知識・技術

最終更新日

【介護報酬改定】設置が義務付けられた生産性向上委員会とは?

生産性向上委員会とは

高齢化が進み、今後介護サービスの需要が更に高まって行く一方で、人口の減少により介護現場では深刻な人材不足が問題となっています。
 
限られた資源の中で、サービスの質を確保しながら支援を行い、業務改善をして負担を軽減することで、介護職員の働く環境改善等に繋げていく必要があります。
 
ここでは、2024年度の改定により、3年間の経過措置期間を経て設置義務が明示された、生産性向上委員会について解説したいと思います。

生産性向上委員会とは?

生産性向上委員会とは、「介護現場の生産性向上を推進するために、入所・泊り・居住系サービスにおいて、サービスの質の確保、介護職員の負担軽減のための対策を検討する委員会」です。

2024年度の改定によって導入されていますが、3年の経過措置が設けられており、2027年度から本格的に実施となります。委員会は、管理者、介護職員、看護職員、その他の多職種などで構成され、必要に応じて利用者や家族などを加えることも可能です。

委員会の主な役割、必要な検討事項などは以下の通りです。

主な役割

生産性向上委員会の主な役割

・生産性向上に関する課題の把握

・課題の解決に向けた対策の検討

・対策の実施と効果検証

必要な検討事項

生産性向上委員会における必要な検討事項

・サービスの質の向上や利用者の安全確保

・職員の負担軽減

・必要な研修、講習等の提示

・利用者の状態の変化やヒヤリハット事例を把握・分析する

 
委員会はオンラインでの開催も可とされており、3か月に1回以上開催し、検討を行います。

生産性向上委員会の設置が義務付けられた背景

日本では、人口の減少が進む中、特に生産年齢人口の減少が続いており、今後もさらに進むと予想されています。一方で高齢化社会のピークを迎え、介護のニーズは高まり、介護人材の確保が難しく、どこの現場でも職員不足がとても大きな問題となっています。

しかしこうした状況でも、介護の質を落とすことなく支援を続けることが課題となります。人手不足の中であってもこれまでの質を維持し続けるために、自治体、介護施設、関係団体などが一体となって進めていくことが重要です。

今後も介護の質を維持・向上させ、介護ニーズへ対応するために委員会の設置が義務付けられました。

生産性向上委員会設置の対象施設

生産性向上委員会設置の対象となる施設は以下の通りとなります。

・短期入所生活介護

・短期入所療養介護

・特定施設入居者生活介護

・認知症対応型共同生活介護

・小規模多機能型居宅介護

・複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)

・地域密着型特定施設入居者生活介護

・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

・介護老人福祉施設

・介護老人保健施設

・介護医療院

(介護予防も含む)

介護分野における「生産性向上」とは?

介護現場における生産性向上とは、介護ロボットなどのテクノロジーを活用し、業務の改善や効率化などを進めることで職員の負担軽減を図るとともに、業務の改善や効率化により生み出した時間を直接的な介護支援の業務に当て、利用者と職員が接する時間を増やすなど介護サービスの質の向上にも繋げていくことです。

介護サービスにおける生産性向上の捉え方

引用:厚生労働省 介護現場の生産性向上の推進

その他にも、普段から整理整頓を心がけ、無駄な時間を短縮することで、落ち着いてケアができる時間を作ることができます。そうした普段の支援のなかで無駄を見つけて取り除き、職員の負担軽減が出来れば人材の定着・確保にも繋がります。

その結果、働きやすい職場になり、モチベーションや介護サービスの質が向上します。

介護現場では、これまでもこうやってきたからなどと、昔からのやり方をずっと変えずに続けていることが多くありますが、施設内でもっといい方法はないかを職員でよく話し合い、自分達で生産性を高めていくことが重要です。

生産性を向上させる為の必要な施策

介護施設が今後、より質の高いサービス提供を目指すには、介護者・利用者・利用者家族がより信頼関係を構築することと、人手不足の中で期待に応え、地域における安心の担い手としての役割を果たし続けることが大切で、そのためには以下のような施策が必要とされています。

少ない人手でもサービスの質の維持、向上を実現する組織作り

人の手が少ない中でも上手く業務が回るようにするには、役割分担など組織作りが大切です。介護の現場には、食事の介助や排泄ケアなど「直接的なケア」の他にも、テーブルを拭いたり、加湿器の給水、食器を洗うなど業務表には記載されないような「間接的業務」があります。

それぞれどんな業務があって、どんな課題があるのかを調査、分析すると必要な業務とそうでない業務の棲み分けができ、正しい役割分担ができるようになります。

ロボットやセンサー、ICTの活用

介護業界でもロボット・センサー・ICTといったテクノロジーを活用することで、介護の質の維持、向上をさせていくことが推進されています。特にICTの活用について、従来の紙媒体でのやりとりを見直し、ICTを介護現場へ積極的に導入していく動きが求められています。

業務をサポートしてくれるロボットや介護記録を電子化する記録システムの利用は、これまで要していた時間を効率化でき、介護サービスの提供に集中する上でも重要となりますが、実際の介護現場では苦手意識を持ち、ICT化へ消極的な方も少なくありません。

ICT化の先には、負担軽減や効率化などたくさんのメリットがあることを理解してもらい、導入の目的などしっかり説明しながら導入していくようにしましょう。

関連記事

介護・福祉現場のICT化 活用事例・導入事例
介護業界の人手不足の解消が難しい中「本当に人が行うべき介護」に時間をかけられる組織を作るためにICT化は業務効率化に必要です。介護業界における実際の活用事例や導入事例、メリット・デメリット、ICT導入支援事業などを紹介しています。
 
介護シフト管理 作成ソフト・アプリ 料金やメリットを紹介
介護業界向けシフト作成ソフト・アプリを紹介。シフト作成にかかる負担を減らしたいのなら、介護施設のシフト作成に特化したソフトやアプリの導入をおすすめします。

介護業界のイメージ改善と人材確保

今でも介護の仕事のイメージは良いとは言えません。仕事は大変で、処遇も良くないというイメージが根強く残っています。

ただ、実際に働いている職員は介護の仕事にやりがいを感じている方も多く、経験を積み重ねてスキルアップすることもできるという魅力もあります。

国による介護職員の処遇改善も進められており、離職率が高いといわれる原因は、処遇や仕事の内容だけでなく、人手不足による業務の多さや人間関係の悪化も多く見られます。

「間接的業務」をロボット・センサー・ICTの活用で効率化し、介護業界のイメージアップをしながら多様な人材の参入促進に繋げていくことが求められています。

生産性向上に向けた具体的な取り組み

介護サービスにおける生産性向上の具体的な取組みを次の7つに分類し解説します。

①5S活動の取組み

5Sは生産性向上や業務改善のための手法で、介護業界においても5Sの取り組みは業務の効率化や質の向上に効果を発揮します。5Sの考え方については以下の通りです。

・整理
必要な業務やものと不要なものを分類し、不要なものを排除する

・整頓
必要なものを定位置に置き、取り出しやすいようにする

・清掃
汚れや不衛生なものをなくす

・清潔
清掃を習慣化し、その状態を維持する

・しつけ
整理、整頓、清掃、清潔を習慣化し、それを継続的に行う

②業務の洗い出しと明確な役割分担を決める

業務分担を見直すには、マスタ―ラインを用いましょう。

(マスターラインとは、業務時間の区切り、タイムリミットを意味し、業務全体を時間の流れによって書き出し、ずらしたり、分割したり、付け替えたりすることで業務の効率化を図ります。)

一度マスタ―ラインを引いたら、ラインを守りながら仕事を進めることで、業務一つひとつの時間を延長することなく終わらせることができます。ポイントは業務ごとに役割と手順を明確にすることです。

③記録と報告のスタイルを再検討する

既存の様式をよく見直し、項目が必要か、使いやすいかなどを検討したりすることで、職員の報告内容の偏りが見えてきます。目標や達成状況など記載しながら、意欲を高める工夫をしましょう。

④シームレスな情報共有

チームケアの観点からも情報の共有はとても重要で、その手段としてICT機器の活用が非常に有効です。各帳票への転記作業にICT機器を使うことで負担軽減することが出来ますし、タブレット端末などで訪問先からデータの入力、確認をすることも出来ます。

また、インカムの活用も効果的で、その場の状況を時間差なく全員でシェア出来るため、申し送りなどの時間を短縮することが出来ます。

⑤OJTのマニュアル化

新人等への研修がマニュアル化されていないと、教える内容が人によって違ってしまう事があり、教えてもらう側も混乱して、育つのに時間がかかってしまいます。

教える内容や順序などをマニュアル化しておけば、誰が教えても同じように研修を進めることができます。

⑥手順書の作成

手順書に業務がきちんと出来ているかの目安や基準を記載し、適切な判断ができるようになるまでは手順書に沿って実践しましょう。業務のやり方が違う事での作業時間の差などを埋めて、職員の質の底上げ、均質化を図りましょう。

⑦理念・行動指針の徹底

イレギュラーな事態が起こった時に、法人の理念、行動指針に立ち戻り対応が出来るように、普段から理念・行動指針を全職員に伝え、徹底しておくことで不足の事態にも職員は焦ることなく、それらに即した行動が出来るようになります。

まとめ

介護業界を取り巻く人手不足の問題は、今後も深刻さを増していくと予想されています。しかし、全ての介護施設の離職率が高いわけではなく、長く務める職員が多く、離職率の低い施設も数多くあります。

介護の生産性向上には、ただ合理化だけを求めるものでなく、利用者にとってサービスの質を維持、向上することも重要です。ICT化をはじめとし業務効率化を進め、働きやすい職場が職員の定着に繋がります。

そして、結果サービスの質を向上させることにも繋がります。そうした良い循環が生まれるように、生産性の向上を進めていきましょう。

この記事の執筆者ペコ

保有資格:介護福祉士 介護支援専門員

これまで通所リハビリに2年、小規模多機能型居宅介護に17年勤務。その中でも小規模多機能では介護職4年、介護福祉士兼介護支援専門員を3年、管理者兼介護支援専門員を9年務め、現在は代表も兼任しています。

介護の話題を中心にライタ―活動を行っており、他には介護用の研修資料の作成なども行っています。

 

この記事をシェアするSHARE

記事一覧に戻る

シンクロシフト

人気記事RANKING

カテゴリーCATEGORY

キーワードKEYWORD