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【2024年介護報酬改定】ADL維持等加算とは?算定要件、単位数などについて解説

ADL維持等加算とは

介護報酬の算定において、介護職員に対する処遇を改善するために、介護の基本報酬以外に算定できるように設けられたものが「加算」です。
 
介護報酬の改定は、2000年の介護保険の施行以来、3年に1度のサイクルで行われており、そのたび介護報酬や各種加算の保険点数や、算定のための要件などが変更されてきました。
 
ADL維持等加算一定期間(評価対象利用期間)において、ADL維持の維持・改善の度合いを評価するアウトカム評価です。算定要件を満たした場合には次年度の介護報酬に上乗せ加算することができます。また介護施設の評価にもつながる、といった特徴のある加算となります。
 
本記事ではADL維持等加算について、算定要件、単位数などを解説していきます。

ADL維持等加算とは

ADL維持等加算とは、「介護サービスの質を示すための評価加算」のことです。

ADL維持等加算は通所介護、地域密着型通所介護を利用している利用者のADL値を算出し、維持または改善の度合いが一定の水準を超えていると判断された事業所が取得できます。

算定の対象となるのは要介護の利用者のみですが、算定が可能であれば評価終了後の1年間、すべての要介護の利用者に対して加算を算定できます。

また、ADL維持等加算を取得する事で、利用者のADLを維持、改善できる施設として利用者とその家族、ケアマネージャーに対して、サービスの質の高さを示すことができます。

ADL維持等加算の背景と目的

ADL維持等加算は2018年の介護報酬改定から設けられた加算で、利用者の自立支援や重度化を防止する施設に対する、インセンティブな加算として設けられました。2021年と2024年の介護報酬改定の際にも、加算要件などが改定されました。

今回の改定の背景には、

「介護事業所が利用額が比較的高額、高い収益が期待できる利用者のみを受け入れるのを防止すること(クリームスキミング)」

「日常生活動作機能の向上・維持を実現できる利用者を増やすこと」

を目的として改定が行われています。

2024年度介護報酬改定でのADL維持等加算の変更点

ADL維持等加算は2018年に設けられて以来、2021年、2024年と高齢者介護の現状と、社会のニーズを踏まえて改訂されてきました。

2024年の改定では、ADL維持等加算(Ⅱ)におけるADL利得の要件について、ADL利得を「2」以上から「3」以上に見直されました。

また、これまでADL利得の計算において、評価のタイミングによって調整係数のパターンが複数存在していましたが、2024年の改訂によって評価のタイミングに関わらず、調整係数が1本化され、計算式が簡素化されました。

ADL維持等加算の対象となる介護サービス種別

ADL維持加算の対象となるサービス種別は以下の通りです。

・通所介護
・地域密着型通所介護
・認知症対応型通所介護
・特定施設入居者生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・介護老人福祉施設
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

ADL維持等加算の算定要件

ADL維持当加算には加算(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。それぞれの算定のための要件を以下にまとめました。

ADL維持当加算(Ⅰ) ADL維持当加算(Ⅱ)
対象者 ・要介護1から5の利用者
・利用者の総数が10人以上である
算定条件 ・利用者の総数が10人以上である事
(評価対象利用期間が6月を超える者)

・利用者等全員について、利用開始月と、当該月の翌月から起算して6か月目(6ヵ月目にサービスの利用がない場合はサービスの利用があった最終月)において、バーセルインデックスを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省(LIFE)にデータ提出していること。
・ADL利得が1以上
・加算(Ⅰ)と同様の算定要件に加え、ADL利得が3以上である事

 

ADL維持等加算の単位数

上記の表の通り、それぞれの加算の算定の要件の違いは、ADL利得が1以上か3以上であることです。加算(Ⅱ)の方がADL利得の要件が厳しくなっていることから、加算(Ⅱ)の方が加算点数が高くなっています。

それぞれの点数は、

ADL維持等加算(Ⅰ):30単位

ADL維持等加算(Ⅱ):60単位

となっています。

ADL維持等加算については併算定は不可となっています。

ADL維持等加算の算定スケジュール

ADL維持等加算を算定するには申出を行ってから1年間の評価対象期間が必要になります。

1年間の評価対象期間の初回利用月の翌月10日までと、6カ月目の翌月10日の合計1回、バーセルインデックスを用いて利用者のADL値を測定しLIFE(科学的介護情報システム)に情報提供を行います。

こうして1年間の評価対象期間後に加算の算定の届け出を提出し、それぞれの加算の算定要件を満たしていれば、判定を行った後、1年間算定可能です。また、利用者がサービスを終了する場合については、その月の翌月10日までに提出が必要になります。

Barthel Index(バーセルインデックス)とは

Barthel Index(バーセルインデックス)とは、要介護者のADLを簡易的に評価する指標の一つです。

評価を行うのは、バーセルインデックスの測定方法に係る研修を受講したり、厚生労働省のマニュアル及び、バーセルインデックスの測定についての動画等で測定方法を学習した担当者が行います。

測定項目は、

1・食事、2・車椅子とベッド間の移乗、3・整容、4・トイレ動作、5・入浴、6・移動、7・階段昇降、8・更衣、9・排便自制、10・排尿自制

という日常生活での能力を10項目に分け、簡潔に点数化することができるため、迅速に評価を行えるのが特徴です。

ADL維持等加算の留意点

ADL維持等加算の算定についての留意点として、加算の算定のためには、ADL値の測定とLIFEへの情報の提出以外にも、加算の届け出のために以下の書類が必要になります。

・介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
・介護給付費算定に係る体制等に関する届出書

加算の申請を行う場合は「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」の「ADL維持等加算(申出)の有無」欄に「2あり」と記入が必要です。ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)の場合「LIFEへの登録」欄に「2あり」と記入し提出します。

ADL維持等加算関連のQ&A(よくある質問)

Q 、ADL 維持等加算(Ⅱ)について、ADL 利得が「2以上」から「3以上」へ見直さ れることとなったが、令和6年3月以前に評価対象期間の届出を行っている場合であ っても、ADL 維持等加算(Ⅱ)の算定には ADL 利得3以上である必要があるか。

A、 令和5年4月以降が評価対象期間の始期となっている場合は、ADL 利得が3以上の場合 106 に、ADL 維持等加算(Ⅱ)を算定することができる

参照:「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月 15 日)」P105 ADL 維持等加算について

Q、令和6年4月以降サービス提供分に係る LIFE への提出情報如何。

A、令和6年4月以降サービス提供分に係る LIFE への提出情報に関して、令和6年4月 施行のサービスについては、令和6年度改定に対応した様式情報を提出すること。

・ 令和6年6月施行のサービス(訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、 予防訪問リハビリテーション、予防通所リハビリテーション)については、令和6年4 ~5月サービス提供分の提出情報に限り、令和3年度改定に対応した様式情報と令和 6年度改定に対応した様式の提出情報の共通する部分を把握できる範囲で提出するか、 令和6年度改定に対応した様式情報を提出すること。

・ 各加算で提出が必要な情報については、「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算 に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和6年3 月 15 日)を参照されたい。

参照:「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月 15 日)」P105 LIFE への提出情報について

まとめ

ADL維持等加算は、実際の算定までに時間を要する加算で、LIFEへの情報提供が必須であるなど、算定に対するハードルの高い加算となっていますが、算定できれば1年間という長い期間、30単位か60単位という多くの点数を加算できるため、可能であれば算定した方が良いでしょう。

しかし、ADL維持等加算はあくまで利用者のADLの維持向上に努め、一定の成果を挙げた事業所に対するインセンティブな加算であるため、適切な算定を行いましょう。

この記事の執筆者タツキ

保有資格:介護福祉士、社会福祉主事

専門学校卒業後から高齢者福祉の分野に従事。様々な現場での経験を経て、サ高住、有料老人ホームの施設長を務める。

現在は通所介護施設の管理者として尽力している。

 

 

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