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【教えて!】特別養護老人ホームで働く看護師の仕事内容・役割を解説!

特別養護老人ホームで働く看護師の仕事内容・役割とは

看護師というと、病院で働いているイメージを持つ方も多いと思います。
ですが、看護師が働く場は病院以外にもたくさんあります。
高齢者施設もその1つです。
 
今回は高齢者施設の中でも、特別養護老人ホーム(特養)で働く看護師の仕事内容や役割についてご紹介します。
 
特養ならではの看護師の仕事内容について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

特別養護老人ホームとは

特養

特別養護老人ホームとは、要介護3以上の方を対象に24時間にわたって、

「入浴、排泄、食事などの介護、その他の日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話」

を提供する施設です。

省略して「特養」と呼ばれるのが一般的です。

社会福祉法人や地方自治体の運営による公的な施設で数も多く、比較的費用が安いのが特徴です。

そのため入所希望者も多く、申し込みをしても入居まで時間がかかることも多いです。

また、特養は看取り対応をしている施設も多く、重度の要介護状態になっても住み続けられる「終の棲家」としての特徴もあります。

特養における看護師の配置基準

人員基準とは、介護保険法と老人福祉法で定められている、介護保険サービスを提供するために必要なスタッフの基準です。
この基準を満たさないと介護報酬の返金や指定取り消し等、さまざまな処分があります。

特養には介護職員だけでなく看護師の配置も義務付けられており、入居者3人に対して介護職員か看護師が1人以上必要です。

そして看護師の場合は、

・利用者が30人以下の施設では1人以上
・31人から50人の場合は2人以上
・51人から130人の場合は3人以上

が配置されていなければなりません。

特養で働く看護師の仕事内容とは

看護師

特養の看護師はどのような仕事をしているのでしょうか。

ここでは、特養で働く看護師の仕事内容を8つご紹介します。

健康管理

特養で働く看護師の主となる仕事内容が「健康管理」です。
入居者の状態に変化がないかを確認します。

具体的には、体調観察、バイタルチェック、服薬、点眼・軟膏処置などを行います。

若い人と異なり、高齢者の体調の変化は見落としやすく、気づいたときには病状が悪化していることがあります。

看護師は介護職員と連携し、日々の体調観察を丁寧に行います。

また、高齢者は皮膚トラブルや褥瘡を起こすリスクも高く、軟膏処置等も比較的多いです。

医療行為

特養では医師が常駐していないことも多いため、看護師が医師の指示のもとに医療行為を行っています。

特養で看護師が行う主な医療行為としては、

・喀痰吸引
・経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)
・在宅酸素
・褥瘡を含む創傷処置
・インシュリン注射
・膀胱留置カテーテル管理
・浣腸や摘便などの排便処置

などがあります。

医療行為については、病院勤務での内容と共通する部分も多いですが、入居者がケガをした際の応急処置、医師への報告など、特養だからこそ発生しやすい医療行為もあります。

特養はあくまで生活の場であり、医療設備はあまり整っていないため、医療への依存度が高い方への対応が難しい場合があります。
どこまでの医療行為が行えるかは、施設によって異なる場合も多いです。

診察介助

定期的な医師の訪問診療の補助を行います。

診察時には入居者の体調の変化や、生活上の問題点などを医師に報告し、内服薬の変更や必要な指示などを受けます。

また、入居者の健康診断や予防接種などの準備や介助も行います。

感染症予防対策

感染対策は入居者の安全管理の視点から重要であり、施設の責務といえます。

特養では感染対策委員会を設置する必要があり、看護師は感染対策担当者として委員会に参加します。

特養は集団生活の場のため、新型コロナウイルスやインフルエンザ、ノロウイルスなどの感染症に特に注意が必要です。

感染が起こった際の対応も大切ですが、感染が起こらないように日頃から職員に対して研修や勉強会を行うことも大切な役割の1つです。

看護記録

医療機関同様に、その日の入居者の体調や出来事を記録します。
看護記録にはどのような経過なのかを判断し、他のスタッフと情報を共有するために重要な業務です。

看護記録は基本的に、健康状態や生活上の問題を中心に記載します。
その他に、医療行為や処置の内容、病院への受診記録や往診結果などの記載が必要になります。

介護職員は日頃の様子や生活介助について記載することが多いですが、看護師は医療の視点で書くことが求められます。

外来受診・入退院の付き添い

入居者の体調に明らかな異常が見られた際に家族や医師に連絡を入れ、病院を受診すべきか、いつ受診するかを決めるのも特養で働く看護師の大切な仕事内容です。

特養は医師が常駐していないことも多いため、ある程度の決定は看護師に委ねられています。

急な体調の変化ですぐに病院を受診しなければいけない場合などは、看護師が救急車に同乗し、入院まで付き添うことが多いです。

看取り・ターミナルケア

看取りとは無理な延命治療などは行わず、高齢者が老衰で自然に亡くなるまでの過程を見守ることを言います。

特養は、終の棲家として施設内で亡くなることを想定している施設です。

入居時には、急変時に経管栄養や心肺蘇生を行うかなど、もしもの時にどこまでの医療処置を希望するのかを本人や家族に確認します。

看取り期になれば、最期までその人らしく過ごせるように他のスタッフと連携し、手厚いケアを実施します。

オンコール

特養は介護保険が適用され、看護師の配置が義務付けられていますが、24時間の配置は必要ありません。

そのため、特養の看護師は基本的に夜勤がありませんが、緊急時の対応としてオンコール体制を取っている施設がほとんどです。

オンコールでは、夜間に体調の変化や怪我があった際に現場の介護職員から報告を受け、必要があれば現地に向かいます。

介護職員には判断できない事態を、医師に代わってある程度判断する必要のある業務です。

特養で働く看護師と、病院で働く看護師との違い

特養で働く看護師と高齢者

特養と病院の違いは、特養は医療を受ける場所ではなく、生活の場だということです。

医療は何より生命や治療が優先されますが、生活の場である特養は、どのように生活したいか本人の意思や自己決定が優先されます。

そのため、特養で働く看護師も治療第一ではなく、本人の意思を尊重しつつ、希望する生活を健康面から支えるという考え方が大切です。

看護師が特養で働くメリット

看護師の職場として、特養と病院では違いがあります。

ここでは看護師が特養で働くメリットをご紹介します。

夜勤がなく、ワークライフバランスをとりやすい

特養は夜勤がない施設が多く、オンコールを導入しているところがほとんどです。

オンコールの場合も電話での対応が多く、施設に呼び出されて対応するといったことはあまりないため生活リズムも整いやすいです。

また、病院と比べて残業も少ない場合が多いです。

入居者との時間がとりやすい

病院と比較して処置等も少ないため、入居者の方ひとりひとりに向き合って仕事をすることができます。

特養は生活の場なので、介護職員とレクリエーションを企画したり、入居者とコミュニケーションをとったりすることも大切な仕事です。

また、特養は終の棲家として最期まで暮らす方も多く、入居者を長期的に支える看護ができます。

アセスメント能力を高められる

特養は要介護度が高い入居者の方が多く、自分の状態や希望をうまく伝えられないという方も多いです。

入居者のわずかな変化を見逃さずにケアを行っていくことが重要になってくるので、このような状況下でアセスメント能力を高めていくことができるでしょう。

また、医師が常駐していないことが多いため、ある程度は看護師が判断して処置等を行う場面も多いです。

看護師が特養で働くデメリット

次に、看護師が特養で働くことのデメリットをまとめたいと思います。

医療機関と比較して給与が下がる可能性もある

特養では日勤のみの勤務形態が多いため、給与は低くなりがちです。

ですが、特養で働く看護師は夜勤がないことをメリットとして考えている方が多いです。

医療技術のスキル低下

特養では、高度な医療処置が求められるようなケースは医療施設に移されることが多く、処置スキルが低下する可能性があります。

心理的負担が大きい

特養では、病院などと比較して看護師の人員が少ないため、医療処置や判断を単独で行う場合もあります。

必要に応じて医師に指示を仰いだりはできますが、心理的な負担が大きくプレッシャーに感じる可能性があります。

まとめ

特養での看護師の仕事内容は、比較的介護度が高い入居者の健康管理や看取りケアなど、責任の大きい仕事ではありますがとてもやりがいもあります。
入居者本人と家族の希望に沿った生活を送ることができるように、日々介護職員と協力しながら入居者の生活を支える仕事です。

特に看取りケアでは、本人が望む最期を迎えられるように、他職種とケアを考えて実践することにやりがいを感じるのではないでしょうか。

夜勤がないことで身体的な負担も少なめで、病院と比べてゆっくりと入居者のケアを行うこともできるのが特養のいいところです。

高齢者が増えているので、特養での看護師のニーズもこれから増えていくと考えられます。
病院や他の施設が合わないなと感じている場合は、新しい職場の候補として検討してみてはいかがでしょうか?

また以下の記事では、特養で働く看護師の夜間の勤務・オンコールについて解説しています。
特養で働く看護師の夜勤について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の執筆者
槇野りっか

保有資格: 看護師

急性期病院で看護師として2年勤務、その後特養で介護士として半年、看護師として5年勤務、介護業界で仕事をしてきました。
現在は介護・福祉系ライターとしても活動中。

2024年8月 住まい介護医療展 出展告知

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