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【教えて!】夕暮れ症候群とは?なぜ起こる?対応や注意点について

夕暮れ症候群とは

「外が暗くなってきたからそろそろ帰ります」と、帰り支度を始めたり、出口やバス停を探したり・・・認知症の方が夕暮れ時になると落ち着きがなくなる夕暮れ症候群
 
デイサービスの送迎や施設の食事の時間など慌ただしい時間と重なるため、対応の難しさに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
 
夕暮れ症候群の対応は難しいと感じるかもしれません。しかし、適切なケアによって症状を和らげ、穏やかな時間をサポートすることが可能です。
 
そこで今回は、夕暮れ症候群について、主な症状、原因、対応・対処方法に加え、対応の際の注意点などを詳しく解説します。
 
デイサービスやグループホーム、特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設で認知症の利用者様と関わっている介護職の方は、ぜひ参考にしてください。

夕暮れ症候群とは

夕暮れ症候群とは

夕暮れ症候群は「日没症候群」や「トワイライトシンドローム」ともいわれています。夕方から夜の時間帯に一人歩き(徘徊)をしたり、大きい声を出し興奮したり、強い帰宅願望を訴えたりするなどの認知症の症状のひとつです。

日中は穏やかだったのに、陽が落ち始めると不安定になったり、普段と異なる言動が見られたりといった症状が現れます。

全ての認知症の方に起こる症状ではありませんが、アルツハイマー型認知症、施設に入居したばかりの方、入退院などで環境に変化があった方に見られやすく、認知症の進行によって出現が多くなる傾向です。

夕暮れ症候群の主な症状

夕暮れ症候群で不安そうな認知症の高齢者

夕暮れ症候群は人によって現れ方が異なりますが、以下のような症状が現れます。

・そわそわしたりイライラしたりして落ち着かきがなくなる
・焦った様子で一人歩きをする
・帰宅願望が強くなる
・「早く帰りたい」「ここはどこ?」不安感を訴える
・服や荷物をまとめ帰る準備を始める
・「家に帰って食事の用意をしなくちゃ」と言い、出口を探す
・帰れないことに対して暴力的な言動がみられる

これらの症状は、夕方から夜に悪化し、日中は比較的落ち着いていることが多い傾向です。また、同じ方でも日や時間によって症状の出方が変わることもあります。

夕暮れ症候群はなぜ起こる?原因について

明確な原因は医学的に解明されていませんが、以下のようなさまざまな要因が影響しているとされています。

・認知症の中核症状(見当識障害や記憶障害など)
・健康状態(生活リズムや体内時計の乱れ)
・心理状態
・生活歴
・環境(介護職員の対応など)

それぞれについて詳しくみていきましょう。

見当識障害

見当識障害は、時間、場所、人など現在の状況を把握することが難しくなってしまう状態をいいます。夕方、周りが暗くなると、見当識障害が悪化しやすい傾向です。

記憶障害

夕暮れ症候群には、記憶障害も深く関わっています。認知症になると、新しいことを覚えることが難しくなったり、記憶として残っていたことを忘れたりする一方で、過去の記憶は比較的鮮明に残っているケースが多いことが特徴です。

このような記憶障害により、新しい記憶は忘れがちですが、過去に活躍していた頃などの記憶は鮮明に覚えている傾向があります。

健康状態(生活リズムや体内時計の乱れ)

夕暮れ症候群の要因のひとつに、生活リズムや体内時計の乱れも挙げられます。睡眠障害(睡眠・覚醒リズムの異常)や昼夜逆転などによって毎日の生活リズムや体内時計が乱れてしまうためです。

心理状態

認知症の方は、夕方になって外が暗くなると不安感が増す傾向です。場所に対する見当識も薄れてしまうため、自宅にいても症状が現れる場合があります。

暗くなると「ここは、落ち着かない場所だから不安だ」と感じ、安心できる場所を求めて、帰りたい気持ちになってしまうのです。

生活歴

認知症の方によって、過去の時代(一番輝いていた頃、充実していた頃に戻ることが多い)の自分に戻る場合があります。

・子供を育てていたお母さんの時代
・働き盛りだったお父さん時代
・お母さんやお父さんが帰ってくるのを待っていた子供時代

夕方は、子供が帰ってくる時間やお迎えの時間、仕事から帰る時間、夕食を作る時間など忙しい時間です。

過去の生活歴が今と重なり、慌ただしい気持ちや「早く帰らなくちゃ」という焦りの気持ちにつながっているのも原因のひとつになります。

環境(介護職員の対応など)

夕暮れ症候群の要因のひとつに、夕方の施設内の環境もあります。例えば、16時頃はデイサービスの送迎の時間や施設の夕食の準備を始める時間帯であり、日勤から夜勤に変わる時間帯です。

介護職員の人手が不足しがちで、施設全体がバタバタと慌ただしい雰囲気になりやすい状況でもあります。このような慌ただしさや、介護職員の声掛け、表情、態度などが認知症の方に伝わり、不安感を抱かせてしまうことが、夕暮れ症候群の症状の悪化に影響するとされています。

夕暮れ症候群が起こった時の対策・対処法

認知症の利用者に声を掛ける介護士

夕暮れ症候群は、適切な対応を行うことで、症状を軽減し、穏やかな生活や認知症の方の安心につながります。ここでは、夕暮れ症候群が起こった時の対策・対処法についてみていきましょう。

好きなことをしてもらう

利用者様の好きなことや興味のあることで、気分転換になり、心身ともにリラックスできることもあります。例えば、以下のようなことがおすすめです。

・好きな音楽を聴く、一緒に歌う
・好きなテレビや映画を鑑賞する
・塗り絵や手芸、折り紙、パズルなどを勧める
・昔のアルバムや写真を見て思い出話をする
・洗濯や食事の準備など簡単なお手伝いをしてもらう

好きなことに集中することで気が紛れ、不安な気持ちや帰りたい気持ちが和らぐ効果も期待できるでしょう。

会話をする

夕暮れ症候群で不安やイライラが強まっている場合は、相手の気持ちに心を寄せた対応が大切です。

「帰りたい」と訴える言動の裏には、様々な気持ちが隠されており、本当に家に帰りたいと思っている方もいますが、不安や寂しさが帰宅願望として現れている方もいます。

穏やかな口調で話しかけ、その方の思いを傾聴し、安心感のある声掛けや共感の姿勢を心がけましょう。また、会話を楽しむ中で、夕暮れ症候群による不安な気持ちが和らぎ、落ち着きを取り戻せることもあります。

軽食やおやつを提供する

夕暮れ症候群は、ちょうどお腹が空き始める頃の時間帯に起こりやすいとされ、空腹からの不快感がイライラにつながっている可能性もあります。こんな時は、温かいお茶やコーヒー、パン、小さいおにぎり、クッキーなどの軽食やおやつを提供して、小腹を満たしてもらうのがおすすめです。

温かい飲み物は、心身が温まるリラックス効果があり、好きなおやつなら気分転換にもなるでしょう。

部屋の明るさを調節する

夕暮れ症候群の症状として、夕暮れ時に辺りが暗くなることで、不安を感じやすくなることがあります。外が暗くなり始める前に、部屋の明るさを調整することで、外の暗さに対する不安感を軽減できる場合も多いです。

ただし、暗くなると不安が増す方もいれば、暗い方が落ち着く方もいます。一人ひとりに合わせて、部屋を明るくしたり、夕日が入らないようにカーテンをしめたりなどの工夫をしましょう。

一緒に散歩する

「帰りたい」気持ちになっている方に対して、「ここからは帰れない」と部屋から出さない対応は逆効果です。

「家に帰りたい」「今いる場所から出たい」気持ちに寄り添って、施設の周りや近くの公園などへ散歩することで、以下の効果が期待できます。

・外の景色や空気を感じることで、気分転換になる
・一緒に歩くことで、介護者へ安心感を持っていだける
・歩いている間に気持ちが落ち着き「帰りたい」気持ちが紛れる
・歩きながら本人の気持ちを肯定し、落ち着いていただける

一緒に散歩をするときは、相手の帰りたい気持ちに共感する姿勢や安心感のある声掛けが大切です。

夕暮れ症候群への対応の注意点

夕暮れ時の介護施設

夕暮れ症候群が現れると、認知症の方は不安や混乱を感じ、落ち着きをなくしてしまうケースが多いですが、周りの人の対応が、症状の悪化を防ぐ上で重要になってきます。

ここでは夕暮れ症候群の症状が悪化しないために注意すべきことをみていきましょう。

注意したり叱ったりしない

認知症の方の中には、将来や忘れてしまう不安を抱えている方が多くいらっしゃいます。対応が難しい場合、つい注意したり叱ったりしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、注意や叱責は、不安やストレスを感じさせ、症状を悪化させる恐れがあります。不安や混乱に寄り添い、安心感を与える言葉や態度を伝えましょう。

否定しない

夕暮れ症候群で「帰りたい」と訴える利用者様に「帰れません」と否定的な言葉をかけたり、出口を探して一人歩きしている利用者様に「歩かないで座っていてください」と行動を否定したりするのは避けましょう。

認知症の方の中では、現在と過去が曖昧になっていることもあります。本人が正しいと思っていること(帰らなくてはいけないと思っていること)を否定されると、強い不安を感じ、混乱したり、怒ったり、興奮したりすることが多い傾向です。そして、自分を否定された気持ちになってしまい、不安感や帰宅願望が高まる恐れがあるでしょう。

夕暮れ症候群の対応では、時間がかかったり、思うように誘導できなかったりして、無力感を覚えてしまうことがあるかもしれません。相手の気持ちに共感し、落ち着くまで会話を通して気持ちを紛らわせる、また好きなことに意識を向けて気分転換を促すなど、穏やかに対応しましょう。

本人のタイミングやペースに合わせる

夕暮れ症候群が起こっている際、早く落ち着かせようとして、無理に理由を聞いたり、散歩を勧めたりするのはNGです。いくら寄り添った言葉をかけても耳に入らず、話したくないときもあるでしょう。

行動を無理強いすることで、焦りやストレスの原因になってしまい、症状を及ぼす恐れがあります。介護職自身のタイミングではなく、利用者様の状況を見極め、本人のタイミングやペースに合わせてコミュニケーションをとり、行動を共にすることが大切です。

まとめ

夕暮れ症候群について、主な症状や原因、対応・対処方法、対応の注意点などについて詳しく解説しました。

夕暮れ症候群は、介護現場にとっては「厄介だな」と思われがちな症状ですが、本人にとっては不安でいっぱいで切実な状態です。認知症という病気によって引き起こされる症状であり、本人の意志や感情でコントロールできるものではありません。

認知症ケアに関わっている方は、夕暮れ症候群の背後にある、強い不安感や孤独感を理解することが必要です。認知症の方の視点に立ち、言動の裏にある不安や寂しさといった気持ちを想像し、寄り添う姿勢が求められます。

「認知症だから夕暮れ症候群があっても仕方ない」と決めつけるのではなく、まずはその訴えに耳を傾け、丁寧にコミュニケーションを図りましょう。そして、その人が安心できる場所となるよう、温かい関わりや居心地の良い環境を整えていくことが大切です。

この記事の執筆者吉田あい

保有資格:社会福祉士・介護福祉士・メンタル心理カウンセラー・介護支援専門員

現場、相談現場など経験は10年超。
介護現場(特別養護老人ホーム・デイサービス・グループホーム・居宅介護支援事業所)、相談現場を経験。

現在はグループホームのケアマネジャーとして勤務。

 
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