「入職してから独り立ちまでどれほどかかる?」
「介護業界で働きたいのだけれども、未経験で大丈夫かな?」
未経験で介護の仕事に就く方や、介護職として働き始めたばかりの経験の浅い方にとって、独り立ちするまでの期間について不安や焦りを感じている方は多くいらっしゃいます。特に夜勤に入る時期なども不安に思っている新人介護職員も多いのではないでしょうか。
この記事では、新人介護職員の独り立ちまでの期間、経験の浅い時期にが抱えやすい不安。また、独り立ちするために身に付ける必要があるスキルなどについて解説します。
また、記事の後半では新人職員が早く職場に慣れる具体的な方法についても紹介しますので、介護業界未経験の方や新人の方はぜひ参考にしてください。
目次
介護の仕事に慣れるまでは、やっぱり不安
介護の仕事は、ご利用者へのケアや職員との連携を通じて、達成感ややりがいを感じられる仕事です。
たとえば、以下のような時にやりがいを感じられます。
・かかわりや介助でご利用者の安心につながった
・ご利用者やご家族から感謝の言葉をもらえた
・働きながらスキルアップ・資格を取得できた
一方で、介護業界でまだ働いたことのない方や、新人介護職員など経験が浅い方にとっては、仕事に慣れるまで不安を感じてしまうことが多いでしょう。
介護職員が抱える主な悩み・不安は、下表のとおりです。
出典:公益財団法人介護労働安定センター 令和4年度介護労働実態調査 P.18
介護業界における慢性的な人材不足による不安や、肉体的・精神的につらい仕事内容にかかわらず給与が低い不満などが多く挙げられています。
新人介護職員のよくある悩みやその対処法については、以下の関連記事を参考にしてください。
新人介護職員が抱える不安とは?
介護未経験の方や働いて間もない新人介護職員が抱えている不安は、主に以下の4つです。
1.ちゃんと介護の仕事ができるか
2.利用者との人間関係がうまくできるか
3.他職員との人間関係がうまくできるか
4.体力的に介護の仕事を続けられるか
それぞれの不安要素やその不安を軽減する方法について解説します。
ちゃんと介護の仕事ができるか不安
介護未経験の方や経験の浅い介護職員がまず感じる不安は、「介護の仕事がちゃんとできるか」という点です。
主な介護現場のお仕事は、以下の内容です。
身体介護:排泄・食事・入浴介助 など
生活援助:掃除・洗濯・家事 など
その他業務:介護記録・レクリエーション など
介護の仕事と一言でいっても業務内容は多岐にわたるため、仕事の多さに不安を感じてしまうでしょう。また直接ご利用者の介助を行う身体介助なども不安に思うことも多いでしょう。
しかし、すべての仕事を一度指導を受けただけで、一気にできる必要は全くありません。まずは、ご利用者の安心・安全にかかわる業務を丁寧に行うことに注力しましょう。
利用者との人間関係が不安
介護の仕事は対人サービスであり、ご利用者との関係性に不安を感じてしまうことが多くあります。ご利用者との人間関係に悩むケースは、主に以下の事例です。
・まだ関係性が浅く、何を話してよいかわからない
・介助しようとしたら拒否されてしまう
・「新人」というだけで、距離を置かれてしまう
・認知症を抱えているご利用者の対応方法がわからない
もちろんご利用者の抱えている疾患や性格などにより、その方々に合わせたコミュニケーション方法を考えることが必要です。
ご利用者の生活歴や興味のあること、昔やっていたことを知ったうえで会話をすると、少しずつ話しやすくなります。「病気をもったご利用者」として接するのではなく、「その人らしさ」を重視したかかわりが大切です。
他の介護職員との人間関係が不安
同じ施設・事業所で働く同僚の職員や上司との人間関係に不安を抱えるケースも多くあります。主な職員間での人間関係の悩みは、以下のような事例です。
・年齢が離れた同僚とうまく話せない
・ベテランの介護職員と合わない
・派閥やグループができていて、うまく輪に入れない
・他職種、上司からの注意・叱責があってつらく感じる
職員によって介護に関する考え方や価値観・介助方法について意見が食い違う可能性があり、そのズレから大きなストレスとなってしまいます。
介護現場における人間関係の悩みやその対処法については、以下の関連記事を参考にしてください。
体力的に介護の仕事についていけるか不安
介護職は、体力的に不安を抱えやすい仕事です。その理由は、主に以下の3点です。
1.身体介助(立位・移乗介助等)や入浴介助など、ご利用者の身体を支えたり体力を使ったりする業務がある
2.施設・事業所によっては夜勤があるため、生活リズムが不規則になる
3.他職員の欠勤や人手不足から時間外労働や休日出勤になる場合がある
日中の介護現場では、ご利用者を支える身体介助や力仕事が多くあります。また、施設サービスの場合、24時間ご利用者見守り・介助が必要なことから夜勤業務があります。
体力面での負担だけでなく生活リズムの不安定さもあり、休息や睡眠の乱れからなかなか体力の回復ができません。
力任せに介助動作しがちなため、適切な姿勢で介助を行い肉体的な負担軽減や腰痛予防をしましょう。さらに、ストレッチや睡眠を意識して行い、勤務で疲れた身体をより効率的に休ませることが必要です。
新人介護職員が独り立ちする期間はどれくらい?
新人介護職員として入職したとき、指導期間を経て独り立ちするまでにおおよそ3ヶ月程度です。
ただし、以下の点により独り立ちまでの期間が変わります。
・未経験かどうか
・資格を持っているか
・指導する職員は十分か
・ご利用者の状況はどうか
入職するあなたの状況だけでなく、ご利用者・指導職員の状況により新人介護職員の独り立ちまでの期間が前後します。たとえば、対象となるご利用者がいない・指導する職員自体が不足している、といった場合です。
また、独り立ちするまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
1.ご利用者・職員とのコミュニケーションや日中業務を把握する
2.日中帯の介護業務、ご利用者個々のケア方法を実践する
3.(夜勤がある場合)夜間帯のケア・業務、緊急時対応
上記流れに沿って指導を受けた後、独り立ちとなります。また、独り立ちしたら全く指導がなくなるというわけではありません。
上司の指示や同僚職員との連携を通じて、業務や介護技術を磨いていくことが重要です。
新人介護職員が独り立ちするには、どんなスキルを身に付ける必要がある?
新人介護職員が独り立ちするにあたり、以下のスキルを身につける必要があります。
・コミュニケーションスキル
・観察力
・学ぶ力
・疑問を持つ力
それぞれのスキルについて解説します。
コミュニケーションスキル
介護現場において、ご利用者や他職員とコミュニケーションを必ずとります。そのため、新人職員として介護業務に入りながら、コミュニケーションスキルを高めていくことが必要です。
ただし、ここでいうコミュニケーションスキルは、おもしろおかしく話したり、状況を理論立てて話したり、といったことではありません。
もちろん、今後スキルアップ・キャリアアップをしていくうえで重要ではありますが、新人職員のうちは以下のことを心がけましょう。
・挨拶を行う
・ハキハキと話す
・握手などの言葉によらないコミュニケーションも重視する
・ご利用者のお話にうなずく
・他職員への報・連・相を意識する
まずは顔と名前を覚えてもらうために、しっかりと挨拶しハキハキ話すことが大切です。言葉だけでなく、身振り手振りを大きくするといったジェスチャーもコミュニケーションのひとつであり、ご利用者にとっても理解しやすいでしょう。
観察力
ご利用者や他職員とのかかわりのなかで、次に必要なのが観察力です。ご利用者の体調面や精神面で何か変わったことがないかを観察します。
こうした異常を察知できるよう新人職員のうちから意識しておくと、中堅・ベテラン職員になったとき危険や特変にいち早く気づけます。
また、異常時における観察だけではなく、ご利用者の生活動作やこだわりを知ることも必要です。ご利用者が喜びを感じることやここだけは譲れないというこだわりに寄り添うことで、ケアの質が向上します。
コミュニケーションスキルを少しずつ磨きながら、ご利用者を観察する力も身につけていきましょう。
学ぶ力
ご利用者との会話や観察を通して、その人の生活リズムや抱えている病気を学ぶ力が必要です。
たとえば、認知症を抱えている方の中には幻覚や幻聴などの症状が出る場合もあります。こうした認知症の症状・行動を学び理解することで、ご利用者に対して適切に対応できるのです。
また、他職員や他職種と連携する中で、業務手順や方法を学びます。ご利用者の安全・安心を守るため、必要な業務を少しずつ覚えていきましょう。
疑問をもつ力
ご利用者への対応や介護業務の手順・方法を一通り学んだら、それらに一度疑問を持ってみましょう。
・なぜご利用者が車いすのままでお食事を召し上がっているのだろう?
・どうして清掃業務はこの手順で行うのだろう?
・入浴を拒否するご利用者、どうすれば心地よく入浴してもらえるかな?
この疑問をもつ力は、新人職員として介護現場に入るからこそ必要なスキルです。介護ケアや業務に慣れてしまうと、なかなか今やっている方法が正しいか気づきづらくなってしまいます。
これまで学んだことや実践したことに「本当にこの方法・手順でいいのか?」と疑問を持つことで、さらに理解が深まるとともにチーム全体の業務改善に役立つでしょう。
新人職員が早く職場に慣れるためには?
新人職員として入職後、できる限り早く職場に慣れて独り立ちをしたいと考えている方は多くいらっしゃいます。そのために、どういったことをすると良いでしょうか。
早く職場に慣れるために必要な行動は、以下のとおりです。
・身だしなみを整える。
・元気に挨拶する。
・積極的にコミュニケーションをとる。
・教えてもらったことはメモする・振り返る。
・分らないことは積極的に質問する。
・失敗しても受け入れて改善していく。
それぞれ必要な行動について解説します。
身だしなみを整える
まずは、身だしなみを整えることが重要です。介護現場に入る前に、以下の項目をチェックしておきましょう。
・服:汚れはないか?
・髪:寝ぐせを整える。長髪ならば結んでおく。
・爪:爪を短く整える。
・アクセサリー:仕事前に外す。ベルト着用時大きいバックルはつけない。
身だしなみを整えることで、ご利用者や他職員によい印象を与えます。とくに、爪が伸びていたりアクセサリーを着用したりしていると、ご利用者を傷つける可能性があるため注意が必要です。
元気に挨拶する
勤務に入るとき、または退勤するときには元気に挨拶しましょう。早くご利用者と職員にあなたを覚えてもらうためにも重要です。
ただし、ご利用者の中には帰宅願望で落ち着かず「帰る」という言葉に反応してしまう方もいらっしゃいます。そのような方への挨拶や声かけについては、指導職員の指示に従いましょう。
積極的にコミュニケーションをとる
介護業務中は、積極的にコミュニケーションをとることが大切です。ご利用者への声かけをすすんで行うと、ご利用者が安心して過ごせます。
介助前や介助時の動作補助において、何をするかをご利用者に伝えることでご自身の力を引き出すこともできるのです。
また、他職員との積極的なコミュニケーションも早く職場に慣れるために必要です。あなたからコミュニケーションをとることで、信頼関係を築けてより早く職場に馴染むことができます。
わからないことを質問しやすくなり、他職員も指導やアドバイスをしやすくなるため、よりスムーズに業務に取り組めるでしょう。
教えてもらったことはメモする・振り返る
先輩職員から指導を受けているときは、必ず教えてもらったことをメモし振り返るようにしましょう。誰しも一度聞いて全てを覚えることは難しいことです。
とくに、あなたが何度も同じことを聞いたり、同じようなミスをしたりするのは、指導職員にとってよくない印象を受けます。指導を受けたときはメモをとり、業務終了前に再度見直して手順を振り返ることが必要です。
わからないことは積極的に質問する
指導を受けているときに、わからないことや不安になったら、業務を行う前に積極的に質問しましょう。よくわからないまま業務をしてしまうと、最悪の場合ご利用者の事故につながります。
ただし、指導中や実際に業務を行っているときだと、質問できる時間が限られる可能性があります。その場合は、不安なところもメモしておき、質問内容を紙にまとめて指導職員に渡しておくとスムーズにやりとりできるためおすすめです。
また、指導職員が忙しい場合、他の先輩職員に質問することも必要です。ただし、指導内容にブレが生じてしまったり、ダブルスタンダードにより余計混乱してしまう可能性があります。
「他に指導を担当する職員や質問してもよい職員は誰ですか?」と先に確認しておくことが必要です。
失敗しても受け入れて改善していく
まだ仕事に慣れないうちは、いろいろな失敗・ミスをしてしまうかもしれません。なかには、ヒヤリとした場面に遭遇することもあります。
そのときは、指導職員に報告し対処方法を考えるようにしましょう。新人職員の視点で危ないところや場面をチーム全体で共有することで、大きな事故を防止することに繋がります。
どういったヒヤリハットが起こりやすいのか、以下のヒヤリハット事例についても参考にしてください。
まとめ
介護業界に未経験で入る方は多くいらっしゃいます。新人として慣れないこと・わからないことが多く、仕事自体に不安を感じてしまうかもしれません。きちんと独り立ちできるのだろうか・・・という不安を抱える新人介護職員の方もいるかもしれません。
しかし、新人だからこそ多くを学び、ご利用者とのかかわりに楽しさを感じられる時期です。独り立ちの目安期間はありますが、焦らず丁寧に目の前にいるご利用者のケアに取り組みましょう。
積極的にご利用者・他職員とコミュニケーションをとり、不安を少しずつ解消していきましょう。この記事を読んで、未経験で介護業界に飛び込んだ方や経験の浅い方にとって参考になれば幸いです。
また、Shift Lifeでは介護業界で働く方々に役立つ記事を掲載しています。介護の仕事に興味のある方や、もっと介護の仕事について知りたい方は、以下の関連記事をぜひご覧ください。
この記事の執筆者 | しょーそん 保有資格:介護福祉士 認知症実践者研修 修了 認知症管理者研修 修了 認知症実践リーダー研修 修了 グループホームに11年勤務し、リーダーや管理者を経験。 現場業務をしながら職員教育・請求業務、現場の記録システム管理などを行う。 現在は介護事務の仕事をしながら介護・福祉系ライターとしても活動中。 |
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