興味を強くひけます。冬なら鍋料理、夏ならば冷やし中華などを取り上げてみましょう。答えが出なくなったらスタッフがヒントを出して利用者の発想を促すと盛り上がりますよ。
歌って楽しむ!歌謡曲と童謡クイズ
歌謡曲と童謡クイズは、音楽を使ったレクリエーションです。音楽プレイヤーで、歌謡曲や童謡など利用者にとってなじみ深い音楽を流して、タイトルや歌手をあててもらいます。ホワイトボードにわざと穴のある歌詞を記載して、特定の歌詞をあててもらうのもよいでしょう。
【準備するもの】
・音楽プレイヤーなどの音響設備
・CDなどの音源
・ホワイトボード
・マーカー
・イレーザー
【やり方】
タイトルや歌手をあててもらう場合
1.音楽プレイヤーから曲の冒頭部分だけを流す
2.音楽を止めて「これは誰の歌でしょうか?」と質問する
3.正解が出たら次の問題へうつる
【歌詞をあててもらう場合】
1.ホワイトボードに曲のタイトルと歌詞を書く
2.思い出してもらう箇所を空白にする
3.音楽を流す
4.空白の箇所の直前で音楽を止める
5.「次の歌詞はなんでしょうか?」と質問する
6.正解が出たら音楽を最後まで再生する
音源は、利用者になじみ深い曲を選びましょう。なお、歌謡曲とは、日本的な情感を歌った曲のことで、レコードや映画、ラジオなどを通じて流行した大衆向けの曲を指します。坂本九の「上を向いて歩こう」や山口百恵の「いい日 旅立ち」など、昭和から平成にかけてさまざまな名曲がありますのでこの機会に探してみましょう。
50音の中から単語を作ろう!言葉連想ゲーム
言葉連想ゲームは、1文字のひらがなが書かれた50音カードを組み合わせて、1つの単語を作り上げるレクリエーションです。ばらばらに置かれたカードから、1つのひらがなの言葉を作り出すことで、言語能力や発想力の維持・向上が期待できます。
【準備するもの】
・50音カード※
・ホワイトボード
※50音カードは、縦横5cmから8cmほどの正方形に画用紙を切り、その画用紙にひらがなを1文字ずつ書いていく。コピー用紙などの薄い紙ではなく画用紙で作ると耐久力のあるものになる。裏にマグネットをつけることで、ホワイトボードに貼ったり外したりできるようになります
【やり方】
1.机の上に50音カードの中から該当する言葉を並べる
2.「この中から〇文字の言葉を作ってください」と伝える
3.利用者の回答をホワイトボードに貼る
4.(利用者に前に出てもらってやってもらっても可)
5.次の問題へうつる
作る言葉の文字数を増やすと難易度が上がります。はじめは2文字や3文字の簡単なものからはじめてみましょう。「おはよう」「ありがとう」といった日常的に使用する言葉をお題にするのもおすすめです。文字数を増やしたり、50音カードの枚数を増やしたりすることで難易度を調節しましょう。
昔をなつかしんで…「この人は誰?」有名人クイズ
「この人は誰?」有名人クイズは、昭和や平成の時代に活躍した有名人を回答するレクリエーションです。芸能界、政治家、文化人、スポーツ選手などジャンルを問わず幅広い有名人を紹介します。有名人が活躍した当時の出来事を回想したり、同じ話題で利用者同士の距離が縮まるといった効果も期待できます。
【準備するもの】
・有名人の写真またはイラスト
・ホワイトボード
・マーカー
・イレーザー
【やり方】
1.「これから皆さんにある有名人の名前をあててもらいます」と説明する
2.ホワイトボードに有名人の写真またはイラストを貼る
3.参加者に有名人の名前を回答してもらう
4.答えが出たら次のお題へうつる
「誰でも知っていそうな有名人」から「知る人ぞ知る有名人」まで、難易度に幅を設けると、盛り上がるでしょう。
利用者が答えにくそうな場合は、ヒントを出してみましょう。なお、担当者の好みや価値観が強すぎるジャンルを選ぶと、盛り上がりにくくなってしまいますのでご注意ください。
利用者同士で盛り上がるかも?都道府県ご当地問題
都道府県ご当地問題は、47都道府県にまつわる問題をクイズにしたレクリエーションです。利用者本人や親戚の方に縁のある都道府県が出てくれば、利用者同士で話が盛り上がるでしょう。各都道府県の有名な食べ物や観光地、人口や面積などが問題に適しています。
【準備するもの】
・ホワイトボード
・マーカー
・イレーザー
・図やイラスト
【やり方】
・テーマに沿ったお題を出す
・「この都道府県はどこでしょうか?」と質問する
・正解が出たら次の問題へうつる
利用者となじみのある都道府県や東京や大阪といった有名都道府県が利用者の興味をひきやすいでしょう。
難易度を調節できる!ことわざ・慣用句クイズ
ことわざ・慣用句クイズは、介護施設の定番といえるレクリエーションです。日常的に使用していることわざ※1や慣用句※2を問題にして、難易度を調節してみましょう。その日の参加者に合わせて効果的な脳トレを実施できます。
※1 ことわざとは、昔から伝わってきた教訓や真理などを短い言葉であらわしたもの。
※2 慣用句とは、2つの単語が組み合わさって1つの意味を成す言葉のこと。
【準備するもの】
・ホワイトボード
・マーカー
・イレーザー
・国語辞典など
【やり方】
1.ホワイトボードにことわざや慣用句を書く
2.「この言葉の意味はわかりますか?」と質問する
3.正解が出たら次の問題へうつる
ことわざ・慣用句問題は、進行が比較的早いレクリエーションです。レクの時間が長い場合は、大量の問題を用意しておかないとネタ切れになってしまうかもしれません。そのようなときは、正解が出た後に、「例えばこんなふうに使います」と例を挙げてみましょう。利用者の集中力を切らさずに、最後まで続けられますよ。
施設で独自の基準を設けてもOK!漢字検定問題
漢字問題は、ことわざ・慣用句クイズと同様に難易度を調節しやすいレクリエーションです。比較的短時間で準備できるため、とっさのときにはじめやすいというメリットもあります。
【準備するもの】
・ホワイトボード
・マーカー
・イレーザー
・漢字辞典など
【やり方】
1.ホワイトボードに漢字を書く
2.「この漢字の読み方は何でしょうか?」と質問する
3.正解が出たら次の問題へうつる
漢字問題は、どの介護施設でも行われていることから、利用者が飽きてしまっているケースが少なくありません。そこで、施設独自の漢字検定を設けて、飽きにくい仕組みを作ってみてはいかがでしょうか。
公益財団法人 日本漢字能力検定協会が実施している「日本漢字能力検定」では、級位制度を設けています。介護施設でも、検定制度を構築すれば、利用者のモチベーションになるかもしれません。「日本漢字能力検定」について詳しく知りたい方は、公式ホームページをチェックしてみましょう。
参考:公益財団法人 日本漢字能力検定協会 漢検受験級の目安チェック
ホワイトボードを使ったレクリエーションの注意点
ホワイトボードを使ったレクリエーションには、5つの注意点が存在します。自信をもってレクリエーションを実行できるように、一つひとつみていきましょう。
文字は大きく丁寧に書く
ホワイトボードに文字を書く際は、利用者が読みやすいように、文字を大きく丁寧に書きましょう。ホワイトボードの字が読みやすいと、レクのルールを理解しやすくなります。
利用者の中に、緑内障や白内障をわずらっている方がいるかもしれません。これらの疾病には、文字が2重に見えたり視界が狭くなったりといった症状があります。そのため、ホワイトボードに記載する文字は大げさなくらい大きく書いてよいでしょう。
大きな声で聞きやすいように話す
レクの司会進行を任された際は、できるだけ大きな声で聞き取りやすいように話しましょう。司会進行の声が聞こえにくいと、利用者のやる気が下がってしまうおそれがあります。
利用者の中には、加齢性(老人性)難聴などによって、複数の会話の中から特定の声を聞き取りにくい方がいるかもしれません。高い音や早口でもうまく聞き取れないため、話し方にも注意が必要です。なお、言葉と言葉の間を少しだけ区切ると、早口にならずちょうどいいペースで話せるようになります。気になる方はぜひ試してみてください。
図やイラストを活用する
レクが思うように盛り上がらないときは、図やイラストを用意してみましょう。盛り上がらない原因は、利用者の理解が浸透していないせいかもしれません。一枚の図やイラストを示せば、利用者の理解を助けてくれるはずです。
利用者の視覚を上手に生かしてあげると、利用者はレクを楽しみやすくなります。そういった利用者目線の対応ができれば、周りの同僚や上司からも高く評価されるでしょう。
参加者の特徴に合わせる
ホワイトボードを使ったレクリエーションを成功させるためには、参加者の特徴に合わせることも大切です。参加者の特徴を把握するために、以下の項目に注目しましょう。
・参加者の性別の割合
・年齢
・認知機能
・好みや価値観
例えば、参加者に女性が多いときは、昭和や平成の時代に人気を博した映画俳優をクイズにしてみてはいかがでしょうか。
職員の役割分担を行う
職員の役割分担を行っておくと、転倒事故などのリスク管理を行いながら、質の高いレクリエーションを利用者に提供できます。
例えば、当日のスタッフが3人の場合は、司会進行役、盛り上げ役、見守り役に分けておく方法をおすすめします。役割を分けることで、スタッフ一人ひとりが自分の業務に集中できるようになるため、レクリエーションが成功しやすくなるのです。
各役割の業務内容がこちらです。
司会進行役 | 盛り上げ役 | 見守り役 |
レクリエーションの中心的存在。 レクのルールを説明したりヒントを提供したりして、レクの進行を行う。 |
レクリエーションを盛り上げる存在。 応援したり一緒に喜んだりして、利用者が楽しめる環境を作る |
利用者の安全を守る存在。 移動する利用者の歩行を支えたり、椅子からの転落がないよう全体を見まわしたりして、事故を防止する |
まとめ
レクリエーションは、「安心して日常生活を送りたい」という利用者の希望を叶えるために大きな役割を果たします。利用者の心身機能の維持・向上や脳の活性化を促すと同時に、利用者同士の交流も促せるためです。
同じレクリエーションに参加したことで、気分転換が図れたり孤立感が解消したりして、参加する前より元気になる利用者が介護現場には少なくありません。ぜひ本記事を参考にホワイトボードを使った魅力的なレクリエーションを実施していただき、利用者の生活機能にうまくアプローチしてみましょう。
なお、ホワイトボードには、大きく分けて壁掛けタイプと脚付きタイプが存在します。介護施設のレクリエーションにおすすめなのは、キャスター付きの大型かつ無地のホワイトボードです。
ホワイトボードは、オフィス用品を取り扱っているお店やインターネットの通信販売でも入手できます。これからホワイトボードを使ったレクリエーションに取り組んでみたいという方は、ぜひ探してみてください。
当サイト内には、他にもデイサービスのレクリエーションに関連した記事を掲載しています。
こちらもぜひご覧ください。
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この記事の執筆者 | 千葉拓未 所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級) 専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。 以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。 生活相談員として5年間の勤務実績あり。 利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。 現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、 Webライターとして活躍している。 |
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