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【教えて!】バーセルインデックス(Barthel Index)とは?評価方法と判定基準などを解説

バーセルインデックス(Barthel Index)とは

介護報酬改定にて、科学的介護情報システム(LIFE)の活用をはじめとする「科学的介護の推進」が示されています。これは、LIFEにて収集した情報を分析し事業所へフィードバックすることで、介護の根拠を数量的に示す取組を推進していくものです。
 
その中で、利用者の日常生活動作(ADL)など活動の自立性については、それらの目標設定や改善に向けた取組の構築にあたって、より明確かつ客観的な評価を行っていくことが求められています。
 
利用者のADLに対して明確かつ客観的な評価を行っていくために、個人の判断に任せるのではなく、バーセルインデックス(Barthel Index)、機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:FIM)を用いて評価を行うことが求められています。
 
本記事ではLIFEを用いた加算算定の際に、利用者の評価に用いられるバーセルインデックスについて解説していきます。

バーセルインデックス(Barthel Index)とは

高齢者が歩くのを見守る

バーセルインデックス(Barthel Index)とは移乗動作や着がえなどの日常生活動作(Activities of Daily Living;ADL)を評価するための指標です。アメリカにて理学療法士のBarthel氏たちによって提唱されたため、その名がつけられています。

バーセルインデックスは、10項目(食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、移動、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロール)からなり、総計は最高100点、最低0点となり、点数が高いほど動作の自立度が高いことを表します。

バーセルインデックスを用いる目的

バーセルインデックスを用いることで、介護者の主観ではなく、明確な評価項目に沿って対象者のADLを評価することができます。介護の現場にて、バーセルインデックスを用いることで、対象者のADLを数値化でき把握しやすくなります。また、評価項目に沿った評価を行うことで、職員間でも対象者のADLが共有しやすくなります。

バーセルインデックスの特徴

バーセルインデックスの特徴としては、以下の内容が挙げられます。

・シンプルで誰でもわかりやすい
・世界共通の評価方法
・「できる」活動を評価

バーセルインデックスは、10項目を0~100点で採点、評価も比較的簡易で時間がかかりにくいことが特徴として挙げられます。

また、利用者の評価時点での「できる」活動を評価することで、できる可能性を表す評価から、現在おこなっている活動との差を比較し、どのように支援すれば「できる」活動となり得るか展開していくかを考えることができます。

バーセルインデックスの評価方法と判定基準

各項目は15点、10点、5点、0点で評価し、自立だと10点または15点に、全介助や項目の動作が行えない場合は0点となります。どの項目も対象者が少しでも介助や見守りを要し、そばに誰かいなければ動作を安全に行えない場合は自立になりません。

バーセルインデックスの評価は各項目の動作を「できる」かどうかについて、普段の状況を踏まえ、必要に応じ実際に利用者に動作を行ってもらい評価します。食事の場面や入浴の場面など、実際の場面で評価することが望ましいですが、聞き取りでも構わないとされています。

それぞれの評価については以下の内容をご参照ください。

食事

点数 動作の例
10点(自立) ・お皿から食べ物を取り、適切な時間内に食べることができる。
・自助具を使用して自分で食べることができる。
・妥当な時間内に食べ終えることが出来る。
・食べやすい大きさに自分で切ることができる。
・エプロンを装着している場合は装着も自分で行える。
5点(部分介助) ・食べ物を食べやすいように切る介助が必要。
 ※キザミ色など、提供する段階で切ってある場合、「介助が必要」には入らない。
・エプロンの装着に介助が必要。
・食事に時間がかかる。
0点(全介助) ・ほとんど介助で食べている。
・経管栄養の場合、注入を介助者が行っている。

 

移乗

点数 動作の例
15点(自立) ・一連の移乗動作(車椅子でベッドまで近づく/ブレーキをかける/フットサポートを持ち上げる/ベッドに移る/ベッドに横になる/起き上がりベッドの縁に腰かける/(安全に移乗するために必要であれば)車いすの向きを変える/車いすに移る)を一人で安全にできる。
10点(部分介助または見守り) 上記のいずれかに最小限の介助や、指示または見守りが必要である(最小限の介助は、利用者にほとんど力を加えずに行う介助と考える)以下は一例です。
・フットサポートを上げる際に介助が必要。
・利用者が立ち上がる際お尻を軽く支える介助が必要。
・車いす停車の位置に声掛けが必要。
5点(介助) ・自分で起き上がり腰かけることができるが、立ち上がり動作・方向転換にかなりの介助が必要
0点(全介助または不可能) ・自分で起きることができず、移乗動作もほぼ全介助
・ベッドから起きて移乗することができずにリフトなどを使用している。

 

整容

点数 動作の例
5点(自立) ・手洗い、顔を洗う、歯磨き、髪を梳かす、髭剃りの全ての動作が一人でできる。道具の操作や管理も含めて一人でできる必要がある。
・女性で化粧をする習慣がある場合は、化粧を自分でできる。
0点(部分介助または全介助) 上記の動作に一つでも介助が必要。以下は一例です。
・手洗い、顔を洗う、歯磨きは一人で行えるが、髭剃りを机から出す、スイッチを入れる、歯の交換など操作・管理に介助が必要。
・手洗い、顔を洗う、歯磨きは一人で行えるが洗顔は行うことができずに顔拭き用のおしぼりを用意する必要がある。
・手洗い、顔を洗うことは一人で行えるが歯ブラシに歯磨き粉をつける介助が必要。

 

トイレ動作

点数 動作の例
10点(自立) ・一連のトイレ動作(便器へ腰掛ける・便器から立ち上がる/衣服の着脱/衣服が汚れないように整える/トイレットペーパーを使う)を一人で安全にできる。
・差し込み便器や尿器、ポータブルトイレを一人で使うことができ、使用後の洗浄管理も一人でできる。
・リハビリパンツやパットを使用していても、一連のトイレ動作や濡れたパットなどの後処理を一人でできる。
5点(部分介助) 上記のトイレ動作の一部に介助が必要。以下は一例です。
・立位バランスが不安定なために支える介助が必要。
・ズボンの上げ下ろしに介助が必要。
・トイレットペーパーでしっかりと汚れを落とせないため、清拭動作に介助が必要。
・差し込み便器や尿器、ポータブルトイレを一人で使うことができるが使用後の洗浄管理に介助が必要。
0点(全介助または不可能) ・一連のトイレ動作がほぼ全介助
・差し込み便器や尿器、ポータブルトイレを使用し、動作や洗浄管理がほぼ全介助。
・ベッド上でオムツ交換をしている。

 

入浴

点数 動作の例
5点(自立) ・一連の入浴動作(体や髪の毛を洗う/シャワーを使う/浴槽に入る)を一人で安全にできる。
0点(部分介助または全介助) 上記の入浴動作に一つでも見守りや介助が必要。以下は一例です。
・洗髪や洗体に介助が必要。
・浴槽の出入りに介助が必要。
・浴室で転ぶ危険性があるので、入浴中は見守りが必要。
・浴室で転ぶ危険性があるので、動作は一人で行えるが入浴中は見守りが必要。
・機械浴で入浴している場合。

 

移動

点数 動作の例
15点(自立) ・義肢、装具、杖、ピックアップ歩行器など(車輪付きではない歩行器)を使用して一人で安全に約45m以上連続して歩くことができる。
※途中で休憩を挟んだ場合、そこまでの距離で評価を行う。
10点(部分介助) ・脇を支える程度の介助や見守りがあれば約45m以上連続して歩くことができる。
・セーフティー歩行器や4輪歩行車など車輪付き歩行器を使用して一人で安全に約45m以上連続して歩くことができる。
5点(車いす使用) ・歩くことはできないが車いすを一人で安全に駆動し、角を曲がる/方向転換/テーブルやベッド、トイレなどへ移動することができ、約45m以上連続して駆動することができる。
0点(上記以外) ・歩行はできるが約45m以上連続して歩くことができない。
・車いす駆動を行えるが約45m以上連続して移動することができない。

 

階段昇降

点数 動作の例
10点(自立) ・手すりや杖を使用し、一人で安全に1階分の昇降をすることができる。
または見守り) ・一人では危ないので見守りが必要。
・脇を支えるなどの介助が必要。
0点(全介助または不可能) ・1階分の昇降に全介助が必要。
・3~4段の昇降のみ可能。
・全く行えない。

 

更衣

点数 動作の例
10点(自立) ・普段つけている衣服(ボタンを留める、ファスナーの開閉)、靴、装具の着脱が適切な時間内に一人でできる。
5点(部分介助) 介助が必要だが、介助は動作全体の半分以下。
・衣服の着脱、靴の着脱、装具の着脱などに介助が必要だが、更衣動作全体の半分以上は一人でできており、適切な時間内に終えることができる。
0点(上記以外) ・更衣動作の半分以上に介助が必要。

 

排便コントロール

点数 動作の例
10点(自立) ・便失禁がない。
・必要時に座薬や浣腸を自分で使用することができる。
・人工肛門(ストーマ)を使用している場合、パウチの交換や便破棄を一人でできる。
5点(部分介助) ・座薬、浣腸の使用に介助を要する。
・たまに失禁がある。
・時々、パウチの交換や便破棄に介助が必要。
0点 ・ほとんど失禁している。
・常にパウチの交換や便破棄に介助が必要。

 

排尿コントロール

点数 動作の例
10点(自立) ・昼夜とも排尿コントロールが可能で失敗がない。
・留置カテーテルや集尿器(コンドーム型集尿器など)を使用している場合は、それらを一人で装着し、尿の破棄や清浄管理ができる。
5点(部分介助) ・トイレに行くことや尿器の準備が間に合わない。
・たまに失禁がある(以下は例)
・昼間は失禁はないが、夜は数日に一度失禁があるためオムツを使用している。
・昼夜に限らないが、失禁することがある。
0点 ・ほとんど失禁している。
・留置カテーテルや集尿器(コンドーム型集尿器など)の装着、尿の破棄や洗浄管理に介助が必要。

 

参考:ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)利活用の手引き(令和6年度介護報酬改定対応版)2版 https://life-web.mhlw.go.jp/help(リンク先の下部にあります)

また、2021年4月に厚生労働省ではホームページ内で「バーセルインデックスの測定について」というタイトルでYouTubeを公開しています。こちらの動画も評価の際に活用できます。

バーセルインデックスの評価ができる人

タブレットを導入した介護施設

バーセルインデックスの評価が必要となるADL維持等加算については、2021年度の介護報酬改定以前はバーセルインデックスを計測できる者を機能訓練指導員のみとしていましたが、2021年介護報酬改定以降は「適切に評価できる者」と変更されています。

また、厚生労働省より発出されている介護報酬改定におけるQ&Aにて、以下のように記載されています。

Q:ADL評価は、一定の研修を受けた者により、バーセルインデックスを用いて行うとあるが、一定の研修とはなにか。

A:一定の研修とは、様々な主体によって実施されるバーセルインデックスの測定方法に係る研修を受講することや、厚生労働省において作成予定のバーセルインデックスに関するマニュアル(https://www.mhlw. go.jp/stf/shingi2/0000198094_00037.html)及びバーセルインデックスの測定についての動画等を用いて、バーセルインデックスの測定方法を学習することなどが考えられる。

また、事業所はバーセルインデックスによる評価を行う職員を、外部・内部の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士から指導を受ける研修に定期的に参加させ、その参加履歴を管理することなどによりバーセルインデックスの測定について、適切な質の管理を図る必要がある。加えて、これまでバーセルインデックスによる評価を実施したことがない職員が、はじめて評価を行う場合には、理学療法士の同席の下で実施する等の対応を行わねばならない。

参考:令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)(令和3年4月9日)」の送付について

バーセルインデックスは「ADL維持等加算」などでも活用されている

バーセルインデックスは科学的介護を実践するために、ADL維持等加算や個別機能訓練加算、リハビリテーションマネジメント加算などを算定する際に、評価を行い情報を提出することが求められています。

バーセルインデックスとFIMの違い

バーセルインデックスとFIMの違いは以下の内容が挙げられます。

  バーセルインデックス FIM
評価内容 「できる」ADL 「している」ADL
評価項目 10項目 18項目
点数 0~100点 18~126点
1項目における評価段階 2~4段階 7段階

 

バーセルインデックスは「できる」活動、FIMは「している」ADLを評価する違いがあります。

また、項目数はバーセルインデックスは10項目に対して、FIMは18項目であり、1項目における評価段階はバーセルインデックスは2~4段階に対して、FIMは7段階となっています。

そのため、採点にかかる総時間は項目および、評価段階が少ないバーセルインデックスの方が早く行うことができます。しかし、FIMの方が評価段階が細かく設定されており、詳細な判定を行うことができます。

また、バーセルインデックスは「移動項目」と「セルフケア」に重きを置く評価法ですが、一方、FIMは運動項目、認知項目と分けることができ、利用者の「社会的交流」や「問題解決」「記憶」などの認知機能面の評価も行うことができるのが特徴です。

ADL評価にFIMが適しているケースは?

バーセルインデックスに比べ、FIMの方が詳細な判定ができるため、利用者の細かな変化を把握しやすい特徴があると言えます。

また、バーセルインデックスは「移動項目」と「セルフケア」に重きをおいていますが、FIMはそれら「運動項目」に加え「認知項目」を含めた18項目を評価することができ、幅広い項目の評価を行うことができます。

FIMは利用者のADLを詳細に評価したい場合や、セルフケア能力を客観的に評価しケアプランの立案に役立てたい場合などに適しています。

バーセルインデックスの注意点

バーセルインデックスの評価は各項目の動作を「できる」かどうかについて、普段の状況を踏まえ、必要に応じ実際に利用者に動作を行ってもらい評価します。食事の場面や入浴の場面など、実際の場面で評価することが望ましいですが、聞き取りでも構わないとされています。

したがって、各項目のバーセルインデックスの点数は、利用者の実際の生活における状況(「できる」ADL)を必ずしも反映しないことに注意してください。
(例えば、ある利用者の総計が100点だったとしても実施可能な能力を有している事を示しており、実際の生活場面では全項目を独力で行っているとは限りません。本人の状況や生活環境を十分に考慮する必要があります。)

まとめ

バーセルインデックスは0~100点で表すことができ、シンプルで分かりやすいことが特徴とされています。評価はリハビリテーション職種が行うことが多いですが、評価結果を多職種で共有し、分析していくことで利用者の支援計画の立案に役立てることができます。また、利用者の評価得点の変化を追っていくことで、点数が下がっている場合などは支援計画を見直すきっかけに繋がることもあります。

FIMとの違いなど、ADL評価の特徴を理解し、状況に合わせて利用者の日常生活の評価に役立てると共に、科学的介護の推進に向けて、ぜひバーセルインデックスを活用してみてください。

この記事の執筆者こまさん

所有資格:作業療法士

経歴:作業療法士として医療分野では病院でのリハビリテーション業務に従事、介護分野では訪問リハビリテーション事業所を経て、現在は特別養護老人ホームの機能訓練指導員として従事。

入居者へ多職種で行う機能訓練の提供や、介護士への介護技術指導、LIFEや介護報酬改定に関わる業務などを担っている。

 

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