サービス提供体制強化加算とは、介護サービスの質を一定以上に保つために、体制づくりなどに取り組む介護事業所を評価する加算です。
2024年現在、サービス提供体制強化加算には3段階の区分が存在します。通所介護(デイサービス)は、いずれかの区分を算定することで、安定した施設経営を目指せます。
この記事では、通所介護事業所が算定できるサービス提供体制強化加算について解説。区分ごとの算定要件や介護職員の計算方法についても具体例を挙げて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
通所介護(デイサービス)のサービス提供体制強化加算とは
通所介護のサービス提供体制強化加算は、介護福祉士の資格保有者や介護福祉士資格保有者の勤務年数を基に、介護サービスの質を一定以上に保つための体制作りに取り組む事業所を評価する加算です。なお、2024年度の介護報酬改定において、サービス提供体制強化加算に変更はありません。
サービス提供体制強化加算は、幅広い種類の介護施設で算定できます。通所介護(デイサービス)以外にも以下の通いの介護サービスで算定可能です。
・通所リハビリテーション
・地域密着型通所介護
・療養通所介護
・認知症対応型通所介護
参考:厚生労働省|令和3年度介護報酬改定に向けて (介護人材の確保・介護現場の革新)サービス提供体制強化加算の算定状況
自社の事業所に介護福祉士が一定数在籍している場合、サービス提供体制強化加算の算定要件を満たしている可能性があります。これからサービス提供体制強化加算を算定する方は、続けて単位数と算定要件をチェックしましょう。
サービス提供体制強化加算の単位数と算定要件
サービス提供体制強化加算の3区分がこちらです。
・サービス提供体制強化加算(Ⅰ)
・サービス提供体制強化加算(Ⅱ)
・サービス提供体制強化加算(Ⅲ)
それぞれの単位数と算定要件をみていきましょう。
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)の単位数は、22単位/回です。
(Ⅰ)は、下記の項目のいずれか1つを満たすことで算定できます。
・介護職員のうち介護福祉士が70%以上配置されていること
・勤続10年以上の介護福祉士が25%以上配置されていること
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)の単位数は、18単位/回です。
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)は、
介護職員のうち介護福祉士が50%以上配置されていること
で算定できます。
サービス提供体制強化加算(Ⅲ)
サービス提供体制強化加算(Ⅲ)の単位数は、6単位/回です。
(Ⅲ)は、下記の項目のいずれか1つを満たすことで算定できます。
・介護職員のうち介護福祉士が40%以上配置されていること
・勤続7年以上の職員が30%以上配置されていること
職員の計算方法
サービス提供体制強化加算を算定するためには、介護職員の割合を算出する必要があります。具体的には、前年度の職員割合の実績(3月を除く11ヶ月間)を基に翌年度の算定可否が判断されます。
したがって、サービス提供体制強化加算を毎年算定するためには、介護職員の割合を毎年計算して期日までに届出を行わなくてはなりません。
また、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)あるいは(Ⅲ)を算定する場合、職員の勤続年数を算出する必要もあります。
ここでは、介護職員の割合を計算するために必要な常勤換算の計算式と勤続年数の考え方について解説します。
常勤換算の計算式
常勤換算とは、介護施設で働く人の平均人数を算出する計算式のことです。常勤換算によって、パートやアルバイトを含めた全職員の勤務時間を常勤職員数で算出できます。
常勤とは、事業所が定めた規定の勤務時間に達している職員のことです。一方、既定の勤務時間に達していない職員は、「非常勤」に分類されます。
常勤換算の計算式がこちらです。
常勤職員の人数+(非常勤職員の労働時間の合計÷常勤職員の所定労働時間)=常勤換算人数
※常勤換算は基本的に1か月で計算
20日間稼働する事業所Aを例に挙げてみましょう。
事業所Aには、常勤職員1人と1か月に100時間勤務する非常勤職員B、そして1か月に40時間勤務する非常勤職員Cが勤務しています。
<常勤換算の例>
事業所の稼働日数:1か月あたり20日間※月により変動あり
常勤職員の1日あたりの所定労働時間:8時間
常勤職員の1か月あたりの所定労働時間:160時間(8×20=160)
常勤換算の計算式にあてはめた例がこちらです。
1+(100+40÷160)=1.8※小数点第2位以下切り捨て
上記の計算では、常勤換算が1.8となります。
常勤換算は下記の計算式でも算出可能です。
勤務時間総数÷常勤職員の所定労働時間=常勤換算人数
先ほどの例をあてはめてみます。
(160+100+40)÷160=1.8※小数点第2位以下切り捨て
常勤換算を使用する際はどちらの計算式でも算出可能です。
勤続年数の考え方
サービス提供体制強化加算の勤続年数は、主に同一法人の勤務年数の合計を指します。別法人の勤務年数を通算することはできません。また、勤務年数と経験年数は分けて考えます。
以下に、令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)から、同一法人での勤続年数の考え方を引用します。
「同一法人等での勤続年数」の考え方について、
- 同一法人等(※)における異なるサービスの事業所での勤続年数や異なる雇用形態、
職種(直接処遇を行う職種に限る。)における勤続年数
- 事業所の合併又は別法人による事業の承継の場合であって、当該施設・事業所の職員
に変更がないなど、事業所が実質的に継続して運営していると認められる場合の勤続
年数は通算することができる。
(※)同一法人のほか、法人の代表者等が同一で、採用や人事異動、研修が一体として行
われる等、職員の労務管理を複数法人で一体的に行っている場合も含まれる。
・なお、介護職員等特定処遇改善加算において、当該事業所における経験・技能のある介
護職員の「勤続年数 10 年の考え方」とは異なることに留意すること。
引用:厚生労働省|令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)(令和3年3月26日)」
の送付について 問126
サービス提供体制強化加算では、「同一法人で異なる介護サービスの事業所で勤務した年数」を通算できます。また、アルバイトやパートといった異なる勤務形態でもあっても、勤続年数に含められます。
事業所の合併や他の法人により事業が継承された場合でも、合併や継承以前に通常通り事業所の業務に従事していた場合、勤務時間を通算して問題ありません。
通所介護のサービス提供体制強化加算についてのポイント
2021年度の介護報酬改定にて、常勤換算に関する要件が緩和されました。通所介護施設も同様です。
具体的には、自分の家族の介護で時短勤務化する場合に、週30時間以上勤務していれば常勤1名としてカウントされるようになりました。
・「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による育児の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、介護の短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。
・「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める。
引用:厚生労働省|令和5年9月 人員配置基準等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)4.(1)⑥ 人員配置基準における両立支援への配慮
例えば、常勤で働いていたA職員が自分の家族の介護で、育児・介護休業法による介護の短時間勤務制度等を利用した場合、週30時間以上勤務していれば、常勤1名としてカウントされます。
また、職員が産前産後休業や育児・介護休業などを取得した場合、複数の非常勤職員の常勤換算によって人員配置基準を満たすことも可能となりました。
・人員配置基準や報酬算定において「常勤」での配置が求められる職員が、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合に、同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算することで、人員配置基準を満たすことを認める。
この場合において、常勤職員の割合を要件とするサービス提供体制強化加算等の加算について、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合、当該職員についても常勤職員の割合に含めることを認める。
引用:厚生労働省|令和5年9月 人員配置基準等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)4.(1)⑥ 人員配置基準における両立支援への配慮
まとめ
通所介護施設は、介護職員の総数に占める介護福祉士の割合や職員の勤続年数によって、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)から(Ⅲ)のいずれかの区分を算定できます。
なお、サービス提供体制強化加算は重複して算定できない点にご注意ください。例えば、(Ⅰ)と(Ⅱ)の算定要件を満たしていた場合、算定できるのは(Ⅰ)または(Ⅱ)のどちらか1つとなります。
サービス提供体制強化加算の区分や要件、自社事業所の職員体制などを再度チェックしていただき、自社にあったサービス提供体制強化加算をご検討ください。
この記事の執筆者 | 千葉拓未 所有資格:社会福祉士・介護福祉士・初任者研修(ホームヘルパー2級) 専門学校卒業後、「社会福祉士」資格を取得。 以後、高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設を渡り歩き、約13年間介護畑に従事する。 生活相談員として5年間の勤務実績あり。 利用者とご家族の両方の課題解決に尽力。 現在は、介護現場で培った経験と知識を生かし、 Webライターとして活躍している。 |
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