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【教えて!】高齢者のQOLはなぜ低下する?介護現場でできる対策とQOL向上施策

高齢者のQOL低下への対策

介護現場において、高齢者のQOL(Quality Of Life)を維持・向上させる取り組みは重要です。
 
しかし、「QOLがよくわからない」「QOL低下をどうやって対策すればいいのか?」と悩む介護職員も多いのではないでしょうか。
 
この記事では、QOLの基礎知識や重要視される理由について解説します。
 
介護現場でできるQOL向上の対策も紹介しますので、ぜひご覧ください。

高齢者におけるQOLとは

高齢者のQOL

QOLについて、以下2つの基本を解説します。

1.QOLの定義
2.ADL・IADLとの関係性

それぞれ詳しくみていきましょう。

QOLの定義・意味

QOLとは、「生命・人生・生活の質」などと訳され、主に「生きがい」や「その人らしい生活を送る」という意味で用いられています。

WHOでは、以下のようにQOLを定義しています。

個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準または関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識

引用:公益財団法人長寿科学振興財団 『高齢者のQOL

その人が幸せと感じ充実した生活を送ることが重要であり、その幸せは感じる人によって大きく異なるのです。

また、病気などの身体的な側面だけではなく、精神面・社会関係・生活環境などさまざまな要素がQOLに影響します。

介護現場では、高齢者が「どういったところに幸せを感じるか、満足と思えるか」を知ることが重要です。

ADL・IADLとの関係性

また介護現場では、「ADL」や「IADL」といった高齢者の生活動作を知るうえで重要な指標があります。

QOLとADL・IADLとの大まかな違いは、下表のとおりです。

  QOL ADL IADL
意味 Quality Of Life
(生活・人生・生命の質)
Activities of Daily Living
(日常生活動作)
Instrumental Activities of Daily Living
(手段的日常生活動作)
具体例 ・健康状態がよい
・趣味を楽しめる
・良好な人間関係がある
・社会貢献できる など
・食事
・排泄
・入浴
・移動 など
・買い物
・料理
・洗濯
・交通機関の利用 など

 

ADLは、日常的な生活を送るうえで欠かせない動作を指す言葉です。

一方、IADLは買い物における記憶や判断といった、より複合的な機能を必要とする動作のことをいいます。

QOLはこれらADL・IADLと相関関係にあり、ADLやIADLの向上に比例してQOLも向上すると言われています。

逆に、ADL・IADLが低下する、つまり「できないことが増える」とQOLが下がる場合もあるのです。

介護現場では高齢者のADL・IADLをよく観察し、希望に沿ったケアを提供できるとQOLが向上する傾向にあります。

ただし、QOLはADLやIADLの向上・低下と必ず比例するわけではありません。

たとえば、身体が動かずほぼ介助が必要な状態(=ADL低下)となっていても、周りの家族や友人などの関係が良好であるならば、QOLが向上することもあるでしょう。

介護職員は、身体機能だけではなく精神状態・周辺環境なども含めて、QOLを向上させるケアが求められます。

介護・福祉でQOLが重視される理由

高齢者のQOLを低下させない工夫が大切

介護・福祉現場において、以下のような理由からQOLが重視されています。

QOLが重視される理由

 
・高齢者の自立した生活を促す
 
・楽しみや生きがいが生まれ、より充実した生活が送れる
 
・身体機能や心理面の維持・向上につながる
 
・介護負担の軽減になる など

高齢者や障がいを抱えた方からすると「介護を受けなければならなくなった」と、不安に感じて落ち込むこともあるでしょう。

そうした精神状態では、さらにQOLが低下するという悪循環につながりかねません。

介護・福祉現場では、あくまで高齢者の自立した生活を守れるようサポートすることが大切です。

高齢者のQOLが低下する原因

高齢者のQOLが低下する原因

高齢者のQOLが低下する主な原因は、以下の4つです。

注意

 
1.身体的要因
 
2.精神的要因
 
3.社会的要因
 
4.環境的要因

それぞれの要因について知り、QOL低下を防ぐ取り組みをしていきましょう。

また、各原因がお互いに影響しあってQOL低下を招く可能性もあります。

ご本人の周辺状況も観察し、予防や対策を講じることが大切です。

身体的要因

老化や病気による身体機能の低下で、QOLも低下するおそれがあります。

具体的には、以下のようなケースです。

・老化による身体機能低下

・病気やケガ

・運動不足

・低栄養状態 など

身体機能が低下すると、精神的な負担や日常生活にも大きな影響を及ぼします。

この状態が続くと人間関係の悪化や金銭的な不安にもつながり、さらにQOL低下につながるケースもあります。

日常生活のなかで、栄養バランスのとれた食事や適度な運動・睡眠を行い、身体機能の低下を防ぐ対策が必要です。

精神的要因

精神的な不安やストレスにより、QOLが低下する可能性があります。

具体的には、以下のような状態です。

・疲労

・ストレス

・不安や抑うつ など

心の健康が損なわれた状態が続くと、意欲や楽しみを失いQOLが低下してしまいます。

まずは日常生活でストレスや疲れをためないとともに、精神的な病気や症状がみられたら専門的な医師やスタッフに相談してみましょう。

社会的要因

人間関係や社会参加の機会が減少することも、QOLを低下させる要因の1つです。

具体的なケースは、以下のとおりです。

・友人との交流が減る

・趣味や余暇活動をする機会がない

・やりがいや達成感がない など

とくに、家族や親しい友人が亡くなったり、趣味や交流の機会が減ったりすると孤立する事例が多くあります。

孤立や孤独を防ぐためにも、介護現場で地域のイベントや社会参加の機会を確保する取り組みが必要です。

環境的要因

高齢者を取り巻く周辺環境もQOLに影響します。

具体的には、以下のようなケースです。

・生活環境が変わり落ち着かない

・収入が不安定で、生活に不安がある

・生活環境がご本人の状況とあっていない など

介護施設に入居された場合、今までとは違う環境で生活するためストレスを感じてしまうこともあります。

ご本人が安全かつ落ち着ける環境を整える対策が必要です。

ご利用者のみならず、働く介護職員にとっても環境整備は重要視されています。

介護施設における環境整備やそのポイントについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

高齢者のQOLを向上させるメリット

高齢者と介護士

高齢者のQOLを向上させると、主に以下3つのメリットがあります。

高齢者のQOL向上によるメリット

 
1.心身の健康維持
 
2.生活意欲の向上と自立
 
3.介護負担の軽減

それぞれのメリットを把握し、QOL向上に取り組みましょう。

心身の健康維持

QOLが向上すると、心身の健康維持につながり、よりよい生活を送れます。

QOLを向上させる基本は、以下のような規則正しい生活です。

・安心できる、自立した排泄

・栄養バランスのとれた食事

・清潔な状態

・十分な睡眠 など

QOLが向上すれば規則正しい生活への活力となり、さらなるQOL向上が期待できます。

まずは、生活リズムをしっかりと整えて心身の健康を維持しましょう。

生活意欲の向上と自立

生活のなかで生きがいや楽しみが見つかると、生活意欲が上がります。

たとえば、施設での生活で役割や仕事があると、以下のような効果が期待できるでしょう。

役割例 期待できる効果・主なメリット
食事づくりに参加する
身体面 ・食材を切る・混ぜるなどの身体機能を維持できる
・料理のレシピを思い出す、食材を覚えることで認知機能の低下を防ぐ など
精神面 料理をしながら思い出話をするなどのコミュニケーションをとる
生きがい 「人の役に立てた」という安心・居場所を確保できる
社会参加 地域の祭りやイベントで作った料理をふるまう機会を作れる

「食事づくり」という日常生活の一部分のなかでも、数多くのQOLを向上させるきっかけがあります。

ご本人の状況にあわせて、できる範囲で活動を促してみましょう。

介護負担の軽減

QOLが向上しご利用者の意欲が高まると、介護負担の軽減につながります。

ご本人の「やりたい」「できる」という意欲があると、介護職員が直接ケアする手間を減らせるのです。

意欲を尊重するのはもちろん、「やりたい」を叶えられるような環境整備も重要です。

ご利用者のQOL向上のために介護現場でできる対策

介護施設の入居者と介護職

介護現場で取り組めるQOL向上のための対策は、主に以下4つです。

1.ご利用者一人ひとりの希望を理解する

2.ご利用者の個別性を尊重したケア

3.多職種連携による包括的な支援

4.自律支援・自発的な活動を引き出す工夫をする

ご利用者の希望や状況にあわせて、チーム・施設全体で取り組んでいきましょう。

ご利用者一人ひとりの希望を理解する

ご利用者によって「何に幸せと感じるか」などといったQOLの価値観が異なります。

まず、ご利用者一人ひとりが何を望んでいるのか、何がやりたいかを理解することが重要です。

たとえば、以下のような対応でご利用者の希望やニーズを確認していきます。

・介助時や生活での要望を傾聴する

・アセスメントを行う

・ご本人やご家族から生活歴を伺う など

日々のコミュニケーションやかかわりのなかで、ご利用者が何に楽しみ・喜びを感じているのかをチェックし、ニーズや課題があれば解決していく働きかけが必要です。

ご利用者の個別性を尊重したケア

QOLは、身体・精神状況だけではなく、価値観や周辺環境によって大きく異なります。

一人ひとりの希望を理解したうえで、個別性を尊重したケアが大切です。

介護施設という同じような部屋や設備のなかで、病歴や生活歴・価値観の違う方々が生活されています。

そのため、ご利用者それぞれのこだわりが反映されたケアが提供できるとQOLも向上できるでしょう。

たとえば、アクティブに動けるご利用者の場合、積極的にリハビリテーションや社会参加を促します。

一方で、要介護度が高く寝たきりの方の場合、ご家族や友人との関係を重視するような働きかけをすることも効果的です。

多職種連携による包括的な支援

ご利用者のQOLを構成する要素はさまざまであり、介護職員だけでは解決が難しい場面も多くあります。

QOL向上を目指すために、多職種連携による包括的な支援が重要です。

たとえば、以下のような職種と連携することが求められます。

主な職種 サポート例
医師・看護師 健康管理、病状の経過観察 など
リハビリ職 リハビリテーションの実施、日常生活動作の観察 など
管理栄養士 食事状況の観察、栄養面のサポート など
歯科衛生士 口腔内の観察、口腔ケアの実施 など
ケアマネージャー
地域包括支援センター
介護保険の相談業務、減免制度の活用におけるアドバイス など

 

とくに、2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的取り組みが重要視されました。

包括的にサポートすることで、自立支援や重度化防止につながることが期待されています。

機能訓練・口腔管理・栄養管理の一体的取り組みの重要性や関連する加算については、以下の記事もあわせてチェックしてください。

自律支援・自発的な活動を引き出す工夫をする

ご利用者へさまざまな介助を行ううえで、自発的な活動を引き出せるよう『自律』支援方法を工夫してみましょう。

『自立支援』と『自律支援』には下表のような違いがあります。

  自立支援 自律支援
意味 自分自身でできるように支援する 自らの意思に基づき選択できるよう支援する
具体例 ・食べたい料理を自分で買い物し、料理する
・好きな洋服を着る など
・数種類のメニューから好きな食事を選んでもらう
・ご本人の好きな色をふまえ洋服を数枚準備しておく など

 

介護職員はご利用者が自身でできること(=『自立』)を見極めつつ、サポートが必要な部分があれば意思決定しやすいよう『自律』支援していくことが大切です。

このとき、ご利用者のできることに注目し、主体的な行動・自己選択をサポートする「エンパワーメント」の考え方が役立つでしょう。

エンパワーメントのポイントや推進するメリットについては、以下の記事もご覧ください。

まとめ

高齢者は、身体・精神状況の悪化からQOLが低下する傾向にあります。

介護現場では、QOLを低下させないのはもちろん、少しずつでも向上できるように工夫が必要です。

そのためにもQOLの意義や対策を理解し、実践してみましょう。

Shift Lifeでは介護現場で役立つ記事を多数掲載しています。
業務改善や介護に関するさまざまな情報を知りたい方は、ほかの記事もぜひご覧ください。

この記事の執筆者しょーそん

保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了

グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。
現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。

現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。

 
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