看護師長・看護部長など管理職として働く中で、部下から「患者様とのコミュニケーションに悩んでいる」と相談を受けたことはありませんか。
部下だけではありません。
看護師長・看護部長である自らもコミュニケーションに悩んでいるという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、看護師にコミュニケーションが必要な理由及び、求められるコミュニケーションスキルをご紹介します。
看護師のための「NURSE(ナース)」という日本発祥のコミュニケーションスキルも、あわせて解説しております。
今後の看護業務及び部下の育成の参考になりますので、ぜひご一読ください。
目次
看護師にコミュニケーションが必要な3つの理由
看護師はさまざまな方とコミュニケーションを取らなくてはいけません。
それはなぜでしょうか。
この章では、理由を3つお伝えします。
1.患者様及びご家族との信頼関係を築くため
コミュニケーションスキルが低いと、患者様やご家族とのコミュニケーションがスムーズに行えません。
その結果、ご本人やご家族の辛さを充分に理解できず、信頼関係を築くことが難しくなります。
信頼関係がない状態では、どんなに患者様のことを思ったケアを提案しても受け入れてもらえない可能性があるのです。
2.看護業務をスムーズに行うため
患者様とのコミュニケーションがスムーズであると、状況を的確に把握できます。
その結果、患者様の状況に応じた適切な看護が可能になるのです。
また看護師同士及び他職種とのコミュニケーションが良好であると、看護業務をスムーズに行えます。
3.医療事故を防ぐため
人の命を預かる現場である以上、起こるべくして発生してしまうようなインシデントは何としても防がなくてはなりません。
そのためには正しい情報伝達が必須であり、そこで求められるのがお互いのコミュニケーションです。
コミュニケーション不足は、医師の指示を聞き間違えるなどといったミスにつながる危険性があります。
最悪な場合は医療事故・医療ミスに発展するので注意が必要です。
対象者別・コミュニケーションでの注意点
看護師が日常業務で接する主な対象者は、患者様及びご家族・同僚(看護師同士)・他職種です。
この章では、対象者別にコミュニケーションでの注意点を解説します。
患者様・ご家族とのコミュニケーションでの注意点
最も注意すべき点は、
「患者様やご家族に寄り添った対応が必要である」
ということです。
コミュニケーションにおいては、「あなたの話を理解しました」という意思表示をする必要があります。
主な手法は以下の5つです。
・相手の話を最後まで聴く
・うなずく
・相槌をうつ
・相手の話を要約する
・言葉を変えて表現する
分からないことや、より深く理解したいことがあれば質問しましょう。
質問も大切なコミュニケーションスキルです。
説明事項があれば、専門用語や略語を控え分かりやすい言葉で伝えるように注意してください。
看護師同士・他職種とのコミュニケーションでの注意点
看護師同士や他職種とのコミュニケーションは、ミスや事故防止、円滑な業務のために欠かせないものです。
コミュニケーションを取っていく上での注意点を、以下に示しました。
・患者様に関する連絡のときは、ミス防止のため部屋番号やフルネームも伝える
・メモを残したり、復唱したりすることで確実に情報共有する
・業務を依頼するときは、内容を具体的に伝える
・自分だけで行えない業務であれば、その旨を伝えて指示をあおぐ
・不注意やミスを発見したときは、批判的・否定的な態度を取らず、改善につながるアドバイスをする
・他職種に対しては、看護の専門用語を使わない
ノンバーバルコミュニケーションは重要なスキル
お互いに必要な情報を共有するためにはコミュニケーションが円滑でなくてはなりません。
一方的に情報を伝えるだけでは、相手に正しい情報が伝わっていない可能性もあります。
お互いに必要な情報を、より正確に共有するためには「ノンバーバルコミュニケーション」が重要なスキルになります。
ノンバーバルコミュニケーションとは、その名のとおり言葉に頼らないコミュニケーションです。
非言語的コミュニケーションとも呼ばれます。
具体的な例としては以下をご参照ください。
・表情
・身だしなみ
・身振り手振り
・声のトーン
・目の動き
・うなずきや相づち
ノンバーバルコミュニケーションは、言葉によるコミュニケーションに加えて、より正確に情報を伝達することができる手法といえます。
看護師のためのコミュニケーションスキル「NURSE(ナース)」とは
「NURSE」とは、患者様の感情に共感するためのスキルです。
NURSEは看護師のためのコミュニケーションスキルとして日本で開発されたもので、がん看護領域を中心に広まっていますが、他の看護領域でも活用できます。
1つずつ説明いたします。
N(Naming・命名)
患者様の感情に形容詞を用いて名前をつけます。
患者様の訴えを聴き、感情を理解したいというメッセージを送るための手法です。
U(Understanding・理解)
患者様の反応を理解して、受け入れたことを伝えるものです。
患者様との関係構築のために必要になってきます。
R(Respecting・承認)
患者様の感情・対処方法・人格・態度を受け入れ承認するものです。
NURSEの中で最も難しいスキルと言われます。
S(Supporting・支持)
「あなたを支持したい」という意思を患者に伝えるものです。
患者様とのパートナーシップを表明するために用いられます。
E(Explorin・探索)
患者様が表現した感情に焦点を当てて質問します。
「あなたに関心を持っています」ということを示すためのものです。
看護師がコミュニケーションスキルを向上させるための参考例
コミュニケーションスキルを向上させるための方法は数多くあります。
この記事でおすすめするのは、ロールプレイング形式研修です。
ロールプレイングとは、実際の場面を想定して与えられた役割を演じることをいいます。
ロールプレイング形式で行う研修のメリットは以下の3つです。
・患者様役を経験できる
・自分自身のコミュニケーションを振り返られる
・自分のスキルについてフィードバックを受けられる
看護師が円滑にコミュニケーションを取るためのポイント
コミュニケーションを取るのが苦手…という看護師さんも多いのではと思います。
中には特定の人とコミュニケーションを取るのが苦手、といった方もいるかもしれません。
そうした場合には、ポイントを押さえて実践してみると、コミュニケーションが取りやすくなることが多いので試してみてください。
特に患者さんとそのご家族とのコミュニケーションを取りたいと考えている場合には、以下が大切といえるでしょう。
・時間を作る
・共通点を見つける
・聞き上手になる
患者さんやご家族とコミュニケーションを取ろうと思ったとき、大切になるのは時間を作ること。
思いや気持ちに共感して聞き上手になることです。
最初に共通点を見つけて話の端緒をつかむことができたら、聞くことに意識を置いてみてください。
少しずつ信頼関係も構築できていくはずです。
まとめ
この記事では、看護師に求められるコミュニケーションの重要性について解説しました。
看護師は常に他者と関わる仕事なので、コミュニケーションが欠かせません。
コミュニケーションスキルを高めることが、質の良い看護につながります。
スキルアップのためには学びが欠かせませんが、特におすすめなのはロールプレイング形式の研修です。
コミュニケーションスキルは医療従事者にとっては基本的なものであり、誰もが新人のときに学ぶものです。
しかし、時間と共にその重要性が見失われる傾向もあります。
今一度基本に立ち返るためにも、コミュニケーションスキルを見直してみてはいかがでしょうか。
関連記事
将来的には看護師不足もさらに深刻化するといわれており、業務効率化が重要です。
病院によってはAI・ロボットの導入にも積極的で、事例も増えつつあります。
看護業務の効率化の事例をご紹介した記事を以下に掲載しています。
こちらも合わせてご覧になってみてください。
この記事の執筆者 | 古賀優美子 保有資格: 看護師 保健師 福祉住環境コーディネーター2級 薬機法管理者 保健師として約15年勤務。母子保健・高齢者福祉・特定健康診査・特定保健指導・介護保険などの業務を経験。 地域包括支援センター業務やケアマネージャー業務の経験もあり。 高齢者デイサービス介護員としても6年の勤務経験あり。 現在は知識と経験を生かして専業ライターとして活動中。 |
---|