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【2024年介護報酬改定】通所介護(デイサービス)の口腔機能向上加算とは?算定要件、単位数などまとめ

通所介護(デイサービス)の口腔機能向上加算とは

通所介護(デイサービス)の口腔機能向上加算について解説しています。デイサービスなど、介護施設の運営において、介護保険の基本報酬以外に算定できるもの、それが「加算」です。
 
加算とは、従来の介護サービスに加え、専門的な知識やスキルなど、より質の高いサービスを提供した際に算定出来るもので、個別機能訓練加算、サービス提供体制強化加算、処遇改善加算、などそれぞれの要件を満たすことで、介護保険の基本報酬に上乗せした金額を請求する事が可能となります。
 
介護報酬の改定は、2000年の介護保険の施行以来、3年に1度のサイクルで行われており、介護報酬や各種加算の点数や、算定のための要件などがその都度変更されています。
 
今回はそんな加算の一つである、口腔機能向上加算について解説していきます。

口腔機能向上加算とは

口腔機能向上加算とは、通所介護事業所や通所リハビリテーション事業所において、口腔機能が低下している者や、低下するおそれのある者に対して、口腔機能の改善や低下予防に対しての取り組みを評価する加算で、口腔機能改善管理指導計画を作成、個別での指導を行った場合に取得できる加算のことです。

口腔機能向上加算には算定のための要件の異なる、

・口腔機能向上加算(Ⅰ)
・口腔機能向上加算(Ⅱ)

があります。

口腔機能向上加算(Ⅱ)は(Ⅰ)よりも点数が高い加算ですが、その分算定のための要件も厳しくなっています。

口腔機能向上加算の目的と背景

口腔機能とは、食物を摂取する際に、唾液を分泌したり、咀嚼・嚥下を行う機能を指します。他にも、呼吸、会話の際の発音や表情等に大きく影響し、「食べる」「話す」ことに関わる機能です。

口腔機能は食事やコミュニケーションに関わる重要な役割を果たし、これらの機能の低下防止や向上のための、より質の高いサービスの提供に対する評価が、加算の算定の背景です。

口腔機能向上加算の単位数と算定要件

現在、口腔機能向上加算には、単位数の異なる(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。算定については要支援、要介護、どちらの利用者も算定が可能で、算定については人員配置や計画書の作成などの要件を満たす必要があります。

加算(Ⅱ)は2021年の介護報酬改定により新設され、算定のための要件は加算(Ⅰ)よりも算定出来る単位数が高い分、要件は(Ⅰ)よりも高度な内容になっていて、両方を算定する事はできません。

ここではそれぞれの加算の単位数と要件について解説していきます。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227887.pdf

口腔機能向上加算(Ⅰ)

口腔機能向上加算(Ⅰ)の単位数は1回150単位で、要支援は月1回、要介護は月2回まで算定が可能です。

算定要件については以下の要件を満たす必要があります。

口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件

 
・人員配置について
言語聴覚士、歯科衛生士または看護職員を1名以上配置していること。
 
・計画の作成
サービスの利用開始時に、利用者の口腔機能の状態を把握し、言語聴覚士、歯科衛生士、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種の者が共同で各利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画を作成していること。
 
・サービスの実施
口腔機能改善管理指導計画に従い、言語聴覚士、歯科衛生士または看護職員が口腔機能向上のためのサービスを実施していること。
 
・サービスの記録
利用者毎の口腔機能改善管理指導計画に従ったサービスを実施し、その内容を記録する
 
・サービスの評価
利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画の進捗状況を定期的に評価していること。
 
・評価
評価の結果について、担当のケアマネージャーを通して、主治医、主治歯科医に情報提供すること。以上の要件を満たすことで、加算の算定が可能となります。

口腔機能向上加算(Ⅱ)

口腔機能向上加算(Ⅱ)の点数は160単位で、加算(Ⅰ)よりも高いものになっています。

算定要件は、人員や記録などの基本的な要件は、加算(Ⅰ)と変わりませんが、唯一違うのは、LIFE(科学的介護情報システム)を活用し、厚生労働省に口腔機能改善管理指導計画等の内容等の情報を提出することです。

算定回数についても要支援は月1回、要介護は月2回と、加算(Ⅰ)と同じです。また、LIFEへの情報提出頻度については利用者ごとに以下のアからウまでに定める月の翌月 10 日までに提出しなければなりません。

ア 新規に口腔機能改善管理計画の作成を行った日の属する月
イ 口腔機能改善管理計画の変更を行った日の属する月
ウ アまたはイのほか、少なくとも3月に1回

ただ注意点として、加算(Ⅰ)の要件を満たした上で算定できる加算(Ⅱ)ですが、(Ⅰ)と(Ⅱ)を同時に算定する事は出来ません。

口腔機能向上加算のサービス対象になる利用者

口腔機能向上加算を算定できるサービスの対象者は、厚労省の定める口腔機能向上加算の手引きにも記載されている、以下の要件を満たす方が対象になります。

1.認定調査票における嚥下、食事摂取、口腔清潔の3項目のいずれかの項目において 「1」 以外に該当する者

2.基本チェックリストの口腔機能に関連する (13)、(14)、(15) の 3項目のうち、2項目以上が 「1」 に該当する者

3.その他口腔機能の低下している者又はそのおそれのある者

これらの要件に当てはまり、ケアマネージャーの作成するケアプランにも、サービスの必要性を明記し、対象者の了承を得て、加算の算定が可能となります。

ただし例外として、これらの条件に当てはまらない場合でも、視認により口腔内の衛生状態に問題がある、歯科医師やケアマネージャー等からの情報提供により、口腔機能の低下やその可能性が懸念されると判断された場合も算定が可能です。

口腔機能向上加算のサービス対象にならない利用者

加算の算定要件を満たす利用者であっても、以下に当てはまる場合は加算を算定できないので、注意が必要です。

1.医療保険において歯科診療報酬点数表に掲げるを算定している者

2.複数の事業所を利用しており、他事業所で口腔機能向上加算を算定している者

3.口腔機能向上加算の算定に対して、同意を得られない者

デイサービスの口腔機能向上加算の取得状況

デイサービスの口腔機能向上加算の取得率について社会保障審議会介護給付費分科会の「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」によると、通所介護における口腔機能向上加算の取得率について、加算(Ⅰ)は7.9%、加算(Ⅱ)にいたっては6.0%と、かなり少なくなっています。

地域密着型や、認知症対応型通所介護では加算の取得している施設の数はさらに少なくなり、どの施設形態においても、加算(Ⅱ)の方が取得率はさらに低くなっています。

口腔機能向上加算の算定が少ない理由

口腔機能向上加算は事業所の売上について、算定すればプラスに繋がるものです。しかし、口腔機能向上加算の取得率は低いのが現状です。その理由として、まず「口腔機能向上加算算定可能な利用者の把握が難しい」と言う理由があります。

口腔機能は個人の状態や状況によって差があり、利用者が認知症であった場合、正確なコミュニケーションを図ることが難しいなど、一定の基準での判断が難しい事が理由の一つとして挙げられます。

他にも、通所介護施設では、施設によっては対象の専門職の配置義務のない事業所もあり、人員配置の問題で算定できないケースもあります。

口腔機能向上加算は口腔体操や唾液腺マッサージを行いますが、取り組みに対し、即効性に欠け、効果が実感しにくいなどの理由から、算定に対しての利用者からの同意が得にくいといった理由もあります。

これらの理由から、口腔機能向上加算の算定は低いのが現状となっています。

口腔ケアの重要性

口腔ケアを行う事は、利用者の健康状態を維持するために大変重要です。口腔内を清潔に保ち、口腔内の菌の繁殖を抑える事で、虫歯や歯周病といった病気の予防になります。

さらに、繁殖した菌が気道から侵入し、肺に到達する事で誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあります。誤嚥性肺炎以外にも口腔ケアを怠ることで、繁殖した菌が粘膜の機能を低下させ、様々な感染症にかかるリスクを上げてしまいます。

口腔ケアを行う目的は「口腔内の清潔を保つ」ことと「口腔機能の維持」があります。口腔機能とは唾液の分泌や、咀嚼機能、嚥下機能と言った食物の摂取に必要な機能です。

これらの機能が低下して、食物の摂取に影響が出れば、栄養状態の悪化や脱水、体力の低下など、様々な影響が考えられます。そのため口腔機能の維持は、健康状態の維持にとって大変重要と言えます。

まとめ

口腔機能向上加算に限らず、基本報酬以外の各種加算を算定することは、事業所の売上を伸ばす上で大変効果的な施策です。ただし、各加算ごとに決められた要件を満たさずに加算を算定すれば、行政からの実地指導などの際に指摘され、算定した報酬を返還しなければならない可能性があります。

最近は、介護事業所における不正請求等がニュースなどで報道されることもあり、悪質であるとされれば、返還ではなく事業停止などの重い処分が下される場合もあります。こういった事にならないよう、加算の算定要件をしっかりと確認し、適切にサービスを提供することが大切です。

この記事の執筆者タツキ

保有資格:介護福祉士、社会福祉主事

専門学校卒業後から高齢者福祉の分野に従事。様々な現場での経験を経て、サ高住、有料老人ホームの施設長を務める。

現在は通所介護施設の管理者として尽力している。

 

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