医療や介護施設において、スタッフの希望や人間関係など様々な事情に配慮された公平なシフト作成が求められます。
勤務時間の複雑さや業務内容、人手不足により調整が難しく頭を悩ませている作成者は多いでしょう。
しかし、膨大な時間と手間を費やして作成したシフトに対して、スタッフたちから不満や不公平の声が出ることも少なくありません。
本記事では、介護職がシフトで感じる不公平の理由や、公平なシフトを作成するポイントについて詳しく解説します。
シフト作成・管理に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
介護職がシフトで感じる不公平とは?
管理者やリーダーは、スタッフの希望を叶えつつも、公平なシフト作成に苦慮しているでしょう。
一方で、スタッフたちは、シフトに不満や悩みを抱えることがあります。
ここでは、介護職の方々が感じるシフトに関する不公平について紹介します。
シフト希望が通らない
介護職は非常勤が多いことから、その勤務時間は個々の希望や状況に合わせて、以下のような細かい勤務希望も頻繁です。
・早出希望
・10時から13時までだったら勤務可能
・特定の日に夜勤を入れてほしい
シフト希望のルールは各事業所によって様々ですが、スタッフの人数や業務内容、施設の状況により希望が通らない場合もあり、全スタッフの希望を叶えることは難しいものです。
職場によっては非常勤で働くスタッフが多いですが、子育てや家庭の事情、他のアルバイトなどの予定がある場合、希望通りのシフトが取れないと不公平を感じてしまいます。
常勤のスタッフも希望休が通らないと家の用事やプライベートの予定が立てにくく、不公平や不満を感じやすくなります。
体力的にきついシフトになっている
介護の仕事は、心身ともに負担が大きく、適切な仕事と休息のバランスが必要です。
しかし、実際には仕事と休みのバランスが悪く、体力的にきつい業務が続くシフトが割り当てられることがあります。
きついシフトは、睡眠不足や疲労が蓄積され十分な休息をとることができないだけでなく、注意力が散漫になり、ミスや事故につながる危険性が生じてしまいます。
また、プライベートの確保が難しく、ストレスがたまることもあるでしょう。
さらに、人手不足からシフトの調整が難しく、特定のスタッフに負担が偏ることも少なくありません。
スタッフの欠勤や利用者の体調不良、突発的な事故では、連続勤務も仕方がないと思いつつも、きついシフトが続くと不公平に感じてしまいますね。
希望休が通らない
介護施設で働く職員たちは、翌月のシフト作成前に希望休を提出しますが、人数や業務内容によって調整ができず、希望が通らないことがあります。
その結果、
「せっかく希望休を出したのに反映されない」
と、不満の声も聞かれます。
希望休は、スタッフにとって大切なイベントの日である可能性が高く、可能な限り受け入れることが望ましいでしょう。
プライベートが充実してこそ、働くモチベーションにつながるからです。
希望休の調整が難しい際は、個別に交渉しますが、頻繁に続くと予定が立てにくくなったり、ストレスを感じたりすることがあります。
シフト発表のタイミングに不満
介護職の方は、毎月のシフト発表をドキドキしながら待っている方も多いかと思いますが、
「発表がギリギリで次のシフト直前まで分からない」
と、不満を持っている方もいます。
介護職は、シフトに基づいて予定を立てるため、シフト次第でライフスタイルが左右されることになるからです。
シフトが発表されない限り、予定を確定できず、子供の学校行事や家族との予定を合わせることも難しくなるでしょう。
一方で、シフト作成者も早めのシフト発表を望んでいることは理解していますが、業務が忙しかったり、なかなか調整がつかないこともあり、ギリギリのタイミングで発表せざるを得ない状況もあります。
発表が遅いと、自分の希望休が反映されるかどうか、きついシフトや残業が増えるかどうかなど不確定な状態が続くため、ストレスを感じるでしょう。
特定のスタッフに偏りが生じる
他のスタッフと比べたときや、特定のスタッフにシフトの偏りが生じているなど、バランスが崩れているシフトに不公平を感じている方も多いでしょう。
しかしこの問題は介護業界に限ったことではなく、企業全体で見ても子育て中のスタッフのシフトが優先され、独身のスタッフに業務の負担が集中してしまうことがあります。
子育て中のスタッフの休みに対しては柔軟にサポートすることが大切ですが、独身のスタッフからすると、
「どうして私だけ」
と、長時間労働や急なシフト変更などが公平性に欠けるように感じられるでしょう。
また、スキルや経験が豊富なスタッフたちも、シフトに不公平さを感じているかもしれません。
人員基準を満たしているシフトであっても、新人介護職とベテランスタッフが同じシフトに組まれると、ベテランスタッフに多くの業務が集中し、負担が大きくなる可能性があります。
介護現場で不公平に感じられるシフトができてしまう理由
シフト作成者は日々の業務に追われつつ、手間や時間を費やして作成したシフト。
にも関わらず、なぜ介護現場で不公平に感じられるシフトができてしまうのでしょうか。
スタッフが不公平に感じる理由は、介護業界特有の問題やシフト作成の在り方が考えられるでしょう。
では、その理由について詳しくみてみましょう。
きっと、シフト作成を担当されている管理者やリーダーの方はうなづけるものがあると思います。
人手不足
介護現場で不公平に感じられるシフトができてしまう理由のひとつに、介護現場の人手不足が挙げられます。
介護施設は、入居者に対して配置すべき職員の人数を遵守する必要があり、厚生労働省の基準では、指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)における介護職員の人員基準は「3:1以上」とされています。
つまり、入居者3人に対して最低1人の常勤の介護職員を配置する必要があるということです。
参照:厚生労働省 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について
シフトは、スタッフの希望やレベル、業務量などを考慮しながら、限られた人数での調整を行いますが、人員基準を満たすために必要な人員が不足していることに悩んでいる介護事業所は多いものです。
人手不足が続くと、スタッフを配置することができず、シフトに穴が生じてしまう可能性もあります。
そして、その穴を埋めるために特定のスタッフに多くの負担がかかり、本来のシフトを急遽変更せざるを得ない状況など、不公平を生じさせてしまいます。
シフト作成に時間や手間がかかる
シフト作成には膨大な時間や手間がかかりますが、多様な雇用形態も要因のひとつです。
・常勤の介護職員
・非常勤の介護職員(パートタイムやアルバイト)
・派遣社員
それぞれのスタッフの勤務希望や都合を考慮し、資格やスキルに応じた組み合わせや業務の割り当てを行う必要があります。
そして、入居者の状態や業務内容に応じたスタッフを配置し、柔軟なシフトを作成していることも手間がかかる理由のひとつとなるでしょう。
また、食事や入浴など特定の時間帯やイベント・行事がある日などは、適切なケアの提供とスタッフの負担軽減のため、シフトにおける人員を適切に配置しなければいけません。
さらにシフト作成を手作業で行っている介護施設が多く、表計算ソフトで作成する場合でも、手動で入力した後に印刷して一人ひとりに配布するスタイルです。
シフト作成の業務自体が複雑な上に、就業規則や法令、人員配置基準、個々の勤務条件、有給などを考慮してシフトを作成する必要があるため、その作成には時間や手間がかかってしまうのが現状です。
シフト作成者のスキル・考え方
シフト作成者のスキルや考え方も、シフトに大きく反映され、その要因は以下の3つあります。
・スタッフのスキルを把握していない
シフトは、数時間単位での時間配分をパズルをするようにスキルや経験のあるスタッフを割り当てて配置していますが、作成者のスキル不足の場合、スタッフの能力を把握できていないため、配置が不適切になります。
・業務への理解不足や偏見
スタッフの意見や要望に耳を傾けず、自己中心的な考え方で作成したり、作成者自身の好みや思い入れ、個人的な人間関係などがシフトに反映されることがあります。
・スタッフと運営側との板挟み
シフト作成者は、施設の運営からの意見にも耳を傾けなければいけません。
スタッフと運営側の理想のシフト、それぞれの優先順位や判断基準が異なり、スタッフにとっては不公平なシフトになることもあるでしょう。
いずれにしても、スタッフの不満が溜まるだけでなく、業務に支障をきたすこともあるでしょう。
シフト作成者が限られている
管理者や介護リーダーは、シフト作成以外にも以下のような業務をこなしています。
・シフト作成
・介護業務
・金銭や勤怠管理
・書類整理
・スタッフの指導
・家族対応
運営への信頼に関わる業務は「管理者やリーダー」と限られている場合が多いです。
そのため、多忙な業務の中でシフト作成への時間を十分に確保することができず、時間不足から不公平なシフトが作成されてしまうことがあるでしょう。
希望休が特定の日に集中してしまう
スタッフの希望休には、家庭の都合や趣味、友人との約束など、様々な理由があります。
特に子育て中のスタッフは、子供や家庭の事情でゴールデンウィークや年末年始、夏休みなど大型連休に希望休が重なりやすい傾向です。
しかし、特定の日に複数のスタッフが希望休を取ると、他のスタッフへの業務負担が増え、ストレスや疲労感が溜まってしまうことにつながります。
特定の日に希望休が重なってしまった場合は、他のスタッフと交渉し、誰かに我慢をしてもらわなければいけません。
このような状況が続くと、シフトへの不公平感だけでなく、スタッフ間のチームワークにも悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。
介護業界における独自の労働体系
介護職のシフトは、24時間365日の稼働をカバーする人員配置基準や加算要件を満たすスタッフが配置され、数時間単位で細かく区切られている場合が多いです。
これは介護職の人手不足を補うため、短時間勤務、交代制勤務が複雑に組み合わされてシフトが完成されているからです。
以下のような介護業界特有の勤務形態によって、決まった時間で区切られた交代制勤務のシフト作成を難しくさせています。
・早出や遅出などシフト勤務ができないスタッフ
・平日のみしか働けない人
・朝・夕の送迎業務だけを行うスタッフ
・調理や清掃など特定の業務だけを行うスタッフ
それぞれの業務の内容は介護施設によって異なりますが、特定の業務を担うスタッフは、直接介助をしない契約であることも少なくありません。
そのため、特定のスタッフに業務の負担やシフト調整が偏りやすく、シフトへの不公平感につながっているといえるでしょう。
介護現場で公平なシフトを作成するポイント
介護現場は、特定の時間や業務だけを担う非常勤職員が多く、様々な希望や契約で働いています。
多くの制約がある中で、全てのスタッフが満足できるシフトを作成することは簡単ではありませんが、働きやすさや職場環境の改善につながる公平なシフトを作成することが重要です。
ここでは、介護現場で公平なシフトを作成するポイントについて紹介します。
シフト作成のルールを決めておく
介護現場では休日が不規則なため、多くの施設が希望休制度を導入していますが、スタッフが希望する休日が多すぎると、シフト調整が困難になることがあります。
そのため、勤務や希望休申請の回数や締切日などのルールを明確にし、スタッフ間で周知徹底することが重要です。
例えば、「希望休は月3日まで」「土日の休みは2日まで」「特定の日に希望休が重なった場合の対応」など具体的なルールを設けるということです。
こうしたルールを決めておくことで、偏りのない公平なシフトを作成でき、スタッフとの信頼関係が深まり、シフト作成者の負担軽減にもつながるでしょう。
しかしながら、スタッフの都合や状況に変化が生じた場合には、シフトを再調整する必要が生じることもあります。
確定したシフトの勤務日や休日を変更することは、スタッフに負担をかけてしまいますので、スタッフの協力体制を浸透させておくことが重要です。
日頃からスタッフとコミュニケーションを取る
介護現場は、人手不足の中で人員をやりくりして対応していますので、急な欠勤や早退などがあれば、他のスタッフに勤務交代や残業などでカバーしてもらわなければいけません。
シフト作成者は柔軟性を持ち、臨機応変に対応することが求められますが、各スタッフにも「お互い様」「助け合い」の気持ちを持って働いてもらうような意識付けが必要です。
このような温かい職場環境は、日頃のコミュニケーションから生まれます。
良好な関係性が築かれている場合は、スタッフ同士が柔軟に協力し合い、シフト調整にも快く応じてくれることでしょう。
また、シフト作成者が積極的にスタッフの声に耳を傾け、コミュニケーションをとることも大切です。
スタッフがシフト作成に関する希望や要望を伝えやすくなれば、作成者側もそれを考慮しやすくなるため、公平なシフトを作成することができるでしょう。
「夜勤」と「公休」を優先して作成する
介護施設のシフトは、確定された予定である「夜勤」と「公休」を優先して作成することも重要なポイントです。
夜勤は、仕事内容から体力的にも精神的にも負担が大きく、健康状態や生活リズムにも影響を与えることがあります。
そのため、夜勤を連続して入ることや特定のスタッフの夜勤回数が多いなど偏りが生じると、ストレスや疲れがたまり、意欲低下や体調不良、早期退職につながるからです。
夜勤の割り当てのバランスが悪いと、スタッフが不公平感を感じやすくなってしまうでしょう。
また、公休や希望休についてもスタッフが自分自身や家族との時間を過ごすことができる大切な時間なので、希望通りに休みを取得できるように、優先的に考慮することが大切です。
シフト作成者は、夜勤や公休を可能な限り均等に配分するように心がけることが求められます。
介護スタッフの能力や人間関係を考慮する
介護現場はチームで仕事を行うことが多いため、介護スタッフの能力や人間関係を考慮することも大切です。
例えば、特定のスタッフ同士で人間関係が悪い場合には、同じシフトに配置しないようにすることで、トラブルを防ぐことができます。
また、仕事のスキルや経験が豊富なスタッフは、新人スタッフがいる場合にはそのサポート役として配置することで、効率的に仕事をこなすことができるでしょう。
介護現場ではスタッフの能力や特性に合わせた調整が不可欠なので、シフト作成者は、日頃から介護スタッフのスキルチェックやヒアリングを通じてスタッフを理解する必要があります。
スタッフが自分の能力を発揮し人間関係に問題なく活躍できることで、働きやすい職場環境づくりや公平なシフトにつながるでしょう。
介護職の公平なシフト作成はシフト作成ソフトがおすすめ
介護現場の人員配置基準を確保し、スタッフの希望やスキルを考慮した公平なシフト作成は、時間や手間がかかり大変な業務です。
表計算ソフトや手書きのシフトでは、明確なルールや割り当てを反映させることに限界がありますよね。
そこで「シンクロシフト」を活用することで、希望休の集計や複雑なシフト配置も自動で公平なシフトが作成可能になります。
シフト作成者は、希望休の自動集計が終わったら、シフト自動作成ボタンをクリックして待つだけです。
勤務形態一覧表の作成、特定のスタッフや業務に偏りがないシフトが作成されるので、作業の手間や時間を大幅に軽減できるでしょう。
公平なシフト作成が実現できるだけでなく、効率化された時間を介護現場のケアやスタッフへの指導、その他業務に割り当てることができるため、よりよいサービスの提供につながります。
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まとめ
不公平を感じさせないシフト作成に必要なことは、スタッフとのコミュニケーションを大切にすることです。
スタッフの不満や不公平感は、職場環境やスタッフのモチベーションに大きな影響を与えます。
小さなことでも意見を共有し合える職場環境があれば、お互いが気持ちよく仕事をでき、不満や不公平の声があってもフォローしやすくなるでしょう。
また、シフト作成者は、スタッフの働き方の希望や家庭の事情などを理解しようとする意識が重要です。
シフト作成における業務改善を図ることで、スタッフと向き合う時間を確保でき、業務の負担も軽減できます。
積極的にスタッフの声に耳を傾け、公平なシフト作りを進めていきましょう。
この記事の執筆者 | 吉田あい 保有資格:社会福祉士・介護福祉士・メンタル心理カウンセラー・介護支援専門員 現場、相談現場など経験は10年超。 介護現場(特別養護老人ホーム・デイサービス・グループホーム・居宅介護支援事業所)、相談現場を経験。 現在はグループホームのケアマネジャーとして勤務。 |
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