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【2024年介護報酬改定】介護職員等処遇改善加算の配分ルール(配分方法)などを解説

介護職員等処遇改善加算 配分ルール

令和6年度から始まった介護職員等処遇改善加算は、これまで行われた介護職員の処遇改善に関する加算を一本化したものです。
 
これまであった「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つの加算を一本化することにより、算定時の事務作業の負担軽減・介護職員や他の職員の収入を上げる効果が期待されています。
 
そのため、今後の算定のために、加算の配分ルールや算定要件について知りたい方も多いと思われます。今回は、介護職員等処遇改善加算の配分ルールを中心に、以下の内容を解説します。
 
・介護職員等処遇改善加算の対象職員
・介護職員等処遇改善加算の配分ルール
・介護職員等処遇改善加算の算定要件
・処遇改善加算の未払いの違法性とピンハネが可能か
 
介護職員等処遇改善加算を検討されている方、参考にしてください。

介護職員等処遇改善加算とは

介護職員等処遇改善加算とは介護職員をはじめとする、さまざまな介護サービス事業所・施設で働く職員の収入アップや職場環境の改善などを目的とした加算です。

もともと団塊の世代が75歳に達する2025年に向けて、多くの介護人材を確保する目的や介護現場で働く職員の処遇改善を目的に、2012年に施行した加算です。加算施行後も定期的な改正が行われ、処遇改善や整備された職場づくりを行えるように算定要件を満たした介護事業所・施設に支給されていました。

介護職員の処遇改善につながる「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」が別々に施行されていましたが、令和6年度の報酬改定に伴い「介護職員等処遇改善加算」へ一本化されました。

これら加算の一本化により、介護職員を含めたさまざまな職員の収入アップや算定時の事務負担の軽減が期待されています。

介護職員等処遇改善加算の対象職員

介護職員等処遇改善加算の対象職員

これまで行われてきた介護職員処遇改善加算は介護職員のみと限定されていました。しかし、介護職員等処遇改善加算へ変わることにより、介護職員以外の職員への配分も認められるようになりました。

本章では、介護職員等処遇改善加算の対象職員について解説します。

介護職員等処遇改善加算がもらえない人

介護職員等処遇改善加算は介護職員以外の職員への配分が認められています。

しかし以下の3つの種類の介護サービス事業所で働く人は、加算の配分が認められないため、介護職員等処遇改善加算の対象外となります。

医療に関するサービス事業所で働く人

介護保険サービスのうち、医療に関する在宅サービスで働く人は介護職員等処遇改善加算の対象外となります。

加算の対象外となる医療に関する在宅サービスは、以下の通りです。

・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハビリテーション
・(介護予防)居宅療養管理指導

上記で働く職員は看護やリハビリなどの医療面での役割が大きく、直接介護を行う訳ではないため加算の対象外となります。

福祉用具に関するサービス事業所で働く人

また、介護保険サービスのうち、福祉用具に関する在宅サービスで働く人も加算の対象外となります。

加算の対象外となる福祉用具に関する在宅サービスは、以下の通りです。

・特定(介護予防)福祉用具販売
・福祉用具貸与

上記を行うサービス事業所で働く人も、直接介護を行う訳ではないため加算の対象外となります。

介護支援に関するサービス事業所で働く人

ケアマネジメントを行う介護支援に関するサービス事業所で働く人も加算の対象外となります。

加算の対象外となる介護支援サービスは、以下の通りです。

・居宅介護支援
・介護予防支援

居宅介護支援や介護予防支援を行うのは、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターのケアマネジャーです。直接介護を行う訳ではないため加算の対象外となります。

介護職員以外への配分も可能

先ほども解説しましたが、介護職員等処遇改善加算では介護職員への配分を基本としつつ、介護職員以外への配分も認められています。

これまで施行されていた処遇改善加算では職種間の配分ルールが決められており、職員間での配分のバランスが課題となっていました。しかし、介護職員等処遇改善加算の施行に伴い、厚生労働省から以下のルールが定められています。

・介護職員への配分を基本とする。
・介護職員の中でも、特に経験・技能のある介護職員に重点的に配分する。
・介護サービス事業者等の判断で介護職員以外の職員への配分を認める。

参考:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について

このように介護職員等処遇改善加算では、これまでの職種間の配分ルールを廃止し、介護サービス事業所や介護施設において柔軟な運用が認められるようになりました。そのため、介護職員以外の職員への配分が可能となっています。

介護職員等処遇改善加算の配分ルール

本来、処遇改善加算は1年度内に全て介護職員の処遇改善のために使う必要があります。しかし、介護職員等処遇改善加算へ変わったことにより、令和6年度・令和7年度を通して全て介護職員などの処遇改善に使う事とされています。

そのため、令和6年度で得た加算額の一部を繰り越し、令和7年度に職員の賃上げに充てることや、反対に令和7年度分を前倒しして令和6年度の賃上げに使うことが可能です。

R7年度の賃上げ原資の一部を、R6年度の加算に前倒しして措置

引用:厚生労働省「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」リーフレット

さらに、令和6年度においては以下の配分ルールを遵守し、介護職員などの処遇改善を行わなければなりません。

「繰越額を除く加算の全額以上」の賃金改善を行う

令和7年度の繰越額を除いた処遇改善加算の全額以上の賃金改善が必要です。(令和6年度の加算額ー令和7年度への繰越額≦令和6年度の賃金改善に必要な金額)

「前年度から増加した加算額以上」の新たな賃金改善を行う

令和5年度と比較し、増加した処遇改善加算の金額以上の新たな賃金改善も必要なルールです。

基本的には、基本給または毎月支払われる手当のベースアップを行うよう求められています。しかし、ベースアップが難しい場合は他の手当の支給や、ボーナスとして支払う事でも構わないとされます。
(令和6年度の加算額ー令和5年度の加算額ー令和7年度の繰越額≦令和6年度の新たな賃金改善に必要な金額)

加算以外の部分で賃金を下げない

介護職員等処遇改善加算は、介護職員などの職員に支払っている現在の賃金に上乗せし、賃上げを行うための加算です。

いかなる事情でも、現在の賃金を下げた上で足りない金額を加算で賄うことは認められません。

介護職員等処遇改善加算の算定要件

介護職員等処遇改善加算の算定要件

介護職員等処遇改善加算を算定する場合、これまでの介護職員への処遇改善関連加算と同様にさまざまな算定要件が定められています。

介護職員等処遇改善加算の基本的な算定要件は、以下の通りです。

・キャリアパス要件
・月額賃金改善要件
・職場環境等要件

また、上記の算定要件には、主に以下の3つのポイントが含まれています。

・職種間の配分ルールを廃止し、介護サービス事業所・介護施設で柔軟な配分が認められる

・介護職員等処遇改善加算におけるいずれかの区分を取得する介護サービス事業所・介護施設は、加算額の2分の1以上を賃金改善に充てる

・これまで処遇改善関連加算を算定していない介護サービス事業所・介護施設が新たに算定する場合、増加した加算額の3分の2以上を賃金改善のために配分する

そのため、介護職員等処遇改善加算を算定する際、あらかじめ算定要件を確認しましょう。詳しい算定要件を知りたい方は、以下の記事や厚生労働省の資料も参考にしてみてください。

 
参考:厚生労働省「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」リーフレット

処遇改善加算の未払いは違法?ピンハネはできる?

処遇改善加算の未払い、いわゆるピンハネは違法であり原則的にできません。処遇改善加算は国や自治体から支給されており、介護職員等の処遇改善を目的に全額支払わなければならないからです。

処遇改善加算は年度ごとに支給された費用の全額を介護職員等の処遇改善のために使う事がルールとして定められています。また、処遇改善加算を算定する際、都道府県などの指定権者に以下の手続きが必要です。

・処遇改善計画書の作成
・全職員への処遇改善計画書の内容周知
・処遇改善計画書などの必要書類の提出
・処遇改善計画書に沿った処遇改善策の実施
・実績報告書の作成
・実績報告書の提出

このような手続きを行い、全職員へ加算の分配方法などを周知することや、実際に職員へ支給した実績を、指定権者である都道府県へ報告する必要があります。そのため、処遇改善加算はピンハネできない仕組みとなっており、仮に適正に活用されなかった場合、返還などの制裁を受けることになるでしょう。

まとめ

令和6年から介護職員等処遇改善加算が始まり、事業所・施設の判断で介護職員以外の職員への配分が認められる事になりました。また、令和6年度は令和7年度と2年度を通して加算を使う必要があり、以下の配分ルールを遵守しなければなりません。

・「繰越額を除く加算の全額以上」の賃金改善を行う
・「前年度から増加した加算額以上」の新たな賃金改善を行う
・加算以外の部分で賃金を下げない

さらに、自治体への処遇改善計画書・実績報告書の提出や全職員への周知等の手続きが必要であるため、原則としてピンハネはできません。この様なルールに則り、適切に加算を算定できるように対処しましょう。

以下の記事では介護職員等処遇改善加算の算定要件や計算方法について解説しています。合わせて参考にしてみてください。

この記事の執筆者Kawashow

所有資格:介護福祉士 介護支援専門員 福祉用具専門相談員 福祉住環境コーディネーター2級

介護職として介護付き有料老人ホーム・病院の現場で7年間勤務。
ケアマネ資格取得後、地域密着型特養のケアマネとして2年間勤務し、現在は居宅介護支援事業所のケアマネとして8年目を迎えます。

本業と並行し、介護・福祉系ライターとしても活動しています。

 
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