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【2024年度介護報酬改定】介護職員等処遇改善加算とは?計算方法や算定要件も解説!

介護職員等処遇改善加算とは

介護職員等処遇改善加算について、計算方法や算定要件について調べている方も多いのではないでしょうか。
 
介護業界の給料は、他の業界と比較すると低いというイメージがあります。介護業界で働く職員の給料は、主に介護保険から支払われる保険料に依存しています。そのため、介護保険制度によって、給料の上限が決められていると言っても過言ではありません。
 
ほとんどの介護サービスの収入は、単価×利用数で決まります。したがって、収入を増やすためには、加算を取得して単価を上げるか、稼働率と利用数を増やすことが必要です。
 
一方で、居宅介護支援事業所のように、制度によって担当できる人数が制限されている場合もあります。その場合、事業所での収入の上限は確実に頭打ちになります。
 
ここでは、介護職員の給料に影響を与える「処遇改善加算」について、2024年度の介護報酬改定を踏まえて計算方法や算定要件を解説します。今後の事業所運営の参考にしてみてください。

介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算とは、介護人材の確保や処遇(待遇)の改善を目的としてはじまった加算で、加算の全てを介護職員等の処遇の改善のために利用しなくてはいけないと決められた、使い方を制限された加算です。

もともと平成21年(2009年)に介護従事者の処遇改善のために「処遇改善交付金」として月額1.5万円の補正予算が組まれ、それが平成24年に「処遇改善加算」として介護報酬に組み込まれたことがはじまりになっています。

加算がはじまった当時は、時限的な加算のためそのうちに基本報酬に組み込まれると言われていました。しかし、その後もずっと加算として継続し、2019年には特定処遇改善加算、2022年にはベースアップ等支援加算が追加となり、未だに加算として継続しています。

さらに令和6年度(2024年度)介護報酬改定では、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算が、ひとつの加算として合算されることが決められました。

2024年度介護報酬改定で処遇改善加算はどのように変わる?

2024年度介護報酬改定は、今までの処遇改善加算の更新と大きく異なります。まず2024年4月、5月については従来通り以下の加算を算定します。

・介護職員処遇改善加算
・介護職員等特定処遇改善加算
・介護職員等ベースアップ等支援加算

そして、6月以降は3つの加算が一本化されて以下の名称に変更となります。

・介護職員等処遇改善加算

これまでの加算を「旧加算」、新しい加算を「新加算」と表記している案内がありますので、混乱しないように気をつけましょう。

見分け方は、今まで「介護職員等」と『等』が付いていたのは特定処遇改善加算とベースアップ加算でしたが、通常の処遇改善加算に「介護職員等」と「等」が付いたことです。

これは今まで、処遇改善加算は介護職員のみにしか配分することが出来なかったものが、事業所の判断で柔軟に配分することが認められたことによるものです。

また、処遇改善加算については、労使の合意や就業規則の改定なども必要となるため、すぐに新しい加算に対応することが難しい事業所には、旧加算と同等の加算を引き続き算定可能とするような特例も残されました。

2024年5月までの処遇改善加算

2024年度介護報酬改定は2024年4月(一部のサービスは2024年6月)に行われます。しかし、処遇改善加算は2024年5月まで、今までの加算がそのまま継続することになっているため、5月までのサービス提供については今まで通りの加算率を算定します。

処遇改善加算は毎年、年度ごとに申請が必要となりますので2024年度は5月までの2ヶ月間の計画を提出する必要があります。(一部の自治体では、算定する区分の変更がない場合は提出が不要な場合があります。)

加算率については、今まで同様に各サービスごと、各算定区分ごとに異なります。

介護職員処遇改善加算 加算対象サービス

出典:厚生労働省 介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示についてより

また、介護職員等の更なる処遇の改善のため、2024年2月から「介護職員処遇改善支援補助金」が開始されています。

介護職員処遇改善支援補助金では、一人当たり月額平均6,000円の賃金引上げに相当する額を支給するために、介護報酬改定の前倒しの制度として開始されたもので、ベースアップ加算を算定していることや2月以降に賃金改善を行うことが定められています。

なお、4月より前に処遇改善加算を算定していない事業所については、こちらの補助金を受けることはできません。

介護職員処遇改善支援補助金 サービス区分

出典:厚生労働省 令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金についてより

2024年6月からの処遇改善加算

2024年から、これまで3つになっていた処遇改善加算等がひとつの加算としてまとめられます。名称は、「介護職員等処遇改善加算」(新加算)となり、厚生労働省ではこれまで煩雑だった加算の管理が一本化されることで楽になるとアナウンスされています。

厚生労働省では、これまで算定していた加算によって、どの区分に移行することが可能かを早見表として提示しています。原則として、今までの加算の単位数に介護職員処遇改善支援補助金を追加した単位数で算定することが可能となっており、それに伴い職員への配分の見直しも必要となります。

旧3加算の算定状況に応じた新加算Ⅰ~Ⅳの算定要件(早見表)

出典:厚生労働省 旧3加算の算定状況に応じた新加算Ⅰ~Ⅳの算定要件(早見表)より

2024年中の激変緩和措置について

2024年6月から開始される新加算では、新加算Ⅰ~Ⅳの他に、すぐに新加算に移行できない事業所については新加算Ⅴとして、より高い単位数を算定することが可能になりました。

これは、就業規則の改定が間に合わない事業所や、すぐに基準を満たすことが出来ない事業所のために令和7年3月までの間に限り設置された特例措置となります。そのため、令和7年度以降は加算を取得するためには、新しい基準に適合させる必要があります。

新加算Ⅴ 算定基準

新加算Ⅴを算定するには以下の基準が必要です。

・新加算Ⅴは、令和6年5月末日時点で、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算(現行3加算)のうちいずれかの加算を受けている事業所が取得可能(新加算Ⅰ~Ⅳを取得する場合は算定できません)

・現行の加算率を維持したうえで、加算率の引き上げを受けることが可能です。

・新加算Ⅴは、介護職員への配分を基本として、特に技能・経験のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内で柔軟な配分が可能です。

新たに加算取得をする場合

厚生労働省のデータによると、令和5年4月の処遇改善加算取得率は93.8%、特定処遇改善加算は77.0%、ベースアップ等支援加算は92.1%とされています。約6%の事業所は処遇改善加算が取得されておらず、約四分の一の事業所は特定処遇改善加算が取得されていません。

介護人材の処遇改善に関する取得状況

出典:厚生労働省 介護人材の処遇改善等(改定の方向性)より

比較的多くの事業所で、実は処遇改善加算(特定処遇改善加算)の算定が行われていないことについて、以下のような理由が考えられます。

・算定要件を満たすことができない
・制度がわかりにくい
・事務作業にかかる手間が膨大である
・介護職員とその他の職種の不平等感がある
・恩恵を受けられるのが従業員のみで、法人としては手間が大きいこと

これまで、処遇改善加算を取得していない事業所で、2024年度に加算算定を行う事業所については、4月から算定する場合、4月と5月は旧加算を取得、6月以降は新加算を取得することになります。

新規で申請する場合のみ様式7を使用して申請しますが、新規の場合のみ使用する様式となりますので、注意が必要です。

介護職員等処遇改善加算の算定要件

2024年度の介護報酬改定では、介護現場で働く職員の待遇の改善のため令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップとなるように加算率の引き上げが行われます。

令和6年6月に開始される介護職員等処遇改善加算では、以下のような要件が定められています。

・新加算全体について、職種の配分ルールは設けず事業所内で柔軟な配分が認められる

・新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、新加算 の加算額の二分の一以上を月額賃金の改善に充てること

・これまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額については、その三分の二以上を月額賃金の改善として新たに配分すること

その他に、従来通りのキャリアパス要件や職場環境等要件も今まで同様に必要な要件となります。

キャリアパス要件

処遇改善加算におけるキャリアパス要件とは、介護職員等がキャリアアップを図れるように研修や資質向上のための機会を確保しつつ、そのキャリアや責任等に応じて賃金を改善できるような賃金体系や仕組みを整えることを目的として定められた基準です。

具体的には以下のように定められています。

・職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること

・資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること

・経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
※就業規則等の明確な書面での整備・全ての介護職員への周知を含む。

令和6年6月から開始する、介護職員等処遇改善加算では、加算の区分に応じて満たさなくてはいけないキャリアパス要件が異なります。

また、キャリアパス要件ⅠからⅢについては、令和6年度中は年度内の対応の誓約をすることで基準を満たします。そしてキャリアパスⅣについては、従来通り月額8万円の賃金改善でも可能となっています。

・キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)
新加算Ⅰ~Ⅳを取得するために満たす必要があります。
【内容】介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する。

・キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
新加算Ⅰ~Ⅳを取得するために満たす必要があります。
【内容】介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保する。
a 研修機会の提供又は技術指導等の実施、介護職員の能力評価
b 資格取得のための支援(勤務シフトの調整、休暇の付与、費用の援助等)

・キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)
新加算Ⅰ~Ⅲを取得するために満たす必要があります。
【内容】介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する。
a 経験に応じて昇給する仕組み
b 資格等に応じて昇給する仕組み
c 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み

・キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額)
新加算Ⅰ、Ⅱを取得するために満たす必要があります。
【内容】経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること。
※小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは、適用が免除されます。

・キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)
新加算Ⅰを取得するために満たす必要があります。
【内容】サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士等を配置していること。

 

  加算Ⅰ 加算Ⅱ 加算Ⅲ 加算Ⅳ
キャリアパス要件要件Ⅰ
キャリアパス要件要件Ⅱ
キャリアパス要件要件Ⅲ
キャリアパス要件要件Ⅳ
キャリアパス要件要件Ⅴ

月額賃金改善要件

介護職員等処遇改善加算では、職員への加算の配分方法が決められています。従前の支給方法では基準を満たさない場合がありますので、手当等の支払い方法について改めて確認し、基準を満たさない場合は支給方法を変更しなくてはいけません。

・月額賃金改善要件Ⅰ
新加算Ⅳ相当の加算額の二分の一以上については、基本給または毎月支払われる手当の改善で賃金改善を行わなくてはいけません。旧加算を一時金で支払っている事業所の場合は、支払い方法の変更が必要になります。(こちらの要件は令和7年度から適用となります。)

・月額賃金改善要件Ⅱ
これまでベースアップ加算を未算定の場合に対応が必要な要件です。前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の三分の二以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行う必要があります。新加算Ⅰ~Ⅳへの移行に伴い、現行ベースアップ加算相当が新たに増える場合、新たに増えた加算額の3分の2以上、基本給・毎月の手当の新たな引上げを行う必要があります。

職場環境等要件

介護職員等処遇改善加算では職場環境等要件として、研修の実施などキャリアアップに向けた取組、ICTの活用など生産性向上の取組等の実施を求めています。

令和6年度までは、以下の区分においてそれぞれ1つ以上に取り組む必要があり、令和7年度以降は、新加算Ⅰ・Ⅱの場合2つ以上(生産性向上は3つ以上で、一部は必須)、新加算Ⅲ・Ⅳの場合1つ以上(生産性向上は2つ以上で一部は必須)に取り組むことが求められます。

  令和6年度 令和7年度以降
区分 新加算Ⅰ・Ⅱ 新加算Ⅲ・Ⅳ 新加算Ⅰ・Ⅱ 新加算Ⅲ・Ⅳ
入職促進に向けた取組 1つ以上 2つ以上 1つ以上
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 1つ以上 2つ以上 1つ以上
両立支援・多様な働き方の推進 1つ以上 2つ以上 1つ以上
腰痛を含む心身の健康管理 1つ以上 2つ以上 1つ以上
生産性向上のための業務改善の取組 1つ以上 3つ以上 2つ以上
やりがい・働きがいの情勢 1つ以上 2つ以上 1つ以上

 

介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件(令和7年度以降)

出典:厚生労働省 旧3加算の算定状況に応じた新加算Ⅰ~Ⅳの算定要件(早見表) P4より
 

柔軟化した配分ルール

旧加算では、介護職員の中での配分のルールや特定処遇改善加算を他の職種に配分することについても、細かなルールが決まっておりそれにより、職種間の不平等感や不均衡が生じてきました。

新加算では介護職員への配分を基本とし、特に経験や技能のある職員に重点的に配分することとなり、今までよりも柔軟な配分を行うことが出来るようになりました。一方でそれにより、他の職種に配分される割合が増加することで、介護職員の処遇改善という本来の趣旨とずれる可能性も懸念されます。

介護職員等処遇改善加算の計算方法

介護職員等処遇改善加算では、提供するサービスかつ届け出を行った区分に応じて介護報酬を算定することができます。

介護職員等処遇改善加算は、区分支給限度額の算定対象外の単位数となっていますので、在宅系のサービスにおいても限度額超過の心配はありません。一方、処遇改善加算以外で限度額超過となった場合には超過した単位数について、利用者の10割負担で処遇改善加算を算定することになります。

総単位数の計算方法

介護職員等処遇改善加算では、基本サービス費に各種の加算・減算を加えたものに、算定する区分で決められた割合を乗じて総単位数が計算されます。

①基本サービス費
②加算・減算
③算定する区分(各サービスで決められた区分に応じた給付率)

介護職員等処遇改善加算の単位数=(①+②)×③

そこに地域区分単価を乗じた金額が事業所が得られる金額になります。

サービス別の加算率

介護職員等処遇改善加算は、各サービスごとに算定する単位数の割合(パーセント)が異なります。

加算は、基本サービス費と各種加算減算を合計した単位数に、それぞれの区分の割合を乗じて計算されます。また、限度額超過をした場合にも自費請求部分に処遇改善加算を掛けて計算します。

最も処遇改善加算の割合が高いサービスは、訪問介護(夜間対応型、定期巡回含む)で令和6年5月までは、最も高い区分で算定した場合、以下のように22.4%と最も割合になります。

・介護職員処遇改善加算Ⅰ13.7%
・介護職員等特定処遇改善加算Ⅰ6.3%
・介護職員等ベースアップ等支援加算2.4%

つまり、訪問介護で取得する単位数のうちの2割以上は、介護職員等へ配分することが予め決められた収入になってしまうということです。

令和6年6月から開始となる「介護職員等処遇改善加算」では、最も高い区分で算定した場合、訪問介護では24.5%が処遇改善加算となります。つまり、得られる収入のうち四分の一は、既に介護職員に支払わなくてはいけないという使い道が決められている収入になります。

なお、介護職員の配置義務のない訪問看護や福祉用具貸与、居宅介護支援などは処遇改善加算はありません。このような理由から、以前は介護職員がスキルアップのために資格を取得して、介護支援専門員(ケアマネジャー)を目指すということが多かったのですが、介護職員の方が給与面で優遇されている面があることから、ケアマネジャーの成り手が少なく、不足している地域もあるようです。

厚生労働省処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)

出典:厚生労働省処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)

まとめ

介護職員等処遇改善加算について、計算方法や算定要件などを解説しました。

処遇改善加算が始まってからかなりの期間が経過しました。厚生労働省や行政から出される説明の資料では、いつも「介護職員の給料を◯◯円改善します。」という金額だけがひとり歩きします。

しかし、実際には事業所の規模や人員配置、提供するサービスによって必ずしもその金額にはなりません。

私も何度も介護職員から、「なんで公表されている金額をもらえないのか」と詰問をされたことがあります。いつも、制度がわかりやすくなると言われますが、実際には段々と複雑になり、申請や実績報告にも頭を悩まされます。

全ての職員が処遇改善加算の仕組みを完全に理解するのは難しいかもしれませんが、この記事の内容が少しでも加算の理解に役に立ってもらえればと思っています。

また、介護職員の給料は安いと言われますが、実際には統計を見るともっと平均給与が低い業界はあります。介護職のイメージが、3Kのように言われる報道のされ方も問題ではないでしょうか。

そして、職員にだけ恩恵がある加算ではなく基本報酬が改善されない限り、永続的な事業運営はできません。今後も持続的な介護保険制度になるよう、職員も会社もみんなが納得できる制度設計が必要だと考えます。

この記事の執筆者伊藤

所有資格:社会福祉施設長認定講習終了・福祉用具専門相談員・介護事務管理士

20年以上、介護・医療系の事務に従事。
デイサービス施設長や介護老人施設事務長、特別養護老人ホーム施設長を経験し独立。
現在は複数の介護事業所の経営/運営支援をしている。

 

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