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【教えて!】介護記録システムとは?導入のメリットと注意点を解説!

介護記録システムとは?

介護記録システムとは、これまで紙で行っていた記録をPCやタブレット等の電子機器を使うことで、業務効率化・経費削減の効果が期待できるシステムのことをいいます。導入や運用にあたり、あなたの施設や事業所に合った適切なシステム選びが重要です。
 
この記事では、介護記録システムを導入することで解決が期待できる課題やメリットについて解説します。また、介護記録システムの選び方や導入・運用における注意点についてもご紹介します。
 
介護記録システムについてどうすればいいのかわからない方、悩んでいる方はぜひご一読ください。

介護記録システムとは

タブレットで介護記録をする介護職

介護記録システムとは、介護保険サービスを利用している方の各種情報やケア内容を記録・管理できるシステムのことです。介護現場における記録業務は煩雑で時間がかかる業務であり、さらには管理・保管など介護現場外でも大きな負担となっています。

介護記録システムを導入・運用することで、記録業務の負担軽減や経費削減になり、ひいてはご利用者の安心や安全、ケアの充実につながるのです。

介護記録システム導入で解決が期待できる課題

介護記録システムを導入することで、以下のような課題解決が期待できます。

介護記録システム導入で期待できる課題解決

・介護職員の残業を削減する
・介護職員の職場満足度の向上につながる
・紙媒体でかかっていた経費を削減できる

 
これら介護記録システム導入による効果について解説します。

介護職員の残業削減(働き方改革)

介護記録システムを導入することで、介護職員の残業時間削減につながります。介護記録業務は、さまざまな業務の中で時間がかかると同時に、現場職員からすると後回しにされやすい業務です。

介護記録業務は、以下の要素で構成されています。

介護記録業務

1.ご利用者へのケアの実施
2.記録記入場所への移動
3.ご利用者ごとにケア内容の記録
4.必要に応じて個人用記録への転記
5.日勤や夜勤など、次の勤務者への申し送り

 
例えば、1ユニット9名のグループホームがあった場合、

・記入  :1人あたり1~2分×9名
・転記  :1人あたり1~2分×9名
・申し送り:1人あたり1~2分×9名

と、最大54分の時間が必要です。さらに、記録をしながらご利用者の見守りやトイレ誘導などをこなさなければならず、その分記録業務にかかる時間が増えてしまいます。

時間がかかり後回しにされやすい記録業務は、残業の大きな要因となっているのです。

そこで介護記録システムを導入することで、

・記録の入力時間の削減
・自動的に転記してくれるため転記業務やミスの防止
・申し送り時間の短縮

の効果が期待できます。記録入力や転記による負担軽減とともに、申し送りにおける必要情報の抽出により、効率的に記録業務ができ、残業時間の削減につながるのです。

介護職員の職場満足度の向上(人材の定着)

介護記録システムは、業務負担が少なく簡単に記録業務を行えるため、働きやすい職場作りに役立てることができます。記録業務の煩雑さを減らし、残業を少なくできる職場環境を整えることは、介護人材の定着につながります。

《早期離職防止や定着促進に効果があった方策》

早期離職防止や定着促進に効果があった方策
出典:厚生労働省 介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)

最も効果があったとして挙げられているのは、残業の削減や有給休暇の取得といった労働条件の改善です。慢性的な残業は介護人材の離職理由となり、さらなる人手不足から有給休暇が取得しづらくなる環境となってしまいます。

介護記録システムを導入することで、先述した介護職員の残業削減の効果に加え、職員の定着も期待できるでしょう。さらに、介護記録システムは職員間での円滑なコミュニケーションツールとしても機能します。

申し送りをした・しない、伝えた・伝わっていない、といったコミュニケーション不足により人間関係に問題が出てくるケースも存在します。介護記録システムにより簡潔に、素早く情報共有できることで、これまでよりもコミュニケーションが増えてスムーズに業務を行えるのです。

経費削減

介護記録システムを導入することで、記録物をデータで管理・保管できるため、経費削減の効果が期待できます。紙での記録の管理・保管をする場合、以下の費用が想定されます。

経費削減効果が期待されるもの

・紙代
・インク代
・ペンやバインダーなどの備品代
・記録物を綴じるファイル購入費
・記録物を保管する場所代
・不要になった記録物の処分費

 

さらに、紙での管理において、個人情報の盗難や自然災害での消失リスクも考えなければいけません。

介護記録システムでは、データで保管できるため、必要な書類だけ印刷することができます。また、ファイルや保管場所、紙の処分費も必要ありません。

もちろん、先述した介護職員の残業代や離職・採用に伴う費用への効果も考えると、介護記録システムにより、様々な経費削減効果が見込めます。

介護記録システムを導入するメリット

介護記録システムで業務効率化

業務負担や経費削減の効果が期待できる介護記録システム。導入するメリットは、以下の4つです。

介護記録システム 導入のメリット

1.業務負担を軽減する
2.情報共有がしやすくなる
3.書類の保管スペースを削減できる
4.介護に充てる時間が増える

 

これら介護記録システムのメリットについて解説します。

メリット1:業務負担を軽減

1つ目は、業務負担を軽減できることです。先述した通り、介護職員での記録業務における負担軽減はもちろんのこと、記録物のファイリングや保管・管理といった事務職員の負担軽減も効果があります。

メリット2:情報共有がしやすくなる

2つ目は、情報共有がしやすくなるということです。介護における情報共有には、以下のような場面があります。

・介護職員←→介護職員
・介護職員←→リーダーや管理者などの責任者
・介護職員←→ご利用者やそのご家族
・介護職員←→医療職やリハビリ職などの他職種

つまり、介護現場内のみならず介護記録に関するさまざまな情報を一元管理できることで、管理職や外部の関係者、他職種とも円滑に情報共有できるのです。これまで紙媒体で行っていた、関係各所に書類を渡し、読んだらサインをして、また回収して保管して…という面倒な作業が必要ありません。

データでやりとりできるため、緊急性のある情報も素早く共有できるのが、介護記録システムの大きなメリットといえるでしょう。

メリット3:書類の保管スペースを削減できる

3つ目は、紙での記録物で必要だった書類の保管スペースを削減できることです。従来、紙での記録を保管する場合、自治体によって期間は違いますが、2~5年間保管しなければなりません。

一方の介護記録システムの場合、データで記録物を保管できるため、保管スペースを確保する必要なく、その分空いたスペースを有効活用できます。

メリット4:介護に充てる時間が増える

4つ目は、記録業務の時間的負担、残業による身体的・精神的負担が少なくなることで、目の前のご利用者の介護に充てる時間が増えることです。ここで重要なのは、介護記録システムはあくまでツールであり、システムの導入自体が目的ではないことです。

様々な負担軽減策を講じることで、介護職員が働きやすい職場が作られ、身体的・精神的余裕が生まれることで、ご利用者のケアへと還元されます。記録や書類に目を向ける時間よりも、目の前にいるご利用者の思いや気持ちを傾聴する時間を割くことがとても重要です。

ご利用者のより安心できる生活を支援するうえで、介護記録システムは大きな役割を担っています。

介護記録システム導入(選び方)の注意点

介護記録システムは、あくまで業務改善や経費削減のためのツールです。施設や事業所の実情や課題、記録に関するニーズを把握しないまま導入してしまうと、結果として紙媒体より手間が増える危険性もあります。

介護記録システムを選ぶポイントや導入時の注意点は、以下の通りです。

介護記録システム選び ポイント・注意点

1.使い勝手の良い、現場に合った介護記録システムを選ぶ
2.クラウド型かオンプレミス型かを検討する
3.導入・運営コストを理解する
4.セキュリティについて理解する
5.システム連携が必要かどうか検討する
6.無料期間で使い倒す
7.使いこなせない職員への研修・サポート体制を構築する
8.アフターフォローの手厚さを確認しておく

 

上記の点を踏まえ、ぜひ自施設・事業所のシステム選びのご参考にしてください。

使い勝手の良い、現場に合った介護記録システムを選ぶ

介護記録システムを選ぶ時は、まず使い勝手のよい、現場に合ったものを選ぶようにしましょう。実際、介護記録システムを日々使用するのは介護職員です。

もちろんコスト面や連携などを考慮する必要もありますが、そもそも介護職員が使えなければ意味がありません。介護職員の記録業務における動線や表示形式、入力方法を確認しておきましょう。

例えば、記録を行う場合、以下の端末を使用することが想定されます。

《介護記録を行う端末の選び方》

介護記録を行う端末の選び方
出典:厚生労働省 介護ソフトを選定・導入する際のポイント集

現場職員が介護記録を入力するときどういった端末がよいか、また導入したいシステムが各種端末に対応しているかを確認する必要があります。デスクトップやノートパソコンは、キーボード入力で素早く入力ができる半面、持ち運びに制約があります。

タブレットやスマートフォンだと、タッチパネルで直感的な操作ができますが、画面が小さく入力に時間がかかることも。施設や事業所の規模によって、どういうシステムが効果的か変わりますので、現場職員とともにシステム選定を行うとよいでしょう。

クラウド型かオンプレミス型かを検討する

介護ソフトには、2種類の介護ソフト類型があります。

種類 特徴 主なメリット・デメリット
オンプレミス型 自社内にサーバーを構築し、ソフトをインストールし記録する方法 ・情報漏洩リスクが少ない
・導入に時間がかかる
・初期費用が高い
クラウド型 インターネット上にサーバーを構築し、サーバーにアクセスして記録する方法 ・低コストで導入できる
・どこでも閲覧・入力できる
・情報漏洩リスクがある

 

オンプレミス型は、自社内でサーバーを構築し情報を管理します。外部への漏洩リスクが少ない一方、導入時間がかかったり初期費用が高額になったりすることがあります。

クラウド型は、インターネット上でサーバーを構築し情報管理を行います。低コストで、インターネットがあればどこでも閲覧入力できますが、情報漏洩リスクの可能性が高くなります。

予算や使用したい端末、入力方法によって選び方が変わってきます。いつ、どこで、どのように記録業務をするかを検討しましょう。

導入・運営コストを理解する

介護記録システムを導入・運用していく場合、それぞれにコストが発生します。それぞれ以下のようなコストがかかることを理解しておきましょう。

オンプレミス型 クラウド型
共通コスト PCやタブレット、スマートフォンなどの端末代
Wi-Fiなどのネットワーク環境
導入コスト ・サーバー用PC ・初回契約料
運用コスト ・保守料金
・更新料
・月額利用料

 
共通でかかる費用として、記録を入力する端末代とネットワーク環境を整備する費用がかかります。オンプレミス型の場合、自社サーバーを構築するためのPCや保守費が発生し、クラウド型と比べると比較的高額になりやすい傾向です。

また、システムによってはシステムのアップデートによる費用や、各種連携オプションで追加料金が発生することもあります。導入・運用時のコストについては施設や事業所の規模によって変わりますので、導入前にシステム担当者へ確認しましょう。

セキュリティについて理解する

介護記録は、住所・家族構成など様々な情報を管理しているため、セキュリティ対策については必須です。オンプレミス型だと、自社サーバーで管理をするため情報漏洩リスクが低いことが特徴です。

一方、クラウド型は、外部からの侵入や盗み見、改ざんを防ぐSSL・TLS認証といったセキュリティ対策がとられています。インターネット上で情報管理するため、オンプレミス型と比較すると情報漏洩リスクは高くなる可能性があります。

また、施設・事業所内でできる対策として、以下のことが挙げられます。

情報漏洩リスク対策

・介護記録の持ち出しや閲覧ルールを明確にしておく
・職員ごとにIDやパスワードを設定する
・操作権限の設定をしておく

 

記録物が持ち運びやすくなった分、人為的原因により情報漏洩が発生する危険性が高くなります。そのため、上記ルールの明確化や閲覧・変更の権限を設定しておくことで、施設・事業所内での紛失や盗難リスクを減らすことができるのです。

介護記録システム導入前に、システムのセキュリティ内容を把握するだけでなく、あなたの事業所でできるセキュリティ対策も考えておきましょう。

システム連携が必要かどうか検討

介護記録システムを利用する大きなメリットの1つとして、自動的に転記や他システムと連携することで、より効率的に業務を行うことがあります。

例えば、介護現場の中では以下のような事例が挙げられます。

《介護記録システムと他機能との連携例》

介護記録システムと他機能との連携例
出典:厚生労働省 介護ソフトを選定・導入する際のポイント集

介護現場では、特に音声入力による記録業務のさらなる時間削減や見守りセンサーなどとの連携で見守り・離床記録の省略ができます。さらに、介護現場だけではなく、介護事業所内における他業務との連携機能も確認しておきましょう。

《介護業務と介護ソフトの連携》

介護業務と介護ソフトの連携
出典:厚生労働省 介護ソフトを選定・導入する際のポイント集

契約時に利用者の基本情報を入力するだけで、アセスメントやケアプラン・記録のフォーマットが自動的に完成します。また、サービス利用記録を入力することで、ご家族やケアマネジャーへの報告、介護報酬明細書や利用請求書への利用実績入力とも連携ができるソフトも。

自施設・事業所の規模や、介護現場内外で何と連携させたいかを検討しておきましょう。

無料お試し期間で使い倒す

介護記録システムの中には、無料で記録入力や使い勝手を体験することができるものもあります。システムを導入する前にお試し利用することで、本当に使い勝手がよいのか、実際に使ってみてからわかる課題や新たなニーズの発見につながるのです。

システムによって、おおよそ数週間~数ヶ月のお試し期間があります。積極的に使い倒して、介護記録システムを比較してみましょう。

使いこなせない介護職員への研修・サポート体制

介護記録システム導入にあたって、必ず反対する職員や電子機器に慣れていない職員が少なからず存在します。もちろん、それらの反対意見や現状を無視して導入することもできますが、毎日システムを使用するのは介護職員であり、業務負担がさらに増えてしまいます。

使いこなせない介護職員のために、導入前に研修を行ったり導入後もサポートできる体制を整えておくことが必要です。介護記録システムにおける担当者を複数設定しておくことで、日常でわからないことがあった時にすぐ解決できるようにしましょう。

アフターフォローの手厚さ

介護記録システムの導入・運用後、運営元のフォローやサポートの充実さを必ず確認しておきましょう。記録システムでわからないことや不具合が発生した場合、電話や直接訪問ですぐ改善してくれるかどうかは大切です。

不具合が発生すると記録業務が止まってしまうため、迅速な対応をしてくれる運営元を選びましょう。介護報酬明細書の提出を行う毎月1~10日は、特に混みやすくなり、なおかつ迅速な対応が求められます。

そういった場合でも、システム運営元はすぐ対応できる体制が整っているかを聞いておくことは重要です。

まとめ

介護記録システムで解決が期待できる課題やメリット、導入する時の注意点について解説しました。介護業界におけるICTはまだまだ広まっておらず、今後の人手不足や業務効率化に向けて介護記録システムの導入や運用が不可欠となってくるでしょう。

目の前にいるご利用者へもっともっとケアをしたい、ケアをする時間を確保したい、と考えるならば、積極的にICTを活用することが重要です。介護職員だからできること、システムに任せられることを明確にすることで、そこで働く職員の満足度向上、ひいてはご利用者の安心した生活につながります。

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この記事の執筆者しょーそん

保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了

グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。
現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。

現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。

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