特別養護老人ホームに勤務されていて、シフト作成が難しい…と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
特別養護老人ホームに限らず、介護施設でシフト作成、勤務表を作成する上で大切な事は勤務を平等に、シフトを作成することです。
ですが、シフト作成者自身は時間をかけて平等なシフトを作成した、と思っていても職員の中には他者と比較して不満を感じることがあります。
例えば「また土日仕事だ…」「大変なフロアばかりだ…」「連勤が多い…」と言った不満などが挙げられます。
スタッフの予定や個々の要望を全て考慮するのは難しく、時にシフト管理者は難しい判断を迫られることもあります。
そうした場合にこそ、スタッフが納得するシフト表を作るためには、透明性とコミュニケーションを重視することが大切です。
シフト作成時の難しい場面では、スタッフとの対話を通じて調整を図ることが鍵となります。
本記事では特別養護老人ホームに勤務する筆者が、シフト作成時に気を付けていること、コツについて解説をしています。
目次
特別養護老人ホームのシフト作成・勤務表作成が難しい理由
特別養護老人ホームにおいて、シフト作成・勤務表作成が難しい理由として3点挙げられます。
介護職員の人手不足
1点目は介護職の人手不足です。日本の総人口は令和3年10月1日現在、1億2,550万人となっています。日本社会の高齢化が進み65歳以上人口は、3,621万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も28.9%となります。
参考文献:「令和4年版高齢社会白書(全体版)」(内閣府)
高齢者が増加し、介護がますます必要になっています。それに伴い、介護サービスや施設の需要が増加し、介護業界では人手不足が深刻な問題になっています。2040年度には約280万人の介護職を確保する必要があるとされています。
参考文献:「介護人材確保に向けた取組」(厚生労働省)
既に人手不足により最低限の人員しか確保できていない介護施設も多いでしょう。そこに突発的なスタッフの休み、勤務変更などがあるとシフト作成が非常に困難になってしまいます。人手不足はシフト作成を難しくする大きな要因です。
シフト作成に集中できる時間が無い
2点目はシフト管理者は日常の介護業務を行いながら、シフト表・勤務表を作成しなければならないという点です。介護業務の多様性な事から、日々の対応が予測困難で、常に柔軟な対応が求められます。
この状況下で、決まった時間を確保してシフト表や勤務表を作成するのは難しく、シフト作成者の悩みの種となっています。
公平なシフトを作成することが難しい
3点目ですが公平なシフトを作成することの難しさがあります。介護スタッフの休日・勤務希望やスタッフ間で生じる介護技術の考慮、急な勤務変更への対応、コミュニケーションなど、多くの要因を考慮しながら、公平で効率的なシフトを組む必要があるためです。
夜勤や早番、遅番などの勤務回数、連勤日数なども考慮する必要があるでしょう。シフト作成はスタッフの希望を考慮し、考えれば考えるほど難しくなります。
こうした理由からシフト作成者にとっては負担が大きく、しかし公平なシフトを作成することが難しいのです。シフト作成者自身が大きなストレスを抱えてしまうケースもあります。
正社員のシフト作成が難しい理由
介護職は日勤と夜勤の両方の勤務スケジュールがあり、体力と精神面への負担が大きい仕事で、健康状態の管理が難しいです。しかし、正社員は出勤数と休日数が決まっているため、これらを考慮し連勤による過重を避け、バランスよく振り分ける必要があります。
特別養護老人ホームでは配置基準があり、夜勤者も必ず配置する必要があります。その際、各スタッフのご利用者様への対応力、急変時の緊急対応経験も考慮して、夜勤者を適切に配置する必要があります。
体力的な負担の軽減を考えれば、正循環シフトが望ましいですが、他の介護スタッフの勤務状況により、どうしても負担のかかるシフト勤務にならざるを得ないこともあります。
パートのシフト作成が難しい理由
パートタイムのスタッフはフルタイムで働ける方もいれば、「平日のみ」「午前中のみ」「子供の帰る時間まで」といった曜日や勤務時間に制約がある方もいます。これらの条件を考慮してシフトや勤務表を作成する必要があります。
さらに、スタッフごとに異なる勤務日数があり、経験や技術の差も考慮しながらフロア配置やスケジュールを調整する必要があります。
特別養護老人ホームの介護職員の仕事内容
特別養護老人ホームで働く介護職員の主な仕事内容を紹介します。
入居者の日常生活の支援全般を行います。
・食事介助
・トイレへの誘導・排泄介助
・着替えの介助
・洗身・洗髪・入浴の介助
・ベッドや車いすからの移乗介助
上記のような介護技術が必要な業務を担当します。また、健康管理も特養で働く介護職員の重要な業務です。ほか、イベントやレクリエーションの企画や実施も行います。
特別養護老人ホームの介護職員の人員配置基準
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)においてサービスを提供するために必要な職員の人員配置基準は以下の通りとなります。
医師 | 入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数 |
介護職員又は看護職員 | 入所者の数が3又はその端数を増すごとに1以上 |
生活相談員 | 入所者の数が100又はその端数を増すごとに1以上 |
栄養士 | 1以上 |
機能訓練指導員 | 1以上 |
介護支援専門員 | 1以上(入所者の数が100又はその端数を増すごとに1を標準とする) |
参考文献:「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」(厚生労働省)
特別養護老人ホームのシフト例
特別養護老人ホームでは、各施設ごとに独自のシフトと勤務時間が設定されており、変形労働時間の取り決めが行われています。早番・日勤・遅番・夜勤とシフト制で4パターンといった事業所も多いのではないでしょうか。
2交代制
日勤 | 9:00〜18:00 |
夜勤 | 16:30〜9:30 |
3交代制
早番 | 7:00〜16:00 |
遅番 | 10:00〜19:00 |
夜勤 | 19:00〜7:00 |
変形労働時間
早番 | 7:30〜16:30 |
日勤 | 9:00〜18:00 |
遅番 | 10:30〜19:30 |
夜勤 | 16:30〜9:30 |
特別養護老人ホームの介護職員の一日の流れ
施設により異なるところもありますが、一般的な特別養護老人ホームの介護職員の一日の流れとしては以下になります。
9:00 | 出勤、申し送り、臥床介助、排泄介助 |
10:00 | 離床介助、入浴介助 |
11:30 | 昼食準備、口腔体操 |
12:00 | 昼食介助 |
12:45 | 服薬介助、口腔ケア |
13:30 | 排泄介助 |
14:00 | レクリエーション、入浴介助 |
15:00 | おやつ、おやつ介助 |
16:00 | 臥床介助、排泄介助 |
17:30 | 申し送り、離床介助、夕食準備 |
18:30 | 夕食介助 |
19:15 | 服薬、口腔ケア |
19:30 | 排泄介助、臥床介助、就寝 |
21:00 | 定期巡回、見守り、排泄介助、対位交換 |
6:00 | 起床、整容、排泄介助、朝食準備 |
7:30 | 朝食介助 |
8:15 | 服薬、口腔ケア |
特別養護老人ホームのシフト作成、勤務表の作り方のコツ
シフト表や勤務表はスタッフの健康や生活にも大きくかかわる大切なものです。シフト表や勤務表を作成するコツとして、以下は筆者のシフト作成手順です。一例としてお読み下さい。
1.平等性の確保
全体的な不満や不平等を避け、平等性を保つために、スタッフとのコミュニケーションを重視し、情報共有と透明性を維持します。
2.正職員スタッフの考慮
希望休や行事担当など条件の多い正職員スタッフに優先的に1ヶ月分のシフトを作成します。
3.夜勤の配置
人員配置基準に基づき、夜勤を必要な人数で配置します。
4.日勤の割り振り
日勤の割り振りでは、連続勤務等は一旦気にせずに行い、その後個人の勤務バランスを考慮します。
5.個人のバランス調整
連続勤務やフロアの負担を考慮し、体力面やスキルの偏りを防ぐため、個人の勤務バランスを調整。精神面も考慮します。
6.ツールの利用と注意点
エクセルやグーグルスプレッドシート等を使用し、数字のミスを防ぐためにスケジュールを作成。特に当日の職員数などの確認に注意します。
7.最終確認と目視チェック
作成後、希望休やバランスを最終確認し、目視でスケジュールの正確性を確認しています。
難しい特養のシフト作成を改善する為の方法
シフト作成が難しい…と悩みを抱えている場合には、いくつか見直せるポイントがあります。難しい特養のシフト作成を改善するために、以下の方法を考えてみるとよいでしょう。
1.スタッフとの協力、透明性を大切にする
スケジュール作成の際には、スタッフと協力し、透明性を大切にします。スケジュールに関する不満や希望をオープンに共有し、柔軟に対応します。
2.スタッフの声を大切にする
スタッフとの対話を通じて、各人のスケジュールに関する声を大切にします。不満や課題が浮上した場合は、一緒に解決策を模索し、皆が納得できる調整を図ります。
3.健康とバランスを考慮する
正社員には、健康や介護スキルのバランスを考慮して、適切なスケジュールを提供します。日勤と夜勤のバランスや連勤の軽減を心がけ、スタッフが健康的に働ける環境を整えます。
4.夜勤者の特別なサポート
夜勤者にはご利用者様への対応力の向上や緊急時の適切な対応能力を養う為、定期的に実技研修や動画による研修を行い特別なサポートをします。
またご利用者様への対応力や緊急時の経験を考慮するといった夜勤の配置を慎重に行います。
5.パートスタッフへの理解と柔軟性
パートタイムのスタッフには、スケジュールに制約があることを理解し、曜日や勤務時間に柔軟に対応します。経験やスキルの違いを考慮し、公平かつバランスのとれたスケジュールを心がけます。
これらのアプローチを通じて、スタッフが安心して働ける環境を整え、施設で働く介護スタッフ皆が協力しやすい良好な雰囲気を作り出しましょう。
まとめ
特別養護老人ホームでのシフト表作成や勤務表作成の大切なポイントを解説しました。
シフト作成は特養で働く介護職に関わらず、介護現場で働く介護職にとって大切なものです。職場でのシフトが決まらなければ、プライベートの予定を立てることができません。
スタッフが自分の休み希望(希望休)が反映され、夜勤回数や早番、遅番などの勤務回数が平等に感じられるシフト表を作成することが大切です。
働きやすいシフトが出来ることで、スタッフは仕事とプライベートが円滑に回りやすくなります。それによって働きやすさを感じ、健康を維持しやすく、働くモチベーションが向上します。
介護スタッフが充実感を持って働くことで、スタッフ同士が円滑にコミュニケーションをとりやすくなり、これがお互いに良い影響を与え、ご利用者様へのサービスも向上することが期待できます。
介護現場で事故を防ぐには介護職員間の情報共有が欠かせません。スタッフ同士が円滑に連携できれば、情報共有もスムーズに行いやすくなり、ご利用者様一人ひとりに合わせた質の高い、適切な介護・ケアが提供されることにつながります。
シフト作成が苦手で…という管理者や介護リーダーも多いかもしれません。しかし、今はシフト作成ソフトも多く見られるようになってきていますので、そうした介護業界向けの自動シフト作成ソフトを利用する方法も考えてみるとよいでしょう。
特別養護老人ホームの難しいシフト作成を簡単にする方法
特別養護老人ホームなど夜勤ありの介護施設はシフト作成が難しい…と感じているシフト管理者も多いと思います。シフト作成に数十時間、それ以上をかけている管理者もいるのではないでしょうか。
持ち帰って自宅でシフト作成、といった方もいるでしょう。
その場合、負担を軽減する方法として、シフト作成ソフトを利用する方法も効果的です。
シンクロシフトは夜勤回数や公休なども適切に配置し、スタッフの健康を配慮した公平なシフトを作成します。詳しい機能などは、ぜひ以下のページから詳細を確認してみてください。
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この記事の執筆者 | SSGT 保有資格: 介護福祉士、社会福祉主事任用資格、認知症基礎研修 終了、介護福祉士実習指導者 終了 デイサービスに3年勤務、 特別養護老人ホームに11年勤務し介護業界で仕事をしてきました。 現在は介護・福祉系ライターとしても活動中。 |
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